絶望の魔王

1-15

魔王城の最奥で魔王ガロンは魔王軍四天王の一体旋風のパルスを呼び出し言った。

「パルスよ……。そろそろ奴がこの世界に召喚された筈だ。奴の始末、お前に任せる。」

魔王ガロンの前には巨大なハエの胴体と両足に巨人の両手を持ち尾には鋭いトゲの生えた異形のモンスターの姿があった。

「……かしこまりました。我が王よ……。」

魔王軍四天王旋風のパルスは恭しく一礼してその場を去った。

「……お前が死んで初めて我が願いは成就する。悪く思うなよ。楠ハルトよ……。」

……魔王城の外では不気味に雷鳴が轟いていた。


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あれからラボスと俺はクリーの砂浜へと来ていた。

透明度の高い緑と青のグラデーションの砂浜が俺たちを待っていた。

そして波打ち際には至るところでピンク色の光が輝いている。

「どうだい？中々の絶景だろう？ほら所々でピンク色に光ってる物があるだろう？あれが水神ワルスの加護を受けたマジックアイテムさ。」

……成る程。透明度の高い海の色とピンクの光が交錯して何とも幻想的な風景になっている。

「……キレイですね。」

しばしの間俺達はその場に立ち尽くしてその光景に見入っていた。


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「……おかしい。確かに奴はこの辺りにいるはずなのに！何故見つからんのだ！！」

クリミナはその手の中の魔術研究所の手による異世界人探知機の表示をジッと見つめて苛立ちを募らせて言った。

クリーの街へとやって来てからずっと街の住人達に尋ねて回っているのに少しもそれらしい話は出てこない。……強いて言えばケニーからやって来たと言う青年位か。……まさかアイツがそうなのか？

「……………………………………………………。」

急に黙りこくったクリミナに残り4人の騎士達がその顔を見つめる。

「……よし！さっきのケニーから来たとか言っていたあの青年を探すぞ！……お前ら来い！！」

そう言ってさっさと歩き始めたクリミナに慌てて4人はついていった。


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俺はラボス案内のもとクリーの街を回っていた。

マジックアイテムの精製所の前までやって来たとき、

「見つけたぞ！！お前っ！……さては異世界からやって来たのではないか？」

クリミナと呼ばれていた目付きの鋭い男がその目に力を込めて俺をジッと見てから言った。

「おい！クリミナ！僕の連れに失礼なことを言わないでもらえるか？」

俺とクリミナの間にラボスが割って入りクリミナを牽制して言い返す。

「……おやおや。ラボス殿。どうやらその青年には心当たりがあるようですが？動揺がモロに顔に出ています。……お前ら！コイツを連れて行けっ！」

クリミナが命令すると後ろで見ていた白いローブの4人が俺に向かって走ってきた。

「反射壁リフレクション！！」

ラボスが呪文を唱えると俺とラボスを光輝く壁が取り囲む。

「……クッッッ！！……腐っても元副団長殿だな……。……ここは一旦引きましょう。しかしその青年は我々魔導騎士団が必ず手に入れる！
お前ら行くぞ！」

クリミナがそう捨て台詞を吐き捨てると白いローブの男達は去っていった。

「……ハルト……。君は一体……。」

そう呟いてラボスが眉をひそめて俺を見た。