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第十三章 再生
第三十三話 生き残るとは……
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遠巻きに戦いを観戦していたルカは驚き戸惑った。
「これは一体……!?」
先程まで手足のように動いていた鎧人形たちが突然意に沿わない行動をし始めた。最初こそ指揮棒を振り間違えたかと自身のミスを疑ったが、振り間違いなどあり得ないほどに別行動をし始め、ルカは激しく動揺した。
自身の角を削り、その粉を入れた特性の薬品と水晶のタクトで人形を動かす荒業。
一角人の魂と呼べる角を使用する、文字通り身を削った技術はその方法も相まって、凄まじい精度となる。にも関わらず魔法が言うことを聞かないのは最早別の要因があると仮定すべきだ。
人形たちは脇目も振らずに一塊になり始める。最初は走って四体、五体が組んず解れつ金属音を仕切りに鳴らしていたが、その内に十、二十と増えていき、中心に折り重なるように跳躍してまで重なろうとしている。金属の山がこんもりと出来上がり、それでもワラワラと動いている。
「……んだ?これは……?」
意気消沈していたガノンもあまりの異様さに目を見張る。誰も説明できない状況に創造神アトムを名乗る女性がしたり顔でやってきた。
『ホーンの。この人形どもを借りるぞ?』
アトムはそれだけ言ってルカの真横を素通りし、金属の塊に向かってズンズン歩く。誰も呼び止められずに様子を見ていると、金属の塊は女性の通る道を作り中へと誘う。中心部分で立ち止まると金属が閉じて女性の姿は隠れた。
「おいおい、ありゃ一体何やってんだ?」
正孝も疑問を投げかける。アリーチェは首を横に振るだけで声も出ない。
ギギギギィ……
金切り音が鳴り響き、籠手や兜、胸当てや鉄靴などのパーツがバラバラに巨大な人型を作り始める。まず腕、頭、胴体部分、そして足。順々に形成され、ロボットのようにゆっくりと立ち上がった。目と思われる部分に黄色い光が灯った時、篭ったような声が鳴り響く。
『うむ、中々良い。血が廻るように魔力が隅々まで行き渡る。死体なんぞ比べようがないな』
アトムは動作確認をしながら喜びの声を上げる。巨大鎧の腕から人形の持っていた武器がポロポロと落ちる。武器が寄り集まって棍のように長い棒となった。しかし鋭利な剣が無数に寄り集まって出来ているので、敵に当たればズタズタになることは必至。
『アトムは相変わらずでっかいのが好きなんだにゃぁ』
アルテミスは呆れながら呟く。アトムの趣味趣向に呆れたのは何もアルテミスだけではない。
「見ろよあれ、誰がやったのかこれほど分かりやすい例もないぜ」
ラルフはカサブリア王国でのアトムの所業を思い出していた。アトムの威光でアンデッドを操り、より集めて出来たレギオン。あれほど巨大なレギオンは歴史上類を見ないだろう。それと全く同じことを金属鎧でやっただけというのは、やはり誰がやったかすぐにも勘付くというものだ。
「……ああ、あの時の……」
アンノウンも遅れて気付く。そしておもむろに前に出た。
「アンノウン、どうした?」
「借りがあるのさ。ファイアドラゴンのね。ヘル!フェンリル!」
召喚獣はアンノウンの気持ちを汲む。すぐさま戦闘態勢を取り、巨大鎧に向かって走り出した。アンノウンも行こうとするがそれはラルフが止めた。
「お前は行くな。アトムには”言霊”がある。ミーシャが蒼玉を相手にしている以上、アトムを止める手立てはない。俺じゃ戦いになんねーし」
「何言ってるの?どうしようもなくなった時はラルフが頼りなんだから。しっかりしてよ」
ラルフの肩を手のひらでポンっと叩いて離れた。アンノウンは言われた通りアトムの元には行かない。しかしラルフたちから少し距離を取って召喚獣の指示に徹する。歩はコソっとラルフに耳打ちした。
「アンノウンさん、今の何だか凄く女性っぽかったです。ずっと気を張って男性っぽく振舞ってたんですかね……?」
「お前らにとってはここが異世界なんだろ?だったら弱く振る舞ってちゃ場の空気に呑まれちまう。そうなったら奪われる側だ。それが見抜けてようが天然だろうが、適応能力が高い証拠だろうぜ」
