女の子なのに能力【怪力】を与えられて異世界に転生しました~開き直って騎士を目指していたらイケメンハーレムができていた件~

沙寺絃

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十七話 ラッキースケベ

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 騎士学校生活も三ヶ月目に突入した。私たちの日常は、大半が訓練に占められている。
 朝は暗いうちから走り込みを始め、洗面や着替えに使う時間は最低限。
 午前中は座学。午後から実技の授業が行われる。座学では用兵、戦略、兵站などの知識を学ぶ。
 実技では武器の扱い、騎馬訓練、戦闘訓練、模擬戦なんかがある。
 アルスター騎士学校は平民も通っている騎士学校だ。騎士に必要な教養や礼儀作法を学ぶマナー講習の時間もあった。
 空いた時間は基本的に自主トレばっかりだ。私も暇があれば走り込みや筋トレ、剣術や武術の形稽古をしている。
 日課の自主トレを終えた後は、入浴した後にお湯を持って部屋に戻る。

「はい、ルゥ。今日のお湯を持ってきたよー」
「ありがとう! アイリにはいつも助けられているね。どれほどお礼を言っても足りないぐらいだ」
「気にしないで。座学や模擬戦で作戦を立てる時には、ルゥに助けてもらっているもん」

 戦闘でも、私の戦法は基本的に力押しだ。模擬戦で不利になった時にはルゥの策に助けてもらっている。互いに持ちつ持たれつの関係を、私たちは築いていた。

「前にも言ったと思うけど。作戦通りに動けなければ、どんな作戦も意味がないよ。第一分隊はアイリを中心に結束している。アイリが誰よりも強いから、分隊のみんなも信頼してついてきてくれるんだ。毎週末に行っている決闘だって、アイリは負けたことがないじゃないか。他のメンバーは負けることもあるけど、アイリは絶対に負けない。今ではアイリの実力に異を唱える人なんて誰もいないよ。アイリのおかげで貴族の平民差別もなくなってきた。騎士学校ではフィジカルが強い人が偉いからね。みんな貴族とか平民とか、つまらないこだわりを捨てて協力するようになっている。これもアイリのおかげだよ」
「そ、そうかな? えへへへ」

 褒められて悪い気はしない。しかも相手はこの国の王子様。第一王子亡き今、ルゥこそが次期国王だ。そんな人に褒められて、悪い気がする筈もない。

「ねえ、ルゥ。ルゥは次の王様になるんだよね?」
「順当に行けば、ね」
「礼儀作法の時間に、騎士たるもの自らの主君に忠義の限りを尽くせって習ったよね。ルゥはイース王国の王子様なんだから、将来的にはルゥが私たちの主君だよね」
「うん、そうなるといいんだけどね」
「いいんだけどね、じゃなくて、絶対にそうなるの!」

 ルゥが王様になれば、きっとイース王国は今よりも良い国になる。ルゥと一緒に過ごすようになって、はや三ヶ月。私はそう思うようになっていた。

「それと例の約束、忘れないでよ。摂政を失脚させて、ルゥがお城に戻ったら、私を近衛騎士にしてくれるって約束」
「もちろん忘れていないよ。……そうだね。アイリとの約束を果たす為にも、僕が弱気になってはいけないね」
「そういうこと。だからルゥは王様になるんだって、どーんと構えていて!」
「あはははっ。ありがとう、アイリ! 君と話していると悩みが吹き飛んでしまうよ。アイリは不思議な人だね」

 ルゥは翡翠の瞳で、私をじっと見つめる。色白の滑らかな肌に、人形のような整った繊細な顔立ち。
 美人揃いの騎士学校でも群を抜いた美少女として評判のルゥに見つめられると、少しドキドキしてしまう。

「あの、アイリ……」
「ど、どうしたの?」
「そろそろ行水を始めたいんだけど、構わないかな?」
「…………え?」
「そろそろ行水しないと、せっかくアイリが汲んできてくれたお湯が冷めてしまいそうだから」
「あっ! ごめん、後ろ向いてるね!」

 ベッドに登って背中を向ける。背中越しに衣擦れの音と、ルゥが水を浴びる音が聞こえてきた。行水の間、私はベッドの上で本を開く。

「えーっと。イース王国は、現在ルグ島に存在する唯一の国家である。今から約二百年前、大陸からルグ島への入植が始まり、先住民族や亜人、さらにはモンスターと戦って島を開拓。その指揮を執ったのが現イース王家の祖先である――っと」
「アイリ、何をブツブツ言ってるの?」
「勉強。声に出して読まないと頭に入ってこないんだよ。もうすぐテストがあるでしょ? 復習しておかないとね」

