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第十三章 再生
第四十四話 戦え、最期まで
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「ぐっ……!!」
ブレイドの拳を受けたゼアルは口から血を流す。ラルフに殴られた時とは比較にならないほどの威力に頭が割れそうになる。
イルレアン国での決闘当時に殴られていたら確実に頭が割れていただろう。アシュタロトに強化されたことで頑強になっていたゼアルはブレイドの渾身の一撃に耐えることが出来た。
ブレイドの誤算。それはゼアルを倒しきれなかったことだ。
無論ゼアルを侮っていたわけではない。作戦だったとはいえ、左腕を丸ごとやられたのだから侮りようがない。その上アルルの足を切った張本人、本気で殴ったのは第三者から見ても疑いようがない。
「良い……パンチだ」
ゼアルは気絶することも倒れることもなく口の端から流れ出た血を左手で拭った。
「それほどの傷を負って、尚ここまでの打撃を繰り出せる貴様に敬意を表そう。まさに驚異的だ……」
剣で貫かれたブレイドの左腕から血が噴き出す。筋肉を引き絞って出血を防いでいたため、一瞬の気の緩みが大量出血につながった。慌てて力を入れるが、先ほどまで絶妙な力で塞がっていたようで、一度決壊したらもう止められない。急に目の前が暗くなり、膝から崩れ落ちそうになるが何とか踏みとどまった。
「半人半魔は欠陥生物であると認識していたのだが、これを機に改めよう。貴様は生きていてはいけない怪物だとな。何故混血を忌み嫌うのか、何故すぐ殺してしまうのか……血が汚れるだの、半端な存在だのと詭弁を聞くが、実態は強くなり過ぎるからというのが正しいのかもしれないな……」
精神力、身体能力、耐久力、どれを取っても一級品。これほどの存在がどこに埋もれていたというのか。ゼアルは自分が人間であることを歯がゆく思う。これほどの力があれば、事はもっと単純だっただろう。ただ腕力を振るっているだけで全てが解決だ。それに現在の剣の技巧を足したら神の祝福など必要ない。
だが全て無い物ねだりだ。既に神の祝福を受けたゼアルには贅沢すぎる悩みである。
ゼアルはブレイドの腹に足を乗せた。止血のため、左半身に力を入れていたせいか、ゼアルの行動に対処出来なかった。次の行動が理解出来たブレイドが何とか出来たのは身動ぎだけ。腹を押し蹴られ、ブレイドの体から剣が引き抜かれる。串に刺さっていたように身動きが取れなかったが、ようやく解放される。ブレイドは自由を得た代わりに血を失った。
「か……かはっ……」
呼吸器系統をやられたわけでもないのに呼吸がし辛い。体が思うように動かず、沼を泳いでるように体が重い。
「ははは……何年振りの感覚だ?こんなのは小さい時以来だ……」
ゼアルを見ると、年端も行かぬ頃に苦戦したアイアンベアを思い出す。大泣きしながらガンブレイドを振るって戦った。怖くて小便も漏らした。命乞いなど自然には効かない。生き残るにはただ足掻くのみ。
ザワザワと殺気立つブレイド。体はまた浅黒く変化し、闘争の空気が沸き立つ。ゼアルも闘気に当てられて剣を握る手に力が入る。
「……一瞬だ。痛みもなく終わらせることが私には出来る。身を委ねるか、足掻いて苦しむか。二つに一つ……」
ゼアルは突きの構えを見せる。本気の構えだ。ブレイドの傷では速度超過にはついていけない。それでもブレイドは諦めない。
「俺が選ぶのは……足掻いて勝つ。……狩りを始めた頃からやることは変わらねぇよ」
ブレイドも腰を落として身構える。負けるつもりも死ぬつもりもない。一見不利だが、追い詰められてこそ力を発揮する彼にしてみれば、今こそが真の実力を発揮する時。一歩も引かない二人の勇士、決着の刻。
ドサッ……
二人の間に突然何かが落ちてきた。それを視認したゼアルは驚いて声をあげた。
「そ、蒼玉……?」
それは見るも無残に変わり果てたクロノスだった。頭からは突起のようにナイフが刺さり、あちらこちらに穴が開いている。全てが致命傷の惨憺たる姿。白目を剥いて口をポカンと開き、ピクリとも動かない。それは誰がどういう風に見ても死体であると断言出来る。
「うちの料理人に何してくれちゃってんの?」
空中から声が聞こえる。声の方を見るとラルフが異次元から顔を出している。
「ラルフさん!」
「おう、ブレイド。凄ぇ傷だな……すぐにアルルの元に行きな。ここは俺らに任せろって」
ラルフを先導に、背後からミーシャと白絶も出てきた。
「蒼玉がやられただと?!神は……アルテミスは何をしていたんだ!?」
『当然一緒に居たにゃ。けど間から追い出され、肝心な時には側に居てあげられなかったんにゃ……』
アルテミスは悲しそうにゼアルの隣に立っている。突然の出現に飛び上がりそうなほど驚いたゼアルはアルテミスをじっと観察した後、ラルフたちに目を向ける。
「……振り出しに戻ったか。人魔同盟など、やはり夢のまた夢……」
蒼玉との間で取り決められた平和協定。しかし肝心の蒼玉が死んでは元も子もない。