そう思えば正孝の威張りようも、美咲が男に色目を使うのも、茂の媚びへつらいも、単に好き勝手やってるだけなのかと思っていたが、全てが適応のための行動だったのだと合点がいった。
ならば歩自身はどうだったかと思い返す。何もなかった。正孝に命令されるから、美咲に弄られるから、茂に虐められるから、巫女が自分を認めてくれたから、良い子で従順で同調しかしなかった。それは適応ではなく奴隷化である。懸命に生きようとしていた彼らを思えば、自分は何と矮小なことか。
そう思えばエルフェニアから出た時に、煩わしさから茂を巻いたことを後悔してしまう。共に行動していれば死ぬことはなかったのではないだろうか?ほんのわずかな違いだろうが、それが少し喉に刺さった小骨のように精神を乱す。
「ん?どうしたアユム、何て顔してんだよ。まだ終わってねーぞ?」
「え?いえ、その……あ、はいっ!」
出だしは最悪だったかもしれない。でも結果生きているのは茂ではなく歩だ。それが単なる運だったとしても、それを掴むことが出来たのは偏に日頃の行いだろう。自分の為すべきことをする。今出来ることを一生懸命やれば、いずれ実を結ぶものがある。それが何なのかは定かではないが、まずはこの戦いを乗り切ろう。ラルフたち仲間と共に。
『にゃははっ!その通りにゃ。まだ始まったばかりにゃよ?』
空から声が降ってくる。ラルフと歩を見下ろすのは惚けた神様。
「来たな?アルテミス。魔族に肩入れするなんて、お前はよっぽど負けたくねぇんだな」
『勝負に負けたい奴なんているわけないにゃ。ウチは当然の感性で行動しているのにゃ』
「ええ?天下のアルテミス様は博打も打てないのか?強い奴のおこぼれに預かって何が楽しいんだ?」
『……癇に障るガキだにゃ』
キィンッ
アルテミスの眼が光る。ラルフを睨みながら使用した能力”狂化”。これに睨まれた者は須らく理性を失い、不和を巻き起こす。だがラルフにはサトリの加護が付いている。神の能力は同一の存在によって打ち消される。
「……何だ?」
『チッ……負け犬が!ここでその命を散らしてやるにゃ!!』
風を切ってやってくるアルテミス。それに対してラルフは逃げるように走り出した。
「ちょっ……バカやめろって!!勝てるわきゃねーだろ!!」
……いや、逃げ出した。
「これは一体……!?」
先程まで手足のように動いていた鎧人形たちが突然意に沿わない行動をし始めた。最初こそ指揮棒を振り間違えたかと自身のミスを疑ったが、振り間違いなどあり得ないほどに別行動をし始め、ルカは激しく動揺した。
自身の角を削り、その粉を入れた特性の薬品と水晶のタクトで人形を動かす荒業。
一角人の魂と呼べる角を使用する、文字通り身を削った技術はその方法も相まって、凄まじい精度となる。にも関わらず魔法が言うことを聞かないのは最早別の要因があると仮定すべきだ。
人形たちは脇目も振らずに一塊になり始める。最初は走って四体、五体が組んず解れつ金属音を仕切りに鳴らしていたが、その内に十、二十と増えていき、中心に折り重なるように跳躍してまで重なろうとしている。金属の山がこんもりと出来上がり、それでもワラワラと動いている。
「……んだ?これは……?」
意気消沈していたガノンもあまりの異様さに目を見張る。誰も説明できない状況に創造神アトムを名乗る女性がしたり顔でやってきた。
『ホーンの。この人形どもを借りるぞ?』
アトムはそれだけ言ってルカの真横を素通りし、金属の塊に向かってズンズン歩く。誰も呼び止められずに様子を見ていると、金属の塊は女性の通る道を作り中へと誘う。中心部分で立ち止まると金属が閉じて女性の姿は隠れた。
「おいおい、ありゃ一体何やってんだ?」
正孝も疑問を投げかける。アリーチェは首を横に振るだけで声も出ない。
ギギギギィ……
金切り音が鳴り響き、籠手や兜、胸当てや鉄靴などのパーツがバラバラに巨大な人型を作り始める。まず腕、頭、胴体部分、そして足。順々に形成され、ロボットのようにゆっくりと立ち上がった。目と思われる部分に黄色い光が灯った時、篭ったような声が鳴り響く。
『うむ、中々良い。血が廻るように魔力が隅々まで行き渡る。死体なんぞ比べようがないな』
アトムは動作確認をしながら喜びの声を上げる。巨大鎧の腕から人形の持っていた武器がポロポロと落ちる。武器が寄り集まって棍のように長い棒となった。しかし鋭利な剣が無数に寄り集まって出来ているので、敵に当たればズタズタになることは必至。
