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25 本物の救世主
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ベルティナたちが、お直しをしている間に、5人が座るテーブルには、たくさんの料理や飲み物が並んでべられていた。
しかし、誰も手に取らない。
重い沈黙が続く。
『コンコンコン』
ノックにイルミネが確認にいく。みんながイルミネに注目している。
「ベルティナ、お客様だよ」
入ってきたのは、ブルーノだった。
「ブルーノ兄様!」
ベルティナは、ブルーノの胸に飛び込む。ブルーノもきつくきつくベルティナを抱きしめた。
「ベルティナ、元気そうで良かった。会えて嬉しいよ」
「私も、私も……」
ベルティナは涙が止まらない。
「こちらへどうぞ」
ブルーノはあくまでも使用人である。エリオの指示がなければ座ることなどできない。
みんなでソファー席へと移った。
ブルーノは、泣いているベルティナを抱えるように歩いた。そして、ベルティナをエリオに預け、エリオはベルティナを自分の隣に座らせた。その向こうにブルーノを座らせた。
「お話していただけますか?」
「エリージオ王子殿下、わたくしは、使用人でございます。わたくしに敬語はおやめいただけますでしょうか?」
ブルーノはエリオに頭を下げた。
「わかった。では、話を聞かせてくれ」
エリオは、立場というものを理解している。エリオの意思でなくとも、命令しなければならないのだ。
エリオに促され、ブルーノが口を開く。
「はい。概要は先程廊下で、申した通りでございます。路地裏で倒れているところを、執事殿に見つけていただき、どうにか助かりました。その前後の記憶はとても曖昧で、気がついたときには、王宮の使用人部屋でした。温かいスープを何度も口に運ばれた気がしていましたので、それで助かったのだと思います」
ベルティナが息を飲んだ。ベルティナは、自分よりも壮絶だと感じた。
「ベルティナのことは?」
「はい、私の記憶にはないのですが、私は寝言のように妹ベルティナの救済をと言っていたらしいです。確かにあの時は、自分は死ぬのだと思っていましたから。
私の姓から、ベルティナにたどり着いていただけたと聞いております」
「にぃさ…ま…」
ベルティナは声が震えていた。死の縁でもベルティナのことを忘れないでいてくれたことに感謝した。本当にベルティナに手を差し伸べてくれたのは、ティエポロ侯爵でも国王陛下でもなく、ブルーノだったのだ。
「国王陛下のおっしゃった『ブルーノから聞いた』とは、そのことなのか…。そこまでしてベルティナを……」
エリオも声を震わせ、目に涙を溜めていた。
「ティエポロ侯爵様が大変素晴らしい方でしたので、ベルティナを保護してくださり、さらに妹と弟の安否も確認していただいております。わたくしは、執事長より、その旨を聞いておりました。
ティエポロ侯爵様は、最初からベルティナが、18歳になったら、養子縁組をするとおっしゃっており、わたくしもベルティナの卒業式には、ベルティナと会える予定でございました」
「そうか。だが、ブルーノ殿も貴族であろう?学園はどうしたのだ?」
「ベルティナがまだ、タビアーノ男爵籍であったため、会うことは叶わないと、テストだけは学園で受け、王宮にて家庭教師をつけていただいており、仕事の合間に、授業を受けました。姉も在席しておりましたので、名前も執事殿にお借りして偽名を使っておりました。」
学園は、Aクラスの生徒なら、学園に通わずともテストさえ受ければ卒業が認められるという特典がある。どうやら、ベルティナだけでなく、ブルーノも優秀だったようだ。
「ベルティナが養子縁組を済ませ、わたくしも生きていることをタビアーノ男爵家に隠す必要もなくなりましたら、執事長様と養子縁組をしていただくことになっておりました。今日、このような形ではありますが、そうなりましたので、近々、その手続きをいたします」
ブルーノがやっと少しだけ笑顔になった。