 イース王国の地理、歴史、最新の経済状況については入学試験の時に丸暗記した。でもテストを前に、改めて振り返っておきたかった。

「続き続き。えーっと……現在のルグ島は三分の二がイース王の統治下にある。残りはモンスターや亜人が暮らす未開地や、先住民族の隠れ里があると言われている。ルグ島の東にはモンスターの群生地であるトーヴ湿原があり、その先へ行くと亜人の集落である大峡谷が存在する」
「来月に予定されている訓練では、トーヴ湿原でモンスター狩り演習があるんだったね」
「そうそう」

 今の時期はモンスターが大繁殖する。増えすぎたモンスターは近くの街や村を襲うから、定期的に狩って数を減らさないといけない。騎士学校にとって、訓練と社会貢献を兼ねた一大イベントだ。
 さらにその後、続けて行軍訓練が予定されている。モンスター狩りが終わると分隊ごとに別れ、トーヴ湿原から騎士学校があるアルスターまで数日がかりで戻ってくるのだ。
 私としてはモンスター狩りやサバイバルなんて、大したことじゃないんだけど。

「はあ……」
それより問題は座学だ。行軍訓練の前には筆記試験がある。いわゆる定期考査――現代日本風にいうと中間テストのようなものだ。私としてはそっちの方がよっぽど心配だった。

「えーっと……アルスター騎士団の主な仕事は、と。モンスター狩りに盗賊退治。過激派の先住民族や異教徒の制圧。海上通商路を荒らす海賊退治。あとはルグ島の征服を狙う大陸の国々への防備に――」
「この十数年、諸外国との大きな戦争は起きていないよ。海戦になるとイース王国が有利だからね。二十年前にイース海軍が大陸の艦隊を打ち負かして、敵艦隊は事実上の壊滅を遂げた。それ以来、諸外国は平和協調路線でイースと付き合っているんだ」

 この世界では、航空戦力はまだまだ育っていない。一応ドラゴンとかもいるけど、大陸からルグ島まで何十、何百という数のドラゴンを運ぶ船舶はまだ開発されていない。

「だからって、ルグ島を狙う諸外国の権力者たちがいなくなったわけじゃない。内側からイース王国を崩壊させようと――あるいは牛耳ろうと目論む人々も存在する。異教の宣教師を送り込んで布教させて宗教戦争を狙ったり、イース貴族と繋がって反乱を起こさせようとしたり」
「そういったトラブルに対処するのも騎士の仕事なんだね」

 身も蓋もない言い方をすると、争いごとがあるおかげで私は騎士を目指せているってことになる。

「なんだかなあ」
「どうしたの、アイリ? お腹でも空いた?」
「そんなわけないでしょ、さっき晩ご飯食べたばっかりなんだから! ……って、あっ!?」

 思わずツッコミを入れて振り向いた私は、ルゥの全裸を真正面から目撃してしまった。
 私は固まる。ルゥも固まる。先に動いたのはルゥだった。バスタオルを手に取ると、体の前を隠す。

「アイリのエッチ!」
「そ、その反応はおかしくない!? 初対面の女の子に股間を掴ませる男の反応じゃないよね!?」
「こういう反応をした方が女の子らしいかなあと思って」
「わざわざそんな真似をしなくたって、ルゥは十分女の子らしいよ!」

 この前アルスター騎士学校では美少女コンテストが行われた。もちろん非公式だけど。その『アルスター騎士学校美少女コンテスト』で、ルゥは見事一位に輝いていた。
 それも僅差どころじゃない。圧倒的票数だった。今やルゥは学園のアイドルだ。常に男子から憧れの眼差しを注がれている。
 だけどルゥは男の子だ。今だって私の目の前で、本来女の子にないモノを晒している。

「~~っ、なんだかお腹空いたな。夜食でもつまみに行ってこようかな!」
「あれ、さっきは違うって言ってなかった?」
「さっきはさっき、今は今なの! 勉強するとお腹が空くよねっ。ということで、私は食堂に行ってきまーす!」

 気まずくなった私はベッドから飛び降りると、捨て台詞を残して部屋を出ていく。

「……はあ、失敗しちゃったなあ」

 完全に気が緩んでいた。手で顔を扇ぎながら、時間を潰す為に宣言通り食堂に向かった。
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