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第十五章 終焉
第二十八話 勝機は何処に?
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力を制御されたエレクトラの前に現れたミーシャ。圧倒的有利から圧倒的不利へとあっという間に転落し、肉体の崩壊はもはや幾ばくもない。
『このぉ……!!図に乗るなぁ!!』
ボワッ
体から溢れ出る魔力。エレクトラは特異能力だけが能ではなく、通常通り魔力を使用することも出来る。でもそれは付け焼き刃にしか過ぎず、魔力戦はほとんど初めてだ。もしこれだけで勝負を挑むなら、そう長くは戦えないだろう。
だがそれで良い。エレクトラの狙いはアンチフィールドからの脱出であり、撹乱だけ出来ればその隙にスルリと効果範囲から出てまた仕切り直せる。そうと決まれば両手に魔力を集中させ、攻撃のタイミングを窺う。
『私に近付けばまた彼方へと吹き飛ばしてやるっ!!だからそこを退けぇっ!!』
ドンッ
空気を震わし、放たれる魔力砲。二つのビームの向かう先はミーシャ。しかしその砲撃はミーシャの魔障壁に簡単に防がれる。瞬き一つしないミーシャの眼光にエレクトラの背筋は凍る。
『……まだだ!!』
一度防がれたぐらいでは折れない。魔力の続く限り撃ち続ける。諦めない先にこそ勝機があると信じて──。
*
そこは白い空間。いつもの見慣れた光景に頭を抱えたくなった。
もう肉体は消滅して抱える手も無いのだが……。
『貴様もかエレクトラ』
その声に意識を集中させる。
『……ユピテルね』
いつからそこに居たのか、ユピテルはこの空間に溶け込む様な白い椅子の上に腕を組んで鎮座している。他にももう一つの気配があることに気づく。
『アトムまで帰って来てたなんて……あなたたち二人きりなのは珍しいわね』
『好きでここにこうして居ると思うのか?我々は負けたのだよ』
『へぇ、負けたねぇ……。ならばすぐ再戦を仕掛ければ良いじゃない?こんなところで腐ってなくて、即殺しに行けば気持ちも晴れると思うのだけど?』
エレクトラの言っていることは正しい。ここは言うなれば神々の復活地点。
自らが作り出した肉人形に意識を入れ、神は下界へと降りる。何らかの事情でアバターを破壊された時、アバターは消滅して意識だけがここに戻ってくる。つまりはアバターさえ作れば何度でも制限なく降りられる。
アトムはアバターを作るのを面倒臭がり、元々いる下界の生き物に取り憑いて意識ごと肉体を奪ってしまう。神々の間でも何度か議論を開いたくらい悪質な行動だが、結果は『まぁ創造主だし』で片付けられている。
エレクトラの殺伐とした問い掛けに対し、ユピテルが無言で指を差すことで答えた。あそこを見ろと言わんばかりの雰囲気に流されて視線を向けた先にはサトリの姿があった。
『……サトリのせいで面倒なことになってるわよ?』
『ふふっ、その様ですね。あなたほどの特異能力を以(もっ)てしてもミーシャに勝てませんでしたか。私の創造物を誇るべきか、はたまたあなたがたの実力不足に言及すべきか迷っています』
『何だと!?貴様ぁっ!!』
憤慨するユピテル。ここまで言われて平気なのは今この場には居ない。アトムもエレクトラも怒っているが、言葉に出していないだけだ。サトリはヘラヘラ笑わって煽っている。
『そんなに怒ってもここからは出してあげませんよ?』
『……えっ封鎖?嘘でしょ?!ここで私たちを封じて何になるの?!』
『邪魔なので出て行かないでくださいってしてるだけです』
『あなたはどうなの?!ここから出ていけなくちゃ、あいつらの動向なんて探れないでしょ!?それでもいいわけ?!』
『私が居なくたって、自分で自分を見つけて旅立てる子達です。私は信じているので大丈夫なんです』
サトリの困った様な、それでいて爽やかな笑みは彼女の強固な意志を感じ、身を呈してでも神の進出を防ごうとしている。
『ふんっ、困った奴だ。とはいえ、どう転んでも時間の問題であろうな。未だイリヤもネレイドも戻っては居ないし……いつでも出られる様に、ここでこうしてゆるりと奴らを殺す手段を考えるのも悪くは無い。我らの時間は無限。大いに利用せねばサトリにも失礼だろう?』
アトムは今までの無策を改め、サトリの奇行によって出来た時間で戦法を考え始めた。神の力は戻っているのだ。もっと良い戦術が浮かぶだろう。
四柱は沈黙する。次に動きがあるのは下界で猛威を振るおうとしている残り六柱の内の誰かが戻って来た時だろう……。
*
「……え?今見えなかったんだけど……」
ラルフはミーシャの振り抜いた拳の先で消えていくエレクトラの姿を見ながら呟いた。ミーシャは拳を胸元に戻し、ラルフに向かってピースサインを送る。
「へっ、敵わねぇな……流石だぜ」
エレクトラとの勝負は何とか死人も出さずに終わった。
