一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

文字の大きさ
377 / 718
第十章 虚空

第二十三話 光明

しおりを挟む
「……おいコラ!!待ちやがれ!!」

 館から出たイザベルとソフィーをガノンが追う。庭先で何とか回り込むことに成功した。

「そこを退きなさい」

「……いいや退かねぇ。八大地獄をぶちのめすのに手前ぇらは必要不可欠なんだよ。……いいから力を貸せ、頼む」

 ガノンは神妙な面持ちで二人を見据える。その顔を見てもイザベルの気持ちは変わらない。

「第二魔法隊の末路を加味しての発言ならば、尚更力を貸すつもりはありません。彼らとはその件で平和協定を結びました。私達一角人ホーンの安心と安全のためには敵対しないことこそが最良の道なのです」

 彼女は毅然とした態度で断り、ソフィーはそんなイザベルに目を配りながらガノンに黙って頭を下げた。
 イザベルの答えこそホーンの総意。魔王戦ならいざ知らず、八大地獄に喧嘩を売るつもりはない。
 ドワーフの国で鋼王がガノンに懸念を漏らしていたが、まさにその通りとなった。白の騎士団がほぼ集まるまでは良かったが、同盟を結んだ相手に攻撃を仕掛けようなど正気の沙汰では無い。さらにホーンは同盟関係以上に平和協定まで踏切り、白旗を振っていた。及び腰のレベルでは無い。

「……アウル爺さんがあの野郎に殺されたんだぞ!?ドゴールの奴が目の前で見てるんだ!手前ぇらだって同胞が殺されて悔しくねえのか!?」

「ですから先ほども説明した通りです。感情論では動くことができません」

「……何ぃ?!」

「ホーンは参加を拒否します。今度召集をかける時は内容を事細かく記載していただけるようにお願いします」

 この話はイザベルの主張に軍杯が上がる。特に今回のアウルヴァングの戦死は第十一魔王”橙将”との種族存続を賭けた戦争での出来事。誰が死んでもおかしく無い状況の中、八大地獄の情報が下にまで届いていなかった不運が重なったのだ。どっちが先に突っ掛けたのか定かでは無いものの、乱戦での同士討ちはどうあがいても防ぎきれるものでは無い。
 ガノンの後ろに他の面子も集まる中、静観していたソフィーが口を開いた。

「興味本位で少しお聞きしたいのですが、八大地獄と戦って勝てる根拠とその保証はあるのでしょうか?」

 ガノンは真っ直ぐにソフィーを見つめる。一拍置いてから淀みない言葉で返答した。

「……根拠も保証もねぇよ。だが俺たちは確かな実力を持ってる。やるには十分に過ぎる」

 そのセリフを聞いてソフィーは一筋の涙を溢した。それはオリバーとイーリスのあの時の感情に似ていた。第一魔王"黒雲"を討伐に前人未踏の地に向かい、そして散った英雄であり、旅の仲間だった二人の覚悟に……。
 その変化にガノンもイザベルも目を剥く。常に一定の感情で驚くことも怒ることもないソフィー。そんな彼女から出た明確な悲しみの意思表示。

「……よく分かりました。確かにそれ程の覚悟がないと戦いにならない実力者でしょうね」

 その言葉にイザベルの肝が冷える。

「ソフィー様……?」

 単独で参加しかねない彼女に不安を抱いて尋ねる。その不安に気付いたソフィーはニコリと笑って首を振った。

「申し訳ないのですが、これは私の権限を大きく超えた問題です。手を貸すことはできません」

 当然の帰結。一緒にやってくれそうな空気感を出していたが、それとこれとは話が別らしい。
 戦いの場に二人が居るのと居ないのとではまるで違う。ホーンは……特にこの二人は魔法のスペシャリスト。一緒に旅をしているアリーチェには申し訳ないが、この二人と比べると天と地の差。とてもじゃないが比べるのも烏滸おこがましい。

 そんな二人を説得する術はガノンにはない。言い包められるほど口も達者でなければ、安心させられる材料もない。
 無力に打ちひしがれる彼は一直線に口を結んだ。
 これ以上の話がないと悟ったイザベルは鼻を鳴らして踵を返そうと足を動かした。

