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「我々から皆さんにお話がありまして、ずっと待っておりました」
そこにはティスナーとヨルスレードとエリドの婚約者とその父親が立っていた。
「ルワン公爵。いかがなさいましたか?」
ボイド公爵は理由がわらないようだ。
「それです! それです! 実はここにいる我々三家は平民となりました。私はすでに公爵ではありません」
「「「「はぁ?」」」」
「娘の卒業とともに平民となったのです。娘に卒業だけはさせてあげたかったのですよ。
平民の我々ですが、これまでの寄付金の金額のおかげで学園長様に入場許可をいただきました」
「そんな……それでは……まさか……」
「ええ。申し訳ありませんが、平民と貴族の婚姻を許されていないこの国では、娘たちの婚約は自然解消となります。ご了承ください」
三人の令嬢は華麗にカーテシーをする。
「なぜそのようなことになりましたの? ご相談いただければ手立てはあったかもしれませんのに……」
キオタス侯爵夫人は悲しげに呟いた。
「お金ですよ。領地を買っていただいたのです」
「そんなっ! 皆さんの領地は潤っているではありませんかっ!」
イエット公爵が大きな声を出す。
「娘の婚約者殿にお高いプレゼントを強請れましてなぁ。こちらからの一方通行なプレゼントであるにも関わらず高額な物を送れと言われ、その金額が大きくて」
ティスナーの元婚約者の父親ネヘイヤ家当主が説明した。
「一方通行などとは何かの間違いでは?! うちは定期的にご令嬢へのプレゼント代金を支払ってきたぞ」
イエット公爵は侮辱されたとばかりに声を荒げた。
「「「二年ほど何もいただいておりません」」」
イエット公爵家だけの問題だと思っていた二家は自分たちの息子の元婚約者もハモっていることに驚く。
「うちではないご令嬢へのプレゼントのお代金だったようですな」
ヨルスレードの元婚約者の父親ルワン家当主は半笑いだ。
「うちでの茶会も前々から準備をしているのに当日キャンセルが続きますと、ただの無駄となりますしね」
エリドの元婚約者の父親ミュリム家当主が首肯しながら言った。
「え!? エリドはそちらへ伺っていないのですか?」
「「「二年ほどいらしておりません」」」
これまた三人のご令嬢の声が揃う。
「だがっ! 観劇や博物館などへ赴いているではありませんか。チケット料金の請求書が届いていますよ」
ボイド公爵が問い詰める。
「「「二年ほど一緒の外出はしておりません」」」
男子生徒の親たちはパカンと口を開ける。そんな金額的には小さな話で家が傾くわけがないという事実より、息子が婚約者を蔑ろにしていたという事実の方が重い。
「それに、息子さんだけでなく、ご家族も婚姻を望んでいらっしゃらないようですし」
「何をおっしゃいますか。私は嫁いで来てくれることを楽しみにしておりましたよ」
ボイド公爵は悲しげに元婚約者のご令嬢を見た。ご令嬢はニッコリと笑う。
「五年前の婚約初期から、公爵夫人はわたくしの顔を見たくないと必ず玄関で追い返されましたが?」
「まさ、まさか……」
ボイド公爵は夫人の顔を見ると夫人は真っ青になって震えていた。
「私の妻は異国人ですからな。確かに娘の肌の色は少しばかり黄色みがかっています。
ですが、私にとって愛しい妻とそっくりな娘は目に入れても痛くない」
ルワン家当主は愛しげに娘の腰を抱いた。まだまだ少数ではあるが、この国も異国人を娶る者が増えてきている。政略結婚として隣国の貴族と婚姻している者もいる。
そこにはティスナーとヨルスレードとエリドの婚約者とその父親が立っていた。
「ルワン公爵。いかがなさいましたか?」
ボイド公爵は理由がわらないようだ。
「それです! それです! 実はここにいる我々三家は平民となりました。私はすでに公爵ではありません」
「「「「はぁ?」」」」
「娘の卒業とともに平民となったのです。娘に卒業だけはさせてあげたかったのですよ。
平民の我々ですが、これまでの寄付金の金額のおかげで学園長様に入場許可をいただきました」
「そんな……それでは……まさか……」
「ええ。申し訳ありませんが、平民と貴族の婚姻を許されていないこの国では、娘たちの婚約は自然解消となります。ご了承ください」
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「なぜそのようなことになりましたの? ご相談いただければ手立てはあったかもしれませんのに……」
キオタス侯爵夫人は悲しげに呟いた。
「お金ですよ。領地を買っていただいたのです」
「そんなっ! 皆さんの領地は潤っているではありませんかっ!」
イエット公爵が大きな声を出す。
「娘の婚約者殿にお高いプレゼントを強請れましてなぁ。こちらからの一方通行なプレゼントであるにも関わらず高額な物を送れと言われ、その金額が大きくて」
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「一方通行などとは何かの間違いでは?! うちは定期的にご令嬢へのプレゼント代金を支払ってきたぞ」
イエット公爵は侮辱されたとばかりに声を荒げた。
「「「二年ほど何もいただいておりません」」」
イエット公爵家だけの問題だと思っていた二家は自分たちの息子の元婚約者もハモっていることに驚く。
「うちではないご令嬢へのプレゼントのお代金だったようですな」
ヨルスレードの元婚約者の父親ルワン家当主は半笑いだ。
「うちでの茶会も前々から準備をしているのに当日キャンセルが続きますと、ただの無駄となりますしね」
エリドの元婚約者の父親ミュリム家当主が首肯しながら言った。
「え!? エリドはそちらへ伺っていないのですか?」
「「「二年ほどいらしておりません」」」
これまた三人のご令嬢の声が揃う。
「だがっ! 観劇や博物館などへ赴いているではありませんか。チケット料金の請求書が届いていますよ」
ボイド公爵が問い詰める。
「「「二年ほど一緒の外出はしておりません」」」
男子生徒の親たちはパカンと口を開ける。そんな金額的には小さな話で家が傾くわけがないという事実より、息子が婚約者を蔑ろにしていたという事実の方が重い。
「それに、息子さんだけでなく、ご家族も婚姻を望んでいらっしゃらないようですし」
「何をおっしゃいますか。私は嫁いで来てくれることを楽しみにしておりましたよ」
ボイド公爵は悲しげに元婚約者のご令嬢を見た。ご令嬢はニッコリと笑う。
「五年前の婚約初期から、公爵夫人はわたくしの顔を見たくないと必ず玄関で追い返されましたが?」
「まさ、まさか……」
ボイド公爵は夫人の顔を見ると夫人は真っ青になって震えていた。
「私の妻は異国人ですからな。確かに娘の肌の色は少しばかり黄色みがかっています。
ですが、私にとって愛しい妻とそっくりな娘は目に入れても痛くない」
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