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第十四章 驚天動地
第四話 神々の思惑
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そもそも何故イイルクオンの住人に特異能力を授けないのか。それはこの世界の秩序のためである。
この世界で生きる者たちは、生まれ持った種族と才能で過酷な環境を生き抜かなければならない。死なない方法を学び、技術を身につけ、生きる術を見出す。自らを助くる者だけが生き延びることを許されるのだ。
神の力を授けられる者はイイルクオンの住人で無い者。その理由は今後別の世界でのみ生きることを強いられた者に対する救済措置。身体能力の大幅強化、本来持ち得ない魔力の保有、それだけでも破格であると言える。
ならどうして特異能力まで授けるのか?特異能力を与えるのは、元の世界に戻してあげられないという謝罪の意味があるのだ。
時には守護者、時には侵略者と呼ばれる異世界の転移者たち。神から愛され、優遇されていると思われていた力は、実は哀れみから来ていたことを誰も知らない。
だが、この特異能力の発現方法には授けた神でさえ頭を悩ませる問題があった。どのような特異能力になるかは、発現した者の性格や生き方に依存するというものだ。
授けた当初こそ問題はなかった。例えば熱血を地で行く性格をしていれば炎の能力が発現し、氷の如く冷徹な意思を持っていれば氷の能力が発現するというように、単純な能力で固定されていたからだ。心の内の最も強い感情、つまりは喜怒哀楽に依存するのだと勘違いしたのだ。
複雑な能力が顕現しないのなら放置しても問題はない。その考えが浅はかだったと気づくのに時間はかからなかった。
『念力、変身、天候操作……。最も面倒だったのが隠蔽能力だと誰が予想した?』
ネレイドは過去の情景に思いを馳せる。
『しぶとさという点ではロングマンの”見切り”も厄介だったけど?』
『うむ。特異能力の発現に関して、思った以上に広い分野で違いが観れたのは、幸運でもあり不幸でもある。全てが死に絶えるのも惜しいと思って保存を決定したのは、今となっては良かったのかどうかも分からんな……』
エレクトラもユピテルも追従する。サトリを除く全員が同じ気持ちであるに違いない。
『理想とする自分を思い描く。それまで積み重ねてきたことが大きく出る。十人十色、千差万別。理想の能力発現法であると私は今でも考えております。だからこそアトムはそれを利用し、転移者を五人も増やしたのですから』
『イリヤ……何が言いたい?』
『面倒ごとを増やした……』
『ミネルバ!貴様には聞いていないぞ!』
『いや、ミネルバの意見こそ正しい。吾は危惧していた。イイルクオンの住人に特異能力を授けた時、何が発現するのか?とな……。吾は「愛想が尽きた世界からの脱出を望む者」こそが次元に干渉し得る能力を得るのではないだろうかと考えていた。魔族が居て、戦争があって、生きるのにとことん苦労する者に万が一にも与えてしまった時、魔族を超えた別の災厄を持ち込んでしまうかもしれない。これ以上の面倒ごとがあるか?この意見は吾らが一時休息に入る時に提唱したことだったと記憶しているが……サトリよ、何らか弁明することはあるか?』
ここでようやくサトリに視線が行く。黙って話を聞いていたサトリはコクンと頷いた。
『先ず初めに訂正から。ラルフの小さな異次元は収納スペースの確保という観念から来ています。世界の脱出を望んで得たのは創造の能力でしたよ?とはいえ、私はラルフ以外に能力を与えようなど思ってもいません。そのラルフの次元干渉能力も限定的なもの。何度も言うように放っておいても大丈夫です』
『確かラルフとか言うヒューマンは次元干渉について、そこまで興味がないとの触れ込み。捨て置くのは危険ですが、かと言って四六時中監視の目を光らせなくても良い。サトリが強弁したことを精査すればこう言うことになりますが?』
