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36 クラリッサの回復
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僕は再びクララの部屋へ行くとクララはベッドにいた。
僕らはもう十三歳だから添い寝していい年齢ではないためベッド脇に用意された椅子に座る。
「ジル」
クララの呼びかけに笑顔で応えた僕の手を横向きに寝ているクララは両手でギュッと握ってきた。先程よりも手が暖かくなっていて緊張がほぐれたことがよくわかる。
「クララ。さっきの復習だよ。
ジルはクララが大好き。
ほら、言ってごらん」
僕はクララの目を見て呟くように語りかけるように声をかけた。
「ジルはクララが大好き。
クララもジルが大好き。
ジルはクララが大好き」
ウンウンと頷きクララが間違えていないことを伝えるとクララも頷きかえす。クララの目がトロンとしてきたのだが先程の気力がない嫌な感じではなく表情が和らいでリッラクスしたため眠いという感じだ。
「クララが眠れるまでここにいる。もう悪い夢は見ないよ。クララ、大好きだ」
僕の手を握るクララの手の上から僕の手を重ねた。
「うん……うん……」
ゆっくりと頷くクララから一筋の涙がこぼれた。メイドが用意しておいてくれたタオルで拭いてやるとクララは目を閉じて僕がすることを受け入れる。
「ゆっくり、おやすみ、クララ」
クララは本当に寝れていなかったのだろう。すぐに寝息を立て始めたので僕は頃合いを見て立ち上がる。
ベッドから少し離れたところでメイドから説明を受けた。
特に外傷らしいものはなくこのメイドが会えなかったのも数日のことらしく激ヤセしたということもない。だが数日とはいえほとんど食事をしていなかったらしくパンは一口しか食べれなかったようだ。具の入ったスープを少し口にしミルクは飲めたというから体調の回復には向かうだろう。
心の回復は急いではならない。急がせることがさらなる負担になることもあるからだ。
それらをメイドとともに確認した。
「僕はここの使用人を全て知っているわけではないから君のことを信じるよ。しばらくは君が信用できると判断した者だけでクララの世話をしてほしい」
「畏まりました。ありがとうございます」
「お礼を言うのは僕の方だよ。後はよろしくね」
僕はクララのことをメイドに託して部屋を出た。
クララの部屋をそっと出るとそこにはマクナイト伯爵様がいた。僕は会釈する。
外はすっかり暗くなっていた。
「クララは?」
「いま、少しだけ食べて寝ました。僕が信用できると判断したメイドについてもらっています」
「……そうか。随分と気苦労をかけたみたいだな。現状を説明できる者がどうもいないようなのだ。バージルから話を聞かせてもらえるかい?」
マクナイト伯爵様が困惑していらっしゃることがよくわかる。他人の家で、『僕が信用できると判断したメイド』なんて言葉は普通ならありえないことだ。普通でない現状を伝えなければならないだろう。
「もちろんです」
護衛にその場に残ってもらい先程のメイド二人にも声をかけることにした。信用できる者をクララのことを頼んでから応接室に来るという。
マクナイト伯爵様と二人で先に応接室へ戻るとマクナイト伯爵様が飲み物を聞いてくれたが少し待ってもらうことにする。しばらくすれば先程のメイド二人が応接室に現れた。今は僕はこの二人以外からの食べ物は食べれない。しかし、のどがカラカラだと伝えるとメイドはボトルにいっぱいの果実水を持ってきてくれた。マクナイト伯爵様にはワインのようだ。
護衛の一人にも飲み物を頼みクララの部屋の前の護衛にも飲み物を頼んだ。その護衛が安心して飲めるように僕のサインをした紙を一緒に持っていってもらう。
マクナイト伯爵様がワインを一杯一気に煽った。
「はあ~」
大きく息をしてから話し始めた。
「ギャレット公爵家には使いを出した。今日は泊まっていくといい。施錠できる部屋にするから心配はいらない。食事はあとで部屋に届けさせよう」
「できればあの二人にお願いします」
「わかった……」
