女の子なのに能力【怪力】を与えられて異世界に転生しました~開き直って騎士を目指していたらイケメンハーレムができていた件~

沙寺絃

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六話 ミステリアスな銀髪イケメン

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表彰式を終えた私は、宿屋に戻って一夜を過ごす。朝になると入学準備を進める。
騎士学校は全寮制だから、入学したら合格した面々と毎日顔を合わせることになる。
ルゥやマギー、ヴィンセントという人たちはいいとして、あのディランとも毎日顔を突き合わせることになるのかな。なんだか厄介なことになっちゃったなあ。

「オハラさーん。お客さんが来てるわよー!」
「えっ!? も、もしかして青髪青目の大男じゃないでしょうね!?」
「? 金髪の美少女ですよ」
「それならきっとルゥだ。はーい、今行きまーす!」

 宿屋の女将さんにお礼を言って一階に降りる。玄関先にはやっぱりルゥがいた。
 ルゥは銀髪で背の高い男の人と一緒だった。男の人は切れ長の赤い瞳で私を見つめる。
 背中まで伸びた銀髪を一つに束ねた、クールな印象の美形だ。この人は一体誰なんだろう?

「赤髪サイドテールに紫の瞳……聞いていた通りの特徴だな。君はアイリーン=オハラで間違いないか?」
「あ、はい。そうですけど。ルゥ、この人は誰?」
「こんにちは、アイリ。昨日はどうもありがとう。彼は私のお兄さん。騎士学校の食堂で働いているんだ」
「じゃあ今度からお世話になる人ですね。私はアイリーン=オハラです。よろしくお願いします!」

 あんまり似てないけど、きょうだいで顔が似ていないことはたまにある。深くお辞儀をして顔を上げると、お兄さんは顎に手を当てて私を見下ろしていた。

「聞いていた通り、なかなか感じの良い少女のようだな。なるほど、これなら……」
「はい?」
「俺はレスター=ジョンソン。騎士学校で働く食堂のお兄さんだ。得意料理はミートパイとビーフシチュー。この度は妹がお世話になったと聞いている。礼をしたいと思い、ささやかだけど食事を用意した。俺のアパートに来てくれるか」
「いいんですか? それじゃお言葉に甘えて、お邪魔します!」

 初めて会う男の人の部屋に行くなんて……と思わないでもなかったけど、ルゥのお兄さんなら構わないか。それにご飯も用意してくれたって言うし、無駄にするのはもったいない。
 道すがら、レスターさんの話を聞く。少し前から騎士学校で働き始め、普段は学校内にある職員寮で過ごしているそうだ。
 だけど週末には外に出て過ごす為に、街でアパートを借りているという。今回案内されたのはアパートの方だ。

「私も入学まではこのアパートで暮らしているんだよ」
「へえ、いいお部屋ですね」
「そうか?」
「少なくとも私の実家より、十倍はマシです」

 この部屋は、日本風に言うなら2DK。石造りの床と壁に、煉瓦造りの暖炉。キッチンもダイニングもゆったりしていて解放感がある。
 私の実家なんて木造建築で床はボロボロ、雨漏りはするし隙間風も吹くという始末だった。
 ……思い出しただけで憂鬱になる。それに比べたらこのアパートは天国だ。

「ルゥはお客さんと座っていてくれ。食事は俺が用意する」
「はーい」
「手伝わなくていいの?」
「レスターは自分の仕事に誇りを持っているから、下手に手伝おうとすると怒るんだよ」

 何気ない雑談を交わしていると、レスターさんが料理を運んでやって来た。
 得意だというミートパイにグリーンサラダ、具沢山のコンソメスープにデザートの果物だ。

「うぅっ……!」

 並べられた料理の香しさに、思わず涙ぐんでしまう。

「ど、どうした? 嫌いな食べ物でもあったのか?」
「ちがいます、その逆です……うぅっ、この世界に生まれて、これほど文化的な食事にありつけたのは初めてだから……感激のあまり涙が……いただきまーす!」

