648 / 718
第十五章 終焉
第四十三話 ヘパイストス
しおりを挟む
神々の息もつかせぬ攻防から解放されてより一ヶ月が経過しようとしていた。
イリヤとの決着の後、ラルフたちは居住区域ジュードから離れ、ひと山越えた先の丘でロッジを建てて過ごしていた。
アンノウンの召喚獣”ヘパイストス”と呼ばれる鍛治の神を使用して雨風を凌げる小屋を建てたのだ。鍛治の神と言っても実際は名ばかりの、アンノウンがこうあって欲しいと創造した物言わぬ職人である。現在はヘパイストスを複数体召喚し、移動要塞を建造中だ。
「……要塞というより船って感じだけどな」
ラルフはポツリと呟く。アンノウンは得意げに胸を張った。
「空を航行する船ってロマンあるでしょ?にしても、よくこれだけの鉱石を集めたものね」
その視線の先にはドワーフからもらった船の材料である鉱石が、堆く円錐状に積み上がり、存在感を主張する。
「ああ、ウィーのお陰さ。ドワーフの鍛冶場で働く代わりに鉱石をもらうって交換条件を出したんだ。そしたらこの通り……って、おいおい何だその顔?俺がウィーを出稼ぎに行かせてるとでも言いたげだな」
「違うの?」
「誤解するのも無理はねぇが違う。最初は俺も反対してたんだぜ?どうしても行きたいって体全身で訴えてきたから仕方なくって感じだな。多分鍛治師としての血が騒ぐとかその辺じゃねぇかと睨んでるが……ドワーフ連中もウィーを先生と崇めて技術をもらおうとしてるし、あいつにとっちゃ今が一番楽しんじゃねぇかと思ってるぜ」
ドワーフは頑固な堅物で知られているが、技術と酒にはもっぱら弱い。ウィーの技術に目を見張り、試行錯誤の末に自分たちの技術を磨いていく。ウィーが喋れない中にあっても「技術は目で盗むもの」を地で行く彼らにはそこまで不自由するものでもなかったようだ。
技術の向上を見る度にウィーに感謝をし、食べ物を献上している姿は少し滑稽だったが、そんなにまで求められる存在であったウィーの姿は誇らしかった。
かつてはドワーフの王と対立してでもウィーを守ろうとしたが、実は大きなお世話だったのかもしれない。
「守るべきは同種のゴブリンに対してだけだったようだな……」
魔族が激減した昨今、世界の情勢は変わっている。今まで日和って争いに参戦しなかったゴブリンたちは目の色を変えたように各地へと侵攻し、領土の拡大を図っていた。彼らは今や人類の敵となりつつある。
「ラルフー!」
遠くで呼んでいる声がする。ミーシャが手を振っているのが見えた。ラルフは手を振り返しながら鼻で笑う。
「やっと起きたみたいだな。昨日夜更かししてたんだぜ?朝起きらんねぇぞって言ったんだけどな」
「何それ、惚気?未成年の私にして良い会話なんだよね?」
「当たり前だ。俺がオススメの本を紹介したら延々と読んでただけってオチ。それじゃ後はよろしく頼むぜ」
ラルフはアンノウンと別れてミーシャと合流する。イミーナとベルフィアも一緒に行動していたようで、一気に四人が集まる形となる。
「建造は調子が良いみタいじゃノぅ。出来上がルノが楽しみじゃて」
ヘパイストスがゴーレムのように休みなく作っているお陰で作業効率が良い。その上、最高の腕前。完璧なものになることは約束されたも同然である。
「召喚魔法と言いましたか?会得出来るものなら是非ご教授願いたいですね」
「いや、無理だろ。あれは特異能力だぜ?アンノウンの再現なんて誰にも出来やしない。不可能だよ。……つっても召喚魔法は実在していて、文献にも残ってて、その上魔法陣は同じ形。やろうと思えば出来るのかもしれねぇな」
とかなんとか軽口をたたいたが、本心では召喚魔法をラーニングすることは不可能だろうと考えている。藤堂源之助や八大地獄の連中が、初めてこの世界に来た複数人の中の一人がこの力に覚醒した可能性もある。即ち召喚魔法などはじめから存在しなかった説だ。
アンノウンと初めての出会った時、召喚の魔法陣にいの一番に反応を示したのはラルフだったが、今は召喚魔法など存在しなかった説がラルフの中で勝手に有力視されている。
「ねぇ、あれって動力源はどうするの?ガワだけじゃ動かないでしょ?」
「前のを使えば良いって白絶の案さ。上手いことサルベージしてくれりゃ良いんだけどな」
白絶はイリヤとの戦いで敗北を喫し、結果ラルフに助けられた。この恩を返すべく、彼女は海へと出向いたのである。
「今暇だし白絶の元に行ってみっか?」
「良いじゃん!行こ行こ!」
ラルフの質問に即座に反応を示すミーシャ。この瞬間にベルフィアとイミーナも一緒に行かなくてはならなくなった。イミーナの苛立ちなどどこ吹く風のラルフは、プチ旅行をブレイド他、皆に伝えて大陸から飛び出した。
イリヤとの決着の後、ラルフたちは居住区域ジュードから離れ、ひと山越えた先の丘でロッジを建てて過ごしていた。
アンノウンの召喚獣”ヘパイストス”と呼ばれる鍛治の神を使用して雨風を凌げる小屋を建てたのだ。鍛治の神と言っても実際は名ばかりの、アンノウンがこうあって欲しいと創造した物言わぬ職人である。現在はヘパイストスを複数体召喚し、移動要塞を建造中だ。
「……要塞というより船って感じだけどな」
ラルフはポツリと呟く。アンノウンは得意げに胸を張った。
「空を航行する船ってロマンあるでしょ?にしても、よくこれだけの鉱石を集めたものね」
その視線の先にはドワーフからもらった船の材料である鉱石が、堆く円錐状に積み上がり、存在感を主張する。
「ああ、ウィーのお陰さ。ドワーフの鍛冶場で働く代わりに鉱石をもらうって交換条件を出したんだ。そしたらこの通り……って、おいおい何だその顔?俺がウィーを出稼ぎに行かせてるとでも言いたげだな」
「違うの?」
「誤解するのも無理はねぇが違う。最初は俺も反対してたんだぜ?どうしても行きたいって体全身で訴えてきたから仕方なくって感じだな。多分鍛治師としての血が騒ぐとかその辺じゃねぇかと睨んでるが……ドワーフ連中もウィーを先生と崇めて技術をもらおうとしてるし、あいつにとっちゃ今が一番楽しんじゃねぇかと思ってるぜ」
ドワーフは頑固な堅物で知られているが、技術と酒にはもっぱら弱い。ウィーの技術に目を見張り、試行錯誤の末に自分たちの技術を磨いていく。ウィーが喋れない中にあっても「技術は目で盗むもの」を地で行く彼らにはそこまで不自由するものでもなかったようだ。
技術の向上を見る度にウィーに感謝をし、食べ物を献上している姿は少し滑稽だったが、そんなにまで求められる存在であったウィーの姿は誇らしかった。
