一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

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第十二章 協議

第二十九話 ドラゴンズゲート

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 ケルベロスに攻められたラルフたちを遠目で見ていたアンノウンは、ジニオンとラルフの場所を交互に見る。

「……不味い状況になったね」

 ジニオンとの戦いは膠着状態に陥っていた。歩とアンノウンが参戦したことでガノンの負担は減ったが、ジニオンの特異能力のせいで全く傷が付かない。アンノウンの斬撃は刃物を通さず、歩の攻撃もどこ吹く風だ。結局ガノンの大剣だけが頼みの綱となる。
 そんな中に現れたケルベロスの驚異。戦いは振り出しに戻った形だ。

「やるしかないか……歩!」

「な、なに?!」

「召喚魔法を使う!後は任せても良い?!」

「あ、はい!了解しました!」

 歩はウィーから作ってもらったロングソードを構えてガノンの攻防を見据える。ジニオンとの嵐を呼ぶような戦闘風景にビビって腰が引けるが、アンノウンの分まで任されたことが歩の心を鼓舞する。ガノンの体力を見極めて歩はその戦闘に滑り込み、ジニオンに隙を与えない。
 それを見たアンノウンは安心してその場を任せ、召喚魔法もとい創作魔法を展開する。組むのに時間がかかる魔法陣は今回に限ってはそこまで時間が掛からない。それというのも、ケルベロス戦を見越して組んでいた魔法陣を再度形成するだけだ。

 ブゥン……

 魔法陣はアンノウンの足場に展開され、赤く光り輝く。

「やっぱこれだよね」

 アンノウンはニヤリと笑って以前試したお気に入りの召喚獣を呼び寄せた。



 ノーンを囲んでいたメラ、エールー、イーファは動けない。ノーンに攻撃を仕掛けたルールーは倒れるという、無情で無常な状況に恐怖を感じたのが原因だった。
 自分たちの能力では決して倒せない。このままでは戦況は変わらず、蹂躙されるのみだ。

「……来ないの?」

 ノーンも痺れを切らしてきた。ここで仕掛ければルールーの二の舞。仕掛けなくてもいずれノーンが動いて終了。ならば結局動くしかない。
 メラは先の恐怖から立ち直り、エールーとイーファに目配せする。同じ気持ちだったのか、ふたりもその視線に頷き合う。その視線を確認したノーンはニヤリと笑った。

「そう来なくっちゃっ」

 楽しそうに槍をクルッと回して、デュラハンの攻撃を待つ。
 しかしデュラハンの攻撃は来なかった。来たのは背後から突然飛んで来たドラゴンの存在だった。

「は?」

 ガチィンッ

 牙を合わせた音が鳴り響く。ノーンは回避し、ドラゴンはそのまま飛翔して空に上昇していく。

「……は?なにあれ?」

 ノーンが驚き戸惑っている最中、メラが追撃する。

「ちょっ……!?」

 ブンッと勢い良く空打った剣が宙空を彷徨う。ノーンはさらに前方に飛んで回避し、今度はエールー、イーファと立て続けの猛撃も回避した。

「ちょちょっ……!待ってよ!!」

 ゴロゴロと転がって間合いを開けるとノーンは手を突き出して三人を制止する。

「今ドラゴンが通り過ぎたのよ?!なんで攻撃するの!?普通仕切り直しでしょうよ!!」

「あれは私たちの味方ですわ」

「は?え……?ドラゴンが?」

 訳も分からず攻撃してきたであろうドラゴンに目を向けた。すると空にはいつの間にか多くのドラゴンが食べ物を求めるように旋回しているではないか。一匹、二匹、また一匹とその数はどんどん増えていく。

「戦況は多少変わりましたわね」

「しかし姉様、このまま接近しても勝てません。一度後退すべきではございませんこと?」

「アンノウンさんのお陰で助かりました。わたくしもここしかないと思います」

 メラは二人の意見を聞き入れる。

「次のドラゴンの攻撃でこの場を離れましょう。わたくしについて来なさい」

「「はいっ!」」



 ロングマンとゼアルのところにも無数に飛び交うドラゴンが襲って来た。

「ぬっ……何と間の悪い……決着の時に」

 ロングマンはそうは言いつつ、これは好機だと下がる。同じ場所で戦って来たゼアルにも等しく襲って来たドラゴンを、混乱も困惑も迷いもせずに一刀のもと両断する。
 ドラゴンは為す術もなく半分になり、見るも無残な姿へと変化した。すぐに目でロングマンを探す。

「逃げたか……」

 もう少しで勝てたなど余計なことは言わない。ゼアルはドラゴンの様子を確認しながらロングマンの背後を追った。



「「「ゴォンッゴォンッ!!」」」

 ケルベロスは纏わりついてくるドラゴンに蚊トンボが耳元を飛ぶような煩わしさを感じる。小さなドラゴンたちはケルベロスの攻撃を受けるとさっさと消滅する。しかし、ケルベロスが消す量よりも、増える量の方が圧倒的に多い。虫にたかられているような見た目に、ゾッとする者も少なくない。

「た、助かった……」

 ラルフはすんでのところでドラゴンたちに助けられた。今の内にとコソコソケルベロスから間合いを開ける。
 チラッとアンノウンの方を見ると、光る地面の上に立つ人影が見える。その上に浮かんでいるのは巨大な鏡。

「あれが”ドラゴンズゲート”って奴か……」

 前回の戦いで用いたアンノウンが誇る最強の召喚獣。鏡から無限にドラゴンを召喚出来る。体は小さく、防御力もほとんどないが、内包する力はかなりのもの。グラジャラクの再現である。

「よっしゃ!このままケルベロスをやっちまえ!」

 ラルフはウッキウキで手をかざしたが『ダメです』の声にすぐに手を下ろした。

「今の声……サトリ?聞け、サトリ。何でいきなり襲って来たのかは知らないが、このままじゃいずれ俺たちがくたばる。奴が攻撃して来た以上、反撃しないわけにはいかない。正当防衛って奴さ」

『……』

 ラルフの声にすぐ返答するかと思ったが、沈黙で返されたラルフは少し焦った。

「……えっと……あ、も、尤もお前が止められるってんなら話は別だよ?こっちだって攻撃されるから反撃してるんであって……」

『分かりました』

 分かってくれたと胸を撫で下ろす。

『それでは少し体から離れます』

 それを聞いた途端ラルフの体は硬直した。

「……えっ?!」

 サトリの言葉を反芻してまた焦りがぶり返す。それはラルフにとって死刑宣告と同じだった。
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