一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

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第十四章 驚天動地

プロローグ

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 広い空。青く深い海。流れる雲に身を委ねて風を感じるこの瞬間は開放感と自由を一気に味わえる。
 屋上でコロリと転がって肺一杯に新鮮な空気を取り入れると、あまりの陽気に昼寝も捗る。

「……食べ物でも持ってくれば良かったなぁ……」

 世界最強の魔族、その名はミーシャ。移動を空中浮遊要塞スカイウォーカーに任せて、目的地のヲルト大陸に向けてゆったり飛行中。
 ふと左手をかざして薬指に嵌った指輪を見る。煌びやかな宝石もついていなければ、希少金属というほどでも無く、何の変哲も無いシンプルな指輪。この指輪の用途は、周りに婚約を知らせるというただ一点に尽きる。だがそんな何でも無いはずの指輪が輝いて見えるのは、ミーシャの夢の実現に寄与したのが大きいだろう。

「……ふふっ」

 漏れ出た笑顔は本心からのものだ。目を閉じれば草臥れたハットのシルエットが目の裏に浮かんでくる。ラルフは言った「何言ってんだよ。もう家族だろ?」と。その言葉にどれほど救われたことか……。
 ミーシャとラルフは記憶を共有している。となればミーシャの心に刺さる言葉は誰よりも知っているだろう。しかしラルフのそれは、媚びへつらいやご機嫌取りなどではなく、本気で言っている感じだった。ラルフのことを誰よりも知っているミーシャだからこそ確信に至ったと言えよう。
 夫婦の関係。自分には縁もゆかりもないことだと思っていたのに、まさかヒューマンと契りを結ぶなどあり得ない話。まるで想像の外。もしも去年の自分に現状を知らせることが出来たら、その場で殺し合いに発展しそうなほどに荒唐無稽。
 キュッと軽く手を握り、左手を胸元に持っていく。心が満たされていくのを肌で感じる。これほど気分が良いのはペルタルク丘陵で美しい景色に包まれていた時以来か。いや、今の方が遥かに上だ。

「はぁ~……これが幸せってやつなのかな?」

 この自問自答は自己肯定と共に幸福を噛みしめるためのものだ。誰の応答も期待していなかった。

『ふふっ、可愛い幸せですね』

 ミーシャはバッと起き上がる。独り言を聞かれた時の恥ずかしさは想像を絶する。

「誰っ!?」

 辺りを見渡して確認すると、いつからそこに居たのか、すぐ側にサトリが立っていた。ミーシャはニコニコと笑うサトリに苛立ちを見せる。

「盗み聞きなんて悪趣味ね。いくら神だからってやっていいことと悪いことがあるんじゃない?」

『これは失礼しました。あまりの可愛さについ……邪魔するつもりは無かったのです。お許しください』

「……随分低姿勢ね。私が怖いの?」

『まさか、嫌われたくないだけですよ』

 サトリはミーシャの真横に座る。得体の知れない存在であるサトリに警戒しつつも、どこか憎めない雰囲気にミーシャは唇を尖らせて前を向いた。

『ついに婚約ですか……感慨深いものですね。まさかヒューマンとだなんて……』

「おかしい?」

『ええ、当然ですね。同種族がつがいとなるのは当たり前として、異種族どころか、敵対種との婚姻となれば驚きも一入ひとしお。しかし意外であると同時に喜びもあります。私の気に入った殿方を選ぶなんて趣味が合いますね』

「サトリもラルフを?……で、でももう私のものだから!」

『取ろうだなんて思っていませんよ。シェアすれば良いのです。みんな仲良く家族になればもっと幸せになれますよ?』

 空の彼方に目を落とし、未来を幻視する。みんなで仲良く過ごしている楽しい情景。それはいつもの光景だが、これこそが本当の幸せであると認識した時の感動。イミーナに裏切られた時はこの世の終わりを幻視したが、ラルフによって全てが明るい未来へと昇華した。
 失いたくない幸せ。先の戦いで半数の命を失ったデュラハン姉妹をふと思い浮かべる。エールー、シーヴァ、カイラ、ティララ。彼女たちの顔ぶれも”いつもの光景”に含まれていただけに残念で仕方がない。

『戦争ですよ?生きるか死ぬかの瀬戸際に犠牲はつきもの。騎士として戦さ場で名誉の死を遂げた彼女たちに報いるのは「良くやった」と褒めるべきではないでしょうか?ある物をあるがままに、これからは未来の展望を胸に邁進してください』

「これから先のこと……」

 その通りだ。婚姻しました、はい終わり。という訳にはいかない。当然考えたいことは沢山ある。ラルフと話し合うことがあれば、みんなで話し合うことだって生まれる。生まれるといえば二人の子供はどうするか。考えれば次から次に考えることが現れてキリがない。

『ふふっ、慌てずにじっくりお考えください。大丈夫、時間はたっぷりあるのですから。それでは私も用事があるので、この辺りで失礼します……』

 スッと空気に解けるように姿形が消え去った。取り残されたミーシャはどれが最善であるかを模索中、疲れてボーッと海を眺めていると黒いシミのようなものが浮き上がった。十中八九ヲルト大陸だ。年がら年中厚い雲に覆われて陽の光が刺さない。あの薄ぼんやりした黒いシミに手をかざす。

「まぁでも、まずは黒影奪還からじゃない?」

 今はとりあえず婚姻関係は置いておいて、目的を遂行する。ケーキの上のイチゴを最後に食べるように、楽しみは後にとっておくべきだ。ミーシャは第三魔王”黄泉”戦に向けて要塞内に戻っていった。
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