一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

文字の大きさ
387 / 718
第十章 虚空

第三十三話 この時を……

しおりを挟む
 馬を休みなく走らせて街を駆け抜ける。
 騎士たちが国民に外出規制をかけていたので、突然横から飛び出してくるような危ない状況もなく、魔法省までの道は開かれていた。

(不思議だ。まるで私がこうして馬に乗ることを見越していたような……)

 こう思うのも神という存在と遭遇してしまったが為だろう。一昔前なら幸運と捉えていたものが、何かの意思と感じてしまう。
 街中でここまで速く馬を走らせるのも、目的の場所までこんなに早く着けるのも初めてのことだった。

「幸運……いや、状況が状況だけに幸運とは呼べんな……」

 そんな詮無いことを呟く程度には気が気でない状態だった。

「マ、マクマイン様?どうしてこちらに……」

 そこには魔法省直属の兵士、俗に”護衛兵ガードナー”と呼ばれる魔法戦士部隊が魔法省の入り口を固めていた。
 犯罪者ラルフの国内侵入を受けて、魔法省への強化を図ったと見える。

(これほどの兵を掻い潜ってどうやって中に……)

 もはやラルフが最初から魔法省の中に居たのではと考えてしまう。いくら探し回っても見つからなかったのは、潜伏場所から一角人ホーンの情報から何から何までが全てがブラフだったのではと……。
 公爵は突飛な考えを捨てて、堂々と歩く。騒めくガードナーの中に隊長格と思われる男を見つけ、声をかけた。

「局長に用がある。すぐに門扉もんぴを開け」

「かしこまりました」

 男は手を振るって開けろとジェスチャーを送る。門の内側にいた魔法使いが急いで詠唱を行い、簡易的な結界を解除した。
 見れば見るほどにここの警備は厳重だ。公爵はこの魔法省を立ち上げた立役者。彼は当然顔パスだが、本来ここに入る場合は特別な許可証を持参しなくては話すら聞いてもらえない。
 部下たちの間を抜けて魔法省の建物までの広い敷地を、焦らず急ぎすぎずを心掛けて進む。すぐ後ろではまた門を閉じて結界を張り直している。これで出ることは出来ない。

(いや、どうやって入ったかが分からない以上、奴は出入り自由と考えるのが良いか……)

 側に誰もいないことを確認してポツリと呟く。

「……アシュタロト……いるのか?」

 部下を誰一人連れていない無防備な状態。武器もあり鍛えているとはいえ、相手が何人いるか分からない状況。そして何より妻が人質に取られたという不利な現状。神という不確かではあるが、絶対的な存在でもいない限り不安で仕方ない。

『何かな?』

 いつもは全くと言っていいほど神出鬼没な上、返事をすることも稀な彼女が今回はすんなり返事をした。こんな時だからこそ頼れるとは、神という存在にすがる者たちの気持ちが分かったような気がした。

「相手が相手だからな……貴様でもいないと話にならん。相手方の神の存在も気掛かりだ。私の元を離れてくれるなよ」

『うふふ……心配?でも安心しなよ。僕は君の元から離れる予定はないからさ』

 公爵の口元に笑みが溢れる。この話し合いの場で彼女から手を出すつもりはなさそうだが、こちらが危なくなった時は盾になってくれるくらいはしてくれるような気がした。これで命の保証は出来たも同然。
 そのまま建物の中に入ってふと気づく。

「そうだ。どの部屋にいるのか聞いてなかったな……」

 通信機を切る直前にその話が出来れば良かったが、そのことはすっかり失念していた。とりあえずは局長室を目指せば良いかと一歩踏み出した時、背後から声をかけられる。

「はい、そこで動かないで」

 その声にピタッと足を止める。

(……馬鹿な……気配を感じなかっただと?)

 相当な手練てだれだ。
 第一魔王”黒雲”が頼りにしている執事、”黒影”の希薄な気配をも感じ取れる公爵の感覚から逃れる気配。人間じゃない。

「……貴様は?」

「ラルフの仲間とだけ言っておこうかな。そんなことより話し合いの場にその腰の得物は相応しくないよ。この場で私が預かる。剣を外して床に置いてくれる?」

 逆らっても良いことはない。公爵は手慣れた様子で腰に佩いた剣をサッと取り外すと声のする方に差し出す。そこには真っ黒い出で立ちの人物が立っていた。

(暗殺者か……?)

