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28 暑い季節のランニングコース
「はぁ、はぁ、はぁ」
小さく息を吐きながらランニングをしているのは真守だ。時は九月上旬。まだ日差しがキツく暑さが厳しい季節だが、この運動公園はランニングコースが日陰になるようにぐるりと木々が配置されていて、夏にしては走りやすい環境である。
ここは旭市の新川近くで国道沿いにある公共施設『旭市スポーツの森公園』である。バレーボールコートが三面取れる総合体育館にはサブコートもあり、その二階はジムになっている。外は六人制サッカーが楽しめるくらいの芝生面を取り囲むようにランニングコースが作られていて、その更に奥には三人制バスケットコートや壁打ちテニスコート。ラバーテニスコート六面と野球場はナイター照明付きである。
「なあ、真守。何してんの?」
真守の斜め前にいる洋太が涼し気な様子で話しかけてくる。
「走ってる!」
後ろ向きで走っているのに余裕綽々でさっきからひっきりなしに話しかけてくる洋太に真守は怒りを表したのだが、疲れているので迫力はない。
「暇なら、もう一周抜けばいいだろう!」
「そうだな。そうしよう!」
前を向くのかと思いきや、後ろ向きの格好のままで手を振りながら離れていく洋太の姿にやる気を削がれたが、ここで走ることを止めるような気合で始めたわけではない。
昨日、風呂上がりのこと。髪を拭きながら上半身裸で出てきた真守を見た水萌里がぎょっとした顔をした。
「真守さん……随分と……太ったんじゃない?」
まだ旭市に来て数ヶ月。確かに米は美味いし、魚も美味いし、肉も美味くて、卵まで新鮮。さらにそれらに添えられる野菜までもが新鮮で輝いているというのだから、食欲を抑えろというのは無理な話だ。
それに加えて、ウォッカのトマトジュース割り『ブラッディーマリー』が石井ファームのミニトマトジュースを使うことにより極上と化してしまい、酒好きの真守は酒のつまみにも凝りだしてしまった。いくらトマトジュースが体にいいといっても、油を使ったおつまみをアテにしてしまっては逆効果というものだ。
真守は慌てて洗面所へ戻り、体重計に乗った。
「ひょへえええええ」
真守の叫び声に洋太もダイニングに現れる。
「まずいぞ。人生最大体重だ。これは急ぎ対処案件である!」
どこかの軍隊かと思わせるような様子であるが、ぽっこりとしたお腹に申し訳なくすがりついているパンツ一丁の姿は全く様になっていない。
「水萌里はどうして太らないんだ?」
真守がヒントをもらおうとして水萌里の肩を掴んで迫った。
「私も食べ過ぎちゃってまずいなあと思って、旭市スポーツの森公園の総合体育館のジムに登録したの」
「一人でずるいぞ!」
「だって、真守さんは体育館がオープンの時間はお仕事をしているか、夕食を食べているかじゃないの」
「そうか……」
水萌里の肩から手を離してがくりと首を落とした。真守はデイトレーダーをしているので、基本的にはパソコン画面から目を離せない。
「ランニングコースなら、朝早くても使えるよ」
「暑い中で走りたくないよ」
暑いと言っても、ここは旭市である。ニュースで「全国的に猛暑」と言われても三十四度を超えないし、三十五度を超えるは夏に一回あるかないかである。暑くならず寒くもならない気候温暖な過ごしやすい街だ。
「この気温だもの、朝方なら大丈夫よ。それにスポ森のランニングコースならずっと木陰で気持ちいいわよ」
「そうか……とりあえず明日の朝にでも行ってみるよ」
翌朝、洋太が真守の部屋を襲撃した。
「オヤジ! なんとか公園行くんだろう? 俺も今日は仕事が休みなんだ。早く行こうぜ!」
タオルケットを引っ剥がされても枕を抱え直して寝ようとする。
「もういいや。母さんと行ってくるぞ」
真守が勢いよく起き上がった。
「水萌里も行くのか?」
「とっくに着替えて三人分のレモン水を水筒に入れてる」
ベッドから立ち上がった真守はパジャマズボンを脱ぎ捨ててトレーニングウェアを身に着けた。後ろを振り向いた時には、すでに洋太はいなかった。
真守のタイミングで車に乗り込み三人で早朝のスポ森へやってきたのだった。水萌里は早足の散歩くらいのスピードで真守でさえもすでに一周追い抜いている。
そんな水萌里が大きなアクションで遊んでいる……ように見えるだけで本人は必死の瀕死のアップアップ状態で挑んでいたのだが……ところに洋太がいて、腹を抱えて笑っていた。
「はぁ、はぁ。楽しそうだな」
腰に手を当てて近づいて行く。
「母さんが面白い面白い」
「面白くなんてないっ。すっごくツライ! ツライけど負けたくない!」
足をアワアワさせ、手をアワアワさせている水萌里はどうやら何かと戦っているらしい。
☆☆☆
ご協力
スポーツの森公園
季節は九月上旬を設定しております
