勇者に「レベル」がないっっっっ!?

たじ

文字の大きさ
13 / 20

第13話

しおりを挟む
双頭の黒いワニのようなモンスター、ルビを仲間にしてからしばらく歩いていると、マックスが顔をしかめながら言った。

「……クンクンクンクン……。あっれーー!?誰かおならでもしたっすか~~?何か変な匂いが漂ってません~~~?」

「……そう言えば何か匂うな……。」と、俺。

マックスの言葉に先頭を歩いていたリルも立ち止まって匂いを嗅いだ。

「……どれどれ。クンクン。……本当じゃな!!
どうも、その先の茂みから香ってきておるようじゃが……。」

俺の隣にいたリーンが腰の剣に手を掛け身構えて、残りのメンバーに注意を促す。

「……これは……。皆さん!気を付けてください!
これは死臭です!」

「ししゅう?俺様にも分かるように言ってくれよ!!」と、ウェンディ。

「だから、誰かその先の茂みで死んでるんですってば!!」

「な、何だって!?そいつぁ、マズイじゃねぇか!!」

「ヒィーーーーーーーーッッ!!」

それを聞いたマックスが悲鳴をあげ、リルの後ろから最後尾のルビの背中へと慌てて隠れた。
……ていうかアイツも死臭の意味分かってなかったんかい!!

「よし!皆の者行くぞ!!」

そう言ってリルは茂みを慎重にかき分け進んでいった。

……果たしてそこには、背中に大きな切り傷のある茶色の服を着た男の死体と腹部を無惨に切り裂かれた白いドレスの女性の死体が転がっていた。

「……これはヒドイ……!」

いつもは無感情なマリスも顔を歪めて呻き声をあげる。

「……ひでぇな!!一体何処のどいつがこんな酷い真似しやがったんだ!このウェンディ様が成敗してやる!!」

「……うう~む。……だから、さっきスラー達の姿があったのじゃな……。」

「……まさか、ルビがやったんじゃないだろうな?」

ふと思い付いた俺が、恐る恐る他のメンバーに尋ねると、

「……いいえ。それはない、と思います。……これは明らかに人が剣で斬った痕です。ルビさんがやったのであれば、こんなに鋭利な傷口にはならない。
……それに、ルビリスは滅多なことでは人を襲わないはずです。」

と、リーンが説明してくれる。

「……へぇー、そうなんだー、なるぼど。こんな凶悪な見た目してるのになー。」

俺がそう言うと、ルビが心なしか悲しそうな目で俺を見た。

「……あと、この死体の血の乾き具合を見るに、
どうやら襲われてから一日程度は経っているようですね。」

「……という事は犯人はもうこの辺にはいないってことでいいのか?」

「恐らくは。……野盗の類いであれば荷物は根こそぎ持っていくでしょうから、荷物がやられていないという事は何か被害者とトラブルになった人間が斬り捨てた、と考えていいと思います。」

