追放された貴族は《再構築》の力で世界を直す

自ら

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第5章 王国との激突

第46話「再構築・極限発動」

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夜明け前、レオンは城の屋上に立っていた。北の方角で、青白い光が不気味に明滅している。それは、昨夜から続いている。光が強くなるたびに、地面がわずかに震える。異常な現象だった。

「あれが、古代兵器か」

レオンは、呟いた。セリアが一晩中調べた結果、あの光の正体が判明していた。古代再構築装置。世界の断片を動力源とする、古代文明の兵器だ。

「レオン」

背後から、セリアの声がした。彼女は、分厚い古代文献を抱えている。徹夜で調査したのだろう、顔色が悪い。

「調査は終わったのか」
「はい。最悪の予想が、的中しました」
セリアは、文献を開いた。そこには、巨大な装置の図解が描かれている。
「古代再構築装置。世界の断片を動力源として、地形を自在に操作する兵器です」
「どのくらいの力だ」
「山を動かし、谷を作り、大地を裂くことができます」

セリアの声は、震えていた。

「そして、これが古代文明を滅ぼしました」
「滅ぼした?」
「はい。装置が暴走して、制御不能になったんです。使用者の精神が耐えられず、装置が意志を持ち始めた」

セリアは、別のページを見せた。そこには、崩壊していく都市の絵が描かれている。

「古代文明は、自らの兵器に滅ぼされたんです」

レオンは、北の光を見つめた。王国は、そんな危険なものを使おうとしている。勝つためなら、世界を滅ぼすことも厭わないのか。

「なら、俺たちがそれを止める」

レオンは、決意を固めた。

「今日、王国軍の本陣を襲撃する」
「襲撃、ですか」

セリアは、驚いた表情を見せた。

「はい。守るだけでは、ジリ貧だ。古代兵器を破壊し、ルークとマルコを救出する」

レオンは、振り返った。

「みんなを集めてくれ。作戦会議をする」

朝、幹部たちが執務室に集まった。全員が、緊張した表情をしている。レオンの表情が、いつになく厳しいからだ。

「王国軍の本陣を襲撃する」

レオンが宣言すると、部屋がざわめいた。

「襲撃、ですか」

ミーナが、不安そうに聞いた。

「はい。古代兵器を破壊し、ルークとマルコを救出する。一石二鳥の作戦だ」
「ですが、危険すぎます」

リナが反対した。

「町を空けるのは、リスクが大きい」
「わかっている」

レオンは頷いた。

「だが、古代兵器を放置すれば、もっと危険だ」

レオンは、セリアから受け取った文献を広げた。

「この兵器は、古代文明を滅ぼした。使用者が制御を失えば、暴走する」
「そうなれば、町も、王国も、すべてが滅びる」

部屋が、重い沈黙に包まれた。

「俺は、攻めに転じるしかないと考える」

レオンは、一人一人の顔を見た。

「だが、これは俺一人の決断ではない。みんなの意見を聞きたい」

しばらくの沈黙の後、カイルが口を開いた。

「俺は、賛成だ」

カイルは、立ち上がった。

「守っているだけでは、いずれ力尽きる。攻めるなら、今だ」
「私も、賛成です」

セリアが続いた。

「古代兵器は、絶対に破壊しなければなりません」
「私も、一緒に行きます」

ルリアが、決然と言った。レオンは、驚いて彼女を見た。

「ルリア、君は町に残るべきだ。危険すぎる」
「いいえ」

ルリアは、首を振った。

「あなたを、一人にはしません」

その目には、揺るぎない決意がある。レオンは、何も言えなくなった。

「では、決まりだ」

村長が言った。

「我々は、町を守ります。レオン様たちは、敵を討ってください」



その日の午後、奇襲部隊が編成された。二十名の精鋭だ。レオン、カイル、ルリア、セリア、そして連合軍から選ばれた十五名。ダリウス卿も、自ら参加を志願した。

「マルコは、俺の部下だ。俺が助ける」

