【完結160万pt】王太子妃に決定している公爵令嬢の婚約者はまだ決まっておりません。王位継承権放棄を狙う王子はついでに側近を叩き直したい

宇水涼麻

文字の大きさ
50 / 62

50 新男爵「見た目は大事」

しおりを挟む
 三人が旅をしている頃王都でも変化があった。

 ラオルドが王都から出た後、エーティルはラオルドのためにムーガが立てた作戦でラオルドが王位継承権を放棄することになったことは伏せたうえで、ラオルドが現公爵ノンバルダから受けていたプレッシャーについて王妃陛下に打ち明けた。キリアをはじめとした側妃の息子の三人の王子が狙われ万が一にも亡くなるということになれば、どんなに中央から離れていてもラオルドを呼び寄せられるとノンバルダが考えるかもしれないと思ったからだ。さらにラオルドが心配していたように王妃陛下の実家を窮地に立たせるわけにはいかないとも考えた。その結果、王妃陛下に直々に相談するべきだと判断したのだった。

 王妃陛下はエーティルからノンバルダの裏の顔を知らされた時真っ青な顔でソファに沈み込んだ。エーティルを退室させた後に王妃陛下がどれほど悩み苦しんでいたのかを知る者はいない。

 ノンバルダがそれからすぐに病で亡くなったのは故意か偶然か。

 エーティルは王妃陛下に確認はしなかった。
 そして、王妃陛下もそれに関しては誰にも何も言わなかった。ムーガの後を継いだただ一人を除いては……。

『もっと早くに王妃陛下にご相談申し上げていたらラオルド殿下が王太子になられたのかしら?
駄目ね……。ラオルド殿下が王宮にいらっしゃる間に公爵が亡くなっていたら、お優しいラオルド殿下は責任を感じて何もできなくなってしまうわ。
ここにラオルド殿下がいらっしゃらない状況でお亡くなりになったからこそご病気だと信じてくださるのよ。きっとそれもご自分に無理矢理言い聞かせるのよね。
とはいえ、わたくしは公爵の死の真相は存じませんが』

 エーティルは遠い空を見つめた。

 まだ婚姻をしていなかったノンバルダに代わり新たに公爵となった公爵家の次男は十九歳。大変穏やかで勤勉で公爵領を栄えさせることで国を支え続けた。公爵位を受け継いだことで良い縁談も来ているらしい。キリアとも良い関係を築けており精神的にもキリアを支えていった。
 その次男はラオルドと王妃陛下それから王妃陛下の弟先々代公爵と同じ銀髪であった。

『銀……。あの子が必死に自慢していたものだわ……』

 ノンバルダが亡くなったとの報告の後、王妃陛下は弟である故先々代公爵の幼き頃を思い出していた。

『そんなものに拘ってそれを息子に押し付けるなど……』 

 王妃陛下は誰にも汲み取られないため息を零した。

〰️ 〰️ 〰️

 三ヶ月の旅を終え辿り着いた男爵邸はあの隠れ家を大きくしたような落ち着いた雰囲気の建物だった。

 男爵邸は木造二階建てだが一階がとても広い作りになっており真新しいとは言えないが手入れは行き届いている。

 三人が馬から降りる頃使用人たちが慌てて出てきた。厩舎係と思われる中年男性と少年、メイドが三人、そして執事。男爵家にしては多い使用人であろう。

「先触れを出すより来てしまう方が早かったのでな。手数をかけるがゆっくりでかまわん」

「かしこまりました。今湯の支度をさせます」

 王宮から付いてきたもの好きな壮年執事ビジールはテキパキと指示を出す。

「なるほど。彼がいることを踏まえた旅でしたか」

 馬の口を厩舎係に預けたムーガがビジールの背中を目線で追ってからラオルドを見た。

『全く……。執務に隙のないお方だ』

「まあな。急変革は領民にも負担をかける。まずはビジールに『男爵は領民を安心させる当主である』と流布してもらっていたのだ。
俺のような体格のものがいきなり来ては領民を怖がらせるだけだからな」

