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災難6 不器用な告白
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珍しく声を荒らげたギバルタの様子にユリティナは驚いた。
「あ! ……すみません……」
「いえ。わたくしを心配してくださったことはわかりますので、大丈夫ですわ」
ユリティナはお茶を口にして喉を潤した。ギバルタも付き合う。
「ウデルタ様はわたくしを口煩いとお思いになり、メーデル王太子殿下とご一緒することが増え、シエラ様とご一緒することになったと思いますのよ。学園内では、メーデル王太子殿下とシエラ様が不適切な行為をしていることは、皆存じておりますが、まさかウデルタ様までとは……。昨日メヘンレンド侯爵様から聞くまでは存じませんでしたの」
この時点では、まだメーデルとシエラが性的関係であることは知られていない。そういう関係だろうという噂は流れている。
ユリティナの言う『不適切な行為』とは婚約者でもないのに近づき過ぎたりすることだ。
また、ユリティナにはウデルタの娼館通いは知らせていない。
「ウデルタの不貞を聞き、どう思われましたか?」
「………………。 ギバルタ様。わたくしは薄情なのでしょうか?」
ユリティナが斜め下に視線を落とす。
「え?」
「そのお話を聞いても何も感じませんでしたの。婚約者のことであるのに、まるで他人のお話のように聞いておりました……」
話を聞いた時は、婚約解消しそうではあったがまだはっきりしていたわけではなく、特に今日もまだ書類上はウデルタの婚約者である。
「そうでしたか」
ギバルタはあからさまにホッとした。
「ギバルタ様。わたくしは口煩く、薄情で、さらにお父様には強情だと言われております。
そんなわたくしのために、婿入りするなど……。
メヘンレンド侯爵家としての義務や責任感であるなら、無理せずともいいのです……」
ユリティナは我慢できず、ポロリと涙を落とす。ギバルタは大慌てで意味なく手をアタフタさせた。
「ちっ! 違います!」
「ギバルタ様?!」
ユリティナが目を潤ませながらギバルタを見つめ、か細い声で名前を呼んだ。ギバルタの何かが切れた。
「俺がっ! 俺がっ!」
ギバルタは『ハアハア』と息を整える。だが、頭の沸騰は収まらなかった。
「俺が弟の婚約者であるユリティナ嬢に懸想してしまったのです! 俺はこちらでニコニコとお茶をしながら、家ではウデルタに抱いた嫉妬心を隠すため水風呂に飛び込みました。何度も何度も眠れぬ夜を過ごし、この気持ちを悟られぬよう懸命に抑え込んできたのです!
俺はウデルタの不貞の話を聞いてからニヤつきが止まらないクズなのです! 貴女が傷ついているかもしれないと思いながらも、自分にチャンスが巡ってきたのかもしれないという期待に重きを置いてしまう。
だが、もうダメだっ! ウデルタと貴女との婚約がなくなったのならもう我慢できないっ! 俺を婿入りさせたくないとおっしゃるのなら、貴女を攫いたいくらいです!」
ギバルタはいつの間にか立ち上がり、メイドたちにまで聞こえるような大きな声で告白していた。遠くから「「きゃあ!!」」と嬉しそうな黄色い声が聞こえてきた。それを聞いたギバルタは我に返り顔を赤くして椅子に座った。
隣にはびっくり眼のユリティナがいる。ユリティナは涙を止めて頬を染めた。
「ギバルタ様。こちらにいらしたときのお言葉をもう一度いただけますか?」
ユリティナに上目遣いをされたギバルタはガタッと立ち上がった。大きく深呼吸してから花束を手にした。
〰️ 〰️ 〰️
その頃、応接室では、ソチアンダ侯爵夫妻とメヘンレンド侯爵夫人とチハルタの妻アーニャがお茶をしていた。他愛もない話から始まり、本題へと移行する。
「それにしても、婚約者を兄弟で交換するようなことになり、本当にそちら様はよろしいのですか?」
メヘンレンド侯爵夫人は眉を下げて申し訳無さそうにしている。
「そのための『婚約白紙』です。書類上ですが、ユリティナの婚約者はギバルタ殿だけになりますからな」
「なるほど。そうでしたか」
「それに……」
ソチアンダ侯爵はソチアンダ侯爵夫人と目を合わせてにこやかに笑う。それを見たアーニャも笑顔になる。メヘンレンド侯爵夫人だけが不思議そうな顔をした。
「実はここ一年間のギバルタ殿とユリティナの様子を見て、こちらから婚約者交代のお願いに上がろうかと、ユリティナには内緒で妻と話していたのです」
「そうなんですの! ユリティナったら、ギバルタ様の前では恋する乙女なのですもの。おほほ。母としては、娘には女性としての幸せも掴んでほしいですから」
「アーニャは気がついていたのかい?」
メヘンレンド侯爵夫人は隣に座る嫁に確認する。
「はい。ですから、途中からは私がこちらへ同行することは止めておりました」
