一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

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第十二章 協議

第十四話 ケルベロス

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「ふむ……化け物だな」

 遠目でミーシャたちの様子を見ていたロングマンは素直な感想を述べた。

「観戦してる場合かよ!!こっちに集中しろって!!」

 テノスはロングマンに注意する。
 そう、こちらもこちらで大変だ。相手はケルベロス。山のように大きな犬の怪物。

「ヴガァァッ!!」

 熱された涎が草原を燃やす。全身から立ち上る炎と相まって、青々と美しいエメラルドのような自然が焦土と化しそうだ。こっちには人族が勢ぞろいし、古代種エンシェンツとの戦いに身を投じていた。魔王たちですら千年もの間、戦いを避けてきた最強の獣に人族で挑むなど無謀が過ぎる。一応魔族もいるにはいるが、ジュリアは近接格闘だし、デュラハン姉妹もやはり近距離での戦い。魔法もちょこっと使えるが、その程度では無意味だ。

「ちょっ……!おいおい。俺はどうすれば良いんだよ!」

 正孝は大声で叫び、無力さに打ちひしがれる。彼の特異能力は炎を発生させ、それを変幻自在に操ること。しかし相手は火に包まれた野獣。燃え盛る炎に、正孝の手から発生させた篝火かがりび程度では対抗できない。なりふり構わず能力を使ったところで効果がないどころか、さらなる火力アップを支援しているようなものだ。
 そんな正孝の苦悩に気づいたガノンは大声で指示する。

「……馬鹿野郎!能力を使わねぇでどうするってんだ!囮になって首の一本を釘付けにしろ!!」

 首は三つ。その内の一本でも別の方を向いていれば隙が生まれる。自分の能力が利用されることを恐れていた正孝にとって、この案はまさに光明と呼べるものだった。「分かった!」の掛け声の後、即座に左に回って右端の首に火をかける。

「あまり良い策とは言えんな。あれでは海に小便しているのと変わらん」

「そう?何もしてないよかマシでしょっ!」

 ティファルは鞭を取り出して思いっきり振った。第二の地獄”黒縄”。無限に伸びる鞭は左端のケルベロスの顔を叩いた。

 パシィンッ

 空気が爆ぜる音がここまで聞こえる。鞭の先端が音速を超えた音だ。

「ゴゥッ!?」

 ケルベロスは耳元で爆ぜた音に驚いて一瞬顔を背ける。当たった鞭によるダメージはほとんどない。精々虫に刺された程度。

「言うではないか。しかしな……こう言ってはなんだが決定打に欠けるとそう思わないか?」

 ティファルは怪訝な顔でロングマンを見やる。目があったロングマンは顎で別のところを指した。その方向にいたのはブレイド。その手に持ったガンブレイドの砲撃でケルベロスに対抗しようとするが、どうもまとわりつく炎が魔法を打ち消しているように見える。ブレイドもそれに気づいて炎がまとわりついていない真っ黒な体毛に撃ち込む。
 だがそれは安易な考えに過ぎない。そもそも炎に魔法を無力化するような能力があるのではなく、その炎から生み出される熱波が魔法の効果を薄めている。魔王すら粉砕する魔力砲による攻撃はケルベロスにとって小突かれた程度。遠距離攻撃であり、突破力もピカイチなガンブレイドの攻撃は決定打になり得ない。
 別の場所では第三の地獄”衆合”を持つジョーカーがそのダガーナイフの特異能力”重力操作”で対抗するも、規格外の身体能力の前にはほとんど意味がなく、局地的なブラックホールを発生させても、まとわりついている炎が少し吸い込まれる程度で痛痒を感じていない。
 他の連中も何とかして効かせる攻撃方法を模索するが、そのどれもが失敗に終わっている。

「あの大剣使いが言っていた陽動作戦。やったところで時間稼ぎにしかならんが……」

 ロングマンは刀を鞘から抜きざまに飛ぶ斬撃を放つ。最近開発した飛ぶ斬撃”火喰い鳥”。アウルヴァングの得意技を基礎に作り上げられたこの技は、射程距離が長く、おまけに切れ味も抜群だ。秘剣”火光かぎろい”ほどの威力はないが、ロングマンの最近のお気に入りだ。

 ガィンッ

 真ん中の顔の鼻先の辺りに直撃したが、とは言えお気に入りであることと威力は関係ない。それはロングマンも承知で、牽制と陽動にこの技を選んだ。一応、首はそれぞれの方を向いて陽動作戦は成功。あとはこの状態を維持しつつ決定打を探す。見つかりそうもない決定打を模索して、倒しにかかるために苦心する。

「何々?悩むことがあんの?」

 ロングマンが戦っているすぐ横でラルフが話しかけた。

「お前……では、どうするというのだ?ラルフよ」

「簡単なことだ。要は時間稼いでバトンタッチ。ミーシャあたりがとっとと終わらすことを願うが、そうもいかねぇだろうってことでしばらくちょっかいを掛ける。あっちの戦いが終わるまで頑張んのはキツイだろうけど、確実に倒すなら任せるのが一番だ。どうだこの作戦は?」

「他力本願。策の内なのかどうかさえ疑問だが、我らの攻撃では致命傷はおろか擦り傷を与えるのでやっと。であるなら、高望みはやめてそれも策と割り切らねばならぬであろうな……」

 ロングマンとラルフはニヤッと笑いながらお互いを見る。二人の意見が合致した。出来ればミーシャを待ち、無理ならくろがねでもティアマトでも、攻撃が通る強者が来てくれれば良い。

「しかし、あんたは強いんだろ?手をこまねいてるなんて聞いた話と違うが……」

「相手が人間大なら、そう考える必要もなく攻撃するが奴は違う。それにあの火が面倒だ。せっかくの一張羅を燃やされては困るのでな」

「え?あ、そっち?」

 思ってもみなかった俗物的な趣向にきょとんとしてしまう。

「「「ゴォンッゴォンッ!!」」」

 三つ首が一斉に吠えて威嚇する。まだふざける余裕もあったが、それもいつまで持つか。そう、誰もが気にすべきことが一つあった。
 ケルベロスは未だ攻撃を仕掛けていない。
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