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11 神社とサンドイッチ
その信号を直進すると坂道がきつくなる。気持ちのよい風が吹き抜ける坂道を軽快な足取りで上がっていった。
再び信号があるが、それは右折する。
「ここから近いわね」
まわりに誰も歩いてなどいないので声に出した。東京で道中に独り言をこんなに大きな声で言うなんてありえない。水萌里は自由さを感じ、尚更に軽快になる。坂道もなだらかになったことも加えて、ズンズンと歩みを進めた。
「やっぱりあったわ!」
浮かれた声の水萌里を迎えたのは対になっているように立つ大きな石の灯篭だ。その灯籠の間を一歩進むと、深くお辞儀をする。頭を上げた先に見えるのは木でできた鳥居だった。一本の木で構成されている柱部分はいったい樹齢何年になるのだろうと考えさせられるほどの太さである。
水萌里は厳かな気持ちを持って歩みを進めていった。
「うわあ…… すごい……」
遠くから見ても見上げてしまうほどの木が澄み渡る青空に太い腕を大きく伸ばしている。その下まで行くと水萌里も鼻から大きく息を吸ってその木と同化したいというように腕を目一杯伸ばした。
「この方の気はおいしいわあ。推定樹齢八百年かあ。台風にも大火にも負けずに残ってこの地を見守ってくださっているのね」
拝殿に続く石畳への階段の前にある『市指定天然記念物 大杉』の立て看板にある説明文をふんふんと読んでいく。
「ごちそうさまでした」
合掌して頭を下げてから右手の看板へ移動する。それから一つ一つ看板や石碑を読みながら時間をかけて歩いていった。拝殿で合掌したあと、左手にまわって本殿の裏手へいく。
「よく手入れされているのね」
神仏が人々に遠い存在になりつつある現代にあって、その様子が水萌里には嬉しい。
裏を回りきったその先に小さな公園が見えた。神社仏閣に公園はどこにでも付き物である。
「あそこをお借りしましょう」
公園へ向かうと公園のさらに左手奥に続く道を見つけた。裏参道とは少しばかり趣が違う姿に首を傾げたが、水萌里には進まないという判断はない。公園のベンチに寄らずに奥へと行き、左右の木が日陰を作る森の中の小道を進む。左右には紫陽花が五分咲きだ。外ではとっくに満開の季節であるが、森の木々のお陰で気温や湿気がそのように作用するのだろう。緑色の紅葉が紫陽花の間に顔をだしており、秋にはどうのような表情になるのかと楽しみになった。
小道の途中に急階段があり、その下に田んぼが広がっているので、その昔は裏参道だったのかもしれないと水萌里は思った。
さらに進むと急に明るく広がり、そこは八畳ほどの展望場所になっていた。
「平らだわあ」
それが旭市の一部を一望した水萌里が抱いた感想だった。
眼下にはおそらくあの辺りが『ヤマザキショップ干潟石毛店』であろうと思われる幹線道路のガードレールが見える。その先は田んぼ田んぼ田んぼ、そしてビニールハウスビニールハウス、その奥は木々木々木々。木々の向こうには街が広がっているのだが、水萌里はまだ知らない。
水萌里はここでやっと地図アプリを開いた。まずは自分の足と目で確認するのが水萌里スタイルである。
「本当に? ここが山頂なの?」
自分の足でほんの十五分ほど緩い坂を登ってきた水萌里は目を瞬かせた。あまりの起伏のない街並みに驚きを隠せない。
「坂の街ってよく使われる表現だけど、その逆はなんて言われるのかしら? 本当に住みやすそうね。車どころか、自転車でどこまででも行けそうだわ」
実際に就労外国人や中高生は難なく自転車で市内を縦横無尽で走っているのだが、車社会に慣れてしまった大人たちは一家に人数分の車が当たり前の街である。それに、さすがに水萌里が上った坂道はギアのない自転車で上るのは大変である。
水萌里は延々と続く丘が切り取ったようになっている場所が気になり地図アプリを確認した。
「へえ。あそこが飯岡灯台ね。確かに丘の先端に建物が見えるわ。展望館もあるってことは見えている建物は展望館かもしれないわね。それがあの高さに見えるということは……本当に山頂なのね。ふふふ」
軽装だと思っていた自分の服装がこの地の散歩には重装備だということに笑ってしまう。笑いに一呼吸置いてベンチに腰を下ろした。
「なんて贅沢なブランチかしら」
予想外のピクニックに顔が綻ぶ。
さっそく先程悩んで選んだサンドイッチを頬張った。
「おいしい!」
水萌里が『手作りタルタルソース』というキャッチコピーに惹かれて買ったフィッシュサンドは大当たりだったようだ。絶景の景色も忘れて無心で食べ、水筒のお茶をゴキュゴキュと飲む。
「うふふふ。これ終わりじゃないのよお」
決死の覚悟で選んだパイシューはサクサクの生地にホイップクリームとカスタードクリームのダブルで、これまた大当たり。
「うーーーん! しあわせえ!」
水萌里はまるで二十代の女性のようにブルブルと震えた。………………現代の二十代の女性がそのような仕草をするかどうかは……作者にはわからない。
