【完結】お義姉様が悪役令嬢?わたくしがヒロインの親友?そんなお話は存じあげません

宇水涼麻

文字の大きさ
45 / 57

45 エイミーの思惑

しおりを挟む
 茶会当日、メイドたちの気合により飛び切りの美少年にされたケネシスは義姉エイミーとともに馬車へ乗り込む。

「いい! その子があの本の発案者であることを私たちが知っていることはバレてはいけないし、当然その子が発案者であることを他の者にバレてもダメ。これは最重要ミッションだからね」

「わかりました。でも、僕はおしゃべりをする相手もいませんし本のことも詳しくはありません。気をつけるべきは義姉上あねうえかと思いますが」

パーン!と小気味いい音がして、馬車内で正面に座る義姉から頭を叩かれ少し蹲る。

「本当に生意気ね。そんなんでその子を口説けるの?」

「口説く??? 僕はそのつもりはありませんよ」

「それにしては意気込みマックスな格好をしているじゃないの」

「こここれは! メイドたちが!」

 これまではメイドの説得も聞かずに支度に時間のかからないものを選ばせていたことをエイミーは知っている。

「はいはい。まずは自覚からスタートですね。了解。私のミッションは難しそうだわ」

 エイミーの呟きの意味がわからずケネシスは首を傾げていた。

 茶会の会場に入るとそこここから黄色い声が聞こえた。美少年で公爵家の後継者であると有名なケネシスが気合を入れた格好をしているのだからご令嬢たちの目が変わるのも当然である。

「あらあら。ケネシスは本当にモテるわね」

「半分は義姉上の責任かと思いますが?
痛てっ!」

 ケネシスの腕に乗せていた手を使って抓っているエイミーをケネシスは恨めしそうに見上げた。十二歳のケネシスと十六歳のエイミーではまだエイミーの方が背が高い。

「その生意気なお口は封印しなさいな」

「ご安心ください。義姉上にだけです。
 痛てっ!」

 懲りないケネシスはそれほどエイミーに心を許している。

 主催者である侯爵子息とその婚約者に挨拶を済ませると飲み物を持って一つの丸テーブルに座った。ご令嬢たちがひっきりなしに挨拶に訪れ相席を願うがエイミーが全てを蹴散らした。

『ケネシス様を養子縁組解消してエイミー様のお婿様になさるのではないかしら?』

 ケネシスにご令嬢を寄せ付けようとしないエイミーの態度にズレた想像をするご令嬢たちが増えてきた頃、やっとエイミーが笑顔になった。

「来たわ」

 エイミーの視線を追うとオレンジ色の髪のご令嬢と黄緑色の髪のご令嬢が主催者に挨拶している後ろ姿が見える。

 挨拶を終えこちらに向いた姿にケネシスは動きを止めた。

『自然を司る妖精が現れた……』

 翡翠色の髪を少女らしく左右にツーサイドアップにした少女は桃色のドレスが似合っており歩き方がとても優雅でこれまでケネシスが見てきた同年代とは格の違いを感じた。

「メイロッテ!」

 エイミーが立ち上がり手を振ると気がついたメイロッテは近くにいるメイドに何かを注文してからケネシスたちのいるテーブルへやってくる。
 可愛らしく気品に溢れ口元に笑顔を絶やさないアリサを近くで見たケネシスは着席の状態で尚更硬直する。