ダリウス卿の声は、力強かった。夕方、奇襲部隊が出発することになった。町の門に、多くの住民が集まっている。見送りのためだ。子どもたちが、レオンに駆け寄ってきた。

「レオン様、頑張ってください」
「必ず、勝ってくださいね」

その無邪気な声に、レオンは笑顔で答えた。

「ああ。必ず、勝つ」

マルコの妻と子どもたちも来ていた。妻は、レオンの手を握った。

「お願いします。夫を、助けてください」
「必ず」

レオンは、強く頷いた。

「必ず、連れて帰ります」

奇襲部隊が、町を出た。人々が、手を振って見送る。その姿が小さくなっていく。

「行こう」

レオンは、前を向いた。北へ。王国軍の本陣へ。



深夜、奇襲部隊は王国軍の陣営近くに到達した。月のない夜を選んだため、闇が濃い。だが、それが隠れ蓑になる。

「警戒線が見える」

カイルが、小声で言った。前方に、松明を持った見張りが立っている。

「俺が、地形を操作する」

カイルは、地面に手を当てた。再構築の力を発動する。地面が、わずかに隆起して、見張りの視界を遮る壁ができた。

「今だ」

奇襲部隊は、壁の影を使って警戒線を突破した。誰にも気づかれない。陣営の中に、侵入成功だ。

だが、その時、周囲が明るくなった。松明の光だ。陣営の兵士たちが、一斉に現れた。その数は、数百。完全に包囲されている。

「待っていたぞ、レオン・アーデルハイト」

グレイソン将軍が、馬上から声をかけた。その顔には、冷たい笑みがある。

「罠か」

レオンは、剣を抜いた。

「ああ。お前が攻めてくることは、予想していた」

グレイソンは、一人の兵士を指差した。その兵士は、マルコだった。ボロボロで、立っているのもやっとの状態だ。

「こいつから、情報を引き出した。お前の作戦は、すべて筒抜けだ」

レオンは、歯噛みした。マルコを拷問したのか。

「さあ、大人しく降伏しろ」

その時、炎が包囲を完成させた。エリーゼだ。彼女が、杖を掲げている。炎の壁が、奇襲部隊を取り囲んだ。

「エリーゼ」

レオンは、彼女を見た。エリーゼの顔には、苦しみの色がある。

「君も、王国の犠牲者だ。なぜ、従い続ける」
「私には、選択肢がないの」

エリーゼの声は、震えていた。

「家族が、人質に取られているから」
「なら、俺たちと来い」

レオンは、エリーゼに手を伸ばした。

「一緒に、戦おう」

エリーゼは、その手を見つめた。だが、杖を下ろすことはできない。

「ごめんなさい」

その時、陣営の一角で爆発が起こった。ダリウス卿と精鋭たちが、捕虜収容所を攻撃したのだ。混乱に乗じて、別働隊が動いていた。

「マルコ!」

ダリウス卿が、マルコを助け出した。縄を切り、肩を支える。

「ダリウス様......」
「喋るな。逃げるぞ」

捕虜収容所の奥には、ルークもいた。彼も、傷だらけだった。だが、その目には、まだ生気がある。

「遅えよ、レオン」

ルークは笑った。

「待ちくたびれたぜ」
「すまない」

ダリウス卿が謝ると、ルークは首を振った。

「いいさ。さあて、借りを返す時間だ」

ルークは、近くに落ちていた斧を拾った。自分の武器ではないが、構わない。

「行くぞ」

ルークとマルコが加わり、奇襲部隊の戦力が増した。だが、まだ包囲は解けていない。

「くそっ、逃がすな」

グレイソンが叫んだ。だが、その時、北の方角で巨大な光が上がった。古代兵器が、起動したのだ。

地面から、巨大な石の構造物が隆起し始めた。それは、まるで古代の神殿のようだった。幾何学的な模様が刻まれ、青白く発光している。

「古代再構築装置か」

セリアが、それを見て呟いた。

「あれを起動させるなんて、正気じゃない」

グレイソンは、装置を見上げた。そして、何かを決断したようだった。

「お前たちを、この場で全滅させる」

グレイソンは、装置に向かって叫んだ。

「起動しろ。敵を殲滅しろ」

装置が、反応した。光が強くなり、地面が激しく揺れ始める。そして、無数の石の槍が地面から出現した。それらは、奇襲部隊に向かって飛んでくる。

「散開!」