「よぉ。ちょっと話し良いかい?」

 その時、背後から声をかけられた。ドキッとして振り返る。そこには160cm前後の小柄で汚らしい男が立っていた。鎖の上でゴロゴロ転がって無様に絡まってしまったような格好で申し訳なさそうにしている。

「なっ……!?」

 すぐ背後に立たれたというのに全く気配を感じなかった。ホーンの部下たちはすぐさま臨戦態勢に入ったが、男は慌てた様子で手をかざした。

「おうおうおう……!?よせって、俺ぁ敵じゃねぇや。お前さん方が話してたことがちょいと気になってよぉ。敷地内に勝手に入ったのは謝るから、そんな敵視しないでくれよ……」

 情けなく弱腰だが、その異様さは目を見張るものがある。外にはキャラバンと思われる馬車の群れが止まっている。御者の男が騎士に向かって何かを話しているが、それがここでは聞き取れない。

「……手前ぇ何もんだ?」

「お、俺ぁ通りすがりの流れもんだぁ。ただ八大地獄って言ってたもんで……」

 ガノンはソフィーとイザベルの脇を抜けて男の鎖を掴むと、まるで風船でも持ち上げるように地上から足を浮かせた。

「……もう一度だけ聞くぞ。手前ぇは何もんだ?」

「うわわっ!軽々と……人間の腕力じゃねぇや」

「……手前ぇの聴力もな。こっからあそこの声は聞こえねぇぜ。どうやって聞いた?」

 持ち上げられたまま首を回し、塀の外にいる連中を見る。

「唇の動きを見れりゃ大体分からぁ。俺ぁ目が良いんだ」

 読唇術。離れていても唇の動きで話の内容を読み取る技術。

「……ああ?んなこと出来るわきゃねぇだろ」

「昔惚れた女がろう・・でなぁ。手話と口話両方を必死こいて覚えたもんだぁ。もっとも、今じゃ何の為に持ってんだか分からねぇ技術だがなぁ」

 ガノンは難しい顔をしてそれを聞いていた。

「……ろうって何だ?」

「え?ああ、耳が聞こえないってこった」

 理解の色が見え、鎖から手を離した。そっと下ろしてくれれば良いのに、持ち上げた状態で離されたので、男は尻餅をつかないように着地した。
 いきなり現れた男に驚いて警戒していたが、ガノンとの会話を聞いているとただの間抜けな、人よりちょっと優れた技術を持ったおっさんに見える。

「……そんじゃもう一つ質問だ。”八大地獄”……奴らについて何を知ってる?」

「奴ら?八大地獄ってのは人じゃなくて場所の事だろ?」

「……何だと?ってことは奴らは場所の名前を使ってるってことか?」

 話が上手いこと噛み合わない二人。それを側で見ていたホーンたちは顔を見合わせた。

「あの、もうよろしいですか?私たちはここを出て別に宿を探そうと思うので……」

 その言葉を聞いてゼアルが前に出た。

「ここに泊まっていけば良いだろう?」

「お力になれない身でご好意に預かるわけにはいきません。それではまた会える日を楽しみにしてますよ」

 ホーンたちが歩き出したのを見てガノンが呼び止める。

「……待ちやがれ!野郎を……ロングマンをぶちのめすんだ!手前ぇらも手伝えよ!!」

 聞く耳持たずに塀の門から出て行った。

「ロングマンたぁ懐かしい名前が出たもんだ。昔を思い出さぁ」

「……手前ぇ、ロングマンを知ってんのか?」

「へへ、もう生きちゃいねぇよ。同じ名前だろなぁ」

 せっかく何か分かるかと思ったのに、何かとすれ違う男の会話。その奇妙な感覚をハンターが言及する。

「ロングマンに八大地獄……偶然にしては出来過ぎていませんかね?」

「そういうがな?八大地獄は仏教の……」

火閻ひえん一刀流……」

 その時、ドゴールが口を開いた。全員が初めて聞いた言葉。何のことか全く分からない面々と対比するように男の顔には理解の色が浮かんだ。その目をドゴールは見逃さない。

「……知ってるようだな」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...