【完結】転生者候爵令嬢のわたくしは王女と一緒に転落するらしいのですが全力で拒否したいと思いますわ〜公爵令息の僕の悪夢は現を拒否隣国王女編〜

宇水涼麻

文字の大きさ
12 / 32

11 淑女見習いのお茶会

しおりを挟む
 しかし、この『転生人の成功』につながることがわたくしにも起きました。

 侯爵家は元々鉄鉱石が取れる山をいくつか持っており、鉄鉱業が盛んでございました。なので、針金のようなものはお父様の執務室には、そこここに落ちておりました。まあ、翌日には、メイドによってキレイにされてしまうのですけど。そう思うと、針金を拾ったことは、素晴らしい偶然だったのですわね。

 その1つを拾い上げ、わたくしは指にクルクルと巻きつけます。それを見た『はるかの知識』が『トクン』と反応いたしました。わたくしはすぐに『はるかの知識』の引き出しをあけ、内容を聞いて驚きました。なんだか、これ、すごく使えそうなのです。
 が、残念ながら、商品にできるような知識ではございません。

 そこで、お父様を頼ることにしたのです。

 わたくしはお父様の執務室へと赴きました。お父様は、わたくしのことが大好きなので、すぐに迎え入れて、ソファーに座り、お膝へ乗せます。
 わたくしは、お父様のお膝の上で、まるで遊んでいるかのように呟きました。

「ねぇ、お父様。これの大きいものが、ベッドやソファーに入っていたら、気持ちよく座れると思いませんか?」

 わたくしは、親指と人差し指で、模擬スプリングの伸縮を繰り返しているだけです。

 衝撃を受けたのはお父様で、それから商品開発に乗り出しました。最初の商品は、執務椅子用のクッションでした。これもとても売れて、王城王宮すべての注文を受けたと聞いております。
 それからは、ソファーや馬車椅子、ベッド、というように商品がどんどん大きくなっていきました。

 後から聞いたところによりますと、針金の太さや長さから、スプリングの大きさ、数、巻数まで、あらゆるパターンを実験しなければならなかったそうですわ。
 商品が大きくなるたびに、開発のためのお試しは数多く作られ、お父様は楽しかったと申しておりますが、きっと大変だったと思いますの。開発などという難しいことはすべてお父様とお父様が集めていらした開発者様たちのおかげなのです。

 わたくしは本当に最初の指遊びのバネの伸縮のみに関わっただけでございます。お父様にそのバネの名前を聞かれたので『スプリング』と答えてしまいましたわね。まあ、これが『スプリング姫』と呼ばれてしまうことになるのですが。

 おかげさまで、我が家は大変潤い、下の弟妹たちが大きくなるのも金銭的には問題ないですし、妹たちのお嫁に行く支度持参金にも問題ないと思われます。
 あ、その前にわたくしが、支度持参金を持って嫁に行かねばなりませんわね。オホホホ

〰️ 〰️ 〰️

 と、我が家の開発話は、ともかくでございますわ。

 わたくしが流行病になる前は、家族で領地生活と王都生活を半年ほどのサイクルで繰り返しておりました。王都生活で流行病になってしまったのですが、それはさておき、王都にいる間は、令嬢としてお付き合いもいろいろとあるわけでございます。

 わたくしが、病から立ち直ってから二月ほど経ちました頃でございます。
 二月に一度の恒例であります王宮での淑女見習いのお茶会なる王女殿下主催のお茶会の日になりましたの。

 王宮の庭園に到着してみれば、それぞれがメイドに案内された席に着くことになっております。(残念なことに…………というのは決して顔には出しませんが)わたくしは、どうやら本日は王女殿下のテーブルのようですわ。全く、病み上がりなのですから、気を使ってほしいかったですわ。

「コレッティーヌ様、まだ具合がよろしくありませんの?」

 ご心配してくださったのは、お隣に座っていらっしゃったマチルティーズ・グラッグ様ですわ。侯爵様のご長女でわたくしより1つ上のご令嬢です。
 それにしても、嫌だと思ったことが顔に出ていたなんて、わたくしは淑女としてまだまだですわね。

