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44 互角の勝負
「ぐぬぬぬぬ。ちょっと待ってくれ」
「おっけぇ。ゆっくりどぉぞぉ」
さて、このセリフ。読者の皆さんは誰のセリフだと予想して読んでくださっただろうか。いつもなら……ふふふふ
答えは、現在眉を寄せて唸っているのは洋太で、余裕でテーブルのコーヒーに手を伸ばしたのは真守である。
二人を間には白と黒の丸いもの、つまりはオセロが置かれている。
今二人は二人にとって大事なもののための勝負の真っ最中なのだ。その大事なものとは……『最後の一個』である。
これまでも『最後の一個』を巡り数々の勝負を繰り広げてきた二人は、最初からオセロというまあまあまどろっこしいものをやっていたわけではない。
まず思いつくのはジャンケン。その日は『昇月ビアスタンド』のう巻き卵を取り合った。
「ジャンケンポン!」
勝者洋太。だが、ここで大人があるあるなズルいことを言い出した。
「一回勝負って言ってないよな」
「何回でもいいぞぉ」
こうして三回やり、五回やり、十回やっても洋太の連勝だった。悔しながらも賞品は諦めた真守は、美味そうに最後の一個のう巻き卵を堪能する洋太をうらめしげに見ながら再スタートを願いでた。そうして再戦を始めたが、何度やっても洋太に勝てない。全敗なのだ。
その様子を見ていた水萌里が気がつく。
「洋太。神力使っているでしょう?」
「あははは。神力というほどでもない」
素直な洋太はペラペラと勝因を喋ってしまう。
「おやじの手元を良く見れば、何を出すかがわかるんだ」
二人は理解できない。
「「ジャンケン」といってグーにするよな? グーから出すものの形にしていくから手の動きでどれかがわかる」
二人はそれぞれスローモーションでやってみた。確かにグーからパーにするのとグーからチョキにするのは違うがコンマ何秒の話である。
「いやいや、無理だから」
「これを見てから判断なんてできるわけないじゃない」
「そうか? 簡単だぞ」
「「洋太だけしかできない」」
石橋家の『夏まつり』を思い出させる。
『そうなら、三割負けておけば永遠と優利だったのに』
『一生勝てない勝負をするところだった! 危ない危ない。水萌里が気がついてくれてよかった』
素直すぎる洋太に苦笑いする水萌里とホッと胸を撫で下ろす真守だった。
それから、「トランプババ抜き」は瞳に映るカードが見えることを喋ってしまい、「カード引き勝負」では手に熱さを感じることを喋ってしまい、弱い神力でもやっぱり神なのだと思わせる洋太であったが、なんでも勝因までもを喋ってしまうのでその勝負は次回開催がされることはなく、真守は様々な勝負を考えることになる。
そんなある日、水萌里と行ったカレー店『タージュ』にてオセロを思い出したのだ。『タージュ』では数種類の机上ゲームが無料で使えるようになっていて、注文した後に楽しむことができる。昨今、家族での外食にて注文後はそれぞれがケータイを見ていることが多くなったように見受けられるが、せっかく美味しい外食をともにするのだから一つの話題で盛り上がるのは素晴らしいことだ。机上ゲームはそのきっかけに大変に良いアイテムである。
カレー店『タージュ』は国道からすき家を北――小見川方面――に向かい、ミニストップのカーブを道なりに次のカーブを左折したところにある。
チーズたっぷりのチーズナンも美味いが、デザート系ナンも充実していてお土産にもオススメである。
水萌里が一夏に聞いて行ったカレー店なのだが、一夏の夫が激甘を注文しそれを配膳したとき「はい、激辛カレーライスよぉ」と言い、夫が驚愕する顔を見て「あはははジョークジョーク」と笑う面白いインド人がいるという。「夫は目をパチクリさせていたけど、激甘なのに美味しいカレーを喜んでいたわ」とその様子を思い出したように一夏は大笑いしながら話していた。
水萌里たちはジョークは聞けなかったが、気さくにおかわりなどもできる雰囲気のいい店だった。サラサラスープカレーより少しのとろみカレーを好む水萌里にとってとろみ加減もばっちりである。
