一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

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第十章 虚空

第二十二話 厄災の侵入

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 イルレアン国の外。もうすっかり日が落ちた公道にガラガラと音を立ててキャラバンがやって来た。今日はもう暇になると思っていた門番は、今更やって来た行商人の馬車にため息をついた。

「……チィ、交代前に来いよ。何で俺らの時に……」

 ぶつくさ言いながら三人が行商人を迎えた。

「そこで止まれぇい!」

 馬がいななきながら足を止める。御者台に座る草臥れたハットの恰幅の良い男は、顔を上げて門番を見た。

「おお、ご苦労さん。予定より遅く着いちまったぜ」

 体の割にひらりと降りる男。腰に提げた羊皮紙を取り出して門番に手渡した。それを広げて確認すると入国許可証であった。イルレアンでも贔屓しているコンラッドキャラバンが荷卸しにやって来たのだ。
 これは通さぬ訳にはいかない。門番は「長旅お疲れ様です!」とさっきまでの態度を一変させて急いで門を開けさせた。

「はっはっはっ!どうもな!」

 コンラッドは入国許可証を受け取るのと同時に小袋を手渡した。中にあるのはハーフリングが育てた煙草の葉っぱ。パイプに詰めれば一服ができる。特にハーフリングの育てた葉っぱは高級品で、コンラッドのキャラバンしか取り扱っていない品である。門番はペコペコ頭を下げながら連なる馬車を見送った。

「ほえ~、素通りかい。よっぽど信頼されてんだなぁ」

 ほろ馬車から顔を覗かせたのは藤堂 源之助とうどう げんのすけ。少し前からキャラバンに同行し、移動を手助けしてもらっていた。キャラバン側も藤堂のおかげで助かったことが多々あるので持ちつ持たれつが成立していた。

「三代に渡って行商人だ。老舗って奴よ」

 その顔は誇らしげで真っ白なひげを撫で上げる。

「流石だなぁ……ところでこの街はよく発展してんなぁ。とてもじゃねぇが探しもんは見つかりそうにねぇ……」

 古い村、寂れた町、歴史的建造物の近くにある人間の居住区など、そういうところなら古い伝承や巻物などの欲しい情報が見つかる可能性を秘めている。このようないかにもな都会で知れるとは思っても見ない。

「お?んなこたぁねぇぞ。歴史書なんかは図書館が集めてんだよ。魔法省なんつーのもあるから、その鎖の呪いのことなんかも色々知れるはずだぜ?」

「……ううむ。そうかねぇ……」

 そんな詮無いことを話しながら馬車に揺られる。もう遅い時間だ。みんな休む必要がある。馬車が置けて、一泊できる場所。ここに来た時は必ず泊まる宿があったので迷わず進む。

 もう時間も時間だ。仲間たちも疲れたのか欠伸が散見される。キャラバンは路地裏に進み始める。

「おい待て!そこで止まれ!!」

「おや?」

 コンラッドは綱を引いて馬の歩を止めた。突然横から現れた黒い鎧の騎士たちに道を塞がれたのだ。

「悪いが引き返してくれ、ここからは先は通行止めだ」

「なんかあったんですかい?」

「犯罪者がうろついてる可能性がある。現在捜索中だ」

「へぇー、犯罪者が?」

 騎士が慌ただしく動き回っているのがチラッと見えた。どうやら嘘ではなさそうだ。

「差し支えなければ犯罪者の名前を聞いても良いかなぁ?」

「ダメだ。無用な混乱を呼ぶ。とっとと引き返せ」

「いや、でもよぉ、この先の宿に泊まりてぇんだけど……馬車が停められて安上がりな宿って他にあるかな?」

 中々動こうとしないコンラッドに対して騎士は苛立ちを覚えた。

「キャラバンのくせに宿だと?今日一日くらい駐車場を借りて馬車内で寝ろ。とにかくここは通行止めだ。引き返せ」

 せっかく宿で大の字に寝られると思っていたのに出鼻をくじかれた。仕方なく引き下がって土地の広い別荘地帯に進む。

「全く失礼な連中だなぁ。尊敬の欠片も見えなんだ……」

「しょうがない。彼らも仕事だ」

 面白くないという顔をしているが、諦めもきちんと含んだ顔だ。騎士たちもやりたくてやったわけではないと思うからこそ溜飲が下がる。
 別荘地帯は広い土地がポツポツ点在し、まだ買われていない土地がある。こっそりそこを使用させてもらおうという魂胆だ。

 どこか良い場所は無いかと進んでいたが、前方にまたしても騎士の姿が見えた。

「……今日はどうしたってんだ?イルレアンは安全な場所だったはずだが……」

 コンラッドは困惑しながらも、止められなかったらそのまま進もうと腹を決めて強行する。覚悟を決めて大きな館の前を通ったが、素通りできた。館を囲むように配置された騎士の面々を見ながら(襲わない限りは来ないか……)など思いながら前を見据える。
 その時、館からホーンと思しき種族が館から出てくるのが見えた。部下を引き連れているのを見るとかなり上の立場のようだ。

「……ありゃもしかして、あの有名な騎士様じゃねぇだろうか?」

 コンラッドは馬車を止めて振り返るように様子を伺った。
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