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第十三章 再生
第十三話 人魔同盟(仮)
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ミーシャの魔力砲により、存在ごと抹消されたはずのラルフ。その光景を直接目の当たりにした蒼玉は唇を震わせながら呟く。
「……あり得ない……」
というより、あり得てはいけない。世界最強の攻撃力を有するミーシャの攻撃を防ぐ、または回避したなどあってはならない。それにラルフはあの場から一歩も動いていなかった。あの状態から考えられる結末は消滅より他にない。
マクマインは蒼玉へと視線を移す。その目は懐疑的であり、先ほどまでの友好的な雰囲気は鳴りを潜めた。だがマクマインもバカではない。蒼玉のどうしようもなく狼狽えた姿を見れば、蒼玉が嬉々として告げた朗報は早とちりや勘違い、若しくは勘違いさせる何かでラルフの死んだふりを見抜けなかった。ならば自分が同じ状況に居ても勘違いした可能性が高い。
一瞬目を瞑って心を落ち着けると、ゆっくり睨みつけるように瞼をこじ開けた。
「……劇的な登場だな。どうやった?」
『あっあ~♪やっぱ俺が死んだって思い込んだな?良いね~。死んだ死んだ詐欺を後二回は使えるぜ』
ガンッ
マクマインは机を思いっきり殴った。重厚な黒い机に凹みが入る。思ったより硬かったのか、殴った手から血が滲んでいる。
「答える気がないか……なら何のために通信をした?」
『兵士を締め上げたらポロっと手から落ちてな?誰につながるのか試して見たらあらビックリ。こんな雲の上の連中が出てくるって分かってたら正装を準備したのに』
「……ふふ、あなたの言葉は軽いですねぇ。我々をどれだけおちょくれば気が済むのか……開頭して確認したいところですよ」
『おいおい、そう怒るなって。俺は喧嘩したくてこのおもちゃを握ったわけじゃねぇぜ』
ラルフはヘラヘラして二人の逆鱗に触れる。マクマインは眉を吊り上げ、蒼玉は邪悪な笑みを浮かべた。決して許しはしないと感情を剥き出しにしている。
『待て待て、何でそんなにキレる?俺が何したっていうんだ?』
「生きているだけで不快だ」
「ええ、死んでもらえると助かるのですが……」
『そりゃ無理ってもんだ。やっと面白くなってきたってのにここで終われるかよ』
「……貴様、今どこに居る?」
『あんたの兵士を駐屯させている場所だよ。どこか見当はつくだろ?……いや、つまらねぇこと言った。ここはアルパザだよ。俺たちの拠点を我が物顔で使ってる兵士達にお仕置きしてやったのさ』
ラルフは肩を竦ませて自慢げに答えた。アシュタロトは不思議そうな顔で口を開いた。
『ふ~ん、素直じゃん。何で?』
『何でだって?逃げ回るのに疲れたのさ。死ぬんなら魔族の心配なんざしなくて良いアルパザで余生を過ごそうと思ってよ。つーわけで俺たちのことは放っておいてそっちはそっちで仲良くしてな。あ、そうだ。ここの自治権を俺たちに渡して兵士は全員帰らせろ。俺たちに干渉しない限りは俺たちから仕掛けることはないぜ。後、これは言わなくたって分かってると思うが、もちろん孤立させるんじゃなくて今まで通り流通経路を残してな。国民が飢えるのだけは見過ごせねぇし?』
蒼玉はスッと立ち上がる。
「大いに干渉致しましょう。そこから動くことなくお待ちください。アルパザを焦土と化し、愚か者どもが二度と芽吹くことのないよう徹底的に磨り潰します」
『中々良い脅しだが、何か忘れちゃいないか?あんたの部下を俺たちの要塞で預かってる。俺たちへの敵対行為は二人の命に関わるってことを……』
「どうぞ殺してください。捕まった以上、簡単には戻ることは出来ないと踏んでおりましたが、やはり無理でしたね。その身を以て人魔同盟の礎になりなさい」
