8 / 26
8
しおりを挟む
ヘレナたちがうっとりとエトリアを見つめている中、エトリアは扇を顎に当てて首を傾げた。上質な演技で。
「つまり、『男爵家の令嬢が虚言を吐き、それを鵜呑みにした高位貴族令息たちが何の証拠集めも証人探しもせずに王族に罪があるように糾弾にいらした』ということかしら?」
「概ね、そのようでございます」
「これはどうなるの?」
「陛下にはこのような場合は速やかに王城に連行するよう言付かっております」
五人は『陛下』まで絡んでいることに肩をビクつかせた。書類のサインを見た時点で関与を察してほしいものだ。
「そうなのね」
エトリアは扇を広げて口元を隠す。
「連れていかれるのなら、少しくらいわたくしの自由にしてもいいわね」
小さな声のエトリアはアロンドに極上の笑顔の目元を見せた。
「王女殿下のお心のままに」
『パチンっ!』
エトリアが扇を閉じる。
「そこな者たちっ! 膝を付きなさい」
エトリアがセイバーナたちを扇で指すとどこからか兵士が現れ、セイバーナたち五人の後ろ手をとり膝を付かせた。
どこからか、と言ってもエトリアが通学しているため警備が強化されているのでどこからでも現れる。
「始めに言っておきますが、わたくしたちはそちらの女性のお名前を聞くこともお会いすることもこれが初めてです。
ですが、どうやらその方が貴方たちの不貞のお相手のようですわね。噂は聞いておりましたが、そのお相手を見つけ出し糾弾するほど貴方たちに魅力も感じておりませんし、婚約続行を望んでおりません」
ヘレナたちが大きく首肯する。
「証拠固めをわたくしたち自身でするわけはございませんので、そちらの女性を存じ上げておりませんでしたのよ。周りの者たちもわたくしたちに気を使ってくださって、不貞のお相手のお名前などは口にしませんでしたし、わたくしたちからも聞いたりはいたしませんでした」
浮気相手がリリアーヌ・テンソー男爵令嬢であるという情報は得ているが、目の前で醜態をさらしている少女がそれだと知っていたわけではない。という建前で動いている。
情報は使い方次第なのだ。
エトリアの建前を信じ切ったセイバーナは青い顔でリリアーヌを見た。リリアーヌと他の三人は俯いている。こちらも信じているので自分たちの進退危険度を察知しつつある。
「それから、貴方たちの状況は以前と比べ大きく変化しました」
三人の男たちがバッと頭を上げて不穏な話を始めたエトリアを見た。
グルっと彼らと目を合わせたエトリアはゴミを見ているかのようであった。
「ヘレナさんとホヤタル卿の婚約、メリアンナさんとオキソン卿の婚約は婚約解消ではなく、婚約破棄となりました。また、ケイトリアさんとツワトナ卿の婚約は本日の朝婚約破棄が承認されました。
わたくしとヨネタス卿の婚約も解消ではなく破棄です。
すべて貴方達の有責において、ね」
ケイトリアが喜色めく。他の二組の婚約解消より随分と遅れていたので、少し不安に思っていたのだ。
「「「「なっ!!」」」」
自分たちの婚約解消話が蒸し返され、悪い方向へ進んでしまったことなど予想していなかった三人は呆然とした。
そんな三人をエトリアは呆れたと嘆息する。
「そもそも、貴方達の不貞による有責であることは周知の事実ではありませんか。婚約解消という形は令嬢たちの温情だったのですよ。
それなのに令嬢たちの嘘八百の悪評を広め、まるで自分たちの責任ではないように吹聴して周るなど貴族どころか、人間としてクズですわね」
エトリアが目を細める。さらに後ろ手を掴んでいた騎士たちの力が強まる。正義感溢れる騎士たちにとって目の前の小悪党だ。彼らに憎悪と嫌悪を感じる。
「つまり、『男爵家の令嬢が虚言を吐き、それを鵜呑みにした高位貴族令息たちが何の証拠集めも証人探しもせずに王族に罪があるように糾弾にいらした』ということかしら?」
「概ね、そのようでございます」
「これはどうなるの?」
「陛下にはこのような場合は速やかに王城に連行するよう言付かっております」
五人は『陛下』まで絡んでいることに肩をビクつかせた。書類のサインを見た時点で関与を察してほしいものだ。
「そうなのね」
エトリアは扇を広げて口元を隠す。
「連れていかれるのなら、少しくらいわたくしの自由にしてもいいわね」
小さな声のエトリアはアロンドに極上の笑顔の目元を見せた。
「王女殿下のお心のままに」
『パチンっ!』
エトリアが扇を閉じる。
「そこな者たちっ! 膝を付きなさい」
エトリアがセイバーナたちを扇で指すとどこからか兵士が現れ、セイバーナたち五人の後ろ手をとり膝を付かせた。
どこからか、と言ってもエトリアが通学しているため警備が強化されているのでどこからでも現れる。