レオンが叫ぶと、全員が別方向へ散った。石の槍が、地面に突き刺さる。轟音が響き、土煙が舞い上がった。

だが、それは始まりに過ぎなかった。地面が波打ち、裂け目ができる。重力が歪み、兵士たちが空中に浮き上がった。そして、地面に叩きつけられる。

「これが、古代の力か」

カイルが、呟いた。彼も再構築の力で応戦しようとするが、装置の力は圧倒的だ。

ルリアの魔法も、効果がない。炎の壁が、見えない力で消された。空間そのものが、歪んでいる。

「やめろ、グレイソン」

レオンが叫んだ。

「お前も、制御できなくなるぞ」

だが、グレイソンは聞いていない。装置を操作し続けている。だが、その顔には、焦りの色が浮かんでいた。

「止まれ、止まれ」

装置が、グレイソンの意図を超えて動き始めている。石の槍が、敵味方関係なく出現し始めた。王国軍の兵士たちも、攻撃を受けている。

「暴走し始めた」

セリアが叫んだ。

「このままでは、すべてが滅びます」

レオンは、決断した。もう、躊躇している場合じゃない。世界の断片を使う。

「カイル、ルリア」

レオンは、二人を呼んだ。懐から、世界の断片を取り出す。

「手を貸してくれ」

カイルとルリアが、レオンの隣に来た。二人とも、覚悟を決めた表情だ。

「一緒に、やろう」

三人は、世界の断片に手を当てた。

瞬間、強烈な光が三人を包んだ。膨大な魔力が、体内に流れ込んでくる。それは、以前とは比較にならない量だった。レオンの意識が、急速に拡張していく。

世界が、違って見え始めた。すべてが、線と点で構成されている。物質も、エネルギーも、時間も、空間も。すべてが、情報として認識できる。

「これが、再構築の真の力か」

レオンは、呟いた。今なら、何でもできる気がする。世界そのものを、作り直すことさえ。

だが、その代償も大きかった。レオンの鼻から、血が流れ始めた。皮膚に、亀裂が走る。生命力が、急速に削られている。

「レオン、もうやめて」

ルリアが叫んだ。だが、レオンは止まらない。



レオンは、古代兵器に向き合った。装置も、レオンの力を感知したようだ。二つの再構築の力が、激突する。

地形が、激しく変動し始めた。山が隆起し、谷ができる。大地が裂け、空が歪む。現実そのものが、書き換えられていく。

王国軍の兵士たちは、恐怖に駆られて逃げ出した。こんなものを見たことがない。これは、人間の戦いではない。神々の戦争だ。

レオンは、装置の構造を読み取ろうとした。複雑な構造が、脳内に流れ込んでくる。古代の技術。世界の断片を動力源とする、精密な機械。

「見える」

レオンは、装置の弱点を見つけた。中心部に、世界の断片が埋め込まれている。それを取り出せば、装置は停止する。

レオンは、装置に向かって走った。石の槍が飛んでくるが、すべて再構築で無力化する。重力が歪むが、空間を修正して進む。

装置の中心に到達した。そこには、青白く光る世界の断片があった。

「やめろ!」

グレイソンが叫んだ。

「それを壊せば、大爆発が起きる」
「わかっている」

レオンは、断片に手を伸ばした。

「でも、やるしかない」

レオンは、断片を掴んだ。そして、装置から引き抜く。

瞬間、装置が崩壊を始めた。光が暴走し、エネルギーが解放される。巨大な爆発が起きようとしている。

「レオンを守れ」

カイルが叫んだ。彼とルリアが、全力で障壁を展開する。石の壁と、魔法の壁が、レオンを包んだ。

爆発が起きた。

轟音と共に、装置が粉々に砕けた。衝撃波が、陣営全体を襲う。天幕が吹き飛び、兵士たちが倒れる。だが、レオンが人を避けて爆発を誘導したため、死者は出なかった。

やがて、爆発の光が収まった。煙が晴れると、陣営の半分が瓦礫の山になっていた。だが、兵士たちは生きている。

レオンは、その場に倒れていた。全身が傷だらけで、意識がない。

「レオン!」

ルリアが、駆け寄った。レオンを抱き起こす。

「レオン、しっかりして」

だが、レオンは反応しない。呼吸はしているが、意識が戻らない。

「レオン様」

セリアも駆け寄った。

「すぐに治療を」