 スープを口に含んで味わう。涙が溢れて頬に零れた。

「はうぅっ、おいしい! こんなにおいしいご飯を食べたの、生まれて初めて!」
「……何も泣くことはないんじゃないか? 大袈裟だな」
「大袈裟じゃありませんっ! それほどうちの田舎の食生活は質素だったんですよ!」
「そ、そうか」
「田舎の食生活は分からないけど、レスターの料理はおいしいからね。気に入ったのならどんどん食べてよ。騎士学校の食堂ではレスターが料理を担当しているから、入学後は毎日食べられるよ」
「本当? やったあ! 入学する楽しみが一つ増えた!」
「つくづく変わっているな」

 レスターさんはクールな赤い瞳で私をじっと見る。なんだか居心地が悪いけど、それとは別にナイフとフォークは進む。
 なるほど、これがお得意のミートパイか。表面はサクサク、中身はジューシーな挽肉がたっぷり詰まっている。口に運ぶと、私の脳髄に電撃が走った。
 今まで眠っていた味蕾が花開く。乾いた大地に水が染み渡るように、私の味覚が満たされていく。

「はあっ、美味しすぎるっ!」
「泣きながら食べられるのは気まずいな……」
「やっぱりアイリは面白い人だね」

 軽く引いているレスターさんとは対照的に、ルゥは面白そうに私を見ていた。
 食事を終えて食器を片付けると、レスターさんがお茶を淹れて戻ってくる。
 紅茶のようだ。いい香りがする。カップに口をつけると、馥郁とした香りと程良い渋みが広がった。

「うん、紅茶も美味しいです!」
「そうか。気に入ってもらえて光栄だ」

 レスターさんは料理の腕だけじゃなく、お茶の腕も一流だ。
 それに身のこなしも優雅で洗練されている。なんて素敵な人だろう。

「……」

 なんだかちょっと怪しく思えてきた。こんな人、滅多にいるものじゃない。
 少なくとも私は見たことがない。田舎出身だから見たことがないだけで、都会じゃレスターさんみたいに洗練された男の人が結構いるのかな?

「さて、アイリーン=オハラ。君を招いたのは他でもない。昨日の礼をしたいというのは嘘ではないが、理由は他にもある」
「なんですか、改まって」
「実はね、アイリ。君にお願いがあるんだよ」
「お願い?」
「そのお願いを話す前に、まずは私の正体を明かす必要があるね。実は――ルゥ=ジョンソンは世を忍ぶ仮の姿なんだ」
「その真の姿はイース王国の第二王子、ルーファス=クリストファー=イリアステル様だ」
「ぶっ!」

 思わず紅茶を吹き出してしまった。
 ルーファス王子? ルゥがこの国の王子様!?

「ゲホッゴホッ! ……何言ってるの? ルーファス王子って男の人でしょ? ルゥは女の子じゃない!」
「僕の性別は男だよ。世間の目を欺く為に女装しているんだ」
「いやいやいや! ちょっと待ってよ! いきなりそんなことを言われても、信じられないんだけど」
「じゃあ確かめてみなよ。ほらっ」
「なっ!?」

 ルゥは私の手を取ると、自分の股間に押し付けた。
 こ、これは……! 
 この女の子の股間には絶対にありえない感触と質量は……間違いなく男……!

「って、いきなり何するの!? 殴られたいの!?」
「こうでもしないと信じてくれそうになかったから。それとも直接見せた方が良かった?」
「どっちも良くない! ああもう、昨日といい今日といい、二日続けて変態男に遭遇するなんて……」
「おいお前! ルーファス王子を変態呼ばわりするとは何事だ!」
「うら若き乙女にいきなり股間を触らせるような男が、変態じゃないとでも!?」
「王子なりの考えがあってなされたことだ。変態呼ばわりは専属の執事であり、側近でもあるこの俺レスター=ワイズマンが許さない」
「ワイズマン? ジョンソンじゃないの?」
「レスター=ジョンソンも世を忍ぶ仮の姿。ワイズマンの方が本名だ。当然、俺と王子に血の繋がりはない。世間の目を欺く為に兄のふりをしているだけだ」
「はあ、どうしてそんなことを……」

 まだこの人たちの話を信じたわけじゃないけど、ひとまず言い分を聞いてみよう。
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