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第十四章 驚天動地
第四十七話 終わりの始まり
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ケルベロスが小さく三匹に分裂した瞬間、ロングマンは要塞の陰から飛び出した。
抜いた刀は濡れたような美しい刀身で光を反射する。鋭利な鋼を振りかぶり、三匹のしば犬の首を狙う。
『本当によろしいのですか?そんなことをして……』
ドクンッ
その瞬間、すべての時が止まったように感じる。
(……なんだこれは?)
時間が止まった世界に思考だけが鮮明に、そして克明にある不思議な状態。そんな中にあって、美しく透き通る声が頭に鳴り響く。
『貴方はただあの男の思うがままに動いているだけに過ぎません。ここでケルベロスを葬れば、後々後悔するのは貴方ご自身ですよ?』
(お前……サトリだな?自分の創造物が破壊されるのが耐えられぬと見える。こんな風に我を引き止めたところで結果は変わらぬ。ここを逃せば二度と機会は訪れん)
『……今一度考えるべきではないでしょうか?』
(くどい。我は今この場にてケルベロスを葬る)
ロングマンの覚悟にサトリはため息をついた。サトリは文字通り人の心を読める。勝手に覗いてしまったロングマンの覚悟の先にあったものは計画や予測ではなく、単なる希望的観測であった。
『……もし、その策が上手くいくとして、結局は囚われの身。彼らは自由を保証しませんよ?』
(履き違えるなサトリ。自由とは誰かに保証されるものではない。自分自身で勝ち取るものだ)
ロングマンの真っ直ぐな目に、何かに気づいたように声が上ずった。
『……ああ、これですか?これに触発されて?……なるほど、なるほど……』
サトリはロングマンの言葉に何らか納得をする。その言葉を最後にサトリの気配は消え、ロングマンの体は……いや、世界が動き出す。
ゾンッ……
ケルベロスの首は三つ宙に舞う。ロングマンの言葉通り「結果」は変わることなくやり遂げる。
「ははっ!はははっ!ふぉーうっ!!」
その様子に一気にテンションが上がったのは藤堂だ。声高らかに勝利の余韻に浸る。守護獣を全て滅ぼし、ついに鍵は取っ払われた。後は扉を開けるのみ。
「やったぜブレイブさん!!コンラッドさん!!俺ぁやったぜ!!」
全身で喜びを表し、死んでいった恩人の名を挙げる。
「さぁ!準備は整った!!ここまでお膳立てしたんだ。期待させてくれよ?ラルフさん」
*
「やべぇやベぇ!」
ラルフは要塞内を走っていた。移動するならワープホールで目的地を選択してやるだけなのだが、どうもそういうわけにも行かなかった。
「おっかしいなぁ?!どこ置いたんだよ俺のカバン!!」
部屋に置いてたと思ったが、自室に無かったために走り回っていた。最近ではあまりに使い勝手の良い特異能力にかまけて、肩掛けバッグを持たなくなっていた。要塞という拠点が無くなることを考えて、回収しておこうと思ったのだが見当たらない。
『今一度自室を探してみてはどうかのぅ?それか倉庫とか……』
「倉庫?……それだ!倉庫だ!!」
ラルフは急ブレーキを掛けて倉庫を目指そうとする。しかしそこに邪魔が入る。
「お?オメーはラルフとかいう野郎だったか?」
いきなり名前を呼ばれて驚きから振り返る。そこには見上げる大きさの巨女が見下ろすように立っていた。
「え?あっ!お前はジニオン!何だよ?逃げそびれたのか?」
「違ぇよ。ロングマンの野郎を探してんだがよぉ、どっかで見なかったか?」
「いや、さっきまで走り回ってたけど誰とも……全員逃げれたんだと思ってたからびびったぜ」
「へ、肝の小せぇ野郎だ。昔の俺なら玉無し野郎って言ってたところだが、特大ブーメランになるからやめとくぜ」
「あ、言ってる言ってる。手遅れだから」
ジニオンとの会話が弾むラルフだったが、海水が足に掛かった時にハッと我に帰る。
「あー……俺ちょっと倉庫に行きたいからここで待っててくれるか?すぐ戻るから」
「あ?一緒に行きゃあいいじゃねぇか。オメーあれ出来んだろ?”どこでも何とか”」
「”何とか”って何だよ!小さな異次元な!いや、覚えなくていいけどさ」
ラルフは即座にワープホールを開き、倉庫に入った。もう倉庫は半分以上海水に浸かった状態で危険な状態だ。開けた穴から多少水が流れ出したお陰で、だいぶ余裕が出来たが油断は禁物。出入り口の扉が限界を迎え、一気に海水が流れ込んだら溺れるのは必至。
「それで?何を探してんだ?」
ザブザブと躊躇なく海水に入るジニオン。男らしさ溢れる対応に一瞬認識がバグりそうになるが「女戦士って大体こうだよね」とラルフは自分を騙す。
「カバンだよ」
「はぁ?新しいの買や良いじゃねぇか」
「思い出の品なんだよ。新しいので良けりゃとっとと脱出してんだよ」
ゴソゴソッジャブジャブッと弄るように探し、ようやくそれらしき物をひっ掴んだ。
「もう二度と手放さないぜ」
引き上げた物は、ボロボロでくたくたの使い古されたバッグ。
「汚ったね」
「おいコラ、ふざけんなよ?」
ラルフはジニオンと共に倉庫部屋を後にする。一時避難場所であり、集合に難が無さそうな、とりあえず屋上の藤堂の元に行くことにした。藤堂、ロングマン、二人とも同じ場所にいるようにと願いをを込めて……。
抜いた刀は濡れたような美しい刀身で光を反射する。鋭利な鋼を振りかぶり、三匹のしば犬の首を狙う。
『本当によろしいのですか?そんなことをして……』
ドクンッ
その瞬間、すべての時が止まったように感じる。
(……なんだこれは?)