「そうなのか。ギバルタは、家ではそんなことおくびにも出さないから知らなかったな」
メヘンレンド侯爵夫人は苦笑いした。
「あ! ……すみません……」
「いえ。わたくしを心配してくださったことはわかりますので、大丈夫ですわ」
ユリティナはお茶を口にして喉を潤した。ギバルタも付き合う。
「ウデルタ様はわたくしを口煩いとお思いになり、メーデル王太子殿下とご一緒することが増え、シエラ様とご一緒することになったと思いますのよ。学園内では、メーデル王太子殿下とシエラ様が不適切な行為をしていることは、皆存じておりますが、まさかウデルタ様までとは……。昨日メヘンレンド侯爵様から聞くまでは存じませんでしたの」
この時点では、まだメーデルとシエラが性的関係であることは知られていない。そういう関係だろうという噂は流れている。
ユリティナの言う『不適切な行為』とは婚約者でもないのに近づき過ぎたりすることだ。
また、ユリティナにはウデルタの娼館通いは知らせていない。
「ウデルタの不貞を聞き、どう思われましたか?」
「………………。 ギバルタ様。わたくしは薄情なのでしょうか?」
ユリティナが斜め下に視線を落とす。
「え?」
「そのお話を聞いても何も感じませんでしたの。婚約者のことであるのに、まるで他人のお話のように聞いておりました……」
話を聞いた時は、婚約解消しそうではあったがまだはっきりしていたわけではなく、特に今日もまだ書類上はウデルタの婚約者である。
「そうでしたか」
ギバルタはあからさまにホッとした。
「ギバルタ様。わたくしは口煩く、薄情で、さらにお父様には強情だと言われております。
そんなわたくしのために、婿入りするなど……。
メヘンレンド侯爵家としての義務や責任感であるなら、無理せずともいいのです……」
ユリティナは我慢できず、ポロリと涙を落とす。ギバルタは大慌てで意味なく手をアタフタさせた。
「ちっ! 違います!」
「ギバルタ様?!」
ユリティナが目を潤ませながらギバルタを見つめ、か細い声で名前を呼んだ。ギバルタの何かが切れた。
「俺がっ! 俺がっ!」
ギバルタは『ハアハア』と息を整える。だが、頭の沸騰は収まらなかった。
「俺が弟の婚約者であるユリティナ嬢に懸想してしまったのです! 俺はこちらでニコニコとお茶をしながら、家ではウデルタに抱いた嫉妬心を隠すため水風呂に飛び込みました。何度も何度も眠れぬ夜を過ごし、この気持ちを悟られぬよう懸命に抑え込んできたのです!
俺はウデルタの不貞の話を聞いてからニヤつきが止まらないクズなのです! 貴女が傷ついているかもしれないと思いながらも、自分にチャンスが巡ってきたのかもしれないという期待に重きを置いてしまう。
だが、もうダメだっ! ウデルタと貴女との婚約がなくなったのならもう我慢できないっ! 俺を婿入りさせたくないとおっしゃるのなら、貴女を攫いたいくらいです!」
ギバルタはいつの間にか立ち上がり、メイドたちにまで聞こえるような大きな声で告白していた。遠くから「「きゃあ!!」」と嬉しそうな黄色い声が聞こえてきた。それを聞いたギバルタは我に返り顔を赤くして椅子に座った。
隣にはびっくり眼のユリティナがいる。ユリティナは涙を止めて頬を染めた。
「ギバルタ様。こちらにいらしたときのお言葉をもう一度いただけますか?」
ユリティナに上目遣いをされたギバルタはガタッと立ち上がった。大きく深呼吸してから花束を手にした。
〰️ 〰️ 〰️
その頃、応接室では、ソチアンダ侯爵夫妻とメヘンレンド侯爵夫人とチハルタの妻アーニャがお茶をしていた。他愛もない話から始まり、本題へと移行する。
「それにしても、婚約者を兄弟で交換するようなことになり、本当にそちら様はよろしいのですか?」
メヘンレンド侯爵夫人は眉を下げて申し訳無さそうにしている。
「そのための『婚約白紙』です。書類上ですが、ユリティナの婚約者はギバルタ殿だけになりますからな」
「なるほど。そうでしたか」
「それに……」
ソチアンダ侯爵はソチアンダ侯爵夫人と目を合わせてにこやかに笑う。それを見たアーニャも笑顔になる。メヘンレンド侯爵夫人だけが不思議そうな顔をした。
「実はここ一年間のギバルタ殿とユリティナの様子を見て、こちらから婚約者交代のお願いに上がろうかと、ユリティナには内緒で妻と話していたのです」
「そうなんですの! ユリティナったら、ギバルタ様の前では恋する乙女なのですもの。おほほ。母としては、娘には女性としての幸せも掴んでほしいですから」
「アーニャは気がついていたのかい?」
メヘンレンド侯爵夫人は隣に座る嫁に確認する。
「はい。ですから、途中からは私がこちらへ同行することは止めておりました」
「そうなのか。ギバルタは、家ではそんなことおくびにも出さないから知らなかったな」
メヘンレンド侯爵夫人は苦笑いした。
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