暴虐の果て

たじ

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第6話

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 「……失礼ですが、この手紙と動画は警察には?」

 「…一応私どもの方でも地域の警察署には相談に伺ったんですが、なんというかいまいちきちんと対応して貰えなくて。」

 ……正直、警察官だって人の子だ。人によってはかなり対応が異なると荒垣から聞いた覚えがある。
 
 「それでうちの方にご依頼を?」

 「…えぇ、まぁ……。」

 ……どことなく歯切れが悪いな。なにか他にも問題があるのだろうか。

 「えぇと、ストーカーの証拠というのは他にも何かあるんでしょうか?」

 「……………。いいえ………。」

 「ストーカー行為をしている男について何か心当たりはありますか?」

 「…いいえ…。」


 「…わかりました。とりあえずはこちらの方でお嬢さんの周りをストーカーが出没しないかどうか注意して交代で見張っていく、という形になると思います。その後でストーカー本人の名前、住居等を確認して私達の方で話し合うなり、そちらが宜しければ裁判所に訴えでて接近禁止命令を出してもらうなりしましょう。それではこちらの紙にご依頼者様のお名前、お電話番号、ご住所、ご依頼内容とあと今日の日付の方をご署名頂けますでしょうか。」

 そう言って仮戸川は依頼者に依頼書の乗った黒いボードを差し出す。

 少しして、「記入しました。」と入江が声をかけてきた。

 「…記入漏れはございませんね。それでは詳しく対応が決まり次第こちらからご連絡差し上げます。」

 仮戸川は戸口まで依頼者を案内する。

 そこで入江がハッと何かを思い出して慌てて肩から提げたハンドバッグを開いた。

 「あの、これ依頼料です。私ったらすっかり忘れてたわ。」

 そう言って仮戸川に茶色い封筒を差し出す。

 「…あぁ、ご依頼料ですね。確かに。」中身を確認して仮戸川はにっこりと微笑む。

 「それでは失礼いたします。」
 軽く頭を下げると入江は階段をコツコツ、とヒールの音を響かせながら下りて行った。


  11月10日午後7時過ぎ

 「ーーーーーーーっっっ!!!、あ"あ"あ"あ"あ"あ"あぁぁぁぁぁぁぁっっっーーーーーー!!!あ"あ"あ"あ"あ"ぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっーーーーーーー!!!!」

 …………どこか遠くで人が絶叫している………。………酷く頭がフラフラする……。

 ……私は偏頭痛のようなズキズキする痛みをこらえながら、軽く頭を振って立ち上がる。
  
 …………どうやら、気絶して床に突っ伏していたようだ。スーツに付いた埃をパンパン払った。
 そういえば先程目覚めたときに誰かが叫んでいるような声が聞こえたような……?
 耳をそっと澄ませてみるが特に何も聞こえない。
……寝惚けていたのだろうか。そう思って、椅子に腰かけようと思ったその時、

 「…う"ばぁぁぁぁぁぁぁぁっっっっーーーーーーーーーーー!!!!だずげどぅでぇぇぇぇぇぇぇぁぁぁぁーーーーーーー!!!!」

 とんでもない大絶叫が辺りに響き渡る。

 「ぼげぇぇぇぇぇぇぇぇっっっーーー、あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"あ"ぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーー!!!!」 

 ……どうやらどこか離れた所から配管スペース等を伝ってここまで音が漏れてきているらしい。……一体何なんだ?なにが起こった………?

 私が戸惑っている間にも絶叫は続く。

 「……う"ぶああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!ぼう、がんにんじでぇぇぇぇぇぇぇーーーーーー!!!!でぃうざんがげなびでぇぇぇぇぇぇ!!!!」

 絶叫しているのは男で一体何を言っているのか良くわからない。ただ、目の前にいる誰かに向かって何かを懇願しているように聞こえる。

 「どぅぅばぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーー!!!!!」

 その誰かは最後に一際大きな声をあげてから唐突に黙りこんだ。

 ………もしかして誰かが犯人に殺された…のか?
戦慄が背筋をかけ上がる。その時また何処かでピアノが音を奏だした。…………何だか意識が朦朧とする……。またか…………。そう思った次の瞬間には私の意識は闇に沈んでいった………。
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