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第十五章 終焉
第四十四話 白絶の憂鬱
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「……随分……数が減った……」
白絶は魚人族の数を見ながら何気なく呟いた。それもこれも闇の神イリヤとの戦闘によるもの。彼女の圧倒的な力で無敵戦艦カリブティスは砕かれ、破壊の余波に巻き込まれたマーマンは否応無く絶命した。
肉弾戦で突っ込んでいった戦士たちが闇に取り込まれることで生き延び、比較的安全であるはずの戦艦内で女子供ほか、守るべき非戦闘員たちの大半が還らぬ人になるという皮肉。王族の血縁もここで絶えたので、栄光のマーマン帝国は滅んだと言える。
白絶に支配されてからこっち、既に滅んでいたと言って差し支えないが、王族の死が決定打となった。
悲しみにくれるマーマンたちだったが、いつまでもメソメソしていられない。今後は白絶の部下として、その命を全うするのが生きる糧となるだろう。
白の騎士団の一人”氷突”と呼ばれるイッカクに似た魚人、名はギルレホーン。
彼は類稀な身体能力と生まれついての鋭く長い二本の牙で海の治安を守ってきた。海の中において彼の右に出る人族は存在しないとまで言わしめた最強の戦士。
そんな彼の戦いの舞台は海ということもあり、その名が陸にまで届くことはほとんど無かった。白の騎士団でも特殊枠に据えられ、強力でありながらも使い勝手の悪さから不遇な立ち位置に追いやられていたほどだ。
しかし彼はそんな境遇に不服を申し立てる暇もない。白絶の脅威にさらされ、灰燼の要塞の攻撃に曝され、王子の復讐劇に駆り出されたかと思えば、返り討ちで白絶の部下となる。その後は帝国の消滅。
マーマンとして生まれたことが彼の最大の不幸だったと落ち着きそうだ。
「白絶様。先ほど探査班が強い魔力を検知しました。例の浮遊要塞が海底山脈の先に沈没しているものと思われます」
ギルレホーンは白絶の前で頭を垂れながら報告をする。白絶はしばらくその後頭部を眺めていたが、興味を失ったように視線をそらす。その態度を側で見ていた白絶の側近である上級魔族テテュースが代わりに答える。
「長らくの捜索ご苦労様でした。ですが予定より遅れています。要塞を発見次第早急に引き揚げ作業を行って下さい。引き続きご苦労をお掛けします」
「お任せを!」
さらに腰を低くして踵を返す。ギルレホーンが下がり、近くにマーマンが居ないことを確認すると、テテュースは頭を下げた。白絶はその行動から肩の力を抜き、ため息をつく。
「……もっと早く……見つけられると……期待した……」
白絶は苛立ちと不満から眉間にシワを寄せた。心からの怒りをヒシヒシと感じていたテテュースは頭を上げることなく謝罪する。
「申し訳ございません。私が付いていながら……」
「……良い……探査系は軒並み死んだ……どんな風に指示を出そうとも……どの道……かなりの時間を要したのは……想像に難くない……今回は仕方ないと……諦めよう……」
そう、白絶とて分かっている。海の支配者としての意地と尊厳から無謀にも神に挑んでしまい、為す術なく敗北したことを……。
マーマンには気の毒なことをしたが、ここ数日は苛立ちが募る一方だ。
それというのもラルフに啖呵を切ってから十数日、ようやく手に入れたのは魔力という手がかり程度。
あと何日すれば沈んだ要塞をこの目に出来るのか、気持ちばかりが先行し、二進も三進も行かない。
全ては慢心の強行突破が招いた自分のせいだ。他に当たれないから余計に腹が立つ。
「……こんなことなら……いっそラルフたちに任せて……引き揚げをこっちでやるとか……考えるべきだった……」
今更なことを呟いてしまう。誰かに任せたり、予定を組んだりなどしてこなかったからこそ必要な時に慌てる。臨機応変に物事に着手出来ない。
ぶっつけ本番、行き当たりばったりが彼女の癖だ。結果として良いことはあまり無い。
実はこの性格、草臥れたハットが似合う男の性格とよく似ている。本人は用意周到を謳うが、どちらかというとぶっつけ本番、行き当たりばったりを多用している。
「おーい……っ!」
聞き覚えのある声が届く。見なくたって分かる。件の男、ラルフがやって来たのだと。
その声の主に目をやると、ラルフとミーシャ、側近のイミーナとベルフィアの計四名が飛んでくるのが目に映る。これから国一つ滅亡させようかと言い出しかねないほど凄まじい戦力を有している。
「……丁度良いね……折角だから……手伝ってもらおう……」
