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第十四章 驚天動地
第三十話 戦いの余波
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「どうした!?何が起こっている!?」
深夜。交代制の見張りを立てて就寝していた黒曜騎士団の団員は、荒れ狂う豪風と爆音に目を覚ました。同時に目覚めたマクマインも何が起きているのか分からず、説明を求めて大声を出す。
「た、ただいま確認中でございます。しばらくお待ちください」
マクマインの天幕の前で護衛に立っていた騎士の一人が頭を下げ、確認のために走った。
『もう来たのか。案外早かったね』
天幕からアシュタロトが顔を出す。「もう来た」という言葉から全てを察したマクマインは、戦闘場所を把握しようと辺りを見渡す。爆音と共にやって来る豪風の向きを肌で感じ、木々の揺れから確信する。
「海の方角……まだ上陸したばかりというわけか……」
しかし不思議なのは何故こうも喧しいのか。こっそりやって来て、暗闇から襲うという選択肢もあった筈だ。これほどまでに主張する必要性が分からない。
「申し上げます!!ラルフと思わしき人物を確認しました!!」
「やはりか。それで?この災害は何が原因なのだ?」
「……不明でございます!」
逡巡の後に出た答えが「不明」。分からないことは説明したくても出来ない。マクマインは聞き方を変える。
「ならば見たままを説明せよ。推測を交えることも許す」
「見えない何かが争っているように見えました!ここは危険です!すぐに避難を!!」
「……ゼアルは何処に居る?」
「見張りによると、ゼアル団長は岬の方に……!!」
となればゼアルが戦っている。報告に来たこの部下もゼアルが戦っていると薄々は気付いていたのだろう。姿形はおろか、影すら全く見えなかったがために、ゼアルの名はあえて伏せたようだ。未だ騒然とし、治まる気配が見えない中、副団長のバクスが走って来た。
「閣下!馬をご用意致しました!今すぐに避難をお願いします!!」
不測の事態に、即座に避難のための馬を用意出来たバクスの判断は賞賛に値する。
「いや、要らん」
その行為をマクマインは無下にする。「え……!?」と狼狽するバクスの脇を通り抜けて、優雅に歩き出す。
「あ!そっちに行っては……!!」
マクマインは肩越しにバクスを見る。
「行くぞ。私に続け」
命令されたが最後、逆らうことは出来ない。例えそれが主人の身の安全を最優先に考えた尊い行為でも、当の主人に逃げる気がなければそれに従うしかない。マクマインはそれほどまでに傲慢の化身なのだ。
それもこれもアシュタロトが悪い。トトトッとマクマインと同じように脇を通り抜けて歩く少女。世界を創りたもうた神の一人。超常の者に選ばれたという自負心が生まれた結果なのか、元々傲慢だったマクマインの態度はさらに悪化の一途を辿り、部下の助言すらまともに聞かない。
「……副団長」
「分かってる。行こう」
部下の諦めも神の存在から来ている。常識の範疇では、神が容認したことを否定することなど出来ない。
そんな部下の心配を余所に、マクマインはズンズンと危険地帯に向かって歩く。
『遅かたにゃ~。危うく見逃すところだったにゃよ?』
開けた場所で待っていたのはアルテミス。岬までもう少し歩くのだが、こんなところで何をしているというのか。そこであることに気づく。
「この空き地は……?」
岬までの道のりは森である。となればゼアルと何某の戦いは自然破壊に及ぶ、凄まじいものということが分かる。
『ふふっ素晴らしい男だにゃ。ウチらの授けた力を存分に発揮し、且つ力に振り回されていにゃい。この機を逃したら今後一生、出て来ることがなかったんじゃにゃいかと思えるヒューマン。まさしく神人だにゃ』
うっとりという表現が似合いそうな表情の先に、シュタッとゼアルが姿を現した。同時に空中にミーシャが出現する。
「なるほど、本当に強いじゃん。見直したよ魔断のゼアル」
「ああ、ようやくここまで来たぞ。唯一王……」
両者共に余裕を見せる。どちらも負ける気など微塵も感じていないが、二人の間にはその余裕に差異がある。ミーシャの中にあるのは戦いの喜び。ゼアルの中にあるのは決定打に欠ける焦り。一日中戦っていられるタフネスを持ち合わせているが、決着は見えていない。
「はぁ、はぁ……ったく、二人とも速すぎるんだよなぁ」
軽く息を切らせながらラルフがやって来た。その姿を見るや、マクマインの心にドス黒い怒りが湧き上がる。
「ラルフ……!」
ギリッと奥歯を噛み締め、感情を押し殺す。今はラルフなどという木っ端に気を向けるほど無駄なことなどない。ゼアルとミーシャ。この戦いに終始する。
「ゼアルよ!……どうだ?勝てそうか?」
マクマインの声に振り向くことなく頷く。
「……そうこなくては面白くない」
心の安寧を取り戻したマクマインは改めてラルフに向く。
「鏖の次は貴様だラルフ。貴様は私の手で葬ってくれよう」
「あ、そう?無理すんなよお爺ちゃん」
「……チンピラ風情が図に乗るなよ?」
程度の低い口喧嘩を無理やり吹っ切ってマクマインはゼアルに命令する。
「ゼアル!もう終わらせろ!!」
「……はっ、了解致しました。公爵閣下」
ゼアルの眼が光る。ミーシャと身体能力面で拮抗するゼアルには決定打がない。それは、ただただ真っ正面から攻撃を仕掛けた場合の話。これを使う前に決められるならそれに越したことはなかった。何故なら、これを使用したところで勝てるという確実性がないからだ。