再び信号があるが、それは右折する。
「ここから近いわね」
まわりに誰も歩いてなどいないので声に出した。東京で道中に独り言をこんなに大きな声で言うなんてありえない。水萌里は自由さを感じ、尚更に軽快になる。坂道もなだらかになったことも加えて、ズンズンと歩みを進めた。
「やっぱりあったわ!」
浮かれた声の水萌里を迎えたのは対になっているように立つ大きな石の灯篭だ。その灯籠の間を一歩進むと、深くお辞儀をする。頭を上げた先に見えるのは木でできた鳥居だった。一本の木で構成されている柱部分はいったい樹齢何年になるのだろうと考えさせられるほどの太さである。
水萌里は厳かな気持ちを持って歩みを進めていった。
「うわあ…… すごい……」
遠くから見ても見上げてしまうほどの木が澄み渡る青空に太い腕を大きく伸ばしている。その下まで行くと水萌里も鼻から大きく息を吸ってその木と同化したいというように腕を目一杯伸ばした。
「この方の気はおいしいわあ。推定樹齢八百年かあ。台風にも大火にも負けずに残ってこの地を見守ってくださっているのね」
拝殿に続く石畳への階段の前にある『市指定天然記念物 大杉』の立て看板にある説明文をふんふんと読んでいく。
「ごちそうさまでした」
合掌して頭を下げてから右手の看板へ移動する。それから一つ一つ看板や石碑を読みながら時間をかけて歩いていった。拝殿で合掌したあと、左手にまわって本殿の裏手へいく。
「よく手入れされているのね」
神仏が人々に遠い存在になりつつある現代にあって、その様子が水萌里には嬉しい。
裏を回りきったその先に小さな公園が見えた。神社仏閣に公園はどこにでも付き物である。
「あそこをお借りしましょう」
公園へ向かうと公園のさらに左手奥に続く道を見つけた。裏参道とは少しばかり趣が違う姿に首を傾げたが、水萌里には進まないという判断はない。公園のベンチに寄らずに奥へと行き、左右の木が日陰を作る森の中の小道を進む。左右には紫陽花が五分咲きだ。外ではとっくに満開の季節であるが、森の木々のお陰で気温や湿気がそのように作用するのだろう。緑色の紅葉が紫陽花の間に顔をだしており、秋にはどうのような表情になるのかと楽しみになった。
小道の途中に急階段があり、その下に田んぼが広がっているので、その昔は裏参道だったのかもしれないと水萌里は思った。
さらに進むと急に明るく広がり、そこは八畳ほどの展望場所になっていた。
「平らだわあ」
それが旭市の一部を一望した水萌里が抱いた感想だった。
眼下にはおそらくあの辺りが『ヤマザキショップ干潟石毛店』であろうと思われる幹線道路のガードレールが見える。その先は田んぼ田んぼ田んぼ、そしてビニールハウスビニールハウス、その奥は木々木々木々。木々の向こうには街が広がっているのだが、水萌里はまだ知らない。
水萌里はここでやっと地図アプリを開いた。まずは自分の足と目で確認するのが水萌里スタイルである。
「本当に? ここが山頂なの?」
自分の足でほんの十五分ほど緩い坂を登ってきた水萌里は目を瞬かせた。あまりの起伏のない街並みに驚きを隠せない。
「坂の街ってよく使われる表現だけど、その逆はなんて言われるのかしら? 本当に住みやすそうね。車どころか、自転車でどこまででも行けそうだわ」
実際に就労外国人や中高生は難なく自転車で市内を縦横無尽で走っているのだが、車社会に慣れてしまった大人たちは一家に人数分の車が当たり前の街である。それに、さすがに水萌里が上った坂道はギアのない自転車で上るのは大変である。
水萌里は延々と続く丘が切り取ったようになっている場所が気になり地図アプリを確認した。
「へえ。あそこが飯岡灯台ね。確かに丘の先端に建物が見えるわ。展望館もあるってことは見えている建物は展望館かもしれないわね。それがあの高さに見えるということは……本当に山頂なのね。ふふふ」
軽装だと思っていた自分の服装がこの地の散歩には重装備だということに笑ってしまう。笑いに一呼吸置いてベンチに腰を下ろした。
「なんて贅沢なブランチかしら」
予想外のピクニックに顔が綻ぶ。
さっそく先程悩んで選んだサンドイッチを頬張った。
「おいしい!」
水萌里が『手作りタルタルソース』というキャッチコピーに惹かれて買ったフィッシュサンドは大当たりだったようだ。絶景の景色も忘れて無心で食べ、水筒のお茶をゴキュゴキュと飲む。
「うふふふ。これ終わりじゃないのよお」
決死の覚悟で選んだパイシューはサクサクの生地にホイップクリームとカスタードクリームのダブルで、これまた大当たり。
「うーーーん! しあわせえ!」
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それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります!
5/9から小説になろうでも掲載中