『アトムは相変わらずでっかいのが好きなんだにゃぁ』
アルテミスは呆れながら呟く。アトムの趣味趣向に呆れたのは何もアルテミスだけではない。
「見ろよあれ、誰がやったのかこれほど分かりやすい例もないぜ」
ラルフはカサブリア王国でのアトムの所業を思い出していた。アトムの威光でアンデッドを操り、より集めて出来たレギオン。あれほど巨大なレギオンは歴史上類を見ないだろう。それと全く同じことを金属鎧でやっただけというのは、やはり誰がやったかすぐにも勘付くというものだ。
「……ああ、あの時の……」
アンノウンも遅れて気付く。そしておもむろに前に出た。
「アンノウン、どうした?」
「借りがあるのさ。ファイアドラゴンのね。ヘル!フェンリル!」
召喚獣はアンノウンの気持ちを汲む。すぐさま戦闘態勢を取り、巨大鎧に向かって走り出した。アンノウンも行こうとするがそれはラルフが止めた。
「お前は行くな。アトムには”言霊”がある。ミーシャが蒼玉を相手にしている以上、アトムを止める手立てはない。俺じゃ戦いになんねーし」
「何言ってるの?どうしようもなくなった時はラルフが頼りなんだから。しっかりしてよ」
ラルフの肩を手のひらでポンっと叩いて離れた。アンノウンは言われた通りアトムの元には行かない。しかしラルフたちから少し距離を取って召喚獣の指示に徹する。歩はコソっとラルフに耳打ちした。
「アンノウンさん、今の何だか凄く女性っぽかったです。ずっと気を張って男性っぽく振舞ってたんですかね……?」
「お前らにとってはここが異世界なんだろ?だったら弱く振る舞ってちゃ場の空気に呑まれちまう。そうなったら奪われる側だ。それが見抜けてようが天然だろうが、適応能力が高い証拠だろうぜ」
そう思えば正孝の威張りようも、美咲が男に色目を使うのも、茂の媚びへつらいも、単に好き勝手やってるだけなのかと思っていたが、全てが適応のための行動だったのだと合点がいった。
ならば歩自身はどうだったかと思い返す。何もなかった。正孝に命令されるから、美咲に弄られるから、茂に虐められるから、巫女が自分を認めてくれたから、良い子で従順で同調しかしなかった。それは適応ではなく奴隷化である。懸命に生きようとしていた彼らを思えば、自分は何と矮小なことか。
そう思えばエルフェニアから出た時に、煩わしさから茂を巻いたことを後悔してしまう。共に行動していれば死ぬことはなかったのではないだろうか?ほんのわずかな違いだろうが、それが少し喉に刺さった小骨のように精神を乱す。
「ん?どうしたアユム、何て顔してんだよ。まだ終わってねーぞ?」
「え?いえ、その……あ、はいっ!」
出だしは最悪だったかもしれない。でも結果生きているのは茂ではなく歩だ。それが単なる運だったとしても、それを掴むことが出来たのは偏に日頃の行いだろう。自分の為すべきことをする。今出来ることを一生懸命やれば、いずれ実を結ぶものがある。それが何なのかは定かではないが、まずはこの戦いを乗り切ろう。ラルフたち仲間と共に。
『にゃははっ!その通りにゃ。まだ始まったばかりにゃよ?』
空から声が降ってくる。ラルフと歩を見下ろすのは惚けた神様。
「来たな?アルテミス。魔族に肩入れするなんて、お前はよっぽど負けたくねぇんだな」
『勝負に負けたい奴なんているわけないにゃ。ウチは当然の感性で行動しているのにゃ』
「ええ?天下のアルテミス様は博打も打てないのか?強い奴のおこぼれに預かって何が楽しいんだ?」
『……癇に障るガキだにゃ』
キィンッ
アルテミスの眼が光る。ラルフを睨みながら使用した能力”狂化”。これに睨まれた者は須らく理性を失い、不和を巻き起こす。だがラルフにはサトリの加護が付いている。神の能力は同一の存在によって打ち消される。
「……何だ?」
『チッ……負け犬が!ここでその命を散らしてやるにゃ!!』
風を切ってやってくるアルテミス。それに対してラルフは逃げるように走り出した。
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……いや、逃げ出した。
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