 武器を持っている様子はないが、不気味だとしか言いようがない。

「ん?ははっ、誰が立っているのか気になったのかな?気持ちは分かるけど、敵の間合いで逆らうのは賢い行動とは言えないな……人質を取られているのを忘れたのかな?」

「すまないな、この剣は王より賜りし聖剣。床に置くことは出来んのだ。良ければ手渡しで預かってくれないかな?」

「ふーん……中々良い文句だね。忠義に厚い臣下だと思わされるし、同時に情にも訴えられる。そういうの好きだなぁ……私の顔を見せるのに値する文句だよ」

 そこに現れたのはまだ若い子供と呼べる年齢。多分十六、七くらいか。この時分から既に実力者と呼べる存在が目の前に立っている事実に恐れ入る。

「……何故なにゆえ貴様のような存在があのような男にくみする?どんな旨味があの男にあるというのだ?」

「あなたは損得勘定で敵味方を決めるんだね。……でもしょうがないか。政治家である以上、国の為に損得を取るのは当然のことだよね」

「……名は?」

「この世界の呼び名はアンノウンで通ってるよ。じゃ、その剣は預かるね」

 アンノウンは公爵からの手渡しに応じて、そっと大事そうに預かった。物の扱いにも長けているところから良い教育を受けていることは明白である。アンノウンを見て思ったのが(惜しい……)である。このような人物が部下にいれば、間違いなくストレスを感じることはなかっただろう。
 そんな風に感じていた時、ふとこちらに来る気配に気づいた。ギロッとそちらを見ると、武器を構えている男と屁っ放り腰の男がやってくるのが見えた。

「……案内人かな?」

「ご名答。あの二人について行ってね」

 アンノウンは影に隠れるように入り口付近に立った。それと同時に姿を見せた金髪の男性に目を丸くする。

「き、貴様は……ブレイブ!?」

 いや、まさかそんなはずはない。かの者はこの手で……。しかし、手に携えているのは怪魔剣ガンブレイド”デッドオアアライブ”。銃形態で構えながら公爵の命を狙っているように見える。

「俺の名はブレイド。父ブレイブの息子だ」

「まさか……黒影が言っていた半人半魔ハーフ……なるほど、貴様がそうか」

 先に情報を聞いていたお陰で取り乱さずに済んだ。ここが初出であれば感情の振り幅がどうなっていたか知れたものではない。

「ラルフさんがこの先で待っている。さぁ、移動してもらおうか」

 切っ先を振りながら建物の奥を指し示す。ふっと鼻で笑いながら足を動かした。ブレイドと屁っ放り腰の男の間を抜けたところで屁っ放り腰の男が声をかけた。

「あ、待ってください。そ、そのベルトに仕込んでるナイフと袖に隠した暗器も取外すようにお願いします」

 気づかれた。巧妙に隠した暗器を見破られたのはこれが初めてだった。例えヨボヨボの老人だとて油断せずに武装をしていた男の体から、鍛え抜いた肉体以外の武器がすべて取り除かれた。アンノウンに渡した時とは違い、ナイフ類はそのまま床に落とした。

「……良い目をしている。それほどの洞察力は出会った中で最高峰のものだ」

「ど、洞察力っていうか……装備している項目が見えたというか……」

 何を言っているか分からなかったが、謙遜していることだけは分かった。「行け」というブレイドの突き上げに公爵は逆らうことなく進む。しばらく歩いていると、部屋から明かりが漏れ出ているのが見えた。そこに誘導されているのが分かった公爵はすぐ後ろにいるブレイドに話しかける。

「妻は……アイナは無事なのか?」

「安心しろ。ラルフさんが通信機で脅していたことはしていないし、ラルフさんは指一本触れちゃいない」

「それは重畳ちょうじょう。ところでもう一人……私の娘、アルルは息災か?」

「……」

 どう答えるべきか迷ったような逡巡を感じる。

「……心配無用。とだけ言っておく」

「そうか……」

 聞くだけのことを聞いた公爵はドアノブに手をかけると、徐々に力を入れて扉を開いた。
 開いた先に待っていたのは、ドカッと太々しく三人掛けのソファに座るラルフが一人。公爵の登場にニヤリと笑うゲス野郎。公爵の固く握られた震える手が今の心境を如実に表している。

「こうして対面で会うのは初めましてだなぁ公爵様?いや、ジラル=Hヘンリー=マクマイン。待ってたぜ、この時をよ……」

「……それはこちらのセリフだ。ラルフ……いや、クソ野郎」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...