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第二章 小麦姫と熊隊長の村作り
5 食事作り
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グラドゥルが、サンドラに笑顔を向けた。心配するなと言っているようだ。
サンドラは、ここ半年ずっと考えていて、商人に頼ることを思いついていた。そして、商人といえばグラドゥルだった。
「私がここから買い付けて、売りに行きますよ。もちろん、出どころは極秘で」
「ラドにぃ、そんなこと、できるのか?」
コルネリオもこれにはまだ半信半疑だ。おそらくみんなもそうだろう。
「そのためのギルドさ。南方から取り寄せたことにすればいいのさ。だから、かなり高く買い取れるよ。そのかわり、ここが発展して、治安的に守れるようになったら、開放するから、その時には値崩れを起こす」
いつも朗らかなグラドゥルが真面目な顔をした。アルフレードたちも気を引き締めて考える。
「それまでに、貯蓄と発展をさせておけということですね」
ルーデジオがグラドゥルの言葉を補足する。
「そうです。10年!いや、15年、守ろう。アル、できるかい?」
アルフレードは、まわりのみんなを確認した。みんなは力強くアルフレードを見ていた。
「それで、お願いします!」
アルフレードがグラドゥルに頭を下げるとみんなもそれに倣った。販売することさえできるなら、少しくらい子供たちが舐めても問題ない。もちろん、口止めはする。
「そうだな、最初の4年は僕が直接買い付けに来よう。その後は、コルネ、お前が中心になって、王都まで運んでくるんだ。だから、4年以内に今のお前の仕事をできる子を育てろ」
グラドゥルの指定に、コルネリオはリリアーナの顔を見た。
「畑組のトーニオと、酪農組のカーラがもうすぐ中等学校の勉強を終えるのよ。この二人がいいと思うわ」
サンドラも頷いた。
「カーラはまだ15になったばかりだろう?」
ラニエルは元々酪農担当だったので、カーラをよくわかっている。
「できる子ってそんなもんなのよ。得意不得意は誰にでもあるでしょう。カーラは計算は得意だけど、いつも仔牛におしりを突かれているわ」
リリアーナのその言葉でみんなが想像した。カーラのその姿を誰もが一度は見ているため、みんな大笑いだった。
「そうか、トーニオが今抜けるのはちょっと大変になるな」
畑担当ジーノが現状を伝えた。アルフレードはすぐに代案が浮かんだ。
「サンドラのお父さんから孤児院の視察を頼まれているんだ。こちらに来させたい子供がいるらしいんだよ」
「それなら、トーニオの代わりに二人ほどこちらに入れてもらえるかな」
「こっちは、今の所大丈夫です」
酪農担当のフェリダが答えた。
「もうすぐ、豚が出産だぞ。二月もすれば、子豚も手におえなくなる」
ラニエルが心配そうにフェリダを見た。ラニエルは現在は土木担当だが、つい最近まで酪農担当だったので、現状はよく把握している。
「仕事があるなら、よかったわ。王都の院長先生から子供のことで、お手紙がきていたの」
ビアータがすぐに代案を出した。
「じゃあ、ルーさん、ビアータと明日にでも、王都へお願いします。コル、サンドラとサンドラの実家に行ってきてくれ」
べニートが手を上げた。
「いや、俺がビアータと行って来よう。そろそろ休暇も切れるから、正式な除隊手続きしてくるよ」
「兄さん、本当に夢はいいの?」
アルフレードは、ベニートの夢が騎士団隊長になることだと知っていた。現在は副隊長だ。夢に近づいているはずだった。
「アル、人間は環境で考えがかわるんだ。俺の夢もかわる!今の俺の夢は、この土地をデカくすることさっ!デカくして、子どもたちをたくさん迎え入れようぜ」
ベニートの隣に座っていたクレオリアが、ベニートの頬を両手でワシャワシャと抓った。ベニートは、小さな子どものように扱われたことに、照れていた。
「ニト兄さん、ありがとう!明日、よろしくお願いします」
ビアータが涙目でお礼を言った。
「俺たちは仕事を見てから日にちを決めるよ」
コルネリオの言葉にサンドラが頷いた。
「そうなるともう一棟ほしくなるな」
アルフレードはやる気に溢れていた。ビアータは、子どもたちを多く受け入れられることを喜んだ。
チェーザが、レリオとコジモに次の建物の相談をすることになった。
ソベルギルドの話をみんなにすると満場一致で、代表者はアルフレードになった。
〰️ 〰️ 〰️
ベニートとビアータは、5人の子どもたちを連れてきた。みな、11歳~12歳。
翌々週、コルネリオとサンドラは、4人の子どもたちを連れてきた。この子たちも、11歳~12歳。
孤児院では、初等教育をしているが、子どもたちに院内の仕事もさせているため、初等教育が最期までできることは少ない。そのこともあり、就職しても体が資本な仕事が多い。しかし、孤児院では腹いっぱい食べられるわけではないので、まだ、体が小さい子が多いのだ。