「……ふう~~む……。」

俺達はどこかモヤモヤした気持ちを抱えたままその場を後にした。


     ◆  ◆  ◆  ◆


カイト達と離れトーリスの街まで戻ってきたシンは、ギルドから馬を借りてラングーンまでの復路を急いでいた。

「ハッッ!!」

掛け声と共に手綱を馬の体にうち下ろし更にスピードをあげる。

パカラッ、パカラッ、パカラッ、パカラッ。

……そうして夜の帳が降りた頃、シンは密かにラングーンの近くまで戻ってきていた。

馬をラングーンの手前の茂みの中に繋ぎ、肩に提げた袋の中から質素な白い服とフードを取り出して黒い甲冑を脱ぎ捨てそれに着替える。

シンは甲冑を袋に入れて肩から提げ、ラングーンの堅牢な門へと向かった。

門の前では騎士が二人で見張りを務めている。

近づいてくるシンに見張りの一人が誰何した。

「……こんな夜分に何者だ!
面を見せろ!!」
 
シンはその言葉に従い、ゆっくりと頭から被っていたフードを取り払った。

するとたちまち見張りの騎士は顔色を変えてこう言った。

「シン様ではないですか!!
どうも失礼いたしました!!
……それでこんな夜分にどうされたのですか?」

「些かヤボ用があったまでよ……。
見張りご苦労!」

シンはそう答えると、再びフードを目深に被ってラングーンの門をくぐり、街中へと姿を消した。


    ◆  ◆  ◆  ◆ 


クォーク・エル・グリドラは私室のベッドに腰掛け何やら思案していた。

「……わらわの正体にさては気づかれたか。……まあ、良い……。」

クォークの胸元には紫色の宝石のついたネックレスが下がっており、何とも言い難い妖しい光を放っている。

クォーク・エル・グリドラーーその正体は魔王軍側近の一人ナビスであり、彼女は本物のクォークを数ヵ月前人知れず暗殺し、今は得意の変化の術をもってして魔導騎士団参謀クォーク・エル・グリドラに成り代わっていた。

「……人間共め……。
……我らが恨み晴らさでおくべきか……。」

ナビスは決然と正面の壁を睨み付けたまま、
一人呟いた。


    ◆  ◆  ◆  ◆


ナビスのいるクォークの私室のドアの前では、リルの祖母キィール・クインが気配を悟られぬよう密かに聞き耳を立てていた。

「……やはり、そうじゃったか……。」

呟いたキィールは、しばらくの間佇んでいたがやがて足音を立てぬように気をつけながら自室まで戻っていった。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件

こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。

学年一可愛いS級の美少女の令嬢三姉妹が、何故かやたらと俺の部屋に入り浸ってくる件について

マカロニ
恋愛
名門・雄幸高校で目立たず生きる一年生、神谷悠真。 クラスでは影が薄く、青春とは無縁の平凡な日々を送っていた。だがある放課後、街で不良に絡まれていた女子生徒を助けたことで、その日常は一変する。救った相手は、学年一の美少女三姉妹として知られる西園寺家の次女・優里だった。さらに家に帰れば、三姉妹の長女・龍華がなぜか当然のように悠真の部屋に入り浸っている。名門令嬢三姉妹に振り回されながら、静かだったはずの悠真の青春は少しずつ騒がしく揺れ始める。

構造理解で始めるゼロからの文明開拓

TEKTO
ファンタジー
ブラック企業勤めのサラリーマン・シュウが転生したのは、人間も街も存在しない「完全未開の大陸」だった。 ​適当な神から与えられたのは、戦闘力ゼロ、魔法適性ゼロのゴミスキル《構造理解》。 だが、物の仕組みを「作れるレベル」で把握できるその力は、現代知識を持つ俺にとっては、最強の「文明構築ツール」だった――! ​――これは、ゴミと呼ばれたスキルとガラクタと呼ばれた石で、世界を切り拓く男の物語。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜

まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、 専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活   現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。   しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。   彼は大陸一の富を誇る名門貴族―― ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。   カイルに与えられたのは ・世界一とも言える圧倒的な財力 ・財力に比例して増大する規格外の魔力   そして何より彼を驚かせたのは――   彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。   献身的なエルフのメイド長リリア。 護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。   さらに個性豊かな巨乳メイドたち。   カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。   すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――   「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」   領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、 時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、   最強の御曹司カイルは 世界一幸せなハーレムを築いていく。 最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

一国一城の主を目指す!〜渇望の日々を超えて。

リョウ
ファンタジー
 何者かになりたかった。  だが現世でその願いは叶わず、男は敗北感と悲嘆を胸に沈んでいた。  そんな彼の前に現れたのは、一柱の女神。  導かれるまま異世界へ転移した男は、新たにレイと名乗り、剣も魔法も身分もない底辺から成り上がることを決意する。  冒険者として生きる術を学び、魔法を覚え、剣を磨き、人と裏社会を見極めながら、レイは少しずつ力を蓄えていく。  目指すのは、ただ生き延びることではない。  一国一城の主となり、この世界で“何者か”になること。  渇望を燃料に、知恵と執念で上へ上へと這い上がる、ファンタジー成り上がり譚。

処理中です...