「エイミー様。お久しぶりでございます。まずはわたくしの義妹を紹介させてくださいませ」

「ええ。もちろんよ。
 ん! んん!」

 エイミーが呆けているケネシスを促すと慌てて立ち上がった。

「オルクス公爵家が長女アリサです。よろしくお願いいたします」

 挨拶に伏せた目を上げると長いまつげに縁取られた金色の大きな瞳がケネシスを貫く。

「私はワイドン公爵家のエイミー、こちらは私の義弟おとうとよ」

 まだ未就学の子女同士なので堅苦しいほどの挨拶はしない。

 またしても呆けてしまったケネシスが慌てた。

「あ、その。ふぅ。
ケネシス・ワイドンです。よろしくお願いします」

 ケネシスは小さく深呼吸して挨拶をしたが、ケネシスの緊張を察してしまったメイロッテとアリサはケネシスを安心させるように小さく笑い、エイミーは呆れ顔で軽く睨んだ。

『自覚するのは早そうでよかったわ。こんなに可愛らしいのだもの当然かな。よし! これで私はアリサ嬢との交流に集中できる!』

 思ったより一つ目のミッションが簡単にクリアーできることをエイミーが心でほくそ笑んでいるうちにメイロッテはケネシスの緊張を慮り積極的に話していく。

「わたくしは西部辺境伯コンティ家の娘メイロッテですわ。エイミー様にはとても親しくしていただいておりますの」

「北部のおじ様と交流があるお家なの。
とにかく座りましょう」

 一番年上のエイミーが仕切り四人がテーブルに座るとお菓子の乗ったトレーと冷たいジュースが運ばれてきて和やかな雰囲気となった。
 
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜

Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。

『処刑されるたびに12歳に戻る悪役令嬢、7回目の人生は「何もせず寝て過ごす」ことに決めたら、なぜか周囲が勝手に勘違いして聖女扱いされています

六角
恋愛
公爵令嬢リリアーナは、18歳の誕生日に必ず断罪・処刑されては12歳に戻るという地獄のループを6回も繰り返していた。 真面目に努力しても、剣を極めても、裏社会を支配しても、結局は殺される運命。 心折れた彼女は、7回目の人生でついに決意する。 「もう頑張らない。どうせ死ぬなら、今回はひたすら寝て過ごそう」と。 しかし、安眠を求めて「うるさい」と敵を黙らせれば『王者の覇気』と恐れられ、寝ぼけて放った魔法は『神の奇跡』と崇められ、枕への異常なこだわりは『深遠なる儀式』と誤解されてしまう。 気がつけば、ストーカー気味のヤンデレ王子、パン屋の元ヒロイン、狂犬の如きライバル令嬢、元部下の暗殺者、そして不眠症の魔王までもが彼女の信者となり、リリアーナは意図せずして国を、そして世界を救う「最強の聖女」へと祭り上げられていく。 「お願いだから、私を寝かせて!」 睡眠欲だけで運命(システム)さえもねじ伏せる、無気力悪役令嬢の痛快勘違いサクセス(?)ストーリー!

【完結】パパ、私は犯人じゃないよ ~処刑予定の私、冷徹公爵(パパ)に溺愛されるまで~

チャビューヘ
ファンタジー
※タイトル変更しました。 「掃除(処分)しろ」と私を捨てた冷徹な父。生き残るために「心を無」にして媚びを売ったら。 「……お前の声だけが、うるさくない」 心の声が聞こえるパパと、それを知らずに生存戦略を練る娘の物語。 ----- 感想送っていただいている皆様へ たくさんの嬉しい言葉や厳しい意見も届いており一つ一つがすごく嬉しいのと頑張ろうと感じています。ご意見を元に修正必要な部分は随時更新していきます。 成長のため感想欄を閉じませんが公開はする予定ありません。ですが必ず全て目を通しています。拙作にお時間を頂きありがとうございます。これからもよろしくお願いします。

【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした

きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。 全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。 その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。 失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。

婚約破棄のその場で転生前の記憶が戻り、悪役令嬢として反撃開始いたします

タマ マコト
ファンタジー
革命前夜の王国で、公爵令嬢レティシアは盛大な舞踏会の場で王太子アルマンから一方的に婚約を破棄され、社交界の嘲笑の的になる。その瞬間、彼女は“日本の歴史オタク女子大生”だった前世の記憶を思い出し、この国が数年後に血塗れの革命で滅びる未来を知ってしまう。 悪役令嬢として嫌われ、切り捨てられた自分の立場と、公爵家の権力・財力を「運命改変の武器」にすると決めたレティシアは、貧民街への支援や貴族の不正調査をひそかに始める。その過程で、冷静で改革派の第二王子シャルルと出会い、互いに利害と興味を抱きながら、“歴史に逆らう悪役令嬢”として静かな反撃をスタートさせていく。

【完結】レイハート公爵夫人の時戻し

風見ゆうみ
恋愛
公爵夫人である母が亡くなったのは、私、ソラリアが二歳になり、妹のソレイユが生まれてすぐのことだ。だから、母の記憶はないに等しい。 そんな母が私宛に残していたものがあった。 青色の押し花付きの白い封筒に入った便箋が三枚。 一枚目には【愛するソラリアへ】三枚目に【母より】それ以外、何も書かれていなかった。 父の死後、女性は爵位を継ぐことができないため、私は公爵代理として、領民のために尽くした。 十九歳になった私は、婚約者に婿入りしてもらい、彼に公爵の爵位を継いでもらった。幸せな日々が続くかと思ったが、彼との子供を授かったとわかった数日後、私は夫と実の妹に殺されてしまう。 けれど、気がついた時には、ちょうど一年前になる初夜の晩に戻っており、空白だったはずの母からの手紙が読めるようになっていた。 殺されたことで羊の形をした使い魔が見えるようになっただけでなく『時戻しの魔法』を使えるようになった私は、爵位を取り返し、妹と夫を家から追い出すことに決める。だが、気弱な夫は「ソラリアを愛している。別れたくない」と泣くばかりで、離婚を認めてくれず――。

悪役令嬢発溺愛幼女着

みおな
ファンタジー
「違います!わたくしは、フローラさんをいじめてなどいません!」  わたくしの声がホールに響いたけれど、誰もわたくしに手を差し伸べて下さることはなかった。  響いたのは、婚約者である王太子殿下の冷たい声。  わたくしに差し伸べられたのは、騎士団長のご子息がわたくしを強く床に押し付ける腕。  冷ややかな周囲のご令嬢ご令息の冷笑。  どうして。  誰もわたくしを信じてくれないまま、わたくしは冷たい牢の中で命を落とした。

処理中です...