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第十一章 復讐
第十四話 秘密の会話
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露天風呂で居合わせたガノンとルカは視線を切ることが出来ずに見つめ合っていた。一通り観察が終わったガノンは、とりあえず会話を試みる。
「……その顔……」
「あっ!ご不快に思われたなら申し訳ございませんっ!!……お、お風呂でしたので……マスクをとってまして……」
大声の謝罪からの極小声量の言い分。耳が劈く高い声はガノンにとって不快だった。
「……良いから謝んな。悪かったな、驚かせてよ」
ガノンは岩の陰に隠れるようにルカの反対側で湯船に浸かる。少し落ち着きを取り戻し、ガノンは口を開いた。
「……何故顔を隠す?俺から見ればそんな必要ないと思うが?」
「えっと……私は生来のあがり症で……仮面をつけていないと、外に出られないのです……」
「……そうだったのか。そりゃ大変だな」
少しの沈黙。ガノンがため息がてら、ふと思いついたことを口に出す。
「……ま、ある意味幸運かもな。そんな顔してたら威厳も何も合ったもんじゃねぇ。ファンに逃げられちまうかもしれんし……」
「逆ですよ!!」
岩の横から覗き込むように顔を出した。今度はガノンがビクッとなる。
「私のこの顔は変なファンを作っちゃうんです!男の娘とか言われて……辱められて……」
ポロポロと涙を流す。
「……ちょっ……おいおい。ったく、メソメソすんな。男だろうが」
ルカは悲しげな目でガノンの顔を見る。ポッと顔を赤らめた後、首から下の体を舐めるように見始めた。
「……んだよ」
「ガノン様が羨ましいです。それほどの逞しい体……私はこんな感じですから」
自身のヒョロヒョロの体を見ながらガノンと比べる。
「……っけ、やめとけやめとけ。そうやって無い物ねだりすんの……手前ぇじゃどれだけ鍛えてもこうはならねぇ。まず骨格から違うんだからよ……」
そんな突き放した言い方とぶっきらぼうな態度にルカはそっと顔を隠した。ガノンは「言い過ぎたか?」と思いつつも、なよなよとした弱々しい男との不毛な会話が終わったと内心安心もした。これでゆっくり出来る。そう思った時、チャプッと水面に波が立った。
「?」
ルカはガノンとの隔たりがあった岩を回り込み、隣に座っていた。
「……な、なんでぇ……?」
ガノンは驚きで萎縮する。ルカは美少女のような顔をガノンに向け、お風呂で温もった赤い顔をほころばせた。
「ガノン様は正直な方ですね……なんか、思ってた方と違いました」
「……え?あ、ああ……おうっ」
妖艶とも思えるその表情にガノンはタジタジになる。さっきまでの距離感が消え、ガノンの胸にしな垂れ掛かりそうなほどの雰囲気すら感じた。
(……なんだこいつ?気色悪いな……)
間合いの取り方が極端である。岩の壁以上の隔たりがあったかと思えば、パーソナルスペースのへったくれもあったものじゃないところまで食い込んでくる。ガノンの寄せ付けないオーラを感じれば水商売のプロの女性ですら敬遠するというのに……。
「……と、ところでよ。この温泉は不思議だな。この程度の温度だってのに湯気が立ち込めてすぐ先も見通せねぇ」
「ああ、これは私の魔法です。……時よりどうしても温泉に浸かりたくて、こうして周りから見えないように湯気を出すのです」
「……なるほど、仮面の下を見られたくねぇからな」
「……矛盾してますよね……」
ルカは湯船の中で足を抱えて俯く。
「……あ?」
「いえ……見られたくもないのに、こうして何とかして入ろうとするなんて……可笑しいですよねって」
「……何も可笑しくねぇ」
ハッとしてガノンを見上げる。
「……自分のやりてぇ様にやらなくて何が面白いってんだよ。矛盾?結構じゃねぇか。んなもん言いてぇ奴に言わせとけ」
ルカと自分を照らし合わせる。自分だってどうしても温泉に浸かりたくてここにやって来た。アロンツォに嫌味を言われても関係ない。分からない奴には永遠に分からない個人の娯楽は存在する。
「……ガノン様……」
ルカの瞳に屈強な男が焼き付く。筋骨隆々で日焼けし、古傷だらけの痛々しい肉体。線が細く、古傷の一つもない真っ白な柔肌。これほど住んできた環境の違う存在に何故か惹かれる。
女性は嫌いだった。
小さな頃から美しい顔立ちのルカは、いつも舌舐めずりをする周りの女性に恐怖していた。昔、無理矢理関係を持とうとした女のせいで心を閉ざし、影に生きてきた。心の底から本当の男を求める様になり、その内に男性に興味を惹かれる様になった。
「……見方だ。周りを気にするなまでとは言わねぇ。けどほんの少し見方が変われば自信がついてくるぜ」
「……」
ガノンは軽快に口が回っていたが、返答が無いことに気付いてルカをチラッと見た。目が合った途端ルカは視線を外した。
「あ……えっと……」