「そんなことありませんっ! ラオはとても優しい当主様になりますっ!」

「ヴィエナ、ありがとう。だが見た目の印象とはそういうものなのだ。
そなたもピンク頭でそれを実感しただろう?」

「……そうですね。ピンクさんだった時は良く言えば天真爛漫、悪く言えばおバカさんって見られてました。
天真爛漫だけで生きていけるわけないのに」

 メイドに促されて屋敷内へと赴く。
しおりを挟む
感想 106

あなたにおすすめの小説

【完結】婚約破棄、その後の話を誰も知らない

あめとおと
恋愛
奇跡によって病を癒す存在――聖女。 王国は長年、その力にすべてを委ねてきた。 だがある日、 誰の目にも明らかな「失敗」が起きる。 奇跡は、止まった。 城は動揺し、事実を隠し、 責任を聖女ひとりに押しつけようとする。 民は疑い、祈りは静かに現実へと向かっていった。 一方、かつて「悪役」として追放された令嬢は、 奇跡が失われる“その日”に備え、 治癒に頼らない世界を着々と整えていた。 聖女は象徴となり、城は主導権を失う。 奇跡に縋った者たちは、 何も奪われず、ただ立場を失った。 選ばれなかった者が、世界を救っただけの話。 ――これは、 聖女でも、英雄でもない 「悪役令嬢」が勝ち残る物語。

白い結婚なので無効にします。持参金は全額回収いたします

鷹 綾
恋愛
「白い結婚」であることを理由に、夫から離縁を突きつけられた公爵夫人エリシア。 だが彼女は泣かなかった。 なぜなら――その結婚は、最初から“成立していなかった”から。 教会法に基づき婚姻無効を申請。持参金を全額回収し、彼女が選んだ新たな居場所は修道院だった。 それは逃避ではない。 男の支配から離れ、国家の外側に立つという戦略的選択。 やがて彼女は修道院長として、教育制度の整備、女性領主の育成、商業と医療の再編に関わり、王と王妃を外から支える存在となる。 王冠を欲さず、しかし王冠に影響を与える――白の領域。 一方、かつての夫は地位を失い、制度の中で静かに贖罪の道を歩む。 これは、愛を巡る物語ではない。 「選ばなかった未来」を守り続けた一人の女性の物語。 白は弱さではない。 白は、均衡を保つ力。 白い結婚から始まる、静かなリーガル・リベンジと国家再編の物語。

えっ「可愛いだけの無能な妹」って私のことですか?~自業自得で追放されたお姉様が戻ってきました。この人ぜんぜん反省してないんですけど~

村咲
恋愛
ずっと、国のために尽くしてきた。聖女として、王太子の婚約者として、ただ一人でこの国にはびこる瘴気を浄化してきた。 だけど国の人々も婚約者も、私ではなく妹を選んだ。瘴気を浄化する力もない、可愛いだけの無能な妹を。 私がいなくなればこの国は瘴気に覆いつくされ、荒れ果てた不毛の地となるとも知らず。 ……と思い込む、国外追放されたお姉様が戻ってきた。 しかも、なにを血迷ったか隣国の皇子なんてものまで引き連れて。 えっ、私が王太子殿下や国の人たちを誘惑した? 嘘でお姉様の悪評を立てた? いやいや、悪評が立ったのも追放されたのも、全部あなたの自業自得ですからね?

「格が違う」なら、どうぞお好きに。あなたも、鍵印のない範囲でお幸せに。

なかすあき
恋愛
王都の大聖堂で迎えた結婚式当日。 花嫁セレナは控室で、婚約者アルトから突然の破棄を告げられる。 「格が違う」 それが理由だった。代わりに祭壇へ立つのは名門令嬢ミレイア。会場は勝者を祝福し、アルトの手首には華やかな血盟紋が輝く。 だが、盟約の儀が進むほどに“信用”の真実が姿を現していく。大司教が読み上げる盟約文、求められる「信用主体確認」。そしてセレナの鎖骨にだけ浮かび上がった、真層の印「鍵印」。 拍手が止まった瞬間、彼の勝利は終わる。 泣かず、怒鳴らず、おごそかに。セレナは契約を“手続き”として完了し、最後に一言だけ置いて去っていく。 静かな処刑がもたらす、痛快な逆転劇。