「マチルティーズ様、大丈夫ですわ。ありがとうございます」

 表情に出していた失敗を取り返すように笑顔をお見せいたします。

「流行病でしたのでしょう。お辛かったでしょう」 

 マチルティーズ様は口に手を添え眉毛を下げて本当に心配してくれているようです。ですが、まさか『はい、一度死にました』などということは絶対に申せません。

「家族が看病してくださって、こうして完治いたしましたわ」

 わたくしは笑顔でお答えしました。

「まあ、ステキなお話ですわねぇ。またコレッティーヌ様がこちらに来てくださって本当によかったですわぁ」

 わたくしはここ2回ほどは病の床に臥せっていたため、参加できなかったのですわ。マチルティーズ様がこのようにおっしゃるには、それなりに理由がありますの。

 あら、どうやらその理由がいらっしゃったようですわ。


 集まったご令嬢たちが一斉に立ち上がり頭を下げてそのお方が近くまでいらっしゃるのを待ちますの。到着なされてもなかなかお声掛けはなさりません。ゆっくりと会場と参加者の様子を観察なされて、ドレスのスカート部分を持つわたくしたちの手が少ししびれてきた頃にやっと口を開きますの。

「みなさま、今日はいらっしゃってくれてありがとう」

「「「ご招待賜りまして、ありがとうございます、王女殿下」」」

 ここまででも、まだ頭は上げず、手はスカートをつまみ上げておりますのよ。イライラしますわ。

「本当に今日はいいお天気でよかったわ。ねぇ、マチルティーズ様」

 これはランダムに当てられるので、みんなそれぞれが言葉を決めてまいりますの。

「麗しい王女殿下をご覧になるために、お日様がお顔をお出しになられたのでしょう」

 マチルティーズ様はお褒めになることがとてもお上手でいらっしゃいます。

「まあ!マチルティーズ様はお上手ね。みなさま、お顔をお上げになって」

 やっとキツイポーズから開放された。
 王女殿下がわたくしの前のお席にお座りなる。こちらがパティリアーナ王女殿下でございます。『トクン』あら?『はるかの知識』が少しだけ反応いたしましたわ。どういうことでございましょう。これは後で検証ですわね。

「みなさま、お座りになって」

 こうして、みなが腰を下ろせば、メイドたちがお茶の給仕をしてくださいます。それまでは小さな声でテーブルごとにお話することが普通のお茶会では習わしなのですが、このお茶会では、みな、王女殿下の言葉を聞き逃してはならぬとおしゃべりに花が咲くこともないのでございます。それでも、テーブルが違うだけで気遣いは雲泥の差でございますけどね。

「コレッティーヌ様、ごきげんよう。まさか流行病が治らぬままいらしたわけではありませんわよね?」

 きたきたきたぁ!という感じでございますわね。わたくしは眉をピクピクさせることなくお答えいたします。

「王女殿下におきましては、ご健勝のご様子、嬉しく思いますわ。ご心配いただきまして、ありがたきことと存じます。熱も下がりましたし、お医者様より外出許可もいただいております」

 最後に嘘のニッコリを加えれば完璧ですわ。

「そう。それにしてもお痩せになったそのお体ではそのドレスも映えませんわねぇ」

 と、このような調子で、わたくしは頻繁に王女殿下のターゲットとなるのでございます。なので、わたくしがこのお茶会に参加するだけで、みなさまに矛先が向く確率が格段に下がりますの。つまり、わたくしは生贄ですわね。

 このパティリアーナ王女殿下は、実はわたくしの反面教師でございますの。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

愛しいあなたは竜の番

さくたろう
恋愛
 前世で無惨に処刑された記憶を持つ少女フィオナは、今世では幼い頃から番である竜族の王に保護されて塔の中で大切に育てられていた。  16歳のある日、敵国の英雄ルイが塔を襲撃しにきたが、なんとフィオナは彼に一目惚れをしてしまう。フィオナを人質にするために外へと連れ出したルイも、次第に彼女に離れがたい想いを感じ始め徐々に惹かれていく。  竜人の番として育てられた少女が、竜を憎む青年と恋に落ちる物語。 ※小説家になろう様に公開したものを一部省略して投稿する予定です。 ※全58話、一気に更新します。ご了承ください。

