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第十三章 再生
第十一話 蘇る闘志
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「待てガノン!!」
ペルタルクでの一幕。ペルタルク丘陵の一角に天幕を張り、交渉に臨んでいたマクマイン公爵。その身を守る白の騎士団と公爵の私兵、黒曜騎士団が駐屯していた。そこに訪れたのは朗報である。蒼玉との交渉が戦争の終結を生んだ。これより魔族は仲間として迎え入れられ、より強固な平和へと邁進する。
そんな時に白の騎士団の間で摩擦が起こっていた。ガノンはこれからの職務を全て放棄し、仲間と共に天幕から姿を現した。
「……待たねぇよボケ……俺は言ったはずだぜ?魔族と仲良しこよしはやらねぇってよ。俺なんぞ放っておいて好きにしろ」
「そうはいかない、私たちには”人類の剣”としての責務があるのだからな」
「……知るか」
ガノンが踵を返し、アリーチェや正孝、そしてルカもその後に続こうとする。その背中にゼアルは声を荒げた。
「確かに!敵対関係にあった魔族と突然仲良くしろなど虫が良い話だ!しかしこれは人族のこれから先、千年王国の第一歩と言える!ようやく人々が心のそこからの平和を得られるのだぞ?!これほどの機会、みすみす逃す手はない!!」
人族が安心して暮らせる世界。魔障壁などに頼らず生きていける世界。歴史的な和解は数々の危機を帳消しにする。文字通り世界が変わる。ガノンは振り返って左右に大きく手を広げた。
「……いいや!俺なら逃すね!世界が平和になっちまったらどうやって稼ぐ?手前ぇは騎士の位があるからどうとでもなるだろうが、俺たちには無ぇ。平和になられたら稼ぐ当てがねぇんだよ。後、俺は魔族が嫌いだしな!」
「……ただ式典に出席するだけだ。この平和協定の席には数多くの要人が参加することになる。要人の身を守り、無事に式典が終われば貴様の報酬と自由を私から打診する。それまでは行動を共にしてくれ、この通りだ」
ゼアルは頭を下げる。
「……手前ぇの話だけか?俺の話を聞いてなかったのか?……変わっちまったなゼアル。手前ぇはそんな一方的な奴じゃなかったってのに……」
寂しいような失望の眼差しを向ける。
「ガノンさぁ……いざ自分が押し付けられる側になった時に相手の良心を突つく真似はやめたら?向こうがずっと譲歩して来たのに、ここぞって時に裏切るのは良く無いと思うんだけど?」
「……アリーチェ、手前ぇは誰の味方だ?というか俺は押し付けなんてしてねぇだろ、ふざけんな」
いつにも増して怒りを湛えた目でアリーチェを見る。「おー怖っ……」とアリーチェも引き気味だ。
「なぁ、もういいから行こうぜ。退屈過ぎんだよ、ここ」
「僕も賛成ですねぇ。ところでゼアル様、ガノン様を引き止められる理由は職務でしょうか?それとも人恋しいからでしょうか?」
正孝の言葉に被せるように質問するルカに冷たい視線を送る。(職務に決まってんだろホモ野郎)と正孝は心の中で罵倒した。
「両方だ」
ゼアルの口から思わぬ一言が飛び出し、ガノンを含めたこの場の全員が目を見開く。
「正直こんな気持ちに陥ったのは生まれて初めてだ。心に埋まらない穴が出来たように頼りない。ドゴールもルールーもアウルヴァングも部下たちも先に逝ってしまった。それなのに平和協定……正直歯痒い気持ちだ。部下の仇を取れぬ現状に少々落胆している。そんな中、さらに仲間が欠けるような……貴様が出て行ってしまうのは個人的に嫌なのだ。子どもっぽくはなるが、どうしようもない。だからこそせめて式典までは居て欲しいんだ」
悲しみを湛えた瞳。仲間の死の仇と魔族との結託の合間で揺れ動く心。痛々しい。
神に力を引き出され、上乗せされて人類最強となった男も情に弱い。ガノンの知る中でこれほど弱々しいゼアルを見たのは初めてのことだった。体調を崩した時も気丈に振る舞う男の哀愁に居た堪れなくなる。
「……わぁったよ。今回だけだぞ」
ガノンの返答にルカは奥歯を噛み締め、正孝は諸手を挙げた。
「ちょっ……ふざけんなよ。風俗なしとかありえねぇ……なぁ、ここに一発ヤレそうな姉ちゃんを呼べねぇかな?」