『その通りですよ?何か?』
イリヤの言葉に開き直るサトリ。
『補足しますと「今は」と言う文言が付きます。今は興味がありません。いずれ自身の能力を試そうとする機会が増えるでしょうね……』
*
「ワープ?何それ?」
ラルフは歩から小さな異次元の活用法を聞いていた。単なる世間話の一環だったが、歩はワープトンネルの原理がラルフの能力で実現出来るのではないかと考えたのだ。
「ああ、前回の戦争でいろんなとこに任意で穴を開けまくってたからね。そういう考えも出来なくないよ」
アンノウンも便乗する。ラルフはどうすれば良いか理論を聴きながら試すことにする。
「何だっけ?入り口と出口を別々に作って……」
*
『……私たちにその探究心を止める術はありません』
サトリは気丈に言い放つ。エレクトラは腕を組んで苛立ちながら吐き捨てる。
『偉そうに……誰のせいでこんな話し合いになってると思うの?』
『ラルフですね』
『なっ!?自分に罪は無いという気?!』
『もし私に罪があるとすれば、あなた方を巻き込んだことでしょうか?ここまで余裕をなくすことになるとは夢にも思いませんでしたが……』
空気が冷える。と同時に刺すような殺意が場を支配し、全てのヘイトがサトリに集まるのを感じる。
『ふふ、どうです?悔しかったらあなた方も試してみては?』
『……こう言っては何だがサトリよ。其の自慢のミーシャとラルフに対抗するため、吾らは既に手は打っている。其らに復讐心を抱いて剣を磨いているであろうな……』
サトリの眉毛が持ち上がる。
『ネレイド、まだ早いのでは?サプライズも何もあったものでは無いじゃ無い』
『いやいや、我も今聞かされて驚愕しているぞ。これがお前らの対策か』
ユピテルは目を丸くしながらも、喜びが表情に表れている。サトリは踵を返した。
『サプライズと言われてはこれ以上は聞けませんね。受けて立ちましょう』
神々の思惑も佳境を迎えている。サトリは満足して現世に戻っていった。
『あっ!?無事に返しちゃったにゃ!!』
アルテミスの後悔を残して……。
この世界で生きる者たちは、生まれ持った種族と才能で過酷な環境を生き抜かなければならない。死なない方法を学び、技術を身につけ、生きる術を見出す。自らを助くる者だけが生き延びることを許されるのだ。
神の力を授けられる者はイイルクオンの住人で無い者。その理由は今後別の世界でのみ生きることを強いられた者に対する救済措置。身体能力の大幅強化、本来持ち得ない魔力の保有、それだけでも破格であると言える。
ならどうして特異能力まで授けるのか?特異能力を与えるのは、元の世界に戻してあげられないという謝罪の意味があるのだ。
時には守護者、時には侵略者と呼ばれる異世界の転移者たち。神から愛され、優遇されていると思われていた力は、実は哀れみから来ていたことを誰も知らない。
だが、この特異能力の発現方法には授けた神でさえ頭を悩ませる問題があった。どのような特異能力になるかは、発現した者の性格や生き方に依存するというものだ。
授けた当初こそ問題はなかった。例えば熱血を地で行く性格をしていれば炎の能力が発現し、氷の如く冷徹な意思を持っていれば氷の能力が発現するというように、単純な能力で固定されていたからだ。心の内の最も強い感情、つまりは喜怒哀楽に依存するのだと勘違いしたのだ。
複雑な能力が顕現しないのなら放置しても問題はない。その考えが浅はかだったと気づくのに時間はかからなかった。
『念力、変身、天候操作……。最も面倒だったのが隠蔽能力だと誰が予想した?』
ネレイドは過去の情景に思いを馳せる。
『しぶとさという点ではロングマンの”見切り”も厄介だったけど?』