「始めに言っておきますが、わたくしたちはそちらの女性のお名前を聞くこともお会いすることもこれが初めてです。
ですが、どうやらその方が貴方たちの不貞のお相手のようですわね。噂は聞いておりましたが、そのお相手を見つけ出し糾弾するほど貴方たちに魅力も感じておりませんし、婚約続行を望んでおりません」
ヘレナたちが大きく首肯する。
「証拠固めをわたくしたち自身でするわけはございませんので、そちらの女性を存じ上げておりませんでしたのよ。周りの者たちもわたくしたちに気を使ってくださって、不貞のお相手のお名前などは口にしませんでしたし、わたくしたちからも聞いたりはいたしませんでした」
浮気相手がリリアーヌ・テンソー男爵令嬢であるという情報は得ているが、目の前で醜態をさらしている少女がそれだと知っていたわけではない。という建前で動いている。
情報は使い方次第なのだ。
エトリアの建前を信じ切ったセイバーナは青い顔でリリアーヌを見た。リリアーヌと他の三人は俯いている。こちらも信じているので自分たちの進退危険度を察知しつつある。
「それから、貴方たちの状況は以前と比べ大きく変化しました」
三人の男たちがバッと頭を上げて不穏な話を始めたエトリアを見た。
グルっと彼らと目を合わせたエトリアはゴミを見ているかのようであった。
「ヘレナさんとホヤタル卿の婚約、メリアンナさんとオキソン卿の婚約は婚約解消ではなく、婚約破棄となりました。また、ケイトリアさんとツワトナ卿の婚約は本日の朝婚約破棄が承認されました。
わたくしとヨネタス卿の婚約も解消ではなく破棄です。
すべて貴方達の有責において、ね」
ケイトリアが喜色めく。他の二組の婚約解消より随分と遅れていたので、少し不安に思っていたのだ。
「「「「なっ!!」」」」
自分たちの婚約解消話が蒸し返され、悪い方向へ進んでしまったことなど予想していなかった三人は呆然とした。
そんな三人をエトリアは呆れたと嘆息する。
「そもそも、貴方達の不貞による有責であることは周知の事実ではありませんか。婚約解消という形は令嬢たちの温情だったのですよ。
それなのに令嬢たちの嘘八百の悪評を広め、まるで自分たちの責任ではないように吹聴して周るなど貴族どころか、人間としてクズですわね」
エトリアが目を細める。さらに後ろ手を掴んでいた騎士たちの力が強まる。正義感溢れる騎士たちにとって目の前の小悪党だ。彼らに憎悪と嫌悪を感じる。
122
あなたにおすすめの小説
『婚約破棄は劇場にて――見世物にされた侯爵令嬢は、舞台ごと奪い返す』
鷹 綾
恋愛
王立劇場で開かれた慈善晩餐会。
その華やかな壇上で、侯爵令嬢サビーネ・ドルレアンは、第二王子セドリックから突然の婚約破棄を告げられる。
隣に立つのは、涙ぐむ男爵令嬢オディール。
大勢の貴族たちが見守る中、サビーネは“冷酷な悪女”として断罪され、黙って恥を引き受ける役を押しつけられる――はずだった。
けれど、サビーネは泣かなかった。
黙って舞台を降りることもなかった。
その夜を境に、侯爵令嬢は見世物にされた婚約破棄の意味を、静かに、そして容赦なく塗り替えていく。
王家の体面、王子の未熟さ、“可哀想な令嬢”の化けの皮。
一つずつ暴かれていく真実の先で、サビーネが取り戻すのは、失われた名誉だけではない。
これは、婚約破棄された令嬢が、誰かの筋書きから降りて、自分の人生を取り戻す物語。
見世物にされた舞台の上で、最後に微笑むのは――黙って泣く役を拒んだ侯爵令嬢。
【完結】王都に咲く黒薔薇、断罪は静かに舞う
なみゆき
ファンタジー
名門薬草家の伯爵令嬢エリスは、姉の陰謀により冤罪で断罪され、地獄の収容所へ送られる。 火灼の刑に耐えながらも薬草の知識で生き延び、誇りを失わず再誕を果たす。
3年後、整形と記録抹消を経て“外交商人ロゼ”として王都に舞い戻り、裏では「黒薔薇商会」を設立。
かつて自分を陥れた者たち
――元婚約者、姉、王族、貴族――に、静かに、美しく、冷酷な裁きを下していく。
これは、冤罪や迫害により追い詰められた弱者を守り、誇り高く王都を裂く断罪の物語。
【本編は完結していますが、番外編を投稿していきます(>ω<)】
*お読みくださりありがとうございます。
ブクマや評価くださった方、大変励みになります。ありがとうございますm(_ _)m
【完結】いつも私をバカにしてくる彼女が恋をしたようです。〜お相手は私の旦那様のようですが間違いはございませんでしょうか?〜
珊瑚
恋愛
「ねぇセシル。私、好きな人が出来たの。」
「……え?」
幼い頃から何かにつけてセシリアを馬鹿にしていたモニカ。そんな彼女が一目惚れをしたようだ。
うっとりと相手について語るモニカ。
でもちょっと待って、それって私の旦那様じゃない……?