またレディースセットは飲み物とデザート付きで、ランチセットはナンのおかわり自由。なんともリーズナブルなお店だ。
こうして店内でオセロを楽しみ美味しいカレーを食べてから自宅に戻った真守は早速オセロをネット注文する。残念ながら旭市内にオセロが売っているおもちゃ屋を検索できなかった。おもちゃ屋や書店などが軒並みなくなっていくのは時代の流れのようだ。
兎にも角にも、オセロは真守にとって大成功であった。今のところ全勝であるが、洋太はギブアップと言わないので『最後の一個』勝負はオセロとなっている。
今日も今日とで、真守が勝利し『まめふく』のサツマイモおにぎりを真守が嬉しそうに頬張る。半分を洋太に譲ろうとするが、「情けはいらない!」と時代劇のようなことを言う洋太はスクッと立ち上がった。
「まめふくに行ってくる」
「もう売り切れかもしれないぞ」
「あるかもしれないだろ」
「それなら電話して……」
水萌里がバッグからケータイを取ろうとしている間に洋太は風のように駆け抜けて行ってしまった。
帰ってきた洋太の項垂れで売り切れであったことはすぐにわかり、真守と水萌里は苦笑するしかなかった。
数日後、劇的に強くなった洋太に真守は驚くがなんとか勝利し、また数日後には洋太が初勝利を治めガッツポーズをした。真守が水萌里を見ると水萌里はにっこりと笑い返す。真守がいない間に、解説をしながらオセロの大特訓をしたのだった。洋太に内緒にしていたが、水萌里は真守に負けたことがない。当然、カレー店『タージュ』でも。
『チッキショー。だが、五分だからジャンケンよりマシだ』
真守と洋太の勝負は続く。二人は水萌里が二人の勝負を見るためにわざと『最後の一個』ができるように買い物してきていることに気がついていない。
『これも家族コミュニケーションの一つだわ』
裏のフィクサーは微笑むのであった。
☆☆☆
ご協力
昇月ビアスタンド様
カレー店タージュ様
おにぎりまめふく様
「おっけぇ。ゆっくりどぉぞぉ」
さて、このセリフ。読者の皆さんは誰のセリフだと予想して読んでくださっただろうか。いつもなら……ふふふふ
答えは、現在眉を寄せて唸っているのは洋太で、余裕でテーブルのコーヒーに手を伸ばしたのは真守である。
二人を間には白と黒の丸いもの、つまりはオセロが置かれている。
今二人は二人にとって大事なもののための勝負の真っ最中なのだ。その大事なものとは……『最後の一個』である。
これまでも『最後の一個』を巡り数々の勝負を繰り広げてきた二人は、最初からオセロというまあまあまどろっこしいものをやっていたわけではない。
まず思いつくのはジャンケン。その日は『昇月ビアスタンド』のう巻き卵を取り合った。
「ジャンケンポン!」
勝者洋太。だが、ここで大人があるあるなズルいことを言い出した。
「一回勝負って言ってないよな」
「何回でもいいぞぉ」
こうして三回やり、五回やり、十回やっても洋太の連勝だった。悔しながらも賞品は諦めた真守は、美味そうに最後の一個のう巻き卵を堪能する洋太をうらめしげに見ながら再スタートを願いでた。そうして再戦を始めたが、何度やっても洋太に勝てない。全敗なのだ。
その様子を見ていた水萌里が気がつく。
「洋太。神力使っているでしょう?」
「あははは。神力というほどでもない」
素直な洋太はペラペラと勝因を喋ってしまう。
「おやじの手元を良く見れば、何を出すかがわかるんだ」
二人は理解できない。
「「ジャンケン」といってグーにするよな? グーから出すものの形にしていくから手の動きでどれかがわかる」
二人はそれぞれスローモーションでやってみた。確かにグーからパーにするのとグーからチョキにするのは違うがコンマ何秒の話である。
「いやいや、無理だから」
「これを見てから判断なんてできるわけないじゃない」
「そうか? 簡単だぞ」
「「洋太だけしかできない」」
石橋家の『夏まつり』を思い出させる。