小さく息を吐きながらランニングをしているのは真守だ。時は九月上旬。まだ日差しがキツく暑さが厳しい季節だが、この運動公園はランニングコースが日陰になるようにぐるりと木々が配置されていて、夏にしては走りやすい環境である。
ここは旭市の新川近くで国道沿いにある公共施設『旭市スポーツの森公園』である。バレーボールコートが三面取れる総合体育館にはサブコートもあり、その二階はジムになっている。外は六人制サッカーが楽しめるくらいの芝生面を取り囲むようにランニングコースが作られていて、その更に奥には三人制バスケットコートや壁打ちテニスコート。ラバーテニスコート六面と野球場はナイター照明付きである。
「なあ、真守。何してんの?」
真守の斜め前にいる洋太が涼し気な様子で話しかけてくる。
「走ってる!」
後ろ向きで走っているのに余裕綽々でさっきからひっきりなしに話しかけてくる洋太に真守は怒りを表したのだが、疲れているので迫力はない。
「暇なら、もう一周抜けばいいだろう!」
「そうだな。そうしよう!」
前を向くのかと思いきや、後ろ向きの格好のままで手を振りながら離れていく洋太の姿にやる気を削がれたが、ここで走ることを止めるような気合で始めたわけではない。
昨日、風呂上がりのこと。髪を拭きながら上半身裸で出てきた真守を見た水萌里がぎょっとした顔をした。
「真守さん……随分と……太ったんじゃない?」
まだ旭市に来て数ヶ月。確かに米は美味いし、魚も美味いし、肉も美味くて、卵まで新鮮。さらにそれらに添えられる野菜までもが新鮮で輝いているというのだから、食欲を抑えろというのは無理な話だ。
それに加えて、ウォッカのトマトジュース割り『ブラッディーマリー』が石井ファームのミニトマトジュースを使うことにより極上と化してしまい、酒好きの真守は酒のつまみにも凝りだしてしまった。いくらトマトジュースが体にいいといっても、油を使ったおつまみをアテにしてしまっては逆効果というものだ。
真守は慌てて洗面所へ戻り、体重計に乗った。
「ひょへえええええ」
真守の叫び声に洋太もダイニングに現れる。
「まずいぞ。人生最大体重だ。これは急ぎ対処案件である!」
どこかの軍隊かと思わせるような様子であるが、ぽっこりとしたお腹に申し訳なくすがりついているパンツ一丁の姿は全く様になっていない。
「水萌里はどうして太らないんだ?」
真守がヒントをもらおうとして水萌里の肩を掴んで迫った。
「私も食べ過ぎちゃってまずいなあと思って、旭市スポーツの森公園の総合体育館のジムに登録したの」
「一人でずるいぞ!」
「だって、真守さんは体育館がオープンの時間はお仕事をしているか、夕食を食べているかじゃないの」
「そうか……」
水萌里の肩から手を離してがくりと首を落とした。真守はデイトレーダーをしているので、基本的にはパソコン画面から目を離せない。
「ランニングコースなら、朝早くても使えるよ」
「暑い中で走りたくないよ」
暑いと言っても、ここは旭市である。ニュースで「全国的に猛暑」と言われても三十四度を超えないし、三十五度を超えるは夏に一回あるかないかである。暑くならず寒くもならない気候温暖な過ごしやすい街だ。
「この気温だもの、朝方なら大丈夫よ。それにスポ森のランニングコースならずっと木陰で気持ちいいわよ」
「そうか……とりあえず明日の朝にでも行ってみるよ」
翌朝、洋太が真守の部屋を襲撃した。
「オヤジ! なんとか公園行くんだろう? 俺も今日は仕事が休みなんだ。早く行こうぜ!」
タオルケットを引っ剥がされても枕を抱え直して寝ようとする。
「もういいや。母さんと行ってくるぞ」
真守が勢いよく起き上がった。
「水萌里も行くのか?」
「とっくに着替えて三人分のレモン水を水筒に入れてる」
ベッドから立ち上がった真守はパジャマズボンを脱ぎ捨ててトレーニングウェアを身に着けた。後ろを振り向いた時には、すでに洋太はいなかった。
真守のタイミングで車に乗り込み三人で早朝のスポ森へやってきたのだった。水萌里は早足の散歩くらいのスピードで真守でさえもすでに一周追い抜いている。
そんな水萌里が大きなアクションで遊んでいる……ように見えるだけで本人は必死の瀕死のアップアップ状態で挑んでいたのだが……ところに洋太がいて、腹を抱えて笑っていた。
「はぁ、はぁ。楽しそうだな」
腰に手を当てて近づいて行く。
「母さんが面白い面白い」
「面白くなんてないっ。すっごくツライ! ツライけど負けたくない!」
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☆☆☆
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スポーツの森公園
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5/9から小説になろうでも掲載中