そして、そういう子は、この夏の時期、仕事に堪えられず、孤児院に戻ってきてしまう。しかし、そういう子どもたちに与えられた猶予は3ヶ月と決まっていた。3ヶ月では、子どもたちの状況は変わるはずもない。
孤児院の管理者である院長先生や牧師は、そういう子どもたちを、ビアータに託すのだ。
そういう子どもたちでも、時間をかければ勉強もある程度できるようになるし、ご飯を腹いっぱい食べて、一生懸命働けば、体も大きくなる。
平民たちには、それを待つ余裕がないので、仕事を首にした方だけを責めるわけにもいかない。
新棟ができるまで、ステラ棟の何室かをを女の子の四人部屋にした。
〰️ 〰️ 〰️
さすがにソル棟だけでは、テーブルが足りないので、ソル棟からステラ棟にできたものを半分運び、ステラ棟の給仕をロマーナがやっている。メリナやバレリアは率先して手伝ってくれる。ステラ棟では、特に大人たちが食事をするようになった。
「二人はきっといい奥さんに、なるわね」
ロマーナの言葉に二人は頬を染めた。メリナはモジモジしながら上目遣いでロマーナにおねだりした。
「ロマ姉さん、その事なんだけど、私もバレリアもいつか、そのぉ、彼に、ご飯を作ってあげれるようになりたいの」
ロマーナは、去年までの自分を考えて、二人が微笑ましくなった。確かに、ベニートに『うまいっ!』と言われると嬉しくなったものだ。ベニートは今でも、ロマーナが味付けを担当したものはすぐに気がついてくれる。そんなところも、嬉しい。
「そうよね。旦那様のために作るお料理はまた別ものだわ」
旦那様という言葉に、二人は『きゃあきゃあ』と喜んだ。
「セルさんに聞いてみるけど、週に1回か2回なら、こちらはこちらでお料理しましょうか。せっかく、調理場があるんだもの」
セルジョロは、すぐにオッケーを出して、週に何度か、他の組の仕事をみながら、メニューは同じで2箇所で作ることになった。メリナとバレリアには他の仕事もあるので、夕食作りだけにした。
これもまた、自立につながると考えられた。
「ソル棟の食事を料金計算しておきましょう。自宅で食事をする者も、そのうち出てくるでしょうからね」
ルーデジオは、早速台帳を広げ、仕入の値段などを書き出していた。
「そうね。ソル棟で食べないならお給料に上乗せさせてあげればいいのね。すごいわ!」
ビアータたちは、元々貴族なので、旦那様に手料理を食べさせるという概念はあまりない。リリアーナも、幼き頃からメイドなので、料理は料理人が作ることが普通である。
しかし、他の者たちは基本的に平民だ。母親が料理をすることは、普通だろう。それを教えられることは、よいことだと、ビアータも喜んだ。
サンドラは、ここ半年ずっと考えていて、商人に頼ることを思いついていた。そして、商人といえばグラドゥルだった。
「私がここから買い付けて、売りに行きますよ。もちろん、出どころは極秘で」
「ラドにぃ、そんなこと、できるのか?」
コルネリオもこれにはまだ半信半疑だ。おそらくみんなもそうだろう。
「そのためのギルドさ。南方から取り寄せたことにすればいいのさ。だから、かなり高く買い取れるよ。そのかわり、ここが発展して、治安的に守れるようになったら、開放するから、その時には値崩れを起こす」
いつも朗らかなグラドゥルが真面目な顔をした。アルフレードたちも気を引き締めて考える。
「それまでに、貯蓄と発展をさせておけということですね」
ルーデジオがグラドゥルの言葉を補足する。
「そうです。10年!いや、15年、守ろう。アル、できるかい?」
アルフレードは、まわりのみんなを確認した。みんなは力強くアルフレードを見ていた。
「それで、お願いします!」
アルフレードがグラドゥルに頭を下げるとみんなもそれに倣った。販売することさえできるなら、少しくらい子供たちが舐めても問題ない。もちろん、口止めはする。
「そうだな、最初の4年は僕が直接買い付けに来よう。その後は、コルネ、お前が中心になって、王都まで運んでくるんだ。だから、4年以内に今のお前の仕事をできる子を育てろ」
グラドゥルの指定に、コルネリオはリリアーナの顔を見た。
「畑組のトーニオと、酪農組のカーラがもうすぐ中等学校の勉強を終えるのよ。この二人がいいと思うわ」
サンドラも頷いた。
「カーラはまだ15になったばかりだろう?」
ラニエルは元々酪農担当だったので、カーラをよくわかっている。
「できる子ってそんなもんなのよ。得意不得意は誰にでもあるでしょう。カーラは計算は得意だけど、いつも仔牛におしりを突かれているわ」
リリアーナのその言葉でみんなが想像した。カーラのその姿を誰もが一度は見ているため、みんな大笑いだった。
「そうか、トーニオが今抜けるのはちょっと大変になるな」
畑担当ジーノが現状を伝えた。アルフレードはすぐに代案が浮かんだ。
「サンドラのお父さんから孤児院の視察を頼まれているんだ。こちらに来させたい子供がいるらしいんだよ」
「それなら、トーニオの代わりに二人ほどこちらに入れてもらえるかな」
「こっちは、今の所大丈夫です」
