女の子なのに能力【怪力】を与えられて異世界に転生しました~開き直って騎士を目指していたらイケメンハーレムができていた件~

沙寺絃

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十八話 深夜の食堂にて

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 食堂はもう閉まっていた。それでも入り口に鍵がかけられているわけじゃないから、入ろうと思えば入れる。だから私は、時々夜食をつまみに来ていた。

「アイリか。こんな時間にどうした?」
「あれっ、レスターさん!」
「さてはつまみ食いだな」
「あははは、そんなところです」

 ルゥの裸を見て気まずくなったから逃げてきたとは言えず、適当に話を合わせる。

「このままじゃお腹が空いて眠れそうにないんですっ。明日の訓練にも支障が出てしまうかも! そうなったらルゥを守る任務も果たせなくなっちゃう! だからお願いします、どうかお恵みを!」
「仕方がないな。何か簡単なものを用意してやるから、少し待っていろ」
「はーい!」

 テーブルについて待っていると、レスターさんはすぐに料理をお皿にのせて戻ってきた。
 トマトとレタスのハムサンドと、カモミールティーだ。

「夜食だから軽めに用意した。カモミールティーには安眠効果がある。部屋に戻ったらよく眠れるだろう」
「ありがとうございます。いただきまーす!」

 あんまりお腹は空いていなかったけど、レスターさんのご飯が目の前に並べられると、体が勝手に食事モードに入る。これはもう条件反射だ。刷り込みだ。パブロフの犬だ。それぐらいレスターさんのご飯は私のツボだからしょうがない。
 ハムサンドおいしい! 薄切りハムは塩気がよく効いているから、トマトとレタスとの相性が最高だ。
 カモミールティーもおいしい! 甘い香りと癖のない味わいでスッキリ飲みやすい。
 すべてをお腹に収める頃。私の精神すっかり落ち着きを取り戻していた。

「あー、おいしかった。ご馳走様でした。レスターさんのおかげで、今夜はよく眠れそうです!」
「それは何よりだな」
「レスターさんって手際がいいですよね。あんなにおいしいサンドイッチを短時間で作っちゃうんだから、すごいなあ」
「慣れれば簡単だぞ。そういえば、お前の料理の腕はどの程度なんだ?」
「簡単なものなら何とか。焼き魚とか焼きキノコとか、獣肉やモンスター肉の丸焼きとか。調味料は塩ばかりです」
「ワイルドだな」
「故郷の村では訓練を兼ねて、自分で食料を獲りに行っていましたからね! レスターさんはモンスター料理って作れますか?」
「仕留めたその場で捌いた経験はないな。流通しているモンスター肉なら調理経験あるが。竜肉は美味珍品として、貴族の間でも人気が高いからな」
「そうそう、竜肉は最高ですよね! さすがに塩だけだと飽きちゃったけど、レスターさんに調理してもらったら最高だろうなあ……!」
「ちょっと待て。お前は竜を仕留めた経験があるのか?」
「え? あ、はい。と言っても火竜ですけどね。さすがに古竜とかは仕留めた経験ないですよ。そもそも遭遇しないし」
「火竜でも相当なものだぞ……だが少し安心した。お前が一緒なら、来月のモンスター狩り演習と行軍訓練も何とかなるだろう」
「レスターさんも気にしていたんですね」
「当たり前だ。今度ばかりは俺も同行できないからな」
「私がいて良かったですか?」
「……そうかもしれないな」

 出会ったばかりの頃はツンツンしていたレスターさん。だけど最近は、少しずつ態度が柔らかくなっている。だんだんと私を認めてくれているようだ。

「しかしあの方に万一のことがあって、お前一人がおめおめと帰ってきた時には……どうなるか覚悟しておくようにな」

 レスターさんはいい笑顔で言い放った。
 顔は笑っているけど怖い。いや、笑っているだけに怖い。だって目は全然笑ってないんだもん。イケメンなだけに、とんでもなく怖い。
 私は引き攣った笑顔を浮かべて、無言で頭を上下に振る。

「さあ、もう戻った方がいい。あまり長居をして、誰かに見咎められると面倒だ」
「はーい……おやすみなさい」

 部屋に戻るとルゥはもうベッドに入っていた。
 さっきこの部屋を飛び出した時には、何かショッキングな出来事があったような気もしたけど……何だったかな。
 思い出せない。レスターさんのご飯と怖い笑顔に上書きされた今となっては、忘却の彼方に消え去っていた。

***

 頭痛の種だった定期テストも何とか終わる。
 今回もほとんど丸暗記で対処したけど、ルゥが協力してくれたおかげで助かった。
 ギリギリで赤点を逃れた私は、次に迫るモンスター狩り演習&行軍訓練に意識を集中させた。
 定期テストの翌週。私たちアルスター騎士学校に在籍する従騎士たちは、ルグ島の東にあるトーヴ湿原に向かった。

「第一分隊、本日の結果発表を申し上げます! ゴブリン十一体、オーク八体、グール五体、コカトリス三体、バジリスク二体、サラマンダー一体、合計三十体を本日の戦果として報告します!」

 モンスター狩り演習初日。第一分隊のリーダーとして、私は教官に報告する。
 いくら弱体化していても、私にとってモンスター狩りなんて朝飯前だ。
 ディランにしてもヴィンセントにしても、モンスターを狩った経験があったみたいで難なく数をこなしていた。
 マギーは後方支援。ルゥは回復と、効率よくモンスターを退治する為の作戦を練ってくれた。
 おかげで戦果は上々だ。ちなみに三十体中二十体は私が仕留めた。

「ほう、初日で三十体も狩るとはな! 今の報告が最後となったが、初日の戦果は第一分隊がトップだぞ!」
「本当ですか? やったあ!」
「あーあ、また第一分隊か」
「しょうがねえよ、あそこは優秀だからな」
「特にリーダーのアイリは桁違いだもんなあ」

 周りからは諦めたような、感心したような声が聞こえる。

「静かにしろ! モンスター退治期間はまだ残り二日ある! 最終的に本日の結果が覆される可能性もあるから、明日以降も弛まず励むように!」
「はい!!」

 教官の話が終わると解散となり、トーヴ湿原の一角に張られた天幕に移動した。モンスター討伐期間は、実施を通して野営の仕方も習得する。
 翌日からも私たちはペースを落とさずモンスター退治を続け、結局最終的な戦果も第一分隊がトップで終わった。
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