野良オークの討伐を終えた西の大陸はエルフが占拠し、ヒューマンの居住区”ジュード”は長い歴史の中で初めて魔障壁を解除することとなる。
『このぉ……!!図に乗るなぁ!!』
ボワッ
体から溢れ出る魔力。エレクトラは特異能力だけが能ではなく、通常通り魔力を使用することも出来る。でもそれは付け焼き刃にしか過ぎず、魔力戦はほとんど初めてだ。もしこれだけで勝負を挑むなら、そう長くは戦えないだろう。
だがそれで良い。エレクトラの狙いはアンチフィールドからの脱出であり、撹乱だけ出来ればその隙にスルリと効果範囲から出てまた仕切り直せる。そうと決まれば両手に魔力を集中させ、攻撃のタイミングを窺う。
『私に近付けばまた彼方へと吹き飛ばしてやるっ!!だからそこを退けぇっ!!』
ドンッ
空気を震わし、放たれる魔力砲。二つのビームの向かう先はミーシャ。しかしその砲撃はミーシャの魔障壁に簡単に防がれる。瞬き一つしないミーシャの眼光にエレクトラの背筋は凍る。
『……まだだ!!』
一度防がれたぐらいでは折れない。魔力の続く限り撃ち続ける。諦めない先にこそ勝機があると信じて──。
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そこは白い空間。いつもの見慣れた光景に頭を抱えたくなった。
もう肉体は消滅して抱える手も無いのだが……。
『貴様もかエレクトラ』
その声に意識を集中させる。
『……ユピテルね』
いつからそこに居たのか、ユピテルはこの空間に溶け込む様な白い椅子の上に腕を組んで鎮座している。他にももう一つの気配があることに気づく。
『アトムまで帰って来てたなんて……あなたたち二人きりなのは珍しいわね』
『好きでここにこうして居ると思うのか?我々は負けたのだよ』
『へぇ、負けたねぇ……。ならばすぐ再戦を仕掛ければ良いじゃない?こんなところで腐ってなくて、即殺しに行けば気持ちも晴れると思うのだけど?』
エレクトラの言っていることは正しい。ここは言うなれば神々の復活地点。
自らが作り出した肉人形に意識を入れ、神は下界へと降りる。何らかの事情でアバターを破壊された時、アバターは消滅して意識だけがここに戻ってくる。つまりはアバターさえ作れば何度でも制限なく降りられる。
アトムはアバターを作るのを面倒臭がり、元々いる下界の生き物に取り憑いて意識ごと肉体を奪ってしまう。神々の間でも何度か議論を開いたくらい悪質な行動だが、結果は『まぁ創造主だし』で片付けられている。
エレクトラの殺伐とした問い掛けに対し、ユピテルが無言で指を差すことで答えた。あそこを見ろと言わんばかりの雰囲気に流されて視線を向けた先にはサトリの姿があった。
『……サトリのせいで面倒なことになってるわよ?』
『ふふっ、その様ですね。あなたほどの特異能力を以(もっ)てしてもミーシャに勝てませんでしたか。私の創造物を誇るべきか、はたまたあなたがたの実力不足に言及すべきか迷っています』
『何だと!?貴様ぁっ!!』
憤慨するユピテル。ここまで言われて平気なのは今この場には居ない。アトムもエレクトラも怒っているが、言葉に出していないだけだ。サトリはヘラヘラ笑わって煽っている。
『そんなに怒ってもここからは出してあげませんよ?』
『……えっ封鎖?嘘でしょ?!ここで私たちを封じて何になるの?!』
『邪魔なので出て行かないでくださいってしてるだけです』
『あなたはどうなの?!ここから出ていけなくちゃ、あいつらの動向なんて探れないでしょ!?それでもいいわけ?!』
『私が居なくたって、自分で自分を見つけて旅立てる子達です。私は信じているので大丈夫なんです』
サトリの困った様な、それでいて爽やかな笑みは彼女の強固な意志を感じ、身を呈してでも神の進出を防ごうとしている。
『ふんっ、困った奴だ。とはいえ、どう転んでも時間の問題であろうな。未だイリヤもネレイドも戻っては居ないし……いつでも出られる様に、ここでこうしてゆるりと奴らを殺す手段を考えるのも悪くは無い。我らの時間は無限。大いに利用せねばサトリにも失礼だろう?』
アトムは今までの無策を改め、サトリの奇行によって出来た時間で戦法を考え始めた。神の力は戻っているのだ。もっと良い戦術が浮かぶだろう。
四柱は沈黙する。次に動きがあるのは下界で猛威を振るおうとしている残り六柱の内の誰かが戻って来た時だろう……。
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「……え?今見えなかったんだけど……」
ラルフはミーシャの振り抜いた拳の先で消えていくエレクトラの姿を見ながら呟いた。ミーシャは拳を胸元に戻し、ラルフに向かってピースサインを送る。
「へっ、敵わねぇな……流石だぜ」
エレクトラとの勝負は何とか死人も出さずに終わった。
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