「仕事は?」
「現在、王子殿下のお世話係を仰せつかっております。これからも、そちらを誠心誠意やらせていただく所存です」
「お兄様」
ベルティナは、ブルーノの手を握った。
「ベルティナ、タビアーノ男爵家は、もうダメだろう。兄や姉は、あの頃未成年だったからな。どうなるかは、わからない。
私への殺人未遂が成立しなかったとしても、ティエポロ侯爵様の信用を失って、他の州長様が施しを与えることはない。
だから、遅くとも来年には、妹と弟は、王宮に引き取られ、私のように、子供のいないまたは子供がすでに独立しているメイドや使用人の子供として、育てられることになる。
だが、それは、決して悪いことではないのだ。二人は貴族でなくなるから、学園には通えぬが、ここでなら、勉強もさせてもらえるし、仕事も与えられる。
だから、ベルティナが気にすることは何もないのだ。お前にはいい縁があったのだろう?」
ベルティナの隣に座るエリオが、ベルティナの膝に手を置いて、ベルティナに頷いた。
「エリージオ王子殿下、わたくしたちは例え家名が変わっても、わたくしにとって、ベルティナは、かわいい妹なのです。あの辛かった時、いつも隣にベルティナがいたから耐えられた。ベルティナを置いてあの家を出ると決心した後、約一年、泥水を啜って生きておりました。それでも、自分から死を選ばなかったのは、ベルティナを助けられるのは私だけだと、ベルティナを助けなければと思っていたからです。
どうか、どうか、ベルティナを幸せにしてやってください。お願いいたします」
ブルーノは、テーブルに頭を擦り付けてエリオにお願いした。エリオは、立ち上がってブルーノの隣までいき、ブルーノの背中に手を置いた。
「そなたのおかげで、私は愛しい人と巡り会えた。そなたには、とても感謝している。ベルティナのことは任せてほしい。きっと、幸せにする。そなたも息災であれ。それもベルティナの願いだぞ」
エリオも本物の救世主がブルーノであると思っていた。
「はい、はい、ありがとうございます。ありがとうございます」
ブルーノとベルティナは、涙を流して頷いていた。
しばらくして、ブルーノが一息ついた。
「では、わたくしは、仕事に戻ります。みなさま、ベルティナのこと、よろしくお願いします」
ブルーノが深く深く頭を下げる。顔をあげたときには、執事の顔であった。
「大丈夫よ。ベルティナお姉様のことはみんなで守るわ」
クレメンティに胸を借りて、泣き声を殺していたセリナージェが、無理やり笑った。
3人も頷いた。
「ありがとうございます」
ブルーノは、ベルティナの肩に手を置いた。
「幸せになってくれ」
「はい、お兄様」
ベルティナは、肩に乗せられた手に自分の手を重ねた。ブルーノがベルティナに頷いて、その手を離した。
「メイドを呼びますゆえ、どうぞごゆるりとお過ごしくださいませ。では、失礼いたします」
ブルーノが部屋を出ると、すぐにメイドが来て、温くなった飲み物を交換してくれた。
「はぁ!なんだか、お腹空いちゃったねぇ」
イルミネの冗談にみんなが笑って、テーブル席へと移動した。
「王城のお部屋に王城のお料理。贅沢な新年パーティーね。ふふふ」
セリナージェは、無理に明るく振る舞った。
「せっかくだ、楽しもう!」
クレメンティも、セリナージェのそんな気持ちを汲み取る。
「そうだな。では、新年を祝って、乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
『チン、チン』グラス合わせて5人のパーティーが始まった。
「ベルティナ、これからもよろしくね」
「はい」
『チン』シャンパングラスの音が響いた。5人は、笑顔であった。
〰️ 〰️ 〰️
後日、国王陛下とエリオとで、密談がおこなわれた。タビアーノ男爵一家が、殺人未遂とならなくても、平民になることはほぼ間違いないので、使用人を含めて全員、北の辺境村へと島流しにすることを密約した。その際、妹と弟は王宮預かり、兄嫁と兄の子供たちは実家へ戻すことも約束した。これは、ブルーノとベルティナの願いであった。