『人魔同盟!?あっはっはっ!こりゃお笑いだ!表面だけの関係じゃ破綻は見えてる。俺とミーシャくらいの仲じゃなきゃ内乱は避けられないぜ?』
ビキッメキッ……
蒼玉の方から指の骨を鳴らしたような音が聞こえる。その顔には太い血管がこれでもかと主張し、これ以上ない憎悪を湛えていた。ミーシャを引き合いにされたのが何より感情をつついたのだと思われる。
「あなた風情と彼女を一括りにするなど万死に値します。今なら謝罪を受け入れましょう。いいえ、今すぐ頭を下げて謝りなさい」
『あーい。ごめーん』
「貴様っ!!」
公爵は通信機を投げる。ガチンッと床に向かって思い切り投げつけていた。未だ起動し続ける通信機を前に肩で息をする姿は、怒りによる興奮が理性を奪ったせいだ。叩きつけられ、傷がついても通信機は難なく起動している。
『……待ってるぜ』
その言葉を最後に通信は終了した。
「罠だ!かつてこれほど分かりやすい挑発があったか?あの間抜けが小さい脳で考えた誘き出し作戦。付き合う必要などない」
「……それはあなたの本心ではありませんね。また取り逃がすとでも思っているのでしょうか?罠だろうが何だろうが、当初の予定は変えません。圧倒的勢力で進軍させ、ラルフを完全に葬り去るのです。このタイミングで通信が来たのは幸運と呼ぶべきでしょう。早速、仮の人魔同盟を結成し、アルパザに向けて出発しなければ……」
「それが狙いだったら?我らの兵力をモノともしない自信があるからこそ通信を行ったのなら?古代竜の介入はないと言い切れるか?」
「そこまで不安を感じているなら仕方ありません……本当はあまり気乗りはしませんが、ミーシャを出しましょう。古代竜への牽制になりますし、何より最近体が鈍ると嘆いていましたし」
「……ラルフを仕留め損ねたとはいえ実力は確かだからな。こちらはゼアル他、白の騎士団をアルパザに派遣して駐屯している部下たちとの合流を……」
マクマインの采配で兵士たちの持ち場が決まっていく。思うことはあれど、こうしてラルフ一行との対決に備える二人の目はやる気に満ちていた。
見据える先は人魔同盟。理想郷を夢見る全ての種族に祝福を……。
「……あり得ない……」
というより、あり得てはいけない。世界最強の攻撃力を有するミーシャの攻撃を防ぐ、または回避したなどあってはならない。それにラルフはあの場から一歩も動いていなかった。あの状態から考えられる結末は消滅より他にない。
マクマインは蒼玉へと視線を移す。その目は懐疑的であり、先ほどまでの友好的な雰囲気は鳴りを潜めた。だがマクマインもバカではない。蒼玉のどうしようもなく狼狽えた姿を見れば、蒼玉が嬉々として告げた朗報は早とちりや勘違い、若しくは勘違いさせる何かでラルフの死んだふりを見抜けなかった。ならば自分が同じ状況に居ても勘違いした可能性が高い。
一瞬目を瞑って心を落ち着けると、ゆっくり睨みつけるように瞼をこじ開けた。
「……劇的な登場だな。どうやった?」
『あっあ~♪やっぱ俺が死んだって思い込んだな?良いね~。死んだ死んだ詐欺を後二回は使えるぜ』
ガンッ
マクマインは机を思いっきり殴った。重厚な黒い机に凹みが入る。思ったより硬かったのか、殴った手から血が滲んでいる。
「答える気がないか……なら何のために通信をした?」
『兵士を締め上げたらポロっと手から落ちてな?誰につながるのか試して見たらあらビックリ。こんな雲の上の連中が出てくるって分かってたら正装を準備したのに』
「……ふふ、あなたの言葉は軽いですねぇ。我々をどれだけおちょくれば気が済むのか……開頭して確認したいところですよ」
『おいおい、そう怒るなって。俺は喧嘩したくてこのおもちゃを握ったわけじゃねぇぜ』
ラルフはヘラヘラして二人の逆鱗に触れる。マクマインは眉を吊り上げ、蒼玉は邪悪な笑みを浮かべた。決して許しはしないと感情を剥き出しにしている。