渡りに船とはこのこと。
到着早々ラルフたちに恥を忍んで一緒に探すことを提案する。ラルフは快く快諾してくれた。
「いいぜ。何でもござれってか?まぁ、どうせ暇だしな」
白絶は魚人族の数を見ながら何気なく呟いた。それもこれも闇の神イリヤとの戦闘によるもの。彼女の圧倒的な力で無敵戦艦カリブティスは砕かれ、破壊の余波に巻き込まれたマーマンは否応無く絶命した。
肉弾戦で突っ込んでいった戦士たちが闇に取り込まれることで生き延び、比較的安全であるはずの戦艦内で女子供ほか、守るべき非戦闘員たちの大半が還らぬ人になるという皮肉。王族の血縁もここで絶えたので、栄光のマーマン帝国は滅んだと言える。
白絶に支配されてからこっち、既に滅んでいたと言って差し支えないが、王族の死が決定打となった。
悲しみにくれるマーマンたちだったが、いつまでもメソメソしていられない。今後は白絶の部下として、その命を全うするのが生きる糧となるだろう。
白の騎士団の一人”氷突”と呼ばれるイッカクに似た魚人、名はギルレホーン。
彼は類稀な身体能力と生まれついての鋭く長い二本の牙で海の治安を守ってきた。海の中において彼の右に出る人族は存在しないとまで言わしめた最強の戦士。
そんな彼の戦いの舞台は海ということもあり、その名が陸にまで届くことはほとんど無かった。白の騎士団でも特殊枠に据えられ、強力でありながらも使い勝手の悪さから不遇な立ち位置に追いやられていたほどだ。
しかし彼はそんな境遇に不服を申し立てる暇もない。白絶の脅威にさらされ、灰燼の要塞の攻撃に曝され、王子の復讐劇に駆り出されたかと思えば、返り討ちで白絶の部下となる。その後は帝国の消滅。
マーマンとして生まれたことが彼の最大の不幸だったと落ち着きそうだ。
「白絶様。先ほど探査班が強い魔力を検知しました。例の浮遊要塞が海底山脈の先に沈没しているものと思われます」
ギルレホーンは白絶の前で頭を垂れながら報告をする。白絶はしばらくその後頭部を眺めていたが、興味を失ったように視線をそらす。その態度を側で見ていた白絶の側近である上級魔族テテュースが代わりに答える。
「長らくの捜索ご苦労様でした。ですが予定より遅れています。要塞を発見次第早急に引き揚げ作業を行って下さい。引き続きご苦労をお掛けします」
「お任せを!」
さらに腰を低くして踵を返す。ギルレホーンが下がり、近くにマーマンが居ないことを確認すると、テテュースは頭を下げた。白絶はその行動から肩の力を抜き、ため息をつく。
「……もっと早く……見つけられると……期待した……」
白絶は苛立ちと不満から眉間にシワを寄せた。心からの怒りをヒシヒシと感じていたテテュースは頭を上げることなく謝罪する。
「申し訳ございません。私が付いていながら……」
「……良い……探査系は軒並み死んだ……どんな風に指示を出そうとも……どの道……かなりの時間を要したのは……想像に難くない……今回は仕方ないと……諦めよう……」
そう、白絶とて分かっている。海の支配者としての意地と尊厳から無謀にも神に挑んでしまい、為す術なく敗北したことを……。
マーマンには気の毒なことをしたが、ここ数日は苛立ちが募る一方だ。
それというのもラルフに啖呵を切ってから十数日、ようやく手に入れたのは魔力という手がかり程度。
あと何日すれば沈んだ要塞をこの目に出来るのか、気持ちばかりが先行し、二進も三進も行かない。
全ては慢心の強行突破が招いた自分のせいだ。他に当たれないから余計に腹が立つ。
「……こんなことなら……いっそラルフたちに任せて……引き揚げをこっちでやるとか……考えるべきだった……」
今更なことを呟いてしまう。誰かに任せたり、予定を組んだりなどしてこなかったからこそ必要な時に慌てる。臨機応変に物事に着手出来ない。
ぶっつけ本番、行き当たりばったりが彼女の癖だ。結果として良いことはあまり無い。
実はこの性格、草臥れたハットが似合う男の性格とよく似ている。本人は用意周到を謳うが、どちらかというとぶっつけ本番、行き当たりばったりを多用している。
「おーい……っ!」
聞き覚えのある声が届く。見なくたって分かる。件の男、ラルフがやって来たのだと。
その声の主に目をやると、ラルフとミーシャ、側近のイミーナとベルフィアの計四名が飛んでくるのが目に映る。これから国一つ滅亡させようかと言い出しかねないほど凄まじい戦力を有している。
「……丁度良いね……折角だから……手伝ってもらおう……」
渡りに船とはこのこと。
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