でも、だからこそ。もうこれに賭けるしかない。神が与えたもうた特異能力に……。
「……”ジャッジメント”」
深夜。交代制の見張りを立てて就寝していた黒曜騎士団の団員は、荒れ狂う豪風と爆音に目を覚ました。同時に目覚めたマクマインも何が起きているのか分からず、説明を求めて大声を出す。
「た、ただいま確認中でございます。しばらくお待ちください」
マクマインの天幕の前で護衛に立っていた騎士の一人が頭を下げ、確認のために走った。
『もう来たのか。案外早かったね』
天幕からアシュタロトが顔を出す。「もう来た」という言葉から全てを察したマクマインは、戦闘場所を把握しようと辺りを見渡す。爆音と共にやって来る豪風の向きを肌で感じ、木々の揺れから確信する。
「海の方角……まだ上陸したばかりというわけか……」
しかし不思議なのは何故こうも喧しいのか。こっそりやって来て、暗闇から襲うという選択肢もあった筈だ。これほどまでに主張する必要性が分からない。
「申し上げます!!ラルフと思わしき人物を確認しました!!」
「やはりか。それで?この災害は何が原因なのだ?」
「……不明でございます!」
逡巡の後に出た答えが「不明」。分からないことは説明したくても出来ない。マクマインは聞き方を変える。
「ならば見たままを説明せよ。推測を交えることも許す」
「見えない何かが争っているように見えました!ここは危険です!すぐに避難を!!」
「……ゼアルは何処に居る?」
「見張りによると、ゼアル団長は岬の方に……!!」
となればゼアルが戦っている。報告に来たこの部下もゼアルが戦っていると薄々は気付いていたのだろう。姿形はおろか、影すら全く見えなかったがために、ゼアルの名はあえて伏せたようだ。未だ騒然とし、治まる気配が見えない中、副団長のバクスが走って来た。
「閣下!馬をご用意致しました!今すぐに避難をお願いします!!」
不測の事態に、即座に避難のための馬を用意出来たバクスの判断は賞賛に値する。
「いや、要らん」
その行為をマクマインは無下にする。「え……!?」と狼狽するバクスの脇を通り抜けて、優雅に歩き出す。
「あ!そっちに行っては……!!」
マクマインは肩越しにバクスを見る。
「行くぞ。私に続け」
命令されたが最後、逆らうことは出来ない。例えそれが主人の身の安全を最優先に考えた尊い行為でも、当の主人に逃げる気がなければそれに従うしかない。マクマインはそれほどまでに傲慢の化身なのだ。
それもこれもアシュタロトが悪い。トトトッとマクマインと同じように脇を通り抜けて歩く少女。世界を創りたもうた神の一人。超常の者に選ばれたという自負心が生まれた結果なのか、元々傲慢だったマクマインの態度はさらに悪化の一途を辿り、部下の助言すらまともに聞かない。
「……副団長」
「分かってる。行こう」
部下の諦めも神の存在から来ている。常識の範疇では、神が容認したことを否定することなど出来ない。
そんな部下の心配を余所に、マクマインはズンズンと危険地帯に向かって歩く。
『遅かたにゃ~。危うく見逃すところだったにゃよ?』
開けた場所で待っていたのはアルテミス。岬までもう少し歩くのだが、こんなところで何をしているというのか。そこであることに気づく。
「この空き地は……?」
岬までの道のりは森である。となればゼアルと何某の戦いは自然破壊に及ぶ、凄まじいものということが分かる。
『ふふっ素晴らしい男だにゃ。ウチらの授けた力を存分に発揮し、且つ力に振り回されていにゃい。この機を逃したら今後一生、出て来ることがなかったんじゃにゃいかと思えるヒューマン。まさしく神人だにゃ』
うっとりという表現が似合いそうな表情の先に、シュタッとゼアルが姿を現した。同時に空中にミーシャが出現する。
「なるほど、本当に強いじゃん。見直したよ魔断のゼアル」
「ああ、ようやくここまで来たぞ。唯一王……」
両者共に余裕を見せる。どちらも負ける気など微塵も感じていないが、二人の間にはその余裕に差異がある。ミーシャの中にあるのは戦いの喜び。ゼアルの中にあるのは決定打に欠ける焦り。一日中戦っていられるタフネスを持ち合わせているが、決着は見えていない。
「はぁ、はぁ……ったく、二人とも速すぎるんだよなぁ」
軽く息を切らせながらラルフがやって来た。その姿を見るや、マクマインの心にドス黒い怒りが湧き上がる。
「ラルフ……!」
ギリッと奥歯を噛み締め、感情を押し殺す。今はラルフなどという木っ端に気を向けるほど無駄なことなどない。ゼアルとミーシャ。この戦いに終始する。
「ゼアルよ!……どうだ?勝てそうか?」
マクマインの声に振り向くことなく頷く。
「……そうこなくては面白くない」
心の安寧を取り戻したマクマインは改めてラルフに向く。
「鏖の次は貴様だラルフ。貴様は私の手で葬ってくれよう」
「あ、そう?無理すんなよお爺ちゃん」
「……チンピラ風情が図に乗るなよ?」
程度の低い口喧嘩を無理やり吹っ切ってマクマインはゼアルに命令する。
「ゼアル!もう終わらせろ!!」
「……はっ、了解致しました。公爵閣下」
ゼアルの眼が光る。ミーシャと身体能力面で拮抗するゼアルには決定打がない。それは、ただただ真っ正面から攻撃を仕掛けた場合の話。これを使う前に決められるならそれに越したことはなかった。何故なら、これを使用したところで勝てるという確実性がないからだ。
でも、だからこそ。もうこれに賭けるしかない。神が与えたもうた特異能力に……。
「……”ジャッジメント”」
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