〰️ 〰️ 〰️
そして、一月後には、タビアーノ男爵夫妻と長男と長女は、『隣国との戦争の火種になる可能性があるということは、国家転覆罪になる』と判断され、予定の北の辺境村に島流しとなった。長男長女は当時未成年とはいえ、火種になる可能性については否定できないし、未成年だからこその虐待イジメが苛烈だったことがブルーノとベルティナの口から語られていた。なので、有無を言わせず、両親と同罪になった。
使用人たちは、ブルーノとベルティナによって、一人一人、顔見世をし、虐待に加担或いは本人が虐待をしていた者が島流しとなった。虐待に加担していたと判断された者が、すでに退職していた者の名前まで出し、7人の使用人が島流しとなった。
貧乏男爵であるタビアーノ男爵家では、常時二人か三人だろうと思われる使用人たちだ。使用人たちが変わっても変わっても虐待に加担していたようだ。良心を持たぬ雇い主には、良心を持たぬ使用人が居着くものなのかもしれない。
長男の嫁と子供は離縁し実家に戻り、長女の婚約は解消となった。
殺人未遂について、罰則をとらなかったのは、法の整備が無いので裁けなかっただけである。国王陛下は、貴族に対し、『子供への過激で度重なる虐待は、家族であっても暴力事件として殺人未遂または傷害の罪とする』と公布した。今後は殺人未遂が適応されることもありえると、貴族たちには改めて通達された。
弟妹は、王宮預かりとなったが、ベルティナもブルーノも兄姉であることは名乗り出なかった。自分たちの代わりに虐待をされていないかは、気にはなったが、ブルーノもベルティナも自分に必死であったので、弟妹への家族としての愛情はなかったし、虐待されていた時に常に近くにいたことが、ブルーノとベルティナにとっては、嫌な思い出の引き金になる存在だったのだ。
それに、弟妹にとって、家族と引き離された原因であるブルーノとベルティナの存在は知りたくないだろうという配慮もある。
弟妹には、『領地経営がうまくいかず、家族で生活していくことが困難となった』と伝えていく予定だ。弟妹は、ブルーノと違い、通いのメイドに引き取られたので、ブルーノとも顔を合わせることは一生なかった。
しかし、誰も手に取らない。
重い沈黙が続く。
『コンコンコン』
ノックにイルミネが確認にいく。みんながイルミネに注目している。
「ベルティナ、お客様だよ」
入ってきたのは、ブルーノだった。
「ブルーノ兄様!」
ベルティナは、ブルーノの胸に飛び込む。ブルーノもきつくきつくベルティナを抱きしめた。
「ベルティナ、元気そうで良かった。会えて嬉しいよ」
「私も、私も……」
ベルティナは涙が止まらない。
「こちらへどうぞ」
ブルーノはあくまでも使用人である。エリオの指示がなければ座ることなどできない。
みんなでソファー席へと移った。
ブルーノは、泣いているベルティナを抱えるように歩いた。そして、ベルティナをエリオに預け、エリオはベルティナを自分の隣に座らせた。その向こうにブルーノを座らせた。
「お話していただけますか?」
「エリージオ王子殿下、わたくしは、使用人でございます。わたくしに敬語はおやめいただけますでしょうか?」
ブルーノはエリオに頭を下げた。
「わかった。では、話を聞かせてくれ」
エリオは、立場というものを理解している。エリオの意思でなくとも、命令しなければならないのだ。
エリオに促され、ブルーノが口を開く。
「はい。概要は先程廊下で、申した通りでございます。路地裏で倒れているところを、執事殿に見つけていただき、どうにか助かりました。その前後の記憶はとても曖昧で、気がついたときには、王宮の使用人部屋でした。温かいスープを何度も口に運ばれた気がしていましたので、それで助かったのだと思います」
ベルティナが息を飲んだ。ベルティナは、自分よりも壮絶だと感じた。
「ベルティナのことは?」
「はい、私の記憶にはないのですが、私は寝言のように妹ベルティナの救済をと言っていたらしいです。確かにあの時は、自分は死ぬのだと思っていましたから。