酪農担当のフェリダが答えた。
「もうすぐ、豚が出産だぞ。二月もすれば、子豚も手におえなくなる」
ラニエルが心配そうにフェリダを見た。ラニエルは現在は土木担当だが、つい最近まで酪農担当だったので、現状はよく把握している。
「仕事があるなら、よかったわ。王都の院長先生から子供のことで、お手紙がきていたの」
ビアータがすぐに代案を出した。
「じゃあ、ルーさん、ビアータと明日にでも、王都へお願いします。コル、サンドラとサンドラの実家に行ってきてくれ」
べニートが手を上げた。
「いや、俺がビアータと行って来よう。そろそろ休暇も切れるから、正式な除隊手続きしてくるよ」
「兄さん、本当に夢はいいの?」
アルフレードは、ベニートの夢が騎士団隊長になることだと知っていた。現在は副隊長だ。夢に近づいているはずだった。
「アル、人間は環境で考えがかわるんだ。俺の夢もかわる!今の俺の夢は、この土地をデカくすることさっ!デカくして、子どもたちをたくさん迎え入れようぜ」
ベニートの隣に座っていたクレオリアが、ベニートの頬を両手でワシャワシャと抓った。ベニートは、小さな子どものように扱われたことに、照れていた。
「ニト兄さん、ありがとう!明日、よろしくお願いします」
ビアータが涙目でお礼を言った。
「俺たちは仕事を見てから日にちを決めるよ」
コルネリオの言葉にサンドラが頷いた。
「そうなるともう一棟ほしくなるな」
アルフレードはやる気に溢れていた。ビアータは、子どもたちを多く受け入れられることを喜んだ。
チェーザが、レリオとコジモに次の建物の相談をすることになった。
ソベルギルドの話をみんなにすると満場一致で、代表者はアルフレードになった。
〰️ 〰️ 〰️
ベニートとビアータは、5人の子どもたちを連れてきた。みな、11歳~12歳。
翌々週、コルネリオとサンドラは、4人の子どもたちを連れてきた。この子たちも、11歳~12歳。
孤児院では、初等教育をしているが、子どもたちに院内の仕事もさせているため、初等教育が最期までできることは少ない。そのこともあり、就職しても体が資本な仕事が多い。しかし、孤児院では腹いっぱい食べられるわけではないので、まだ、体が小さい子が多いのだ。
そして、そういう子は、この夏の時期、仕事に堪えられず、孤児院に戻ってきてしまう。しかし、そういう子どもたちに与えられた猶予は3ヶ月と決まっていた。3ヶ月では、子どもたちの状況は変わるはずもない。
孤児院の管理者である院長先生や牧師は、そういう子どもたちを、ビアータに託すのだ。
そういう子どもたちでも、時間をかければ勉強もある程度できるようになるし、ご飯を腹いっぱい食べて、一生懸命働けば、体も大きくなる。
平民たちには、それを待つ余裕がないので、仕事を首にした方だけを責めるわけにもいかない。
新棟ができるまで、ステラ棟の何室かをを女の子の四人部屋にした。
〰️ 〰️ 〰️
さすがにソル棟だけでは、テーブルが足りないので、ソル棟からステラ棟にできたものを半分運び、ステラ棟の給仕をロマーナがやっている。メリナやバレリアは率先して手伝ってくれる。ステラ棟では、特に大人たちが食事をするようになった。
「二人はきっといい奥さんに、なるわね」
ロマーナの言葉に二人は頬を染めた。メリナはモジモジしながら上目遣いでロマーナにおねだりした。
「ロマ姉さん、その事なんだけど、私もバレリアもいつか、そのぉ、彼に、ご飯を作ってあげれるようになりたいの」
ロマーナは、去年までの自分を考えて、二人が微笑ましくなった。確かに、ベニートに『うまいっ!』と言われると嬉しくなったものだ。ベニートは今でも、ロマーナが味付けを担当したものはすぐに気がついてくれる。そんなところも、嬉しい。
「そうよね。旦那様のために作るお料理はまた別ものだわ」
旦那様という言葉に、二人は『きゃあきゃあ』と喜んだ。
「セルさんに聞いてみるけど、週に1回か2回なら、こちらはこちらでお料理しましょうか。せっかく、調理場があるんだもの」
セルジョロは、すぐにオッケーを出して、週に何度か、他の組の仕事をみながら、メニューは同じで2箇所で作ることになった。メリナとバレリアには他の仕事もあるので、夕食作りだけにした。
これもまた、自立につながると考えられた。
「ソル棟の食事を料金計算しておきましょう。自宅で食事をする者も、そのうち出てくるでしょうからね」
ルーデジオは、早速台帳を広げ、仕入の値段などを書き出していた。
「そうね。ソル棟で食べないならお給料に上乗せさせてあげればいいのね。すごいわ!」
ビアータたちは、元々貴族なので、旦那様に手料理を食べさせるという概念はあまりない。リリアーナも、幼き頃からメイドなので、料理は料理人が作ることが普通である。
しかし、他の者たちは基本的に平民だ。母親が料理をすることは、普通だろう。それを教えられることは、よいことだと、ビアータも喜んだ。
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