一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

文字の大きさ
664 / 718
第十五章 終焉

エピローグ

しおりを挟む
「何とも不思議な感覚じゃノぅ。戦おうと構えとっタノにいつノ間にか終ワっとルというノは……」

 ベルフィアは驚きを隠せない。戦闘狂の自分が戦線に立つことも出来ないなんて考えもしない。それというのもアルテミスの能力の範囲が広過ぎて、いつ自分が感情を押し殺されたのか理解出来なかったのが大きい。
 それはエレノアやイミーナも同じで、戦いに参加せずとも戦況を見守り、思考することくらいはしていた。ただボケーっと何もしないというのは初めての出来事だった。

「でもさぁ、やれば出来るもんだよねぇ。ラルフがこんなにも活躍するだなんてぇ思いも寄らなかったよ」

 エレノアの言葉にみんな頷く。特に気にも留められていなかった男が最強の魔王ミーシャに出会い、何やかやあって誰もが無視できないレベルにまで到達する。単なる人間風情がいつの間にか有名になり、神に愛されるまでになっていた。強くしてもらい、特異能力に恵まれたお陰でここまで生きてこられた悪運だけの男。

「まるで夢でも見ているかのような感じです。俺たちはアスロンさんが用意してくれた小屋で人生を終えるものだと思っていましたから」

「それは妾とて同じこと。ミーシャ様が起こして下さらねば……いや、こうして旅ノ同行を許して下さらねばどうなってタか検討も付かん。ブレイドノ言う通り、夢でも見ていルヨうじゃ」

 ここにいる者たちにはとって誰もが当てはまることだった。特にエレノアに関しては息子との再会を果たしている。魔族ではないブレイドを匿い続けることが出来なかったために夫に託すも、生活のためどうにかしようとした矢先に処刑されてしまった。息子も一緒に死んだものと思っていただけに嬉しいサプライズだった。
 ここには居ないがウィーだってゴブリンの里から連れ出していなければ、ゴブリンに単なる武器製造機として扱われていたことは想像に難くない。
 もちろん嬉しいことばかりではない。ジュリアはミーシャが死んでいれば兄も”牙狼”も失うことはなかったし、魔獣人もしっかり生き残って繁栄していたかもしれない。デュラハン姉妹も一人も欠ける事なく生き残り、死を振りまいていたかもしれない。イミーナもミーシャを殺した功績で魔王となって黒の円卓を牛耳るまでになっていたかもしれない。
 たくさんのもしもがある中にあって、成ってしまったことを今更無しには出来ないが、これで良かったのだと思える時が一瞬でもあるのなら、それこそが正解の道なのだと諦めもつく。それが今なのなら尚更文句はない。

「おいおい、何を総括してんだよ。まだ俺は死んでねーぞ?」

 ゼアルたちをおちょくって帰ってきたミーシャとラルフ。ブレイドたちの話に呆れつつ、ハットを被り直しながら肩を竦めた。

「そうよね。これからもっと良いことがありそうな感じなのに、ここで終わるのは勿体無いもん」

「はっ!そノ通りでございます。ミーシャ様」

 ベルフィアと黒影がススっとミーシャの脇に侍り、頭を下げている。

「ぬ?おどれはエレノアノ家臣じゃろがい。何をしゃしゃり出ておルか」

「そのようなことはございませんともベルフィア様。私は魔王様の部下、皆様方のために身を粉にする所存」

「そうか、立派な心掛けじゃ」

「恐れ入ります」

 敬愛する魔王に対する気持ちは同じもの。ならば排除することはない。共に手を携えるのが良いとベルフィアは考え、ご満悦といった表情を見せた。

「気持ちの悪い話だな」

 そんな雰囲気をぶち壊すのは八大地獄のロングマン。藤堂を含めて全員戻ってきた。

「あら?逃げるかと思っていましたが、戻ってきたのですか?」

 イミーナは意外そうな顔でロングマンに目をやる。

「利害の一致という奴だ。もう少しだけここに居ようと思ってな……」

「そなタノ様な人間に居てもらっても邪魔なだけじゃが、それにしても気持ち悪いとはどういうことじゃ?妾に対し、説明ノ必要があルと思うノだが……」

 バチバチと睨み合う二人。両者一方も譲らない雰囲気にやれやれといった感じでブレイドがラルフを見た。

「ラルフさ……?!アルル!!」

 そこにはうつ伏せに倒れたラルフの姿があった。何が起こったのか分からなかったが、すぐに治療が必要だと感じてアルルを呼ぶ。ラルフを仰向けにすると口から血を流し、昏倒しているのが分かった。
 マクマインとの戦いは熾烈を極めた。何とかして勝つためには痛みを我慢して戦うしか方法が無かった。偽るつもりなどハナっからない。あれがラルフの戦い方であり、勝ち方なのだ。つい今し方痛みを忘れて動けたのは我慢の限界を超え、頭がハイになっていたからだと思われる。ラルフの意識外では体の限界を迎えていたのだった。