その光景を、エリーゼは遠くから見ていた。レオンは、敵兵さえも助けるために、爆発を制御した。自分の命を危険に晒してまで。

「あなたは、本当に......」

エリーゼは、涙を流した。そして、決心した。

グレイソンが、這いながらエリーゼに近づいてきた。彼も、爆発で重傷を負っている。

「エリーゼ、やつを殺せ」

グレイソンが、かすれた声で命令した。

「今なら、殺せる」

エリーゼは、杖を見た。そして、それを地面に置いた。

「いいえ」
「何だと」
「私は、もう戦いません」

エリーゼは、グレイソンを見下ろした。

「あなたたちに、従うのはもう終わりです」

エリーゼは、レオンの元へ歩いていった。ルリアとセリアが、警戒した表情で彼女を見る。

「私は、もう敵ではありません」

エリーゼは、膝をついた。

「レオン、あなたが正しかった」
「自由を求めることは、間違いじゃない」

エリーゼは、レオンの手を取った。

「私も、自由になりたい」

その時、レオンがわずかに目を開けた。かすかに、エリーゼを見る。

「君は、もう自由だ」

レオンは、そう言って、再び意識を失った。



レオンは、町の医療所に運ばれた。ルリアとセリアが、必死に治療を続けている。だが、レオンの意識は戻らない。

「お願い、目を覚まして」

ルリアは、レオンの手を握りしめた。涙が、頬を伝う。

町の人々も、医療所の前に集まっていた。レオンの無事を祈っている。子どもたちが、泣いている。

「レオン様、頑張って」
「目を覚ましてください」

その声が、医療所に響いていた。

王国軍は、撤退を始めていた。グレイソンは、担架で運ばれている。重傷だが、命に別状はない。

「撤退する」

グレイソンは、苦々しく言った。

「古代兵器を失い、エリーゼも離反した。もう、戦えない」
「一旦、王都へ戻る」

副官が敬礼した。王国軍の隊列が、北へ向かって去っていく。その背中には、敗北の色が濃い。

町では、勝利を喜ぶ声が上がった。だが、レオンが意識不明のため、その喜びは複雑だった。

ルークも、重傷で別の部屋で療養している。マルコは、家族と再会して涙を流していた。妻と子どもたちが、マルコを抱きしめている。

「お父さん、無事で良かった」

子どもたちの声に、マルコは泣いた。

「すまなかった。心配をかけて」
「もう、大丈夫です」

妻が、優しく言った。

「家族で、一緒に生きていきましょう」

三日後、レオンはまだ目を覚まさなかった。ルリアが、付きっきりで看病している。食事も、ほとんど取っていない。

「ルリア、少し休んで」

セリアが、心配そうに言った。

「あなたも、倒れてしまいます」
「大丈夫です」

ルリアは、首を振った。

「レオンの側にいたいんです」

その時、町の外から使者が来た。それは、エリーゼだった。彼女は、急いでいる様子だった。

「大変なんです」

エリーゼは、カイルに言った。

「王都が、危ない」
「王都?」
「はい。父......国王が、禁断の装置を使おうとしています」

エリーゼの声は、切迫していた。

「王都の地下にも、古代兵器があるんです。それを起動させれば、王都全体が崩壊します」

カイルは、顔色を変えた。

「レオン不在のまま、どうする」

その時、医療所からルリアが出てきた。

「レオンが、目を覚まさないなら、私たちが行きます」

ルリアの目には、決意があった。

「レオンが目を覚ました時、守るべき世界が残っていなければ、意味がありません」

「わかった」

カイルは頷いた。

「俺たちで、王都へ向かう」

運命の最終章が、始まろうとしていた。

レオンの意識は、まだ戻らない。だが、彼の仲間たちは、彼の意志を継いで戦う。世界を守るために。

医療所で、レオンはかすかに指を動かした。意識が、戻ろうとしている。

「レオン......」

ルリアが、それに気づいた。

深い眠りから、レオンは目覚めようとしていた。

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