「知りませんよそんなことは……そんなことよりもゼアル様でしょう。彼もまたガノン様に魅了された一人。まさかこれほどの恋敵が居ようとは思いも寄らなかったです……」
各々で好き勝手なことを喚き散らしている。アリーチェはゼアルの機転に感心する。
(情に厚いガノンの性格を把握済みってことね。これなら当初の予定通り式典に参加させられる。ガノンも情に絆されやすいって言うか……)
ガノンは心底呆れ返った様子だが、逆手に取ってまで一緒に居たかったのだと思えば、第三者視点から見てほっこりする。ゼアルの可愛い部分が見られたような気がしてアリーチェは一人得した気分だった。
「わがままを言ってしまってすまない。本当はもっと気丈に振る舞う予定だったのに、まさかこんなことに……」
「……死んだ奴らに引っ張られんなよ?手前ぇはメインディッシュにとってあんだよ。協定だの何だの、いざこざが終わったら一回手合わせしな。報酬と自由と手合わせだ。それで良しとする」
「ああ、恩に着るぞ」
ゼアルの顔は少しだけ生気を取り戻した。儚い。つい先日まで何不自由なく身も心も充実していたはずのゼアルが何故ここまで落ちぶれたのか。やはり協定が悪いのだろう。ゼアルとて魔族を殺したいはずだ。魔族以上に殺したいのは八大地獄の面々かもしれないが、定期的に戦える場所がなくなれば人類最強の腕前をどこで披露しようというのか?魔族が敵であることを小さな頃から植え付けらえて来た自分に折り合いがつかなくなっているのではないか?
考えたところで答えは出ない。
その時、ゼアルの常備して居た通信機に連絡が入った。突然震え出して主張する通信機を取り出して起動させた。
「何……だ?」
そこに映し出された存在を見るなりゼアルは唖然とする。それもそのはずだ。死んだ男が映れば驚愕に彩られる。
『あれ?ゼアルじゃん。何だよ、マクマインに直通じゃなかったのか?……え?ダイヤル?なにそれ?……はー……色々進化してんのねぇ』
「き……貴様……」
『おう、悪いなゼアル。お前には用事が無いから一旦切るわ。また気が向いたら掛けるから。そんじゃ』
シュンッ……
ホログラムが消えて静寂が立ち込める。
「おい、あれって……」
「死んだはずよね?……幻術?それともアンデッド?」
「身代わり?それとも僕と同じ人形遣いが人形をラルフであると見立てて装っているとか?」
「……馬鹿どもが。単純に死んでなかったってことだろうがよ。どうやったか知らねぇが、ピンピンしてやがったぜ」
ガノンたちは各々の見解を述べる。
「ガノンの言う通りだ」
ゼアルの声がやけに響いて聞こえた。
「奴は隠れ潜んで生きていたに違いない。卑怯卑屈を具現化させたような男だからな……私が引導を渡してやる」
ザッと踵を返す。あれだけ必死にガノンを止めていたのが嘘のように見向きもせずに歩き去る。その目には闘志が宿り、心なしか足取りも軽く見えた。
「なるほど……ゼアル様には既に心に決めた方がいらっしゃったのですね。ガノン様に言い寄っていたのは本当に寂しさからに他ならないと、そういうことですか……」
「……馬鹿言ってんなよルカ。って、言いてぇとこだが、あながち間違いでも無さそうだな……」
ガノンは肩を竦めた後、仲間を引き連れて元の天幕に戻っていった。
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そんな時に白の騎士団の間で摩擦が起こっていた。ガノンはこれからの職務を全て放棄し、仲間と共に天幕から姿を現した。
「……待たねぇよボケ……俺は言ったはずだぜ?魔族と仲良しこよしはやらねぇってよ。俺なんぞ放っておいて好きにしろ」
「そうはいかない、私たちには”人類の剣”としての責務があるのだからな」
「……知るか」
ガノンが踵を返し、アリーチェや正孝、そしてルカもその後に続こうとする。その背中にゼアルは声を荒げた。
「確かに!敵対関係にあった魔族と突然仲良くしろなど虫が良い話だ!しかしこれは人族のこれから先、千年王国の第一歩と言える!ようやく人々が心のそこからの平和を得られるのだぞ?!これほどの機会、みすみす逃す手はない!!」
