追放された貴族は《再構築》の力で世界を直す

自ら

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第5章 王国との激突

第41話「再構築要塞」

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矢の応酬が続く中、王国軍の攻城兵器が前線に展開された。巨大な投石機が五台、破城槌が三台、そして攻城塔が二台。それらは、城壁を破壊するために作られた、戦争の象徴だった。投石機の腕が、ゆっくりと引かれていく。その先端には、人の頭ほどもある石が据えられている。

「攻城兵器が来ます!」

見張りの兵士が叫んだ。城壁の上の兵士たちが、緊張した表情で攻城兵器を見つめる。レオンも、それを見て眉をひそめた。投石機の威力は、侮れない。一撃で城壁に大きな損傷を与えることができる。

「盾を構えろ!魔法使いは防護壁の準備を!」

レオンが叫ぶと、兵士たちが動いた。盾を掲げ、身を低くする。セリアたち魔法使いは、呪文を唱え始めた。

最初の投石機が、解放された。腕が激しく振り上げられ、石が空を飛ぶ。それは、まるで隕石のように城壁へ向かってくる。兵士たちが、息を呑んだ。

石が、城壁に激突した。轟音と共に、石の破片が飛び散る。城壁が激しく揺れ、兵士たちがバランスを失った。レオンは、すぐに城壁の損傷を確認した。表面に大きな亀裂が入っている。

「くそっ、一撃でこれか」

ルークが、舌打ちした。

「まだだ。これくらいなら、再構築で直せる」

レオンは、亀裂に手を当てた。再構築の力を発動する。青白い光が広がり、亀裂が塞がっていく。だが、その時、第二、第三の石が飛んできた。

連続して城壁に激突する。轟音が響き、さらに亀裂が増えていく。レオンは、必死に修復を続けた。だが、攻撃の速度に、修復が追いつかない。

「レオン、このままじゃ持たないぞ」

カイルが、レオンの隣に来た。彼も、再構築の力で城壁を補強しようとしている。

「わかってる。だが、どうすれば」

レオンの額に、汗が浮かんだ。魔力の消耗も激しい。このままでは、城壁が崩れる前に、自分の魔力が尽きてしまう。

その時、城壁の一部が大きく崩れた。投石が、同じ場所に三発続けて命中したのだ。石の塊が崩落し、城壁に大きな穴が開く。

「城壁が崩れた!」

兵士たちの悲鳴が上がった。王国軍が、その穴を見て歓声を上げる。グレイソン将軍が、すかさず命令を出した。

「突撃隊、前進せよ!あの穴から侵入しろ!」

重装騎兵の一隊が、穴へ向かって突進を始めた。その数は、百騎。地面が揺れ、砂塵が舞い上がる。

「まずい!」

レオンは、崩れた場所へ駆けた。そこを塞がなければ、敵が侵入してくる。だが、この大きさの穴を塞ぐには、膨大な魔力が必要だ。

「レオン、待て」

セリアが、レオンを止めた。彼女の表情は、真剣だった。

「このままでは、あなたの魔力が持ちません」
「だが、塞がなければ」
「別の方法があります」

セリアは、懐から小さな水晶を取り出した。それは、世界の断片だ。

「これを使ってください」
「世界の断片を?だが、あれは危険だ」

レオンは、躊躇した。世界の断片の力は、強大だ。だが、制御を誤れば、町全体が崩壊する可能性がある。

「今は、選択の余地がありません」

セリアは、水晶をレオンの手に握らせた。

「あなたなら、制御できます。信じてください」

レオンは、水晶を見つめた。その中で、七色の光が脈動している。この力を使えば、城壁を修復できる。いや、それ以上のことができる。だが、代償も大きい。

「レオン」

カイルが、レオンの肩を叩いた。

「俺も手伝う。二人なら、制御できる」
「カイル......」
「迷ってる暇はないぞ。敵が来る」

カイルは、城壁の穴を見た。重装騎兵が、もう目前まで迫っている。

「わかった。やろう」

レオンは、決断した。



レオンとカイルは、崩れた城壁の前に立った。二人は、互いに手を取り合う。そして、世界の断片に手を当てた。

瞬間、強烈な光が二人を包んだ。膨大な魔力が、体内に流れ込んでくる。それは、まるで奔流のようだった。レオンの意識が、拡張していく。町全体の構造が、手に取るように理解できる。城壁、建物、地面、すべてが見える。

「カイル、見えるか」
「ああ、見える。これが、世界の断片の力か」

二人は、同時に再構築の力を発動した。だが、今回は規模が違う。個別の修復ではない。町全体を、一つの要塞として再構築する。

青白い光が、町全体を包んだ。地面が揺れ、空気が震える。城壁が、まるで生き物のように動き始めた。

崩れた部分が、瞬時に修復される。それだけではない。城壁全体が、高く伸びていく。元の高さの二倍、いや三倍。巨大な壁が、空へ向かって聳え立つ。

「何だ、あれは!」

王国軍の兵士たちが、驚愕の声を上げた。目の前で、城壁が巨大化している。その光景は、まるで悪夢のようだった。

だが、それは始まりに過ぎなかった。城壁の表面から、石の腕が伸びてきた。巨大な腕が、まるで意思を持っているかのように動く。その腕が、迫ってくる重装騎兵を掴んだ。

「うわあああ!」

騎士たちの悲鳴が響く。石の腕が、彼らを持ち上げて、遠くへ投げ飛ばした。馬と共に、空を飛ぶ騎士たち。地面に叩きつけられて、動かなくなる。

「攻城兵器を破壊しろ」

レオンが念じると、石の腕が攻城兵器へ向かった。投石機を掴み、力を込める。木材が軋み、やがて砕け散った。破城槌も、攻城塔も、次々と破壊されていく。

「ば、馬鹿な......」

グレイソン将軍は、信じられないという表情で呟いた。自分の目の前で、攻城兵器が次々と破壊されていく。あれだけの兵器を用意するのに、どれだけの時間と資金がかかったか。それが、一瞬で無に帰した。

「将軍、これは......魔法ですか?」

副官が、震える声で聞いた。

「いや、これは魔法なんかじゃない」

グレイソンは、城壁を見上げた。

「これは、神の力だ」

城壁だけではない。地面も変化していた。王国軍の前線に、突然、落とし穴が出現する。兵士たちが、次々と落ちていく。穴の深さは、五メートルほど。落ちた兵士は、這い上がることができない。

さらに、地面が隆起して、壁になる。通路が塞がれ、進軍ルートが遮断される。王国軍の隊列が、分断された。左翼と右翼が、互いに見えなくなる。

「これは......迷路か」

グレイソンは、状況を理解した。地形そのものが、敵の武器になっている。この中を進めば、いつ落とし穴に落ちるか、いつ壁に阻まれるか、わからない。

「全軍、撤退!一時撤退だ!」

グレイソンの命令が、ラッパで伝えられた。王国軍が、慌てて後退を始める。だが、後退すらも容易ではなかった。来た道が、既に塞がれている。兵士たちは、混乱しながら別のルートを探す。

城壁の上で、兵士たちが歓声を上げた。

「勝った!敵が逃げていく!」
「すごい、城壁が動いた!」
「これが、再構築の力か!」

歓喜の声が、城壁を満たす。誰もが、信じられないという表情だ。だが、その目には、希望の光が宿っている。

ルークは、石の腕を見上げて、豪快に笑った。

「はははっ!すげえな、レオン!お前、本当に化け物だ!」

セリアは、複雑な表情で城壁を見ていた。喜びと、同時に不安。世界の断片の力は、予想以上だった。これほどの力を、本当に制御できるのだろうか。

ルリアは、レオンの元へ駆けた。だが、その途中で足を止めた。レオンの姿を見て、息を呑む。

レオンは、その場に膝をついていた。全身から汗が流れ、顔は青白い。カイルも同じだった。二人とも、激しく呼吸している。

「レオン!」

ルリアが駆け寄ると、レオンは辛うじて顔を上げた。

「大丈夫、だ......少し、疲れただけ」
「嘘です。あなた、魔力を使いすぎています」

ルリアは、レオンの額に手を当てた。熱い。魔力の過剰使用で、体が悲鳴を上げている。

「水を......」
「すぐに持ってきます」

ルリアが立ち上がろうとすると、レオンが彼女の手を掴んだ。

「町は、守れたか」
「はい。守れました。あなたのおかげです」

ルリアの目に、涙が浮かんだ。

「だから、もう休んでください」
「ああ......」

レオンは、そのまま意識を失った。



レオンが目を覚ましたのは、数時間後だった。城の医療室のベッドに寝かされている。体が重く、指先一つ動かすのも辛い。

「目が覚めましたか」

隣で、セリアが本を読んでいた。レオンに気づいて、本を閉じる。

「どのくらい、寝ていた」
「三時間ほどです」

セリアは、水差しから水をコップに注いだ。

「飲んでください」

レオンは、セリアに支えられながら水を飲んだ。喉が、砂漠のように乾いていた。

「町は?」
「無事です。王国軍は、完全に撤退しました」

セリアは、窓の外を見た。

「あなたの再構築で、城壁は難攻不落の要塞になりました」
「そうか......」

レオンは、安堵の息をついた。だが、同時に不安もあった。あれだけの力を使ってしまった。次に、同じことができるだろうか。

「レオンさん」

セリアが、真剣な表情で言った。

「世界の断片の力は、危険です。今回は、カイルさんと二人だったから制御できました。でも、一人では無理です」
「わかっている」
「それに」

セリアは、レオンの手を取った。

「あなたの体も、限界に近づいています。魔力の過剰使用は、命に関わります」
「大丈夫だ。まだ戦える」
「無理をしないでください」

セリアの声は、懇願するようだった。

「あなたが倒れたら、この町はどうなりますか」

レオンは、何も答えられなかった。確かに、セリアの言う通りだ。自分が倒れれば、町の士気は崩壊する。だが、戦いはまだ終わっていない。

その夜、王国軍の陣営では、緊急の作戦会議が開かれていた。グレイソン将軍を中心に、副官たちが集まっている。誰もが、暗い表情をしていた。

「今日の敗北は、痛い」

グレイソンが口を開いた。

「攻城兵器をすべて失った。そして、兵士の士気も下がっている」
「将軍、あの城壁を、どうやって攻略するんですか」

一人の副官が聞いた。

「正攻法では、無理です。あれは、もはや城壁ではありません。生きている要塞です」
「わかっている」

グレイソンは、地図を見た。

「だからこそ、戦術を変える。力押しではなく、策略で攻める」
「策略、ですか」
「ああ。まず、敵の指揮官を精神的に追い詰める」

グレイソンは、一通の手紙を取り出した。

「彼女を呼べ。この戦いに、彼女の力が必要だ」
「エリーゼ様を、ですか」

副官が、驚いた表情を見せた。

「はい。レオン・アーデルハイトの、元婚約者を」

グレイソンは、冷たく笑った。

「彼女なら、レオンの心を揺さぶることができる」



翌朝、リコンストラクト自由国では、勝利の余韻がまだ残っていた。兵士たちは、昨日の戦いを語り合い、城壁の変貌を讃えている。町の人々も、避難所から戻り、普段の生活を取り戻しつつあった。

だが、レオンは浮かない表情だった。執務室で、カイルと二人で話している。

「まだ、終わっていない」

レオンが言った。

「王国軍は、必ず次の手を打ってくる」
「ああ。あのグレイソン将軍は、諦めるような男じゃない」

カイルも頷いた。

「次は、どんな攻撃が来ると思う」
「わからない。だが、力押しではないだろう。昨日の敗北で、それが無意味だと理解したはずだ」
「なら、策略か」
「おそらく」

レオンは、窓の外を見た。北の方角に、王国軍の陣営がある。

「あいつらは、何を企んでいる」

その答えは、翌日明らかになる。城門の前に、一人の使者が現れた。だが、それは昨日の騎士ではなかった。若い女性だった。金色の髪、気品のある顔立ち、貴族の装い。

そして、レオンが知っている顔だった。

「エリーゼ......」

城壁の上から、レオンはその女性を見て、呆然とした。彼女は、レオンの元婚約者、エリーゼ・ヴァレンタインだった。追放の日、何も言えずにレオンを見送った女性。

「レオン・アーデルハイト」

エリーゼの声が、静かに響いた。

「久しぶりね。話がしたいの。降りてきてくれる?」

レオンの心が、激しく揺れた。なぜ、エリーゼがここに。なぜ、王国軍と共に。その疑問と、懐かしさと、怒りが、入り混じる。

「レオン、罠かもしれないぞ」

カイルが、警告した。

「わかっている。だが......」

レオンは、城壁を降りる決断をした。

「行ってくる」

運命の再会が、今、始まろうとしていた。
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