ここまでのことで僕がこの家の使用人の一部を信用していないことは充分に伝わったであろう。伯爵様は、『ふぅ』ともう一度大きく息をして了承してくれた。
僕らはもう十三歳だから添い寝していい年齢ではないためベッド脇に用意された椅子に座る。
「ジル」
クララの呼びかけに笑顔で応えた僕の手を横向きに寝ているクララは両手でギュッと握ってきた。先程よりも手が暖かくなっていて緊張がほぐれたことがよくわかる。
「クララ。さっきの復習だよ。
ジルはクララが大好き。
ほら、言ってごらん」
僕はクララの目を見て呟くように語りかけるように声をかけた。
「ジルはクララが大好き。
クララもジルが大好き。
ジルはクララが大好き」
ウンウンと頷きクララが間違えていないことを伝えるとクララも頷きかえす。クララの目がトロンとしてきたのだが先程の気力がない嫌な感じではなく表情が和らいでリッラクスしたため眠いという感じだ。
「クララが眠れるまでここにいる。もう悪い夢は見ないよ。クララ、大好きだ」
僕の手を握るクララの手の上から僕の手を重ねた。
「うん……うん……」
ゆっくりと頷くクララから一筋の涙がこぼれた。メイドが用意しておいてくれたタオルで拭いてやるとクララは目を閉じて僕がすることを受け入れる。
「ゆっくり、おやすみ、クララ」
クララは本当に寝れていなかったのだろう。すぐに寝息を立て始めたので僕は頃合いを見て立ち上がる。
ベッドから少し離れたところでメイドから説明を受けた。
特に外傷らしいものはなくこのメイドが会えなかったのも数日のことらしく激ヤセしたということもない。だが数日とはいえほとんど食事をしていなかったらしくパンは一口しか食べれなかったようだ。具の入ったスープを少し口にしミルクは飲めたというから体調の回復には向かうだろう。
心の回復は急いではならない。急がせることがさらなる負担になることもあるからだ。
それらをメイドとともに確認した。
「僕はここの使用人を全て知っているわけではないから君のことを信じるよ。しばらくは君が信用できると判断した者だけでクララの世話をしてほしい」
「畏まりました。ありがとうございます」
「お礼を言うのは僕の方だよ。後はよろしくね」
僕はクララのことをメイドに託して部屋を出た。
クララの部屋をそっと出るとそこにはマクナイト伯爵様がいた。僕は会釈する。
外はすっかり暗くなっていた。
「クララは?」
「いま、少しだけ食べて寝ました。僕が信用できると判断したメイドについてもらっています」
「……そうか。随分と気苦労をかけたみたいだな。現状を説明できる者がどうもいないようなのだ。バージルから話を聞かせてもらえるかい?」
マクナイト伯爵様が困惑していらっしゃることがよくわかる。他人の家で、『僕が信用できると判断したメイド』なんて言葉は普通ならありえないことだ。普通でない現状を伝えなければならないだろう。
「もちろんです」
護衛にその場に残ってもらい先程のメイド二人にも声をかけることにした。信用できる者をクララのことを頼んでから応接室に来るという。
マクナイト伯爵様と二人で先に応接室へ戻るとマクナイト伯爵様が飲み物を聞いてくれたが少し待ってもらうことにする。しばらくすれば先程のメイド二人が応接室に現れた。今は僕はこの二人以外からの食べ物は食べれない。しかし、のどがカラカラだと伝えるとメイドはボトルにいっぱいの果実水を持ってきてくれた。マクナイト伯爵様にはワインのようだ。
護衛の一人にも飲み物を頼みクララの部屋の前の護衛にも飲み物を頼んだ。その護衛が安心して飲めるように僕のサインをした紙を一緒に持っていってもらう。
マクナイト伯爵様がワインを一杯一気に煽った。
「はあ~」
大きく息をしてから話し始めた。
「ギャレット公爵家には使いを出した。今日は泊まっていくといい。施錠できる部屋にするから心配はいらない。食事はあとで部屋に届けさせよう」
「できればあの二人にお願いします」
「わかった……」
ここまでのことで僕がこの家の使用人の一部を信用していないことは充分に伝わったであろう。伯爵様は、『ふぅ』ともう一度大きく息をして了承してくれた。
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