時間が止まった世界に思考だけが鮮明に、そして克明にある不思議な状態。そんな中にあって、美しく透き通る声が頭に鳴り響く。
『貴方はただあの男の思うがままに動いているだけに過ぎません。ここでケルベロスを葬れば、後々後悔するのは貴方ご自身ですよ?』
(お前……サトリだな?自分の創造物が破壊されるのが耐えられぬと見える。こんな風に我を引き止めたところで結果は変わらぬ。ここを逃せば二度と機会は訪れん)
『……今一度考えるべきではないでしょうか?』
(くどい。我は今この場にてケルベロスを葬る)
ロングマンの覚悟にサトリはため息をついた。サトリは文字通り人の心を読める。勝手に覗いてしまったロングマンの覚悟の先にあったものは計画や予測ではなく、単なる希望的観測であった。
『……もし、その策が上手くいくとして、結局は囚われの身。彼らは自由を保証しませんよ?』
(履き違えるなサトリ。自由とは誰かに保証されるものではない。自分自身で勝ち取るものだ)
ロングマンの真っ直ぐな目に、何かに気づいたように声が上ずった。
『……ああ、これですか?これに触発されて?……なるほど、なるほど……』
サトリはロングマンの言葉に何らか納得をする。その言葉を最後にサトリの気配は消え、ロングマンの体は……いや、世界が動き出す。
ゾンッ……
ケルベロスの首は三つ宙に舞う。ロングマンの言葉通り「結果」は変わることなくやり遂げる。
「ははっ!はははっ!ふぉーうっ!!」
その様子に一気にテンションが上がったのは藤堂だ。声高らかに勝利の余韻に浸る。守護獣を全て滅ぼし、ついに鍵は取っ払われた。後は扉を開けるのみ。
「やったぜブレイブさん!!コンラッドさん!!俺ぁやったぜ!!」
全身で喜びを表し、死んでいった恩人の名を挙げる。
「さぁ!準備は整った!!ここまでお膳立てしたんだ。期待させてくれよ?ラルフさん」
*
「やべぇやベぇ!」
ラルフは要塞内を走っていた。移動するならワープホールで目的地を選択してやるだけなのだが、どうもそういうわけにも行かなかった。
「おっかしいなぁ?!どこ置いたんだよ俺のカバン!!」
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『今一度自室を探してみてはどうかのぅ?それか倉庫とか……』
「倉庫?……それだ!倉庫だ!!」
ラルフは急ブレーキを掛けて倉庫を目指そうとする。しかしそこに邪魔が入る。
「お?オメーはラルフとかいう野郎だったか?」
いきなり名前を呼ばれて驚きから振り返る。そこには見上げる大きさの巨女が見下ろすように立っていた。
「え?あっ!お前はジニオン!何だよ?逃げそびれたのか?」
「違ぇよ。ロングマンの野郎を探してんだがよぉ、どっかで見なかったか?」
「いや、さっきまで走り回ってたけど誰とも……全員逃げれたんだと思ってたからびびったぜ」
「へ、肝の小せぇ野郎だ。昔の俺なら玉無し野郎って言ってたところだが、特大ブーメランになるからやめとくぜ」
「あ、言ってる言ってる。手遅れだから」
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「あー……俺ちょっと倉庫に行きたいからここで待っててくれるか?すぐ戻るから」
「あ?一緒に行きゃあいいじゃねぇか。オメーあれ出来んだろ?”どこでも何とか”」
「”何とか”って何だよ!小さな異次元な!いや、覚えなくていいけどさ」
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「それで?何を探してんだ?」
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「カバンだよ」
「はぁ?新しいの買や良いじゃねぇか」
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ゴソゴソッジャブジャブッと弄るように探し、ようやくそれらしき物をひっ掴んだ。
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引き上げた物は、ボロボロでくたくたの使い古されたバッグ。
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