『待て待て、何でそんなにキレる?俺が何したっていうんだ?』
「生きているだけで不快だ」
「ええ、死んでもらえると助かるのですが……」
『そりゃ無理ってもんだ。やっと面白くなってきたってのにここで終われるかよ』
「……貴様、今どこに居る?」
『あんたの兵士を駐屯させている場所だよ。どこか見当はつくだろ?……いや、つまらねぇこと言った。ここはアルパザだよ。俺たちの拠点を我が物顔で使ってる兵士達にお仕置きしてやったのさ』
ラルフは肩を竦ませて自慢げに答えた。アシュタロトは不思議そうな顔で口を開いた。
『ふ~ん、素直じゃん。何で?』
『何でだって?逃げ回るのに疲れたのさ。死ぬんなら魔族の心配なんざしなくて良いアルパザで余生を過ごそうと思ってよ。つーわけで俺たちのことは放っておいてそっちはそっちで仲良くしてな。あ、そうだ。ここの自治権を俺たちに渡して兵士は全員帰らせろ。俺たちに干渉しない限りは俺たちから仕掛けることはないぜ。後、これは言わなくたって分かってると思うが、もちろん孤立させるんじゃなくて今まで通り流通経路を残してな。国民が飢えるのだけは見過ごせねぇし?』
蒼玉はスッと立ち上がる。
「大いに干渉致しましょう。そこから動くことなくお待ちください。アルパザを焦土と化し、愚か者どもが二度と芽吹くことのないよう徹底的に磨り潰します」
『中々良い脅しだが、何か忘れちゃいないか?あんたの部下を俺たちの要塞で預かってる。俺たちへの敵対行為は二人の命に関わるってことを……』
「どうぞ殺してください。捕まった以上、簡単には戻ることは出来ないと踏んでおりましたが、やはり無理でしたね。その身を以て人魔同盟の礎になりなさい」
『人魔同盟!?あっはっはっ!こりゃお笑いだ!表面だけの関係じゃ破綻は見えてる。俺とミーシャくらいの仲じゃなきゃ内乱は避けられないぜ?』
ビキッメキッ……
蒼玉の方から指の骨を鳴らしたような音が聞こえる。その顔には太い血管がこれでもかと主張し、これ以上ない憎悪を湛えていた。ミーシャを引き合いにされたのが何より感情をつついたのだと思われる。
「あなた風情と彼女を一括りにするなど万死に値します。今なら謝罪を受け入れましょう。いいえ、今すぐ頭を下げて謝りなさい」
『あーい。ごめーん』
「貴様っ!!」
公爵は通信機を投げる。ガチンッと床に向かって思い切り投げつけていた。未だ起動し続ける通信機を前に肩で息をする姿は、怒りによる興奮が理性を奪ったせいだ。叩きつけられ、傷がついても通信機は難なく起動している。
『……待ってるぜ』
その言葉を最後に通信は終了した。
「罠だ!かつてこれほど分かりやすい挑発があったか?あの間抜けが小さい脳で考えた誘き出し作戦。付き合う必要などない」
「……それはあなたの本心ではありませんね。また取り逃がすとでも思っているのでしょうか?罠だろうが何だろうが、当初の予定は変えません。圧倒的勢力で進軍させ、ラルフを完全に葬り去るのです。このタイミングで通信が来たのは幸運と呼ぶべきでしょう。早速、仮の人魔同盟を結成し、アルパザに向けて出発しなければ……」
「それが狙いだったら?我らの兵力をモノともしない自信があるからこそ通信を行ったのなら?古代竜の介入はないと言い切れるか?」
「そこまで不安を感じているなら仕方ありません……本当はあまり気乗りはしませんが、ミーシャを出しましょう。古代竜への牽制になりますし、何より最近体が鈍ると嘆いていましたし」
「……ラルフを仕留め損ねたとはいえ実力は確かだからな。こちらはゼアル他、白の騎士団をアルパザに派遣して駐屯している部下たちとの合流を……」
マクマインの采配で兵士たちの持ち場が決まっていく。思うことはあれど、こうしてラルフ一行との対決に備える二人の目はやる気に満ちていた。
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