『うむ。特異能力の発現に関して、思った以上に広い分野で違いが観れたのは、幸運でもあり不幸でもある。全てが死に絶えるのも惜しいと思って保存を決定したのは、今となっては良かったのかどうかも分からんな……』
エレクトラもユピテルも追従する。サトリを除く全員が同じ気持ちであるに違いない。
『理想とする自分を思い描く。それまで積み重ねてきたことが大きく出る。十人十色、千差万別。理想の能力発現法であると私は今でも考えております。だからこそアトムはそれを利用し、転移者を五人も増やしたのですから』
『イリヤ……何が言いたい?』
『面倒ごとを増やした……』
『ミネルバ!貴様には聞いていないぞ!』
『いや、ミネルバの意見こそ正しい。吾は危惧していた。イイルクオンの住人に特異能力を授けた時、何が発現するのか?とな……。吾は「愛想が尽きた世界からの脱出を望む者」こそが次元に干渉し得る能力を得るのではないだろうかと考えていた。魔族が居て、戦争があって、生きるのにとことん苦労する者に万が一にも与えてしまった時、魔族を超えた別の災厄を持ち込んでしまうかもしれない。これ以上の面倒ごとがあるか?この意見は吾らが一時休息に入る時に提唱したことだったと記憶しているが……サトリよ、何らか弁明することはあるか?』
ここでようやくサトリに視線が行く。黙って話を聞いていたサトリはコクンと頷いた。
『先ず初めに訂正から。ラルフの小さな異次元は収納スペースの確保という観念から来ています。世界の脱出を望んで得たのは創造の能力でしたよ?とはいえ、私はラルフ以外に能力を与えようなど思ってもいません。そのラルフの次元干渉能力も限定的なもの。何度も言うように放っておいても大丈夫です』
『確かラルフとか言うヒューマンは次元干渉について、そこまで興味がないとの触れ込み。捨て置くのは危険ですが、かと言って四六時中監視の目を光らせなくても良い。サトリが強弁したことを精査すればこう言うことになりますが?』
『その通りですよ?何か?』
イリヤの言葉に開き直るサトリ。
『補足しますと「今は」と言う文言が付きます。今は興味がありません。いずれ自身の能力を試そうとする機会が増えるでしょうね……』
*
「ワープ?何それ?」
ラルフは歩から小さな異次元の活用法を聞いていた。単なる世間話の一環だったが、歩はワープトンネルの原理がラルフの能力で実現出来るのではないかと考えたのだ。
「ああ、前回の戦争でいろんなとこに任意で穴を開けまくってたからね。そういう考えも出来なくないよ」
アンノウンも便乗する。ラルフはどうすれば良いか理論を聴きながら試すことにする。
「何だっけ?入り口と出口を別々に作って……」
*
『……私たちにその探究心を止める術はありません』
サトリは気丈に言い放つ。エレクトラは腕を組んで苛立ちながら吐き捨てる。
『偉そうに……誰のせいでこんな話し合いになってると思うの?』
『ラルフですね』
『なっ!?自分に罪は無いという気?!』
『もし私に罪があるとすれば、あなた方を巻き込んだことでしょうか?ここまで余裕をなくすことになるとは夢にも思いませんでしたが……』
空気が冷える。と同時に刺すような殺意が場を支配し、全てのヘイトがサトリに集まるのを感じる。
『ふふ、どうです?悔しかったらあなた方も試してみては?』
『……こう言っては何だがサトリよ。其の自慢のミーシャとラルフに対抗するため、吾らは既に手は打っている。其らに復讐心を抱いて剣を磨いているであろうな……』
サトリの眉毛が持ち上がる。
『ネレイド、まだ早いのでは?サプライズも何もあったものでは無いじゃ無い』
『いやいや、我も今聞かされて驚愕しているぞ。これがお前らの対策か』
ユピテルは目を丸くしながらも、喜びが表情に表れている。サトリは踵を返した。
『サプライズと言われてはこれ以上は聞けませんね。受けて立ちましょう』
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