私の姓から、ベルティナにたどり着いていただけたと聞いております」
「にぃさ…ま…」
ベルティナは声が震えていた。死の縁でもベルティナのことを忘れないでいてくれたことに感謝した。本当にベルティナに手を差し伸べてくれたのは、ティエポロ侯爵でも国王陛下でもなく、ブルーノだったのだ。
「国王陛下のおっしゃった『ブルーノから聞いた』とは、そのことなのか…。そこまでしてベルティナを……」
エリオも声を震わせ、目に涙を溜めていた。
「ティエポロ侯爵様が大変素晴らしい方でしたので、ベルティナを保護してくださり、さらに妹と弟の安否も確認していただいております。わたくしは、執事長より、その旨を聞いておりました。
ティエポロ侯爵様は、最初からベルティナが、18歳になったら、養子縁組をするとおっしゃっており、わたくしもベルティナの卒業式には、ベルティナと会える予定でございました」
「そうか。だが、ブルーノ殿も貴族であろう?学園はどうしたのだ?」
「ベルティナがまだ、タビアーノ男爵籍であったため、会うことは叶わないと、テストだけは学園で受け、王宮にて家庭教師をつけていただいており、仕事の合間に、授業を受けました。姉も在席しておりましたので、名前も執事殿にお借りして偽名を使っておりました。」
学園は、Aクラスの生徒なら、学園に通わずともテストさえ受ければ卒業が認められるという特典がある。どうやら、ベルティナだけでなく、ブルーノも優秀だったようだ。
「ベルティナが養子縁組を済ませ、わたくしも生きていることをタビアーノ男爵家に隠す必要もなくなりましたら、執事長様と養子縁組をしていただくことになっておりました。今日、このような形ではありますが、そうなりましたので、近々、その手続きをいたします」
ブルーノがやっと少しだけ笑顔になった。
「仕事は?」
「現在、王子殿下のお世話係を仰せつかっております。これからも、そちらを誠心誠意やらせていただく所存です」
「お兄様」
ベルティナは、ブルーノの手を握った。
「ベルティナ、タビアーノ男爵家は、もうダメだろう。兄や姉は、あの頃未成年だったからな。どうなるかは、わからない。
私への殺人未遂が成立しなかったとしても、ティエポロ侯爵様の信用を失って、他の州長様が施しを与えることはない。
だから、遅くとも来年には、妹と弟は、王宮に引き取られ、私のように、子供のいないまたは子供がすでに独立しているメイドや使用人の子供として、育てられることになる。
だが、それは、決して悪いことではないのだ。二人は貴族でなくなるから、学園には通えぬが、ここでなら、勉強もさせてもらえるし、仕事も与えられる。
だから、ベルティナが気にすることは何もないのだ。お前にはいい縁があったのだろう?」
ベルティナの隣に座るエリオが、ベルティナの膝に手を置いて、ベルティナに頷いた。
「エリージオ王子殿下、わたくしたちは例え家名が変わっても、わたくしにとって、ベルティナは、かわいい妹なのです。あの辛かった時、いつも隣にベルティナがいたから耐えられた。ベルティナを置いてあの家を出ると決心した後、約一年、泥水を啜って生きておりました。それでも、自分から死を選ばなかったのは、ベルティナを助けられるのは私だけだと、ベルティナを助けなければと思っていたからです。
どうか、どうか、ベルティナを幸せにしてやってください。お願いいたします」
ブルーノは、テーブルに頭を擦り付けてエリオにお願いした。エリオは、立ち上がってブルーノの隣までいき、ブルーノの背中に手を置いた。
「そなたのおかげで、私は愛しい人と巡り会えた。そなたには、とても感謝している。ベルティナのことは任せてほしい。きっと、幸せにする。そなたも息災であれ。それもベルティナの願いだぞ」
エリオも本物の救世主がブルーノであると思っていた。
「はい、はい、ありがとうございます。ありがとうございます」
ブルーノとベルティナは、涙を流して頷いていた。
しばらくして、ブルーノが一息ついた。
「では、わたくしは、仕事に戻ります。みなさま、ベルティナのこと、よろしくお願いします」