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

華やかな異世界公爵令嬢?――と思ったら地味で前世と変わらないブラックでした。 ~忠誠より確かな契約で異世界働き方改革ですわ~』

ふわふわ
恋愛
華やかなドレス。きらびやかな舞踏会。 公爵令嬢として転生した私は、ようやく優雅な人生を手に入れた―― ……はずでしたのに。 実態は、書類の山、曖昧な命令、責任の押し付け合い。 忠誠の名のもとに搾取される領地運営。 前世のブラック企業と、何も変わりませんでしたわ。 ならば。 忠誠ではなく契約を。 曖昧な命令ではなく明文化を。 感情論ではなく、再評価条項を。 「お父様、お手伝いするにあたり契約を結びましょう」 公爵家との契約から始まった小さな改革は、やがて王家を巻き込み、地方貴族を動かし、王国全体の制度を揺るがしていく――。 透明化。共有化。成果の可視化。 忠誠より確かな契約で、異世界働き方改革ですわ。 これは、玉座を奪う物語ではありません。 国家を“回る構造”に変える、公爵令嬢の改革譚。 そして最後に選ばれるのは――契約ではなく、覚悟。 ---

【完結】悪役令嬢だったみたいなので婚約から回避してみた

22時完結
恋愛
春風に彩られた王国で、名門貴族ロゼリア家の娘ナタリアは、ある日見た悪夢によって人生が一変する。夢の中、彼女は「悪役令嬢」として婚約を破棄され、王国から追放される未来を目撃する。それを避けるため、彼女は最愛の王太子アレクサンダーから距離を置き、自らを守ろうとするが、彼の深い愛と執着が彼女の運命を変えていく。

転生した子供部屋悪役令嬢は、悠々快適溺愛ライフを満喫したい!

木風
恋愛
婚約者に裏切られ、成金伯爵令嬢の仕掛けに嵌められた私は、あっけなく「悪役令嬢」として婚約を破棄された。 胸に広がるのは、悔しさと戸惑いと、まるで物語の中に迷い込んだような不思議な感覚。 けれど、この身に宿るのは、かつて過労に倒れた29歳の女医の記憶。 勉強も社交も面倒で、ただ静かに部屋に籠もっていたかったのに…… 『神に愛された強運チート』という名の不思議な加護が、私を思いもよらぬ未来へと連れ出していく。 子供部屋の安らぎを夢見たはずが、待っていたのは次期国王……王太子殿下のまなざし。 逃れられない運命と、抗いようのない溺愛に、私の物語は静かに色を変えていく。 時に笑い、時に泣き、時に振り回されながらも、私は今日を生きている。 これは、婚約破棄から始まる、転生令嬢のちぐはぐで胸の騒がしい物語。 ※本作は「小説家になろう」「アルファポリス」にて同時掲載しております。 表紙イラストは、Wednesday (Xアカウント:@wednesday1029)さんに描いていただきました。 ※イラストは描き下ろし作品です。無断転載・無断使用・AI学習等は一切禁止しております。 ©︎子供部屋悪役令嬢 / 木風 Wednesday

前世の推しに似てる不仲の婚約者に「お顔が好きです」と伝えましたところ

咲楽えび@改名しました(旧 佐倉えび)
恋愛
公爵令嬢のエリーサベトは、ポンコツ王子と呼ばれる婚約者のベルナルドに嫌気がさし、婚約者破棄を目論んでた。 そんなある日、前世を思い出したエリーサベトは気付く。ベルナルドが前世の推しに似ていることに―― ポンコツ王子と勝気な令嬢が両思いになるまでのお話。 ※小説家になろうさまでも掲載しています。

完結·婚約破棄された氷の令嬢は、嫁がされた枯れおじのもとで花開く

恋愛
ティリアは辺境にある伯爵の娘であり、第三王子ガフタの婚約者であった。 だが、この婚約が気に入らないガフタは学園生活でティリアを冷遇し、卒業パーティーで婚約破棄をする。 しかも、このまま実家に帰ろうとするティリアにガフタは一回り以上年上の冴えないおっさん男爵のところへ嫁ぐように命令する。 こうしてティリアは男爵の屋敷へと向かうのだが、そこにいたのは…… ※完結まで毎日投稿します ※小説家になろう、Nolaノベルにも投稿中

【完結】魔力ゼロと捨てられた私を、王子がなぜか離してくれません ――無自覚聖女の王宮生活――

ムラサメ
恋愛
伯爵家で使用人同然に扱われてきた少女、エリナ。 魔力も才能もないとされ、義妹アリシアの影で静かに生きていた。 ある日、王国第一王子カイルの視察で運命が動き出す。 誰も気づかなかった“違和感”に、彼だけが目を留めて――。

処理中です...