かつてはドワーフの王と対立してでもウィーを守ろうとしたが、実は大きなお世話だったのかもしれない。
「守るべきは同種のゴブリンに対してだけだったようだな……」
魔族が激減した昨今、世界の情勢は変わっている。今まで日和って争いに参戦しなかったゴブリンたちは目の色を変えたように各地へと侵攻し、領土の拡大を図っていた。彼らは今や人類の敵となりつつある。
「ラルフー!」
遠くで呼んでいる声がする。ミーシャが手を振っているのが見えた。ラルフは手を振り返しながら鼻で笑う。
「やっと起きたみたいだな。昨日夜更かししてたんだぜ?朝起きらんねぇぞって言ったんだけどな」
「何それ、惚気?未成年の私にして良い会話なんだよね?」
「当たり前だ。俺がオススメの本を紹介したら延々と読んでただけってオチ。それじゃ後はよろしく頼むぜ」
ラルフはアンノウンと別れてミーシャと合流する。イミーナとベルフィアも一緒に行動していたようで、一気に四人が集まる形となる。
「建造は調子が良いみタいじゃノぅ。出来上がルノが楽しみじゃて」
ヘパイストスがゴーレムのように休みなく作っているお陰で作業効率が良い。その上、最高の腕前。完璧なものになることは約束されたも同然である。
「召喚魔法と言いましたか?会得出来るものなら是非ご教授願いたいですね」
「いや、無理だろ。あれは特異能力だぜ?アンノウンの再現なんて誰にも出来やしない。不可能だよ。……つっても召喚魔法は実在していて、文献にも残ってて、その上魔法陣は同じ形。やろうと思えば出来るのかもしれねぇな」
とかなんとか軽口をたたいたが、本心では召喚魔法をラーニングすることは不可能だろうと考えている。藤堂源之助や八大地獄の連中が、初めてこの世界に来た複数人の中の一人がこの力に覚醒した可能性もある。即ち召喚魔法などはじめから存在しなかった説だ。
アンノウンと初めての出会った時、召喚の魔法陣にいの一番に反応を示したのはラルフだったが、今は召喚魔法など存在しなかった説がラルフの中で勝手に有力視されている。
「ねぇ、あれって動力源はどうするの?ガワだけじゃ動かないでしょ?」
「前のを使えば良いって白絶の案さ。上手いことサルベージしてくれりゃ良いんだけどな」
白絶はイリヤとの戦いで敗北を喫し、結果ラルフに助けられた。この恩を返すべく、彼女は海へと出向いたのである。
「今暇だし白絶の元に行ってみっか?」
「良いじゃん!行こ行こ!」
ラルフの質問に即座に反応を示すミーシャ。この瞬間にベルフィアとイミーナも一緒に行かなくてはならなくなった。イミーナの苛立ちなどどこ吹く風のラルフは、プチ旅行をブレイド他、皆に伝えて大陸から飛び出した。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。
玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!?
成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに!
故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。
この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。
持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。
主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。
期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。
その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。
仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!?
美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。
この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。
生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。
水定ゆう
ファンタジー
村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。
異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。
そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。
生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!
※とりあえず、一時完結いたしました。
今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。
その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります
すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。
なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!
冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。
ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。
そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。
俺が死んでから始まる物語
石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。
だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。
余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。
そこからこの話は始まる。
セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる