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第5章 王国との激突
第41話「再構築要塞」
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矢の応酬が続く中、王国軍の攻城兵器が前線に展開された。巨大な投石機が五台、破城槌が三台、そして攻城塔が二台。それらは、城壁を破壊するために作られた、戦争の象徴だった。投石機の腕が、ゆっくりと引かれていく。その先端には、人の頭ほどもある石が据えられている。
「攻城兵器が来ます!」
見張りの兵士が叫んだ。城壁の上の兵士たちが、緊張した表情で攻城兵器を見つめる。レオンも、それを見て眉をひそめた。投石機の威力は、侮れない。一撃で城壁に大きな損傷を与えることができる。
「盾を構えろ!魔法使いは防護壁の準備を!」
レオンが叫ぶと、兵士たちが動いた。盾を掲げ、身を低くする。セリアたち魔法使いは、呪文を唱え始めた。
最初の投石機が、解放された。腕が激しく振り上げられ、石が空を飛ぶ。それは、まるで隕石のように城壁へ向かってくる。兵士たちが、息を呑んだ。
石が、城壁に激突した。轟音と共に、石の破片が飛び散る。城壁が激しく揺れ、兵士たちがバランスを失った。レオンは、すぐに城壁の損傷を確認した。表面に大きな亀裂が入っている。
「くそっ、一撃でこれか」
ルークが、舌打ちした。
「まだだ。これくらいなら、再構築で直せる」
レオンは、亀裂に手を当てた。再構築の力を発動する。青白い光が広がり、亀裂が塞がっていく。だが、その時、第二、第三の石が飛んできた。
連続して城壁に激突する。轟音が響き、さらに亀裂が増えていく。レオンは、必死に修復を続けた。だが、攻撃の速度に、修復が追いつかない。
「レオン、このままじゃ持たないぞ」
カイルが、レオンの隣に来た。彼も、再構築の力で城壁を補強しようとしている。
「わかってる。だが、どうすれば」
レオンの額に、汗が浮かんだ。魔力の消耗も激しい。このままでは、城壁が崩れる前に、自分の魔力が尽きてしまう。
その時、城壁の一部が大きく崩れた。投石が、同じ場所に三発続けて命中したのだ。石の塊が崩落し、城壁に大きな穴が開く。
「城壁が崩れた!」
兵士たちの悲鳴が上がった。王国軍が、その穴を見て歓声を上げる。グレイソン将軍が、すかさず命令を出した。
「突撃隊、前進せよ!あの穴から侵入しろ!」
重装騎兵の一隊が、穴へ向かって突進を始めた。その数は、百騎。地面が揺れ、砂塵が舞い上がる。
「まずい!」
レオンは、崩れた場所へ駆けた。そこを塞がなければ、敵が侵入してくる。だが、この大きさの穴を塞ぐには、膨大な魔力が必要だ。
「レオン、待て」
セリアが、レオンを止めた。彼女の表情は、真剣だった。
「このままでは、あなたの魔力が持ちません」
「だが、塞がなければ」
「別の方法があります」
セリアは、懐から小さな水晶を取り出した。それは、世界の断片だ。
「これを使ってください」
「世界の断片を?だが、あれは危険だ」
レオンは、躊躇した。世界の断片の力は、強大だ。だが、制御を誤れば、町全体が崩壊する可能性がある。
「今は、選択の余地がありません」
セリアは、水晶をレオンの手に握らせた。
「あなたなら、制御できます。信じてください」
レオンは、水晶を見つめた。その中で、七色の光が脈動している。この力を使えば、城壁を修復できる。いや、それ以上のことができる。だが、代償も大きい。
「レオン」
カイルが、レオンの肩を叩いた。
「俺も手伝う。二人なら、制御できる」
「カイル......」
「迷ってる暇はないぞ。敵が来る」
カイルは、城壁の穴を見た。重装騎兵が、もう目前まで迫っている。
「わかった。やろう」
レオンは、決断した。
レオンとカイルは、崩れた城壁の前に立った。二人は、互いに手を取り合う。そして、世界の断片に手を当てた。
瞬間、強烈な光が二人を包んだ。膨大な魔力が、体内に流れ込んでくる。それは、まるで奔流のようだった。レオンの意識が、拡張していく。町全体の構造が、手に取るように理解できる。城壁、建物、地面、すべてが見える。
「カイル、見えるか」
「ああ、見える。これが、世界の断片の力か」
二人は、同時に再構築の力を発動した。だが、今回は規模が違う。個別の修復ではない。町全体を、一つの要塞として再構築する。
青白い光が、町全体を包んだ。地面が揺れ、空気が震える。城壁が、まるで生き物のように動き始めた。
崩れた部分が、瞬時に修復される。それだけではない。城壁全体が、高く伸びていく。元の高さの二倍、いや三倍。巨大な壁が、空へ向かって聳え立つ。
「何だ、あれは!」
王国軍の兵士たちが、驚愕の声を上げた。目の前で、城壁が巨大化している。その光景は、まるで悪夢のようだった。
だが、それは始まりに過ぎなかった。城壁の表面から、石の腕が伸びてきた。巨大な腕が、まるで意思を持っているかのように動く。その腕が、迫ってくる重装騎兵を掴んだ。
「うわあああ!」
騎士たちの悲鳴が響く。石の腕が、彼らを持ち上げて、遠くへ投げ飛ばした。馬と共に、空を飛ぶ騎士たち。地面に叩きつけられて、動かなくなる。
「攻城兵器を破壊しろ」
レオンが念じると、石の腕が攻城兵器へ向かった。投石機を掴み、力を込める。木材が軋み、やがて砕け散った。破城槌も、攻城塔も、次々と破壊されていく。
「ば、馬鹿な......」
グレイソン将軍は、信じられないという表情で呟いた。自分の目の前で、攻城兵器が次々と破壊されていく。あれだけの兵器を用意するのに、どれだけの時間と資金がかかったか。それが、一瞬で無に帰した。
「将軍、これは......魔法ですか?」
副官が、震える声で聞いた。
「いや、これは魔法なんかじゃない」
グレイソンは、城壁を見上げた。
「これは、神の力だ」
城壁だけではない。地面も変化していた。王国軍の前線に、突然、落とし穴が出現する。兵士たちが、次々と落ちていく。穴の深さは、五メートルほど。落ちた兵士は、這い上がることができない。
さらに、地面が隆起して、壁になる。通路が塞がれ、進軍ルートが遮断される。王国軍の隊列が、分断された。左翼と右翼が、互いに見えなくなる。
「これは......迷路か」
グレイソンは、状況を理解した。地形そのものが、敵の武器になっている。この中を進めば、いつ落とし穴に落ちるか、いつ壁に阻まれるか、わからない。
「全軍、撤退!一時撤退だ!」
グレイソンの命令が、ラッパで伝えられた。王国軍が、慌てて後退を始める。だが、後退すらも容易ではなかった。来た道が、既に塞がれている。兵士たちは、混乱しながら別のルートを探す。
城壁の上で、兵士たちが歓声を上げた。
「勝った!敵が逃げていく!」
「すごい、城壁が動いた!」
「これが、再構築の力か!」
歓喜の声が、城壁を満たす。誰もが、信じられないという表情だ。だが、その目には、希望の光が宿っている。
ルークは、石の腕を見上げて、豪快に笑った。
「はははっ!すげえな、レオン!お前、本当に化け物だ!」
セリアは、複雑な表情で城壁を見ていた。喜びと、同時に不安。世界の断片の力は、予想以上だった。これほどの力を、本当に制御できるのだろうか。
ルリアは、レオンの元へ駆けた。だが、その途中で足を止めた。レオンの姿を見て、息を呑む。
レオンは、その場に膝をついていた。全身から汗が流れ、顔は青白い。カイルも同じだった。二人とも、激しく呼吸している。
「レオン!」
ルリアが駆け寄ると、レオンは辛うじて顔を上げた。
「大丈夫、だ......少し、疲れただけ」
「嘘です。あなた、魔力を使いすぎています」
ルリアは、レオンの額に手を当てた。熱い。魔力の過剰使用で、体が悲鳴を上げている。
「水を......」
「すぐに持ってきます」
ルリアが立ち上がろうとすると、レオンが彼女の手を掴んだ。
「町は、守れたか」
「はい。守れました。あなたのおかげです」
ルリアの目に、涙が浮かんだ。
「だから、もう休んでください」
「ああ......」
レオンは、そのまま意識を失った。
レオンが目を覚ましたのは、数時間後だった。城の医療室のベッドに寝かされている。体が重く、指先一つ動かすのも辛い。
「目が覚めましたか」
隣で、セリアが本を読んでいた。レオンに気づいて、本を閉じる。
「どのくらい、寝ていた」
「三時間ほどです」
セリアは、水差しから水をコップに注いだ。
「飲んでください」
レオンは、セリアに支えられながら水を飲んだ。喉が、砂漠のように乾いていた。
「町は?」
「無事です。王国軍は、完全に撤退しました」
セリアは、窓の外を見た。
「あなたの再構築で、城壁は難攻不落の要塞になりました」
「そうか......」
レオンは、安堵の息をついた。だが、同時に不安もあった。あれだけの力を使ってしまった。次に、同じことができるだろうか。
「レオンさん」
セリアが、真剣な表情で言った。
「世界の断片の力は、危険です。今回は、カイルさんと二人だったから制御できました。でも、一人では無理です」
「わかっている」
「それに」
セリアは、レオンの手を取った。
「あなたの体も、限界に近づいています。魔力の過剰使用は、命に関わります」
「大丈夫だ。まだ戦える」
「無理をしないでください」
セリアの声は、懇願するようだった。
「あなたが倒れたら、この町はどうなりますか」
レオンは、何も答えられなかった。確かに、セリアの言う通りだ。自分が倒れれば、町の士気は崩壊する。だが、戦いはまだ終わっていない。
その夜、王国軍の陣営では、緊急の作戦会議が開かれていた。グレイソン将軍を中心に、副官たちが集まっている。誰もが、暗い表情をしていた。
「今日の敗北は、痛い」
グレイソンが口を開いた。
「攻城兵器をすべて失った。そして、兵士の士気も下がっている」
「将軍、あの城壁を、どうやって攻略するんですか」
一人の副官が聞いた。
「正攻法では、無理です。あれは、もはや城壁ではありません。生きている要塞です」
「わかっている」
グレイソンは、地図を見た。
「だからこそ、戦術を変える。力押しではなく、策略で攻める」
「策略、ですか」
「ああ。まず、敵の指揮官を精神的に追い詰める」
グレイソンは、一通の手紙を取り出した。
「彼女を呼べ。この戦いに、彼女の力が必要だ」
「エリーゼ様を、ですか」
副官が、驚いた表情を見せた。
「はい。レオン・アーデルハイトの、元婚約者を」
グレイソンは、冷たく笑った。
「彼女なら、レオンの心を揺さぶることができる」
翌朝、リコンストラクト自由国では、勝利の余韻がまだ残っていた。兵士たちは、昨日の戦いを語り合い、城壁の変貌を讃えている。町の人々も、避難所から戻り、普段の生活を取り戻しつつあった。
だが、レオンは浮かない表情だった。執務室で、カイルと二人で話している。
「まだ、終わっていない」
レオンが言った。
「王国軍は、必ず次の手を打ってくる」
「ああ。あのグレイソン将軍は、諦めるような男じゃない」
カイルも頷いた。
「次は、どんな攻撃が来ると思う」
「わからない。だが、力押しではないだろう。昨日の敗北で、それが無意味だと理解したはずだ」
「なら、策略か」
「おそらく」
レオンは、窓の外を見た。北の方角に、王国軍の陣営がある。
「あいつらは、何を企んでいる」
その答えは、翌日明らかになる。城門の前に、一人の使者が現れた。だが、それは昨日の騎士ではなかった。若い女性だった。金色の髪、気品のある顔立ち、貴族の装い。
そして、レオンが知っている顔だった。
「エリーゼ......」
城壁の上から、レオンはその女性を見て、呆然とした。彼女は、レオンの元婚約者、エリーゼ・ヴァレンタインだった。追放の日、何も言えずにレオンを見送った女性。
「レオン・アーデルハイト」
エリーゼの声が、静かに響いた。
「久しぶりね。話がしたいの。降りてきてくれる?」
レオンの心が、激しく揺れた。なぜ、エリーゼがここに。なぜ、王国軍と共に。その疑問と、懐かしさと、怒りが、入り混じる。
「レオン、罠かもしれないぞ」
カイルが、警告した。
「わかっている。だが......」
レオンは、城壁を降りる決断をした。
「行ってくる」
運命の再会が、今、始まろうとしていた。
「攻城兵器が来ます!」
見張りの兵士が叫んだ。城壁の上の兵士たちが、緊張した表情で攻城兵器を見つめる。レオンも、それを見て眉をひそめた。投石機の威力は、侮れない。一撃で城壁に大きな損傷を与えることができる。
「盾を構えろ!魔法使いは防護壁の準備を!」
レオンが叫ぶと、兵士たちが動いた。盾を掲げ、身を低くする。セリアたち魔法使いは、呪文を唱え始めた。
最初の投石機が、解放された。腕が激しく振り上げられ、石が空を飛ぶ。それは、まるで隕石のように城壁へ向かってくる。兵士たちが、息を呑んだ。
石が、城壁に激突した。轟音と共に、石の破片が飛び散る。城壁が激しく揺れ、兵士たちがバランスを失った。レオンは、すぐに城壁の損傷を確認した。表面に大きな亀裂が入っている。
「くそっ、一撃でこれか」
ルークが、舌打ちした。
「まだだ。これくらいなら、再構築で直せる」
レオンは、亀裂に手を当てた。再構築の力を発動する。青白い光が広がり、亀裂が塞がっていく。だが、その時、第二、第三の石が飛んできた。
連続して城壁に激突する。轟音が響き、さらに亀裂が増えていく。レオンは、必死に修復を続けた。だが、攻撃の速度に、修復が追いつかない。
「レオン、このままじゃ持たないぞ」
カイルが、レオンの隣に来た。彼も、再構築の力で城壁を補強しようとしている。
「わかってる。だが、どうすれば」
レオンの額に、汗が浮かんだ。魔力の消耗も激しい。このままでは、城壁が崩れる前に、自分の魔力が尽きてしまう。
その時、城壁の一部が大きく崩れた。投石が、同じ場所に三発続けて命中したのだ。石の塊が崩落し、城壁に大きな穴が開く。
「城壁が崩れた!」
兵士たちの悲鳴が上がった。王国軍が、その穴を見て歓声を上げる。グレイソン将軍が、すかさず命令を出した。
「突撃隊、前進せよ!あの穴から侵入しろ!」
重装騎兵の一隊が、穴へ向かって突進を始めた。その数は、百騎。地面が揺れ、砂塵が舞い上がる。
「まずい!」
レオンは、崩れた場所へ駆けた。そこを塞がなければ、敵が侵入してくる。だが、この大きさの穴を塞ぐには、膨大な魔力が必要だ。
「レオン、待て」
セリアが、レオンを止めた。彼女の表情は、真剣だった。
「このままでは、あなたの魔力が持ちません」
「だが、塞がなければ」
「別の方法があります」
セリアは、懐から小さな水晶を取り出した。それは、世界の断片だ。
「これを使ってください」
「世界の断片を?だが、あれは危険だ」
レオンは、躊躇した。世界の断片の力は、強大だ。だが、制御を誤れば、町全体が崩壊する可能性がある。
「今は、選択の余地がありません」
セリアは、水晶をレオンの手に握らせた。
「あなたなら、制御できます。信じてください」
レオンは、水晶を見つめた。その中で、七色の光が脈動している。この力を使えば、城壁を修復できる。いや、それ以上のことができる。だが、代償も大きい。
「レオン」
カイルが、レオンの肩を叩いた。
「俺も手伝う。二人なら、制御できる」
「カイル......」
「迷ってる暇はないぞ。敵が来る」
カイルは、城壁の穴を見た。重装騎兵が、もう目前まで迫っている。
「わかった。やろう」
レオンは、決断した。
レオンとカイルは、崩れた城壁の前に立った。二人は、互いに手を取り合う。そして、世界の断片に手を当てた。
瞬間、強烈な光が二人を包んだ。膨大な魔力が、体内に流れ込んでくる。それは、まるで奔流のようだった。レオンの意識が、拡張していく。町全体の構造が、手に取るように理解できる。城壁、建物、地面、すべてが見える。
「カイル、見えるか」
「ああ、見える。これが、世界の断片の力か」
二人は、同時に再構築の力を発動した。だが、今回は規模が違う。個別の修復ではない。町全体を、一つの要塞として再構築する。
青白い光が、町全体を包んだ。地面が揺れ、空気が震える。城壁が、まるで生き物のように動き始めた。
崩れた部分が、瞬時に修復される。それだけではない。城壁全体が、高く伸びていく。元の高さの二倍、いや三倍。巨大な壁が、空へ向かって聳え立つ。
「何だ、あれは!」
王国軍の兵士たちが、驚愕の声を上げた。目の前で、城壁が巨大化している。その光景は、まるで悪夢のようだった。
だが、それは始まりに過ぎなかった。城壁の表面から、石の腕が伸びてきた。巨大な腕が、まるで意思を持っているかのように動く。その腕が、迫ってくる重装騎兵を掴んだ。
「うわあああ!」
騎士たちの悲鳴が響く。石の腕が、彼らを持ち上げて、遠くへ投げ飛ばした。馬と共に、空を飛ぶ騎士たち。地面に叩きつけられて、動かなくなる。
「攻城兵器を破壊しろ」
レオンが念じると、石の腕が攻城兵器へ向かった。投石機を掴み、力を込める。木材が軋み、やがて砕け散った。破城槌も、攻城塔も、次々と破壊されていく。
「ば、馬鹿な......」
グレイソン将軍は、信じられないという表情で呟いた。自分の目の前で、攻城兵器が次々と破壊されていく。あれだけの兵器を用意するのに、どれだけの時間と資金がかかったか。それが、一瞬で無に帰した。
「将軍、これは......魔法ですか?」
副官が、震える声で聞いた。
「いや、これは魔法なんかじゃない」
グレイソンは、城壁を見上げた。
「これは、神の力だ」
城壁だけではない。地面も変化していた。王国軍の前線に、突然、落とし穴が出現する。兵士たちが、次々と落ちていく。穴の深さは、五メートルほど。落ちた兵士は、這い上がることができない。
さらに、地面が隆起して、壁になる。通路が塞がれ、進軍ルートが遮断される。王国軍の隊列が、分断された。左翼と右翼が、互いに見えなくなる。
「これは......迷路か」
グレイソンは、状況を理解した。地形そのものが、敵の武器になっている。この中を進めば、いつ落とし穴に落ちるか、いつ壁に阻まれるか、わからない。
「全軍、撤退!一時撤退だ!」
グレイソンの命令が、ラッパで伝えられた。王国軍が、慌てて後退を始める。だが、後退すらも容易ではなかった。来た道が、既に塞がれている。兵士たちは、混乱しながら別のルートを探す。
城壁の上で、兵士たちが歓声を上げた。
「勝った!敵が逃げていく!」
「すごい、城壁が動いた!」
「これが、再構築の力か!」
歓喜の声が、城壁を満たす。誰もが、信じられないという表情だ。だが、その目には、希望の光が宿っている。
ルークは、石の腕を見上げて、豪快に笑った。
「はははっ!すげえな、レオン!お前、本当に化け物だ!」
セリアは、複雑な表情で城壁を見ていた。喜びと、同時に不安。世界の断片の力は、予想以上だった。これほどの力を、本当に制御できるのだろうか。
ルリアは、レオンの元へ駆けた。だが、その途中で足を止めた。レオンの姿を見て、息を呑む。
レオンは、その場に膝をついていた。全身から汗が流れ、顔は青白い。カイルも同じだった。二人とも、激しく呼吸している。
「レオン!」
ルリアが駆け寄ると、レオンは辛うじて顔を上げた。
「大丈夫、だ......少し、疲れただけ」
「嘘です。あなた、魔力を使いすぎています」
ルリアは、レオンの額に手を当てた。熱い。魔力の過剰使用で、体が悲鳴を上げている。
「水を......」
「すぐに持ってきます」
ルリアが立ち上がろうとすると、レオンが彼女の手を掴んだ。
「町は、守れたか」
「はい。守れました。あなたのおかげです」
ルリアの目に、涙が浮かんだ。
「だから、もう休んでください」
「ああ......」
レオンは、そのまま意識を失った。
レオンが目を覚ましたのは、数時間後だった。城の医療室のベッドに寝かされている。体が重く、指先一つ動かすのも辛い。
「目が覚めましたか」
隣で、セリアが本を読んでいた。レオンに気づいて、本を閉じる。
「どのくらい、寝ていた」
「三時間ほどです」
セリアは、水差しから水をコップに注いだ。
「飲んでください」
レオンは、セリアに支えられながら水を飲んだ。喉が、砂漠のように乾いていた。
「町は?」
「無事です。王国軍は、完全に撤退しました」
セリアは、窓の外を見た。
「あなたの再構築で、城壁は難攻不落の要塞になりました」
「そうか......」
レオンは、安堵の息をついた。だが、同時に不安もあった。あれだけの力を使ってしまった。次に、同じことができるだろうか。
「レオンさん」
セリアが、真剣な表情で言った。
「世界の断片の力は、危険です。今回は、カイルさんと二人だったから制御できました。でも、一人では無理です」
「わかっている」
「それに」
セリアは、レオンの手を取った。
「あなたの体も、限界に近づいています。魔力の過剰使用は、命に関わります」
「大丈夫だ。まだ戦える」
「無理をしないでください」
セリアの声は、懇願するようだった。
「あなたが倒れたら、この町はどうなりますか」
レオンは、何も答えられなかった。確かに、セリアの言う通りだ。自分が倒れれば、町の士気は崩壊する。だが、戦いはまだ終わっていない。
その夜、王国軍の陣営では、緊急の作戦会議が開かれていた。グレイソン将軍を中心に、副官たちが集まっている。誰もが、暗い表情をしていた。
「今日の敗北は、痛い」
グレイソンが口を開いた。
「攻城兵器をすべて失った。そして、兵士の士気も下がっている」
「将軍、あの城壁を、どうやって攻略するんですか」
一人の副官が聞いた。
「正攻法では、無理です。あれは、もはや城壁ではありません。生きている要塞です」
「わかっている」
グレイソンは、地図を見た。
「だからこそ、戦術を変える。力押しではなく、策略で攻める」
「策略、ですか」
「ああ。まず、敵の指揮官を精神的に追い詰める」
グレイソンは、一通の手紙を取り出した。
「彼女を呼べ。この戦いに、彼女の力が必要だ」
「エリーゼ様を、ですか」
副官が、驚いた表情を見せた。
「はい。レオン・アーデルハイトの、元婚約者を」
グレイソンは、冷たく笑った。
「彼女なら、レオンの心を揺さぶることができる」
翌朝、リコンストラクト自由国では、勝利の余韻がまだ残っていた。兵士たちは、昨日の戦いを語り合い、城壁の変貌を讃えている。町の人々も、避難所から戻り、普段の生活を取り戻しつつあった。
だが、レオンは浮かない表情だった。執務室で、カイルと二人で話している。
「まだ、終わっていない」
レオンが言った。
「王国軍は、必ず次の手を打ってくる」
「ああ。あのグレイソン将軍は、諦めるような男じゃない」
カイルも頷いた。
「次は、どんな攻撃が来ると思う」
「わからない。だが、力押しではないだろう。昨日の敗北で、それが無意味だと理解したはずだ」
「なら、策略か」
「おそらく」
レオンは、窓の外を見た。北の方角に、王国軍の陣営がある。
「あいつらは、何を企んでいる」
その答えは、翌日明らかになる。城門の前に、一人の使者が現れた。だが、それは昨日の騎士ではなかった。若い女性だった。金色の髪、気品のある顔立ち、貴族の装い。
そして、レオンが知っている顔だった。
「エリーゼ......」
城壁の上から、レオンはその女性を見て、呆然とした。彼女は、レオンの元婚約者、エリーゼ・ヴァレンタインだった。追放の日、何も言えずにレオンを見送った女性。
「レオン・アーデルハイト」
エリーゼの声が、静かに響いた。
「久しぶりね。話がしたいの。降りてきてくれる?」
レオンの心が、激しく揺れた。なぜ、エリーゼがここに。なぜ、王国軍と共に。その疑問と、懐かしさと、怒りが、入り混じる。
「レオン、罠かもしれないぞ」
カイルが、警告した。
「わかっている。だが......」
レオンは、城壁を降りる決断をした。
「行ってくる」
運命の再会が、今、始まろうとしていた。
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一度構築すれば無限に富を生み出す「全自動」のチートスキルで、アルスの商会は瞬く間に世界規模へとスケールしていく!
一方、すべてを失ったギルドは、生産ラインが崩壊し、絶望のどん底へと突き落とされていくのだった……。
異世界で幸せに~運命?そんなものはありません~
存在証明
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不慮の事故によって異世界に転生したカイ。異世界でも家族に疎まれる日々を送るがある日赤い瞳の少年と出会ったことによって世界が一変する。突然街を襲ったスタンピードから2人で隣国まで逃れ、そこで冒険者となったカイ達は仲間を探して冒険者ライフ!のはずが…?!
はたしてカイは運命をぶち壊して幸せを掴むことができるのか?!
火・金・日、投稿予定
投稿先『小説家になろう様』『アルファポリス様』
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
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この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
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〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
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いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
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これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める
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定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。
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