『そうなら、三割負けておけば永遠と優利だったのに』
『一生勝てない勝負をするところだった! 危ない危ない。水萌里が気がついてくれてよかった』
素直すぎる洋太に苦笑いする水萌里とホッと胸を撫で下ろす真守だった。
それから、「トランプババ抜き」は瞳に映るカードが見えることを喋ってしまい、「カード引き勝負」では手に熱さを感じることを喋ってしまい、弱い神力でもやっぱり神なのだと思わせる洋太であったが、なんでも勝因までもを喋ってしまうのでその勝負は次回開催がされることはなく、真守は様々な勝負を考えることになる。
そんなある日、水萌里と行ったカレー店『タージュ』にてオセロを思い出したのだ。『タージュ』では数種類の机上ゲームが無料で使えるようになっていて、注文した後に楽しむことができる。昨今、家族での外食にて注文後はそれぞれがケータイを見ていることが多くなったように見受けられるが、せっかく美味しい外食をともにするのだから一つの話題で盛り上がるのは素晴らしいことだ。机上ゲームはそのきっかけに大変に良いアイテムである。
カレー店『タージュ』は国道からすき家を北――小見川方面――に向かい、ミニストップのカーブを道なりに次のカーブを左折したところにある。
チーズたっぷりのチーズナンも美味いが、デザート系ナンも充実していてお土産にもオススメである。
水萌里が一夏に聞いて行ったカレー店なのだが、一夏の夫が激甘を注文しそれを配膳したとき「はい、激辛カレーライスよぉ」と言い、夫が驚愕する顔を見て「あはははジョークジョーク」と笑う面白いインド人がいるという。「夫は目をパチクリさせていたけど、激甘なのに美味しいカレーを喜んでいたわ」とその様子を思い出したように一夏は大笑いしながら話していた。
水萌里たちはジョークは聞けなかったが、気さくにおかわりなどもできる雰囲気のいい店だった。サラサラスープカレーより少しのとろみカレーを好む水萌里にとってとろみ加減もばっちりである。
またレディースセットは飲み物とデザート付きで、ランチセットはナンのおかわり自由。なんともリーズナブルなお店だ。
こうして店内でオセロを楽しみ美味しいカレーを食べてから自宅に戻った真守は早速オセロをネット注文する。残念ながら旭市内にオセロが売っているおもちゃ屋を検索できなかった。おもちゃ屋や書店などが軒並みなくなっていくのは時代の流れのようだ。
兎にも角にも、オセロは真守にとって大成功であった。今のところ全勝であるが、洋太はギブアップと言わないので『最後の一個』勝負はオセロとなっている。
今日も今日とで、真守が勝利し『まめふく』のサツマイモおにぎりを真守が嬉しそうに頬張る。半分を洋太に譲ろうとするが、「情けはいらない!」と時代劇のようなことを言う洋太はスクッと立ち上がった。
「まめふくに行ってくる」
「もう売り切れかもしれないぞ」
「あるかもしれないだろ」
「それなら電話して……」
水萌里がバッグからケータイを取ろうとしている間に洋太は風のように駆け抜けて行ってしまった。
帰ってきた洋太の項垂れで売り切れであったことはすぐにわかり、真守と水萌里は苦笑するしかなかった。
数日後、劇的に強くなった洋太に真守は驚くがなんとか勝利し、また数日後には洋太が初勝利を治めガッツポーズをした。真守が水萌里を見ると水萌里はにっこりと笑い返す。真守がいない間に、解説をしながらオセロの大特訓をしたのだった。洋太に内緒にしていたが、水萌里は真守に負けたことがない。当然、カレー店『タージュ』でも。
『チッキショー。だが、五分だからジャンケンよりマシだ』
真守と洋太の勝負は続く。二人は水萌里が二人の勝負を見るためにわざと『最後の一個』ができるように買い物してきていることに気がついていない。
『これも家族コミュニケーションの一つだわ』
裏のフィクサーは微笑むのであった。
☆☆☆
ご協力
昇月ビアスタンド様
カレー店タージュ様
おにぎりまめふく様
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