気不味い空気が流れて居心地が悪くなる。ガノンは温泉から出ることにした。
「ガノン様?」
「……先に出るぜ。ゆっくり浸かれ、明日は早ぇぞ……」
湯気に消えるガノンの背中を目で追う。一人になったルカは、ガノンを夢想し心臓の高鳴りに身を任せた。
「……その顔……」
「あっ!ご不快に思われたなら申し訳ございませんっ!!……お、お風呂でしたので……マスクをとってまして……」
大声の謝罪からの極小声量の言い分。耳が劈く高い声はガノンにとって不快だった。
「……良いから謝んな。悪かったな、驚かせてよ」
ガノンは岩の陰に隠れるようにルカの反対側で湯船に浸かる。少し落ち着きを取り戻し、ガノンは口を開いた。
「……何故顔を隠す?俺から見ればそんな必要ないと思うが?」
「えっと……私は生来のあがり症で……仮面をつけていないと、外に出られないのです……」
「……そうだったのか。そりゃ大変だな」
少しの沈黙。ガノンがため息がてら、ふと思いついたことを口に出す。
「……ま、ある意味幸運かもな。そんな顔してたら威厳も何も合ったもんじゃねぇ。ファンに逃げられちまうかもしれんし……」
「逆ですよ!!」
岩の横から覗き込むように顔を出した。今度はガノンがビクッとなる。
「私のこの顔は変なファンを作っちゃうんです!男の娘とか言われて……辱められて……」
ポロポロと涙を流す。
「……ちょっ……おいおい。ったく、メソメソすんな。男だろうが」
ルカは悲しげな目でガノンの顔を見る。ポッと顔を赤らめた後、首から下の体を舐めるように見始めた。
「……んだよ」
「ガノン様が羨ましいです。それほどの逞しい体……私はこんな感じですから」
自身のヒョロヒョロの体を見ながらガノンと比べる。
「……っけ、やめとけやめとけ。そうやって無い物ねだりすんの……手前ぇじゃどれだけ鍛えてもこうはならねぇ。まず骨格から違うんだからよ……」
そんな突き放した言い方とぶっきらぼうな態度にルカはそっと顔を隠した。ガノンは「言い過ぎたか?」と思いつつも、なよなよとした弱々しい男との不毛な会話が終わったと内心安心もした。これでゆっくり出来る。そう思った時、チャプッと水面に波が立った。
「?」
ルカはガノンとの隔たりがあった岩を回り込み、隣に座っていた。
「……な、なんでぇ……?」
ガノンは驚きで萎縮する。ルカは美少女のような顔をガノンに向け、お風呂で温もった赤い顔をほころばせた。
「ガノン様は正直な方ですね……なんか、思ってた方と違いました」
「……え?あ、ああ……おうっ」
妖艶とも思えるその表情にガノンはタジタジになる。さっきまでの距離感が消え、ガノンの胸にしな垂れ掛かりそうなほどの雰囲気すら感じた。
(……なんだこいつ?気色悪いな……)
間合いの取り方が極端である。岩の壁以上の隔たりがあったかと思えば、パーソナルスペースのへったくれもあったものじゃないところまで食い込んでくる。ガノンの寄せ付けないオーラを感じれば水商売のプロの女性ですら敬遠するというのに……。
「……と、ところでよ。この温泉は不思議だな。この程度の温度だってのに湯気が立ち込めてすぐ先も見通せねぇ」
「ああ、これは私の魔法です。……時よりどうしても温泉に浸かりたくて、こうして周りから見えないように湯気を出すのです」
「……なるほど、仮面の下を見られたくねぇからな」
「……矛盾してますよね……」
ルカは湯船の中で足を抱えて俯く。
「……あ?」
「いえ……見られたくもないのに、こうして何とかして入ろうとするなんて……可笑しいですよねって」
「……何も可笑しくねぇ」
ハッとしてガノンを見上げる。
「……自分のやりてぇ様にやらなくて何が面白いってんだよ。矛盾?結構じゃねぇか。んなもん言いてぇ奴に言わせとけ」
ルカと自分を照らし合わせる。自分だってどうしても温泉に浸かりたくてここにやって来た。アロンツォに嫌味を言われても関係ない。分からない奴には永遠に分からない個人の娯楽は存在する。
「……ガノン様……」
ルカの瞳に屈強な男が焼き付く。筋骨隆々で日焼けし、古傷だらけの痛々しい肉体。線が細く、古傷の一つもない真っ白な柔肌。これほど住んできた環境の違う存在に何故か惹かれる。
女性は嫌いだった。
小さな頃から美しい顔立ちのルカは、いつも舌舐めずりをする周りの女性に恐怖していた。昔、無理矢理関係を持とうとした女のせいで心を閉ざし、影に生きてきた。心の底から本当の男を求める様になり、その内に男性に興味を惹かれる様になった。
「……見方だ。周りを気にするなまでとは言わねぇ。けどほんの少し見方が変われば自信がついてくるぜ」
「……」
ガノンは軽快に口が回っていたが、返答が無いことに気付いてルカをチラッと見た。目が合った途端ルカは視線を外した。
「あ……えっと……」
気不味い空気が流れて居心地が悪くなる。ガノンは温泉から出ることにした。
「ガノン様?」
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