「人族と魔族は戦い合う運命なのだろう……貴様という異端を除いてな」
ラルフはその言葉にニヤリと笑った。
「みんな仲良くがモットーでね」
ブレイドの拳を受けたゼアルは口から血を流す。ラルフに殴られた時とは比較にならないほどの威力に頭が割れそうになる。
イルレアン国での決闘当時に殴られていたら確実に頭が割れていただろう。アシュタロトに強化されたことで頑強になっていたゼアルはブレイドの渾身の一撃に耐えることが出来た。
ブレイドの誤算。それはゼアルを倒しきれなかったことだ。
無論ゼアルを侮っていたわけではない。作戦だったとはいえ、左腕を丸ごとやられたのだから侮りようがない。その上アルルの足を切った張本人、本気で殴ったのは第三者から見ても疑いようがない。
「良い……パンチだ」
ゼアルは気絶することも倒れることもなく口の端から流れ出た血を左手で拭った。
「それほどの傷を負って、尚ここまでの打撃を繰り出せる貴様に敬意を表そう。まさに驚異的だ……」
剣で貫かれたブレイドの左腕から血が噴き出す。筋肉を引き絞って出血を防いでいたため、一瞬の気の緩みが大量出血につながった。慌てて力を入れるが、先ほどまで絶妙な力で塞がっていたようで、一度決壊したらもう止められない。急に目の前が暗くなり、膝から崩れ落ちそうになるが何とか踏みとどまった。
「半人半魔は欠陥生物であると認識していたのだが、これを機に改めよう。貴様は生きていてはいけない怪物だとな。何故混血を忌み嫌うのか、何故すぐ殺してしまうのか……血が汚れるだの、半端な存在だのと詭弁を聞くが、実態は強くなり過ぎるからというのが正しいのかもしれないな……」
精神力、身体能力、耐久力、どれを取っても一級品。これほどの存在がどこに埋もれていたというのか。ゼアルは自分が人間であることを歯がゆく思う。これほどの力があれば、事はもっと単純だっただろう。ただ腕力を振るっているだけで全てが解決だ。それに現在の剣の技巧を足したら神の祝福など必要ない。
だが全て無い物ねだりだ。既に神の祝福を受けたゼアルには贅沢すぎる悩みである。
ゼアルはブレイドの腹に足を乗せた。止血のため、左半身に力を入れていたせいか、ゼアルの行動に対処出来なかった。次の行動が理解出来たブレイドが何とか出来たのは身動ぎだけ。腹を押し蹴られ、ブレイドの体から剣が引き抜かれる。串に刺さっていたように身動きが取れなかったが、ようやく解放される。ブレイドは自由を得た代わりに血を失った。
「か……かはっ……」
呼吸器系統をやられたわけでもないのに呼吸がし辛い。体が思うように動かず、沼を泳いでるように体が重い。
「ははは……何年振りの感覚だ?こんなのは小さい時以来だ……」
ゼアルを見ると、年端も行かぬ頃に苦戦したアイアンベアを思い出す。大泣きしながらガンブレイドを振るって戦った。怖くて小便も漏らした。命乞いなど自然には効かない。生き残るにはただ足掻くのみ。
ザワザワと殺気立つブレイド。体はまた浅黒く変化し、闘争の空気が沸き立つ。ゼアルも闘気に当てられて剣を握る手に力が入る。
「……一瞬だ。痛みもなく終わらせることが私には出来る。身を委ねるか、足掻いて苦しむか。二つに一つ……」
ゼアルは突きの構えを見せる。本気の構えだ。ブレイドの傷では速度超過にはついていけない。それでもブレイドは諦めない。
「俺が選ぶのは……足掻いて勝つ。……狩りを始めた頃からやることは変わらねぇよ」
ブレイドも腰を落として身構える。負けるつもりも死ぬつもりもない。一見不利だが、追い詰められてこそ力を発揮する彼にしてみれば、今こそが真の実力を発揮する時。一歩も引かない二人の勇士、決着の刻。
ドサッ……
二人の間に突然何かが落ちてきた。それを視認したゼアルは驚いて声をあげた。
「そ、蒼玉……?」
それは見るも無残に変わり果てたクロノスだった。頭からは突起のようにナイフが刺さり、あちらこちらに穴が開いている。全てが致命傷の惨憺たる姿。白目を剥いて口をポカンと開き、ピクリとも動かない。それは誰がどういう風に見ても死体であると断言出来る。
「うちの料理人に何してくれちゃってんの?」
空中から声が聞こえる。声の方を見るとラルフが異次元から顔を出している。
「ラルフさん!」
「おう、ブレイド。凄ぇ傷だな……すぐにアルルの元に行きな。ここは俺らに任せろって」
ラルフを先導に、背後からミーシャと白絶も出てきた。
「蒼玉がやられただと?!神は……アルテミスは何をしていたんだ!?」
『当然一緒に居たにゃ。けど間から追い出され、肝心な時には側に居てあげられなかったんにゃ……』
アルテミスは悲しそうにゼアルの隣に立っている。突然の出現に飛び上がりそうなほど驚いたゼアルはアルテミスをじっと観察した後、ラルフたちに目を向ける。
「……振り出しに戻ったか。人魔同盟など、やはり夢のまた夢……」
蒼玉との間で取り決められた平和協定。しかし肝心の蒼玉が死んでは元も子もない。
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