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十七年前、シュケーナ公爵家にそれは可愛らしい可愛らしい女の子が生まれた。
シュケーナ公爵家らしい黄緑の髪に黄色の瞳を持った女の子だ。
「きゃああああ!!!」
母親であるシュケーナ公爵夫人ケルバは産湯でキレイにされた女の子をメイドから受け取ると悲痛な声で叫んだ。
女の子はびっくりして泣き出し、ベッドの脇で笑顔で親子を見つめていたシュケーナ公爵サイモンは笑顔のまま固まった。
「貴方! 貴方! 大変よ! この子、マリリアンヌだわ!」
「ケルバ!? 僕は君に僕の考えていた子供の名前を教えたかい?」
「いえ、貴方からは聞いていないわ。でも、わたくしにはわかるの。わかってしまったの。この子はマリリアンヌだわぁ!!!」
ケルバは女の子マリリアンヌを抱きしめ泣き出した。サイモンはマリリアンヌをケルバから受け取りメイドに預け人払いをした。
妻に寄り添い抱きしめる。
「ケルバ。頑張ってくれてありがとう。少しおやすみ」
ケルバはサイモンの胸の中で気を失うように眠りについた。
翌朝、サイモンがケルバから聞いた話は荒唐無稽としか言いようがない話であった。
まだ生まれてくる王家の子が男の子かもわからないのに、マリリアンヌは来月生まれる王子と婚約すること。
王子が三歳になる頃、現国王陛下が逝去すること。
その後、現王太子が即位するのだが、まさに愚王であること。
マリリアンヌが学園へ入学すると王子が浮気をして、マリリアンヌがその相手を虐めること。
そして、卒業パーティーの席で断罪されその場で牢へ入れられ何者かに殺されてしまうこと。
両陛下が無駄遣いをしすぎで国庫が枯れてしまい、それを打破するためにシュケーナ公爵家の財産を狙い、マリリアンヌを言い訳にしてシュケーナ公爵家は潰されること。
「わたくしの頭の中に絵本のようにそのお話が流れてきたの。それが何かはわからないし、それが真実なのかはわからないわ。でも、不安で不安で仕方がないの。
わたくしは没落するのはかまわないわ。でも、マリリアンヌが殺されるのは嫌! 絶対に嫌!
貴方。助けて。わたくしのマリリアンヌを助けて……」
「君の話を信じるよ。いくつかは整合性が取れているんだ。
一部の者しか知らないが、国王陛下は病の床に伏せていらして、現在、宰相たる父――前公爵――が中心となり政務をこなしている。父は政務に集中するために早々に私に爵位を譲ったのだ」
「そうでしたのね。お義父様はお元気ですのに不思議だと思いましたわ」
「あと、現王太子は本物のバカだ。だが、王家の血を重んじる風潮は簡単には変えられないからアレが国王になるのは避けられないと思う」
サイモンは俯く。
「さらに……君には言っていなかったが、すでにマリリアンヌへ婚約の打診をされている。だから私は王家の子がとりあえず我が子と同性であってほしいと願っていたのだが……。
そうか……男なのか」
「どなたからの打診ですの?」
「現国王陛下が床から怨嗟のように嘆願しているそうだ」
「ひっ!!」
「父と現国王陛下は友人でもあるからな。死を迎えそうな友人に嫌とは言えないようだ」
「なんてことでしょう」
ケルバは目元にハンカチを当てた。
「だが、ここでそれらを知れたのは良いことだと考えよう。
ケルバ。私は父から宰相の座を受け継ぐのか?」
「いえ。マリリアンヌが断罪される際、宰相はメドリアル公爵で、彼が率先して我が家を没落へ導くのですわ」
「そうか。ならば、まずはそこから崩そう。近々、私は宰相補佐官になる。忙しくなるので君には寂しい思いをさせてしまうかもしれない」
「貴方。わたくしのお話を信じてくださってありがとうございます。わたくしはマリリアンヌのためなら耐えられますわ」
サイモンはケルバをそっと抱きしめた。
シュケーナ公爵家らしい黄緑の髪に黄色の瞳を持った女の子だ。
「きゃああああ!!!」
母親であるシュケーナ公爵夫人ケルバは産湯でキレイにされた女の子をメイドから受け取ると悲痛な声で叫んだ。
女の子はびっくりして泣き出し、ベッドの脇で笑顔で親子を見つめていたシュケーナ公爵サイモンは笑顔のまま固まった。
「貴方! 貴方! 大変よ! この子、マリリアンヌだわ!」
「ケルバ!? 僕は君に僕の考えていた子供の名前を教えたかい?」
「いえ、貴方からは聞いていないわ。でも、わたくしにはわかるの。わかってしまったの。この子はマリリアンヌだわぁ!!!」
ケルバは女の子マリリアンヌを抱きしめ泣き出した。サイモンはマリリアンヌをケルバから受け取りメイドに預け人払いをした。
妻に寄り添い抱きしめる。
「ケルバ。頑張ってくれてありがとう。少しおやすみ」
ケルバはサイモンの胸の中で気を失うように眠りについた。
翌朝、サイモンがケルバから聞いた話は荒唐無稽としか言いようがない話であった。
まだ生まれてくる王家の子が男の子かもわからないのに、マリリアンヌは来月生まれる王子と婚約すること。
王子が三歳になる頃、現国王陛下が逝去すること。
その後、現王太子が即位するのだが、まさに愚王であること。
マリリアンヌが学園へ入学すると王子が浮気をして、マリリアンヌがその相手を虐めること。
そして、卒業パーティーの席で断罪されその場で牢へ入れられ何者かに殺されてしまうこと。
両陛下が無駄遣いをしすぎで国庫が枯れてしまい、それを打破するためにシュケーナ公爵家の財産を狙い、マリリアンヌを言い訳にしてシュケーナ公爵家は潰されること。
「わたくしの頭の中に絵本のようにそのお話が流れてきたの。それが何かはわからないし、それが真実なのかはわからないわ。でも、不安で不安で仕方がないの。
わたくしは没落するのはかまわないわ。でも、マリリアンヌが殺されるのは嫌! 絶対に嫌!
貴方。助けて。わたくしのマリリアンヌを助けて……」
「君の話を信じるよ。いくつかは整合性が取れているんだ。
一部の者しか知らないが、国王陛下は病の床に伏せていらして、現在、宰相たる父――前公爵――が中心となり政務をこなしている。父は政務に集中するために早々に私に爵位を譲ったのだ」
「そうでしたのね。お義父様はお元気ですのに不思議だと思いましたわ」
「あと、現王太子は本物のバカだ。だが、王家の血を重んじる風潮は簡単には変えられないからアレが国王になるのは避けられないと思う」
サイモンは俯く。
「さらに……君には言っていなかったが、すでにマリリアンヌへ婚約の打診をされている。だから私は王家の子がとりあえず我が子と同性であってほしいと願っていたのだが……。
そうか……男なのか」
「どなたからの打診ですの?」
「現国王陛下が床から怨嗟のように嘆願しているそうだ」
「ひっ!!」
「父と現国王陛下は友人でもあるからな。死を迎えそうな友人に嫌とは言えないようだ」
「なんてことでしょう」
ケルバは目元にハンカチを当てた。
「だが、ここでそれらを知れたのは良いことだと考えよう。
ケルバ。私は父から宰相の座を受け継ぐのか?」
「いえ。マリリアンヌが断罪される際、宰相はメドリアル公爵で、彼が率先して我が家を没落へ導くのですわ」
「そうか。ならば、まずはそこから崩そう。近々、私は宰相補佐官になる。忙しくなるので君には寂しい思いをさせてしまうかもしれない」
「貴方。わたくしのお話を信じてくださってありがとうございます。わたくしはマリリアンヌのためなら耐えられますわ」
サイモンはケルバをそっと抱きしめた。
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