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アロンドはエトリアとセイバーナの婚約が決まる一月前にここコニャール王国へ特使として訪れエトリアに一目惚れをした。自国に戻り両親と兄達を説得している間にエトリアが婚約者を決めてしまったのだ。
「王女である君を迎えるためにはそれなりの身分が必要だろう。第五王子ともなるとおいそれと領地はもらえないからね。その均衡に悪戦苦闘している間に君が婚約してしまうのだもの」
「権利と義務のバランスは難しいものね。領地は無尽蔵に増えていくわけではないし」
そう言うエトリアが難しそうな顔をした。
アロンドのことを真面目に考えて労ってくれるエトリアにアロンドはついつい口元が緩む。王族同士ならではの言わずもがなの悩みはあるものだ。
「えへへ。でもこの三年、父上や兄上たちと相談して、王家領地から辺境の伯爵領と伯爵位を賜ることになったんだよ。辺境って言っても王都から離れているというだけさ。この国との境界にある領地で、こちらと交易しているから街も結構大きいんだよ。交易量からすぐに侯爵になれるらしい。僕が結婚しなければ、僕の死後は王家に戻すことにしてある」
アロンドは満面の笑みでエトリアに報告した。
「あら? 初耳ね」
「だって、君の婚約破棄が決まったからその爵位をもらうことを決めたんだもの。今日までは保留にしておいたのさ」
「本当に自由ねぇ」
嬉しそうなアロンドにエトリアも笑顔になる。
「第五王子だもん」
アロンドは胸を張った。エトリアは思わず吹き出す。
「本当に変な人」
エトリアは呆れながらも優しげに目を細めた。
「あのね。わたくしも貴方に報告するのを忘れていたことがあるわ」
「えっ!? 何?!」
アロンドは不安そうに眉を下げる。
「わたくし、女辺境伯爵になることにしたの。チェスタヤ王国――アロンドの母国――との境界にある領地で、チェスタヤ王国とは友好的だから戦争もない領地なのよ。境界の街は交易が盛んで結構大きいの」
「それは知らなかったよ!」
アロンドが喜色めいた声をあげた。
「だって、先日、お父様に婚約解消の書類にサインをいただいた後に打診されたのですもの。
それに気持ちを決めたのはつい先程だわ」
意地悪を言っているようでもエトリアの声音には優しさが込められている。国王はアロンドのエトリアに対する献身を見てきてそのような案を打診してきたのだ。
「それなら、子供は二人以上作らなければならないね。上の子にはどちらの領地を継がせようかっ!」
「婚約もしていないのに、何を仰っているのかしら? うふふ」
「エトリア。隣に行ってもいい?」
「ダメです」
「なぜ?」
「わたくしの婚約が解消されてまだ数時間ですもの」
「いつならいいのさ?」
「……セイバーナさんの処遇が決まったら……ですわね」
「妬ける……」
「え?」
「ヨネタス卿って呼ばないの?」
「あら? ついクセで。これでも三年ほど婚約していたのですもの」
「ふーん」
「それに……」
『きっとすぐにヨネタス卿ではなくなると思うわ』
セイバーナがヨネタス公爵家から廃嫡廃籍されることは間違いないだろうと思われた。
「ん?」
言い淀むエトリアの顔をアロンドが覗き込む。
「それに、貴方のことは『アロンド』と呼んでいるではありませんか」
エトリアは切り替えて言い返した。
「そうなんだけどさ」
アロンドは頬を膨らませた。
「王女である君を迎えるためにはそれなりの身分が必要だろう。第五王子ともなるとおいそれと領地はもらえないからね。その均衡に悪戦苦闘している間に君が婚約してしまうのだもの」
「権利と義務のバランスは難しいものね。領地は無尽蔵に増えていくわけではないし」
そう言うエトリアが難しそうな顔をした。
アロンドのことを真面目に考えて労ってくれるエトリアにアロンドはついつい口元が緩む。王族同士ならではの言わずもがなの悩みはあるものだ。
「えへへ。でもこの三年、父上や兄上たちと相談して、王家領地から辺境の伯爵領と伯爵位を賜ることになったんだよ。辺境って言っても王都から離れているというだけさ。この国との境界にある領地で、こちらと交易しているから街も結構大きいんだよ。交易量からすぐに侯爵になれるらしい。僕が結婚しなければ、僕の死後は王家に戻すことにしてある」
アロンドは満面の笑みでエトリアに報告した。
「あら? 初耳ね」
「だって、君の婚約破棄が決まったからその爵位をもらうことを決めたんだもの。今日までは保留にしておいたのさ」
「本当に自由ねぇ」
嬉しそうなアロンドにエトリアも笑顔になる。
「第五王子だもん」
アロンドは胸を張った。エトリアは思わず吹き出す。
「本当に変な人」
エトリアは呆れながらも優しげに目を細めた。
「あのね。わたくしも貴方に報告するのを忘れていたことがあるわ」
「えっ!? 何?!」
アロンドは不安そうに眉を下げる。
「わたくし、女辺境伯爵になることにしたの。チェスタヤ王国――アロンドの母国――との境界にある領地で、チェスタヤ王国とは友好的だから戦争もない領地なのよ。境界の街は交易が盛んで結構大きいの」
「それは知らなかったよ!」
アロンドが喜色めいた声をあげた。
「だって、先日、お父様に婚約解消の書類にサインをいただいた後に打診されたのですもの。
それに気持ちを決めたのはつい先程だわ」
意地悪を言っているようでもエトリアの声音には優しさが込められている。国王はアロンドのエトリアに対する献身を見てきてそのような案を打診してきたのだ。
「それなら、子供は二人以上作らなければならないね。上の子にはどちらの領地を継がせようかっ!」
「婚約もしていないのに、何を仰っているのかしら? うふふ」
「エトリア。隣に行ってもいい?」
「ダメです」
「なぜ?」
「わたくしの婚約が解消されてまだ数時間ですもの」
「いつならいいのさ?」
「……セイバーナさんの処遇が決まったら……ですわね」
「妬ける……」
「え?」
「ヨネタス卿って呼ばないの?」
「あら? ついクセで。これでも三年ほど婚約していたのですもの」
「ふーん」
「それに……」
『きっとすぐにヨネタス卿ではなくなると思うわ』
セイバーナがヨネタス公爵家から廃嫡廃籍されることは間違いないだろうと思われた。
「ん?」
言い淀むエトリアの顔をアロンドが覗き込む。
「それに、貴方のことは『アロンド』と呼んでいるではありませんか」
エトリアは切り替えて言い返した。
「そうなんだけどさ」
アロンドは頬を膨らませた。
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