人族が安心して暮らせる世界。魔障壁などに頼らず生きていける世界。歴史的な和解は数々の危機を帳消しにする。文字通り世界が変わる。ガノンは振り返って左右に大きく手を広げた。
「……いいや!俺なら逃すね!世界が平和になっちまったらどうやって稼ぐ?手前ぇは騎士の位があるからどうとでもなるだろうが、俺たちには無ぇ。平和になられたら稼ぐ当てがねぇんだよ。後、俺は魔族が嫌いだしな!」
「……ただ式典に出席するだけだ。この平和協定の席には数多くの要人が参加することになる。要人の身を守り、無事に式典が終われば貴様の報酬と自由を私から打診する。それまでは行動を共にしてくれ、この通りだ」
ゼアルは頭を下げる。
「……手前ぇの話だけか?俺の話を聞いてなかったのか?……変わっちまったなゼアル。手前ぇはそんな一方的な奴じゃなかったってのに……」
寂しいような失望の眼差しを向ける。
「ガノンさぁ……いざ自分が押し付けられる側になった時に相手の良心を突つく真似はやめたら?向こうがずっと譲歩して来たのに、ここぞって時に裏切るのは良く無いと思うんだけど?」
「……アリーチェ、手前ぇは誰の味方だ?というか俺は押し付けなんてしてねぇだろ、ふざけんな」
いつにも増して怒りを湛えた目でアリーチェを見る。「おー怖っ……」とアリーチェも引き気味だ。
「なぁ、もういいから行こうぜ。退屈過ぎんだよ、ここ」
「僕も賛成ですねぇ。ところでゼアル様、ガノン様を引き止められる理由は職務でしょうか?それとも人恋しいからでしょうか?」
正孝の言葉に被せるように質問するルカに冷たい視線を送る。(職務に決まってんだろホモ野郎)と正孝は心の中で罵倒した。
「両方だ」
ゼアルの口から思わぬ一言が飛び出し、ガノンを含めたこの場の全員が目を見開く。
「正直こんな気持ちに陥ったのは生まれて初めてだ。心に埋まらない穴が出来たように頼りない。ドゴールもルールーもアウルヴァングも部下たちも先に逝ってしまった。それなのに平和協定……正直歯痒い気持ちだ。部下の仇を取れぬ現状に少々落胆している。そんな中、さらに仲間が欠けるような……貴様が出て行ってしまうのは個人的に嫌なのだ。子どもっぽくはなるが、どうしようもない。だからこそせめて式典までは居て欲しいんだ」
悲しみを湛えた瞳。仲間の死の仇と魔族との結託の合間で揺れ動く心。痛々しい。
神に力を引き出され、上乗せされて人類最強となった男も情に弱い。ガノンの知る中でこれほど弱々しいゼアルを見たのは初めてのことだった。体調を崩した時も気丈に振る舞う男の哀愁に居た堪れなくなる。
「……わぁったよ。今回だけだぞ」
ガノンの返答にルカは奥歯を噛み締め、正孝は諸手を挙げた。
「ちょっ……ふざけんなよ。風俗なしとかありえねぇ……なぁ、ここに一発ヤレそうな姉ちゃんを呼べねぇかな?」
「知りませんよそんなことは……そんなことよりもゼアル様でしょう。彼もまたガノン様に魅了された一人。まさかこれほどの恋敵が居ようとは思いも寄らなかったです……」
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(情に厚いガノンの性格を把握済みってことね。これなら当初の予定通り式典に参加させられる。ガノンも情に絆されやすいって言うか……)
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「ああ、恩に着るぞ」
ゼアルの顔は少しだけ生気を取り戻した。儚い。つい先日まで何不自由なく身も心も充実していたはずのゼアルが何故ここまで落ちぶれたのか。やはり協定が悪いのだろう。ゼアルとて魔族を殺したいはずだ。魔族以上に殺したいのは八大地獄の面々かもしれないが、定期的に戦える場所がなくなれば人類最強の腕前をどこで披露しようというのか?魔族が敵であることを小さな頃から植え付けらえて来た自分に折り合いがつかなくなっているのではないか?
考えたところで答えは出ない。
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「き……貴様……」
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