一般トレジャーハンターの俺が最強の魔王を仲間に入れたら世界が敵になったんだけど……どうしよ?

大好き丸

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最終章

第三十三話 儲け話

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「あ、遅かったね。散歩でもしてた?」

 ラルフ達が帰ってきたのに真っ先に気づいたアンノウンは手を上げて迎え入れた。留守番していたベルフィア達と談笑していたらしく、見た感じ八大地獄以外の面子が揃っているようだった。

「お帰りなさいませミーシャ様。そして申し訳ございません。妾がほんノ少し席を外していタばかりに戦いに参加出来ず……」

 ベルフィアはミーシャの前で跪くと頭を下げて反省の意を示した。ミーシャは首を振って「気にするな」と答えたが、ラルフは目を逸らしながらポツリと呟く。

「……いや、居ても連れてこなかったけどな」

 ベルフィアに聞こえるかどうか怪しいくらいの声量。だがどれだけ小さくしても吸血鬼の鋭敏な耳には関係ないらしく、ベルフィアの鋭い目はラルフを睨んだ。
 恐怖を感じたラルフはアンノウンに早速魔鉱石を渡すことにした。

「あら。ドワーフのところには行かないとお聞きしましたが、わたくしの聞き間違いだったでしょうか?」

 デュラハンの長女メラはドスンと置かれた大量の魔鉱石に口元を隠しながら目を丸くしている。これには妹のイーファが答えた。

「イルレアンの魔法省にはアルルのお母様がいらっしゃると聞いてます。いわゆるツテという奴ですよ」

 末っ子のアイリーンも目を輝かせていたが、シャークは興味がないようだ。

「もらえるものを片端からって感じだったけど、もらったのがどれも質が良くて参ったぜ。それはそれで魔法省は大丈夫なのかよって心配になるくらいにはな」

 ラルフは得意満面といった様子で踏ん反り返っている。でもイーファが既にアルルのツテであることをバラしているのでこの功績はアルルのものだ。特に褒めることもない。

「アイナさんはお元気ぃ?」

 エレノアはアルルとブレイドの二人に近寄る。本当はイルレアンについて行きたかったが、あまり大所帯になるのは目立つだろうと断念した。安全に帰ってくることを信じて送り出したのだ。

「はい!弟たち共々元気でした!」

 アルルはいつも以上にテンション高めで報告した。「弟さん居たの?」から女性陣で会話が弾む。先の戦いが嘘のようだと平和を噛みしめる。ラルフは一息つくとキョロキョロと辺りを見渡した。

「……そういえばここに居ない連中はどこにいった?」

「歩なら船の上。まだ細部にこだわってる。男の子だよねぇほんと」

 アンノウンは若干呆れたように肩を竦める。

「ふーん、俺も後で登ろっと。それでロングマン達は?」

「さぁ?その辺歩いてるんじゃないかな?」

 アンノウンがテキトーに答えたのを聞いてジュリアが反応する。

「アタシモ気ニシテイナカッタカラ何トモ言エナイケド、野放シハ不味カッタワネ……探ソウカ?」

 鼻先をトントンと指で叩いて得意な索敵をアピールする。

「そうだな。戦艦完成までは争い事は勘弁して欲しいし、黒影と一緒に行ってくれるか?相手は魔王に近い力を持っているから、何かあったら即座に撤退で。あと……出来れば穏便に頼むぜ」

「アア、分カッタ」

 ジュリアは黒影と目が合うように指笛でコンタクトを取る。気付いた黒影がジュリアと目配せをすると、ジェスチャーを用いて意思疎通を取り始めた。

「お、お前ら……いつの間にそんなに発展したんだ?」

「ン?何ヲ勘違意シテイル?コレハ我等魔獣人ニ伝ワル”口要ラズ”ト呼バレル伝達方法ダ。主ニ戦闘特化ノ魔獣人ガ狩猟ノ時ニ使用スルモノヨ。黒影ハ頭ガ良イカラ殆ドノ伝達方法を納メテイルッテ兄カラ聞イテタシ、実際暇潰シニ何度カ試シタカラ問題ハ無イ」

「そ、そうか。じゃよろしくな」

 無理矢理納得させたラルフを訝しむジュリアだったが、黒影に置いて行かれるわけには行かなかったのでその場を後にした。

「……ヒューマンと魔族のハーフがいるんだから、シャドーアイと魔獣人の子供も……」

「ラルフ。やめて」

 魔獣人はほぼ絶滅しているので、交わるのも止む無しだと考える。それはそれでロマンのある話だが、アンノウンには不評だった。
 何はともあれ肝心の魔鉱石も手に入れた。戦艦の完成まで後わずかと行ったところ。

「おお!こりゃ随分と綺麗な石だなぁ。まるで水晶のようだぁ」

 いつそこに居たのか、藤堂は魔鉱石を摘んで持ち上げたりしている。中でも気になったのはソフィーの頭からへし折った一角人ホーンの角だ。通常の魔鉱石など目じゃないほどの価値がある。

「お目が高い。こいつは裏社会で売ればとんでもない値打ちが付くお宝だ。何せホーンから取ったものだからな」

 ラルフは角を持ち上げ、弄ぶ。

「一昔前はホーンハンターなんて職を裏社会で作ったそうだが、ホーンやホーン友好国からの報復による締め付けが酷くて一ヶ月で廃業しちまったらしい。今では取引をした時点で重罪だが、それでも需要があって角を欲しがる大富豪が後を絶たないって噂だ」

 ピッと頭上に放り、目線の高さでキャッチする。

「それが計8本。凄ぇ金になりそうじゃねぇか?」

「お金なんている?これから外に出ようってのに……」

 これから多次元に行こうという時に手に入れた金策アイテム。ラルフは「だよなぁ……」とガッカリした態度を見せた。

「それは貴金属にでも替えちまえば良いんじゃぁねぇかい?俺の世界でも金や銀は価値のあるものだからよぉ。人の文明があればその世界の通貨が手に入るかもしれねぇぜ?」

「マジで?あんじゃん使い道!」

 藤堂の言にラルフは良いことを聞いたと喜ぶ。

『あっあー。それはオススメしないかな』

 そこに現れたのは女児。指を左右に倒しながらチッチッチと舌打ちでリズムを取る。

「アシュタロト……!?ったく、さっきやり合ったばっかじゃねぇか。また戦おうってのか?」

『そうじゃないさ。僕は君たちの門出を祝おうと恥を忍んでここまで来たのさ』

 アシュタロトの出現に皆が気付き、ミーシャが前に出た。

「さっきボコボコにしたのに性懲りのない奴」

「待った!待ってくれミーシャ!ブレイドもだ!そいつを下ろせ。頼む」

 ミーシャが前に出るのと同時に構えていたブレイドは、ラルフが言うならと渋々武器を下ろす。

『ありがとうラルフ。これでゆっくり話が出来るね』

「ああ……それで?貴金属への換金を止めて何をオススメしようってんだ?」

 アシュタロトはフッフーンと鼻を鳴らした。

『君はルカ=ルヴァルシンキという男を知っているかい?』

「ルカ=ルヴァル……?どっかで聞いたこと……ああ。人形師パペットマスターか」
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