婚約破棄されたので、もう誰の役にも立たないことにしました 〜静かな公爵家で、何もしない私の本当の人生が始まります〜

ふわふわ
恋愛
王太子の婚約者として、 完璧であることを求められ続けてきた令嬢エリシア。 だがある日、彼女は一方的に婚約を破棄される。 理由は簡単だった。 「君は役に立ちすぎた」から。 すべてを失ったはずの彼女が身を寄せたのは、 “静かな公爵”と呼ばれるアルトゥール・クロイツの屋敷。 そこで待っていたのは―― 期待も、役割も、努力の強要もない日々だった。 前に出なくていい。 誰かのために壊れなくていい。 何もしなくても、ここにいていい。 「第二の人生……いえ、これからが本当の人生です」 婚約破棄ざまぁのその先で描かれる、 何者にもならなくていいヒロインの再生と、 放っておく優しさに満ちた静かな溺愛。 これは、 “役に立たなくなった”令嬢が、 ようやく自分として生き始める物語。

悪役令嬢なので最初から愛されないことはわかっていましたが、これはさすがに想定外でした。

ふまさ
恋愛
 ──こうなることがわかっていれば、はじめから好きになんてならなかったのに。  彩香だったときの思いが、ふと蘇り、フェリシアはくすりと笑ってしまった。  ありがとう、前世の記憶。おかげでわたしは、クライブ殿下を好きにならずにすんだわ。  だからあるのは、呆れと、怒りだけだった。 ※『乙女ゲームのヒロインの顔が、わたしから好きな人を奪い続けた幼なじみとそっくりでした』の、ifストーリーです。重なる文章があるため、前作は非公開とさせていただきました。読んでくれたみなさま、ありがとうございました。

白い結婚で結構ですわ。愛人持ちの夫に興味はありません

鍛高譚
恋愛
公爵令嬢ルチアーナは、王太子アルベルトとの政略結婚を命じられた。だが彼にはすでに愛する女性がいた。そこでルチアーナは、夫婦の義務を果たさない“白い結婚”を提案し、お互いに干渉しない関係を築くことに成功する。 「夫婦としての役目を求めないでくださいませ。その代わり、わたくしも自由にさせていただきますわ」 そうして始まった王太子妃としての優雅な生活。社交界では完璧な妃を演じつつ、裏では趣味の読書やお茶会を存分に楽しみ、面倒ごととは距離を置くつもりだった。 ——だが、夫は次第にルチアーナを気にし始める。 「最近、おまえが気になるんだ」 「もっと夫婦としての時間を持たないか?」 今さらそんなことを言われても、もう遅いのですわ。 愛人を優先しておいて、後になって本妻に興味を持つなんて、そんな都合の良い話はお断り。 わたくしは、自由を守るために、今日も紅茶を嗜みながら優雅に過ごしますわ——。 政略結婚から始まる痛快ざまぁ! 夫の後悔なんて知りませんわ “白い結婚”を謳歌する令嬢の、自由気ままなラブ&ざまぁストーリー!

【完】出来損ない令嬢は、双子の娘を持つ公爵様と契約結婚する~いつの間にか公爵様と7歳のかわいい双子たちに、めいっぱい溺愛されていました~

夏芽空
恋愛
子爵令嬢のエレナは、常に優秀な妹と比較され家族からひどい扱いを受けてきた。 しかし彼女は7歳の双子の娘を持つ公爵――ジオルトと契約結婚したことで、最低な家族の元を離れることができた。 しかも、条件は最高。公の場で妻を演じる以外は自由に過ごしていい上に、さらには給料までも出してくてれるという。 夢のような生活を手に入れた――と、思ったのもつかの間。 いきなり事件が発生してしまう。 結婚したその翌日に、双子の姉が令嬢教育の教育係をやめさせてしまった。 しかもジオルトは仕事で出かけていて、帰ってくるのはなんと一週間後だ。 (こうなったら、私がなんとかするしかないわ!) 腹をくくったエレナは、おもいきった行動を起こす。 それがきっかけとなり、ちょっと癖のある美少女双子義娘と、彼女たちよりもさらに癖の強いジオルトとの距離が縮まっていくのだった――。

処理中です...