暴虐の果て

たじ

文字の大きさ
41 / 45

第41話

しおりを挟む
11月13日 午前3時過ぎ

ーーは、自分がその全身をメスで切り裂いた女ーー三宅マキーーが拷問に耐えきれずに気絶してしまったのを確認すると、

「……クソッタレッ!!やり過ぎちまったか……」

と、どこか後悔している様子で誰ともなしに呟いた。

先程、三宅マキは、マスク越しに俺の顔を見てから、どこか怪訝そうな表情を浮かべていた。

……ひょっとすると、女は自分の正体に勘づいたのかも知れなかった。

「……くそっ!!」

そう吐き捨てると、焦燥のあまり興奮した様子のーーは、ツカツカと早足で部屋を出ていった。


     ◆  ◆  ◆  ◆


モニターの並んだ監視室の隅には、サトミがーーに両手両足をロープで拘束された格好で床に転がされていた。

「…………お願い。こーちゃん。もう、こんなことは…………」

そう呟いているサトミの目には、うっすらと涙が滲んでおり、顔には酷く殴られた痕があった。

……カッカッカッカッ。……キィ。バタンッ!!

通路から足音がしたかと思うと、興奮した様子のーーが、入ってくるなり、壁に据え付けられたモニターの一つを食い入るように見つめた。

「…………クソッッ。クソッッ。クソッッ」

ブツブツ呟きながら舌打ちすると、また、勢いよく扉を開けて出ていく。

その背中を見つめながら、サトミは、

「……こーちゃん…………」

と、呟き、両目を閉じて涙を一つこぼした。


     ◆  ◆  ◆  ◆


11月12日

宇都宮の部下である、堤下は、宇都宮からの命令でとある人物の跡を車で追跡していた。

「…………どうにも、おかしい。おかしいんだよ。アイツが襲われて入江京子が拉致された現場。……なんで、荒垣と一緒にいたっていう、所員のゲソ痕がないんだ?……それに、一年ほど前からか?……どうにも、アイツの、荒垣の様子が以前とは何か違うような…………」

そう独り言のように呟き苦悩した様子の宇都宮は、その日から堤下に秘密裏に荒垣の尾行をするように頼んでいた。

……そうは言っても、荒垣も元刑事である。

何度となく、堤下の尾行はかわされ、今日に至るまでロクな成果をあげられていなかった。

……しかし、今日。

「……遂に尻尾を掴んだぞ……」

その日、荒垣は、夜になってから自宅から車でどこかに向かって移動し始めた。

その姿は、いつものようなスーツ姿ではなく、ダボついた灰色のパーカーにマスクをしたどこか不審な格好だった。

加えて、茶髪のウィッグまで装着していた。……あれでは、顔見知りが見てもすぐには荒垣だと分からないだろう。

……そして、何故かその日はいつものように慎重な運転ではなく、荒っぽくスピードを上げたまま、このB山の頂上付近までやって来ていた。

……それにしても、いつもなら目的地にたどり着く前に撒かれてしまうというのに、何か妙だな……。

そう思いながら、ライトを消した車内で荒垣の車が入っていった先にある廃墟らしい洋館を見上げる。

先程、荒垣が車を降り洋館の中に入っていったのを確認してから、もう既に10分ほどが経過している。

……追いかけていったものかどうか……。

そう思案していると、物凄い形相の荒垣が、慌てて車に乗り込み、また麓まで下りていくのが見えた。

堤下は、茂みに半ば隠した車のエンジンをかけると再び荒垣を追跡し始めた。






しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...