ブルーノが深く深く頭を下げる。顔をあげたときには、執事の顔であった。
「大丈夫よ。ベルティナお姉様のことはみんなで守るわ」
クレメンティに胸を借りて、泣き声を殺していたセリナージェが、無理やり笑った。
3人も頷いた。
「ありがとうございます」
ブルーノは、ベルティナの肩に手を置いた。
「幸せになってくれ」
「はい、お兄様」
ベルティナは、肩に乗せられた手に自分の手を重ねた。ブルーノがベルティナに頷いて、その手を離した。
「メイドを呼びますゆえ、どうぞごゆるりとお過ごしくださいませ。では、失礼いたします」
ブルーノが部屋を出ると、すぐにメイドが来て、温くなった飲み物を交換してくれた。
「はぁ!なんだか、お腹空いちゃったねぇ」
イルミネの冗談にみんなが笑って、テーブル席へと移動した。
「王城のお部屋に王城のお料理。贅沢な新年パーティーね。ふふふ」
セリナージェは、無理に明るく振る舞った。
「せっかくだ、楽しもう!」
クレメンティも、セリナージェのそんな気持ちを汲み取る。
「そうだな。では、新年を祝って、乾杯!」
「「「「乾杯!」」」」
『チン、チン』グラス合わせて5人のパーティーが始まった。
「ベルティナ、これからもよろしくね」
「はい」
『チン』シャンパングラスの音が響いた。5人は、笑顔であった。
〰️ 〰️ 〰️
後日、国王陛下とエリオとで、密談がおこなわれた。タビアーノ男爵一家が、殺人未遂とならなくても、平民になることはほぼ間違いないので、使用人を含めて全員、北の辺境村へと島流しにすることを密約した。その際、妹と弟は王宮預かり、兄嫁と兄の子供たちは実家へ戻すことも約束した。これは、ブルーノとベルティナの願いであった。
〰️ 〰️ 〰️
そして、一月後には、タビアーノ男爵夫妻と長男と長女は、『隣国との戦争の火種になる可能性があるということは、国家転覆罪になる』と判断され、予定の北の辺境村に島流しとなった。長男長女は当時未成年とはいえ、火種になる可能性については否定できないし、未成年だからこその虐待イジメが苛烈だったことがブルーノとベルティナの口から語られていた。なので、有無を言わせず、両親と同罪になった。
使用人たちは、ブルーノとベルティナによって、一人一人、顔見世をし、虐待に加担或いは本人が虐待をしていた者が島流しとなった。虐待に加担していたと判断された者が、すでに退職していた者の名前まで出し、7人の使用人が島流しとなった。
貧乏男爵であるタビアーノ男爵家では、常時二人か三人だろうと思われる使用人たちだ。使用人たちが変わっても変わっても虐待に加担していたようだ。良心を持たぬ雇い主には、良心を持たぬ使用人が居着くものなのかもしれない。
長男の嫁と子供は離縁し実家に戻り、長女の婚約は解消となった。
殺人未遂について、罰則をとらなかったのは、法の整備が無いので裁けなかっただけである。国王陛下は、貴族に対し、『子供への過激で度重なる虐待は、家族であっても暴力事件として殺人未遂または傷害の罪とする』と公布した。今後は殺人未遂が適応されることもありえると、貴族たちには改めて通達された。
弟妹は、王宮預かりとなったが、ベルティナもブルーノも兄姉であることは名乗り出なかった。自分たちの代わりに虐待をされていないかは、気にはなったが、ブルーノもベルティナも自分に必死であったので、弟妹への家族としての愛情はなかったし、虐待されていた時に常に近くにいたことが、ブルーノとベルティナにとっては、嫌な思い出の引き金になる存在だったのだ。
それに、弟妹にとって、家族と引き離された原因であるブルーノとベルティナの存在は知りたくないだろうという配慮もある。
弟妹には、『領地経営がうまくいかず、家族で生活していくことが困難となった』と伝えていく予定だ。弟妹は、ブルーノと違い、通いのメイドに引き取られたので、ブルーノとも顔を合わせることは一生なかった。
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