一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

文字の大きさ
633 / 718
第十五章 終焉

第二十九話 ホッと一息……

しおりを挟む
「本日は私どもの旅館に置いでくださり、ありがとうございます。ラルフ御一行様は全て無料にてお世話させていただきますので何なりとお申し付けくださいませ」

 深々と頭を下げるのはジュードの議長。顔がトロけそうなほどの笑顔で心の底から迎え入れてくれた。
 ジュードという国はオークの脅威に曝されており、いつ攻めてくるのかと恐怖に震えて眠れぬ夜を過ごしていた。魔障壁がオークたちの侵攻を止めていたので侵入されることはないのだが、日増しに数を増していく野良オークたちに国民の心も疲弊していくばかり。

 そんな時に現れたのがラルフたちだ。港を通さずに侵入して来た密入国者。しかし何か盗みを働いたり、住民に怪我を負わせたりなどの反社会的活動などせず、オークたちをバタバタと薙ぎ倒した。その上エルフの王、森王と直接会う機会を賜わり、エルフと国交を開くことにもなった。願ったことが願った以上にトントン拍子に進んでいく。

 これらをもたらしてくれたラルフ一行には感謝しても仕切れず、また任務として報酬を渡そうにも高額すぎてとてもじゃないが払える額ではない。苦肉の策として最高級旅館に泊まっていただき、極上のサービスを受けてもらうことでチャラにしようとしていた。

 八大地獄の時といい、困ったら旅館に押し込めるのは、お金がない国の唯一の方法と言って過言ではない。

「どうも。遠慮なく使わせてもらうぜ」

 ラルフはチーム代表の立場から答える。議長は手揉みをしながら何度も頭を下げつつ部屋を後にした。

「結構良いところじゃない?ベッドもふかふかだし」

 アンノウンは真っ先にベッドを確保したようだ。修学旅行中の学生のような楽しんでいる感じが滲み出ている。

「ここは高級旅館だぞ?全体のグレードが他に比べたら段違いって奴だ。最安値の旅館にも泊まれなかった俺が言うのも何だが……」

 ラルフは当時を思い出してちょっと複雑な表情を見せる。ベルフィアは舌打ちを一つする。

「暗いワ。それはもう払拭しタも同然じゃろ?今を堪能せい今を」

「うんうん、その通りだね。ベルフィアも良いこと言うじゃん」

「恐縮に御座います。ミーシャ様」

 周りもワイワイと騒がしくなってくる。特にデュラハン姉妹は人族の国に戦争以外で過ごすことが稀なので、好奇心増し増しでいろんなものに触れている。それぞれが楽しむのを側で見ていて、ラルフは少し考え込む。

「……やっぱ浮遊要塞を失ったのは痛いな……。何か別に代用出来る物を探すべきなんじゃないか?」

「そうね、休息は重要よね。自分から動かなくても常に移動してくれるものがあれば楽で良いし、その分早く目的地に着ける。でもあれは灰燼から奪ったものだよ?他にああいうのを知らないし、下手したら一から作るってことにならない?」

「一からってのはロマンがあるけど現実的じゃないな。俺たちだけで作ってたんじゃ一生無理っぽいし……」

 ベッドがあり、キッチンがあり、くつろぐためのスペースがある。帰るべき家のような移動要塞。藤堂と八大地獄のせいで沈んだ大切な拠点。

「一からってのは出来なくはないんじゃないかな?」

 アンノウンはニヤリと笑った。

「ほら、私の特異能力は召喚魔法だよ?例えば鍛治の神ヘパイストスを召喚して物を作らせれば……」

「いや、そこは建築の神にしろよ」

「あ、すいません。ヘパイストスは建築の神でもあるのでそこは大丈夫かと……お、思います」

 横入りした歩は恥ずかしそうに俯いた。アンノウンの補足を兼ねた口出しだったため、アンノウンは肩をポンポンと軽く叩く。

「歩の言う通り、ヘパイストスなら大丈夫。きっと作れる」

 アンノウンの自信にラルフは眉間のシワを緩める。

「そっか。ならアンノウンに任せよう。なら次は形だな。複雑なのはやめて船とかにするのが良いんじゃねーか?」

「在り来たりだけど移動してるってイメージにはピッタリか……」

「妾は断然”城”じゃな。空に浮かぶ城を想像してみぃ、格好ええぞ?」

「ああ、ラ○ュタね。悪くないけど難しそう」

 あーでもないこーでもないと言った議論の中、ミーシャの腹の虫が小さく鳴った。ラルフはすくっと立ち上がる。

「腹が減ったよな。飯食いながらでも話せるし、早速呼び付けるとするか。高級料理を無料で舌鼓なんて控えめに言って最高じゃんか」

 軽口を叩くラルフだったが、その直後に不思議なことが起こった。

(やけに周りが遅く見える……これはあれか?楽しそうな状況に浸りたいがために見せている俺の脳みその混乱か、はたまたサトリの”何か”だろうか?)

 楽しんで笑い合っているジュリアやメラ、ウィーたちの姿がゆっくり動いているように見える。映像のスローモーション機能を突然起動したような不思議な光景だった。

「ま、どっちみち粋な計らいだな……え?」

 全てがスロー再生の空間において、普通に口が動いたことに違和感が芽生えた。やはり神の……サトリの仕業なのだろうか。

「──見つけたぞ。ラルフ」

 ラルフは自分以外に普通に動く人物に出会でくわす。

「?……どっかで会いましたか?」

 禍々しい鎧に身を包んだ男と思しき人物に首を傾げて訪ねた。

「我が名はジラル=ヘンリー=マクマイン!貴様の息の根を止めに参上した!!」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

男女比1:15の貞操逆転世界で高校生活(婚活)

大寒波
恋愛
日本で生活していた前世の記憶を持つ主人公、七瀬達也が日本によく似た貞操逆転世界に転生し、高校生活を楽しみながら婚活を頑張るお話。 この世界の法律では、男性は二十歳までに5人と結婚をしなければならない。(高校卒業時点は3人) そんな法律があるなら、もういっそのこと高校在学中に5人と結婚しよう!となるのが今作の主人公である達也だ! この世界の経済は基本的に女性のみで回っており、男性に求められることといえば子種、遺伝子だ。 前世の影響かはわからないが、日本屈指のHENTAIである達也は運よく遺伝子も最高ランクになった。 顔もイケメン!遺伝子も優秀!貴重な男!…と、驕らずに自分と関わった女性には少しでも幸せな気持ちを分かち合えるように努力しようと決意する。 どうせなら、WIN-WINの関係でありたいよね! そうして、別居婚が主流なこの世界では珍しいみんなと同居することを、いや。ハーレムを目標に個性豊かなヒロイン達と織り成す学園ラブコメディがいま始まる! 主人公の通う学校では、少し貞操逆転の要素薄いかもです。男女比に寄っています。 外はその限りではありません。 カクヨムでも投稿しております。

世界最強の賢者、勇者パーティーを追放される~いまさら帰ってこいと言われてももう遅い俺は拾ってくれた最強のお姫様と幸せに過ごす~

aoi
ファンタジー
「なぁ、マギそろそろこのパーティーを抜けてくれないか?」 勇者パーティーに勤めて数年、いきなりパーティーを戦闘ができずに女に守られてばかりだからと追放された賢者マギ。王都で新しい仕事を探すにも勇者パーティーが邪魔をして見つからない。そんな時、とある国のお姫様がマギに声をかけてきて......? お姫様の為に全力を尽くす賢者マギが無双する!?

異世界だろうがソロキャンだろう!? one more camp!

ちゃりネコ
ファンタジー
ソロキャン命。そして異世界で手に入れた能力は…Awazonで買い物!? 夢の大学でキャンパスライフを送るはずだった主人公、四万十 葦拿。 しかし、運悪く世界的感染症によって殆ど大学に通えず、彼女にまでフラれて鬱屈とした日々を過ごす毎日。 うまくいかないプライベートによって押し潰されそうになっていた彼を救ったのはキャンプだった。 次第にキャンプ沼へのめり込んでいった彼は、全国のキャンプ場を制覇する程のヘビーユーザーとなり、着実に経験を積み重ねていく。 そして、知らん内に異世界にすっ飛ばされたが、どっぷりハマっていたアウトドア経験を駆使して、なんだかんだ未知のフィールドを楽しむようになっていく。 遭難をソロキャンと言い張る男、四万十 葦拿の異世界キャンプ物語。 別に要らんけど異世界なんでスマホからネットショッピングする能力をゲット。 Awazonの商品は3億5371万品目以上もあるんだって! すごいよね。 ――――――――― 以前公開していた小説のセルフリメイクです。 アルファポリス様で掲載していたのは同名のリメイク前の作品となります。 基本的には同じですが、リメイクするにあたって展開をかなり変えているので御注意を。 1話2000~3000文字で毎日更新してます。

高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません

下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。 横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。 偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。 すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。 兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。 この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。 しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。

最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。

みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。 高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。 地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。 しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

掘鑿王(くっさくおう)~ボクしか知らない隠しダンジョンでSSRアイテムばかり掘り出し大金持ち~

テツみン
ファンタジー
『掘削士』エリオットは、ダンジョンの鉱脈から鉱石を掘り出すのが仕事。 しかし、非戦闘職の彼は冒険者仲間から不遇な扱いを受けていた。 ある日、ダンジョンに入ると天災級モンスター、イフリートに遭遇。エリオットは仲間が逃げ出すための囮(おとり)にされてしまう。 「生きて帰るんだ――妹が待つ家へ!」 彼は岩の割れ目につるはしを打ち込み、崩落を誘発させ―― 目が覚めると未知の洞窟にいた。 貴重な鉱脈ばかりに興奮するエリオットだったが、特に不思議な形をしたクリスタルが気になり、それを掘り出す。 その中から現れたモノは…… 「えっ? 女の子???」 これは、不遇な扱いを受けていた少年が大陸一の大富豪へと成り上がっていく――そんな物語である。

俺たちYOEEEEEEE?のに異世界転移したっぽい?

くまの香
ファンタジー
 いつもの朝、だったはずが突然地球を襲う謎の現象。27歳引きニートと27歳サラリーマンが貰ったスキル。これ、チートじゃないよね?頑張りたくないニートとどうでもいいサラリーマンが流されながら生きていく話。現実って厳しいね。

処理中です...