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9 否定される人
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椅子に座るフラールたちは扇を顔の前から下ろし軽蔑の視線が顕になった。
「みなさまが継げるのは爵位のお名前だけです。次世代。つまり、わたくしどものお子に継がれるまでは、財産はわたくしどものものです」
「個人資産が没収されましたので、みなさまには自由にできるお金はございませんっ」
「離婚をすれば、出ていくのはみなさまですよぉ」
美男子たちは姿勢を正した。淑女たちからいただけた譲歩の言葉であると理解したのだ。
「懸命に働かなければ追い出します」
「無駄なお金を使えば追い出しますっ」
「恋愛感情を持てとは言いませんけどぉ、家族を蔑ろにすれば追い出しますよぉ」
男子生徒たちが身震いした。嫁に傅き続けるか市井に下るか村の管理人か……究極の選択に感じた。
フラールとメリナとダリアーナは椅子から立ち上がり、マイゼルとコンジュとラルトンをさらに上から見下ろした。
「「「それでも、わたくしとの婚姻をなさりますか?」」」
「「「よろしくお願いします!!!」」」
美男子たちは他の男子生徒たちと違い切羽詰まっている。迷わずもう一度深々と土下座した。
「「「ふぅ……」」」
美少女たちは確認すべきことをできたのでわかりやすく息を吐き出した。美男子たちはおずおずと頭を上げる。
「それともう一つ正しておきますわ」
フラールは指で1を表した。
「土下座は全くもって意味がございません。みなさまがわたくしたちになさるべきは土下座ではございませんのよ」
「「「えっ!!!」」」
散々土下座した三人はとても狼狽えた。土下座をしたから赦してもらえたと信じ込んでおり、まさかそれを否定されるなど思っていなかった。
「そうですっ。 必要なのは土下座による謝罪ではなく反省と行動です。わたくしたちは『まずは反省の心を見せるべきだ』と申し上げたのですわっ」
『順番が違う』と言われて土下座した三人であったが、それもハズレだったらしい。三人は上げた頭を項垂れてさせる。
「浮気に対する土下座は勘違いですわねぇ。
つまり、わたくしたちに見せるべきは一度だけの土下座ではなく、これからのお心根も必要だということですわよぉ」
『これから』と言ってもらえたことに三人は顔を上げたまま男ながらに号泣する。
「「「あいっ!」」」
袖で涙を拭い鼻声になって返事をした。流石に麗しい美男子たちでも酷い顔だ。彼らを憧れの彫像―アイドル―のようにみていた女子生徒たちは少しばかりがっかりした。
「謝罪でしたらヘンリ男爵様とニーナ様になさりませ」
彫像などではなく現物を見なくてはならない美少女たちはそんな顔にも動揺も嫌悪もない。あるのは『導く気持ち』である。彼女たちにとって彼らの顔はどうでもいいものなのだ。
「「「あいっ!」」」
「みなさまの信用は地に落ちております」
「貴族として後継者問題をどう考えるべきかを理解なされていないと判断されましたっ」
「領地経営もできないと思われていますねぇ」
「「「すべて勉強し直しですっ!!!」」」
正座で姿勢を正す三人。
「「「はっ! はいっ!!」」」
美少女たちはお互いに目を合わせて頷きあった。
「「「では、本日はお屋敷へお戻りになり、お父上様とお話ください」」」
各家の寄子である家の子息たちが美男子たちを立たせて馬車寄せまで連れて行った。
翌日は卒業式。雲一つない青空が広がり、若者たちの門出を祝うに相応しい日和だ。
だが、そこにニーナの姿はなかった。朝早くに荷物を積んで、馬車が出立したという噂があるので、卒業できないと判断され、ヘンリ男爵は退学させると決断して領地へ戻されたのだろう。
「みなさまが継げるのは爵位のお名前だけです。次世代。つまり、わたくしどものお子に継がれるまでは、財産はわたくしどものものです」
「個人資産が没収されましたので、みなさまには自由にできるお金はございませんっ」
「離婚をすれば、出ていくのはみなさまですよぉ」
美男子たちは姿勢を正した。淑女たちからいただけた譲歩の言葉であると理解したのだ。
「懸命に働かなければ追い出します」
「無駄なお金を使えば追い出しますっ」
「恋愛感情を持てとは言いませんけどぉ、家族を蔑ろにすれば追い出しますよぉ」
男子生徒たちが身震いした。嫁に傅き続けるか市井に下るか村の管理人か……究極の選択に感じた。
フラールとメリナとダリアーナは椅子から立ち上がり、マイゼルとコンジュとラルトンをさらに上から見下ろした。
「「「それでも、わたくしとの婚姻をなさりますか?」」」
「「「よろしくお願いします!!!」」」
美男子たちは他の男子生徒たちと違い切羽詰まっている。迷わずもう一度深々と土下座した。
「「「ふぅ……」」」
美少女たちは確認すべきことをできたのでわかりやすく息を吐き出した。美男子たちはおずおずと頭を上げる。
「それともう一つ正しておきますわ」
フラールは指で1を表した。
「土下座は全くもって意味がございません。みなさまがわたくしたちになさるべきは土下座ではございませんのよ」
「「「えっ!!!」」」
散々土下座した三人はとても狼狽えた。土下座をしたから赦してもらえたと信じ込んでおり、まさかそれを否定されるなど思っていなかった。
「そうですっ。 必要なのは土下座による謝罪ではなく反省と行動です。わたくしたちは『まずは反省の心を見せるべきだ』と申し上げたのですわっ」
『順番が違う』と言われて土下座した三人であったが、それもハズレだったらしい。三人は上げた頭を項垂れてさせる。
「浮気に対する土下座は勘違いですわねぇ。
つまり、わたくしたちに見せるべきは一度だけの土下座ではなく、これからのお心根も必要だということですわよぉ」
『これから』と言ってもらえたことに三人は顔を上げたまま男ながらに号泣する。
「「「あいっ!」」」
袖で涙を拭い鼻声になって返事をした。流石に麗しい美男子たちでも酷い顔だ。彼らを憧れの彫像―アイドル―のようにみていた女子生徒たちは少しばかりがっかりした。
「謝罪でしたらヘンリ男爵様とニーナ様になさりませ」
彫像などではなく現物を見なくてはならない美少女たちはそんな顔にも動揺も嫌悪もない。あるのは『導く気持ち』である。彼女たちにとって彼らの顔はどうでもいいものなのだ。
「「「あいっ!」」」
「みなさまの信用は地に落ちております」
「貴族として後継者問題をどう考えるべきかを理解なされていないと判断されましたっ」
「領地経営もできないと思われていますねぇ」
「「「すべて勉強し直しですっ!!!」」」
正座で姿勢を正す三人。
「「「はっ! はいっ!!」」」
美少女たちはお互いに目を合わせて頷きあった。
「「「では、本日はお屋敷へお戻りになり、お父上様とお話ください」」」
各家の寄子である家の子息たちが美男子たちを立たせて馬車寄せまで連れて行った。
翌日は卒業式。雲一つない青空が広がり、若者たちの門出を祝うに相応しい日和だ。
だが、そこにニーナの姿はなかった。朝早くに荷物を積んで、馬車が出立したという噂があるので、卒業できないと判断され、ヘンリ男爵は退学させると決断して領地へ戻されたのだろう。
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