ざまぁというか、微ざまぁくらいかもしれないです
婚約破棄?私の婚約者はアナタでは無い リメイク版 【完結】
翔千
恋愛
「ジュディアンナ!!!今この時、この場をもって、貴女の婚約を破棄させてもらう!!」
エンミリオン王国王妃の誕生日パーティーの最中、王国第2王子にいきなり婚約破棄を言い渡された、マーシャル公爵の娘、ジュディアンナ・ルナ・マーシャル。
王子の横に控える男爵令嬢、とても可愛いらしいですね。
ところで、私は第2王子と婚約していませんけど?
諸事情で少しリメイクさせてもらいました。
皆様の御目に止まっていただけたら幸いです。
【完結】私を捨てた国のその後を見守ってみた。
satomi
恋愛
侯爵令嬢のレナは公然の場でというか、卒業パーティーで王太子殿下イズライールに婚約破棄をされた挙句、王太子殿下は男爵令嬢のラーラと婚約を宣言。
殿下は陛下や王妃様がいないときを狙ったんでしょうね。
レナの父はアルロジラ王国の宰相です。実家にはレナの兄が4名いますがみんなそろいもそろって優秀。
長男は領地経営、次男は貿易商、3男は情報屋、4男は…オカマバー経営。
レナは殿下に愛想をつかして、アルロジラ王国の行く末を見守ろうと決意するのです。
次男監修により、国交の断絶しているエミューダ帝国にて。
【完結】伯爵令嬢は婚約を終わりにしたい〜次期公爵の幸せのために婚約破棄されることを目指して悪女になったら、なぜか溺愛されてしまったようです〜
よどら文鳥
恋愛
伯爵令嬢のミリアナは、次期公爵レインハルトと婚約関係である。
二人は特に問題もなく、順調に親睦を深めていった。
だがある日。
王女のシャーリャはミリアナに対して、「二人の婚約を解消してほしい、レインハルトは本当は私を愛しているの」と促した。
ミリアナは最初こそ信じなかったが王女が帰った後、レインハルトとの会話で王女のことを愛していることが判明した。
レインハルトの幸せをなによりも優先して考えているミリアナは、自分自身が嫌われて婚約破棄を宣告してもらえばいいという決断をする。
ミリアナはレインハルトの前では悪女になりきることを決意。
もともとミリアナは破天荒で活発な性格である。
そのため、悪女になりきるとはいっても、むしろあまり変わっていないことにもミリアナは気がついていない。
だが、悪女になって様々な作戦でレインハルトから嫌われるような行動をするが、なぜか全て感謝されてしまう。
それどころか、レインハルトからの愛情がどんどんと深くなっていき……?
※前回の作品同様、投稿前日に思いついて書いてみた作品なので、先のプロットや展開は未定です。今作も、完結までは書くつもりです。
※第一話のキャラがざまぁされそうな感じはありますが、今回はざまぁがメインの作品ではありません。もしかしたら、このキャラも更生していい子になっちゃったりする可能性もあります。(このあたり、現時点ではどうするか展開考えていないです)
【完結】猫を被ってる妹に悪役令嬢を押し付けられたお陰で人生180度変わりました。
本田ゆき
恋愛
「お姉様、可愛い妹のお願いです。」
そう妹のユーリに乗せられ、私はまんまと悪役令嬢として世に名前を覚えられ、終いには屋敷を追放されてしまった。
しかし、自由の身になった私に怖いものなんて何もない!
もともと好きでもない男と結婚なんてしたくなかったし堅苦しい屋敷も好きでなかった私にとってそれは幸運なことだった!?
※小説家になろうとカクヨムでも掲載しています。
3月20日
HOTランキング8位!?
何だか沢山の人に見て頂いたみたいでありがとうございます!!
感想あんまり返せてないですがちゃんと読んでます!
ありがとうございます!
3月21日
HOTランキング5位人気ランキング4位……
イッタイ ナニガ オコッテンダ……
ありがとうございます!!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる