暴虐の果て

たじ

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第21話

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4月27日

俺はあれから迷路のような通路を行ったり来たりしてさんざん迷い続けたあげく、ようやく上の階へと続く階段を発見して上へと登っていった。その先には重いコンクリート製の蓋が行く手を遮っていて、俺は渾身の力を込めて、どうにかその蓋を押し上げて外へと出た。

そこはどうやら元はさぞや立派な屋敷だったのだろう、金のかかっていそうな暖炉が据え付けられていて、その横には高そうな大きな壺だの、絵画だのが飾られていた。

それらには、長年ほったらかしにしてあったのだろう、埃がうず高く積もっていていかにも廃墟という感じだった。

外から板でも打ち付けてあるのか部屋の中は薄暗かった。
しかし、所々細い隙間が空いていて、その隙間からはうっすらと月明かりが漏れているので部屋の様子はギリ見える。

「……やっと、外へ出れた。……そうだ!犯人に見つからないうちに早く逃げないと。」

俺は一人ブツブツ呟いて出口を探した。

すると、吹き抜けのホールの先にがっしりとした木の扉があるのを発見した。

恐る恐るドアノブに手をかけて開けようとしたけど開かない。
よくよく確認してみるとただ鍵がかけられているだけだったので、金属製のツマミを捻って鍵を開けて外に出る。

外は月明かりだけが唯一の光源で、一面には木々が生い茂っている。どうやらこの廃墟は山の中にあるようだった。

俺は辺りを警戒しながらなるべく足音を立てないようにして廃墟の屋敷から逃げ出した。


    ◆  ◆  ◆  ◆


山の中をさまよい、やがて舗装された道路が木々の間から確認できたのでそちらへ険しい山道を足を滑らせないように注意して下っていった。

舗装された道路を下へ下へと進んでいく。

すると、カーブの先から車のヘッドライトが近づいてきたので慌ててその辺りの茂みに身を隠した。

ブゥゥゥーーーン!!

、という排気音を立てて灰色のセダンが俺の隠れている茂みの前を通りすぎていく。

「…………ふぅ。」

ビックリした。あれが犯人の車だったらと思うとゾッとする。危なかった。もう少し注意して逃げないと。

そう思いながら、茂みから出ると、俺は再び山の麓へと足を進めた。


     ◆  ◆  ◆  ◆


5月8日

あれから俺は、拉致監禁されていた廃墟から無事に家までたどり着くことに成功した。

…………しかし、俺は警察に俺が拉致監禁された事をまだ通報していなかった。

あの日、山の麓からしばらく歩いた道路脇でヒッチハイクをした俺は、運良く自分の家の方面へと向かう途中の運送会社の大きなトラックに乗せてもらって、深夜に自分の家へと帰ってきた。ちなみに両親は仕事の関係で海外に赴任していて、この家には現在俺しかいない。

俺が、じゃあそろそろ警察を呼ぼう、と思って携帯を取り出したその時、堪えられないほどの激しい頭痛と吐き気に襲われた。

俺の脳裏を監禁されていた地下のファイルにあった、犯人が書いただろう文章がよぎる。

"監禁したやつらにはこの薬を直接注射したり、混ぜたパンと水を与えてある。一度これをやると中毒性がエグいからヤメられなくなる。ヤメようとすると耐えられなくなる程、頭痛と吐き気に襲われちゃう!でも、俺は一杯持ってるからだいじょーび!!"

…………まさか…………。

瞬間、俺の背筋を悪寒がかけ上がった。

………………ダメだっ!もう耐えられないっっ!!

俺は背中に背負っていたリュックから例の薬瓶を取り出すと瓶の蓋を開けてごくごくと飲み干した。

甘い香りのする液体が俺の胃のふへと落ちてゆく。

…………しばらくすると、頭に甘い痺れと快感がドッと押し寄せてきて、気がつくと翌日になっていた。

…………とうとう、俺は自分から違法だろう、薬に手を出してしまった。
こうなると、多分もうこの薬なしでは生きていけないんだろう。

結局、色々考えた結果自分も逮捕される事を恐れて、俺は警察を呼ぶことを断念した。



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