「ラルフ!!」

 ミーシャは分からなかった。普通に話すラルフに違和感を感じられなかった。意識のないラルフをただ見ていることしか出来ない。
 アルテミスとの戦いは終わった。マクマインとの戦いも終わった。しかしその代償は……。



『あり得んにゃ!!!』

 アルテミスは憤慨していた。自滅により神のリスポーン地点に戻されたアルテミスは、その聖域に閉じ込められることになった。サトリが神の再びの地上訪問を、自らも聖域に封印する形で阻害していたのだ。道理でユピテルやアトムがあっさり諦めたわけだと理解した。

『もうあの子たちのことは忘れてしまってください。魔族が侵攻してきた時もこうして放っておいたではありませんか』

『あの時とは違うにゃ!次元渡りは始末しておかなければダメにゃ!』

『ラルフは大丈夫です』

『にゃんの根拠があるんにゃ!!?』

 押し問答は続いている。サトリは一方的に諦めろと言い、アルテミスは次元渡りの危険を説く。これでは埒が明かないし、何よりうるさい。

『もう辞めい。サトリが本気になった今、どうすることも出来ん。我々を出さんがためにここまで用意周到に準備されたのでは出ることは叶わんからな……』

『お前はいっつもそうにゃ!諦めグセは一生治らんにゃ!!』

 ヘイトがアトムに変わったことでちょっと余裕が出たサトリはニコニコと笑う。順調に神を下し、自分たちの思うがままに生きる娘たちを誇りに思ってしまう。いけないことだと分かっているからこそ余計にそう感じる。
 ほくほくとした気持ちが表情に表れている中、急にサトリの顔が驚きに変わる。その変化を見逃さなかったユピテルとイリヤが訝しげに聞いた。

『何だ?』『どうかしましたか?』

 聞いた直後、ユピテルとイリヤも気付く。この聖域にいてはいけない異物の存在に。

「おいおい、何だここ?参ったなぁ……今度は真っ白な空間に出ちまったぞ?」

 草臥れたハットの男。そのシルエットは神の目に焼き付いた。

『え……ラ、ラルフ?』

「あ、サトリ。こんなとこに居たのか?」

 ラルフはどういうわけか聖域に足を踏み入れた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

レベルが上がらない【無駄骨】スキルのせいで両親に殺されかけたむっつりスケベがスキルを奪って世界を救う話。

玉ねぎサーモン
ファンタジー
絶望スキル× 害悪スキル=限界突破のユニークスキル…!? 成長できない主人公と存在するだけで周りを傷つける美少女が出会ったら、激レアユニークスキルに! 故郷を魔王に滅ぼされたむっつりスケベな主人公。 この世界ではおよそ1000人に1人がスキルを覚醒する。 持てるスキルは人によって決まっており、1つから最大5つまで。 主人公のロックは世界最高5つのスキルを持てるため将来を期待されたが、覚醒したのはハズレスキルばかり。レベルアップ時のステータス上昇値が半減する「成長抑制」を覚えたかと思えば、その次には経験値が一切入らなくなる「無駄骨」…。 期待を裏切ったため育ての親に殺されかける。 その後最高レア度のユニークスキル「スキルスナッチ」スキルを覚醒。 仲間と出会いさらに強力なユニークスキルを手に入れて世界最強へ…!? 美少女たちと冒険する主人公は、仇をとり、故郷を取り戻すことができるのか。 この作品はカクヨム・小説家になろう・Youtubeにも掲載しています。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

【完結】妖精を十年間放置していた為SSSランクになっていて、何でもあり状態で助かります

すみ 小桜(sumitan)
ファンタジー
 《ファンタジー小説大賞エントリー作品》五歳の時に両親を失い施設に預けられたスラゼは、十五歳の時に王国騎士団の魔導士によって、見えていた妖精の声が聞こえる様になった。  なんと十年間放置していたせいでSSSランクになった名をラスと言う妖精だった!  冒険者になったスラゼは、施設で一緒だった仲間レンカとサツナと共に冒険者協会で借りたミニリアカーを引いて旅立つ。  ラスは、リアカーやスラゼのナイフにも加護を与え、軽くしたりのこぎりとして使えるようにしてくれた。そこでスラゼは、得意なDIYでリアカーの改造、テーブルやイス、入れ物などを作って冒険を快適に変えていく。  そして何故か三人は、可愛いモモンガ風モンスターの加護まで貰うのだった。

俺が死んでから始まる物語

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていたポーター(荷物運び)のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもないことは自分でも解っていた。 だが、それでもセレスはパーティに残りたかったので土下座までしてリヒトに情けなくもしがみついた。 余りにしつこいセレスに頭に来たリヒトはつい剣の柄でセレスを殴った…そして、セレスは亡くなった。 そこからこの話は始まる。 セレスには誰にも言った事が無い『秘密』があり、その秘密のせいで、死ぬことは怖く無かった…死から始まるファンタジー此処に開幕

異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜

KeyBow
ファンタジー
 間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。  何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。  召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!  しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・  いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。  その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。  上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。  またぺったんこですか?・・・

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

処理中です...