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46 新年の行事
あけましておめでとうございます。
年内に百話達成予定!今年もよろしくお願いします。
☆☆☆
深夜十一時過ぎ、もうすぐ年が明ける。
初日の出が有名な飯岡灯台であるが、神社ではないためこの時間に来る者はいない。
そこに青い車が一台やってきた。降り立った三人は和装である。黒い直衣姿の真守と巫女姿の水萌里、白い直衣姿の洋太の髪は黒ではなく紺色だ。
年に一度、この数時間だけ洋太の力が解放される。
飯岡灯台に一歩一歩近づくほどに洋太の髪は青くなっていった。
灯台に背を向け海に向かい立ち、しばらくすると洋太の髪が伸び、靡きはじめる。そして一メートルほど浮かび上がった。
遠くで除夜の鐘の音がする。真守と水萌里は海に頭を垂れていた。
洋太は天に向かい両手をあげる。
「八百万の神が一人『洋旭神』が願う。この地に豊漁、五穀豊穣、安泰、安寧をもたらしたまえ」
洋旭神の周りに水色の渦が現れ、洋旭神が一度腕を下ろしグッと胸の前に抱えて、今度は勢いよく腕を天に向けた。水色の渦が弾け、光となり旭の街の隅々に降り注いだ。ただしこの光は神力を持つ者にしか見ることはできない。
ゆっくりと降り立った洋太の髪は紺色になっていた。洋旭神とは洋太の真名である。
洋太は灯台の神様で、その灯台から見える範囲、つまりは旭市を見守る。家の神棚を媒体にして神力の調整をしている。
「お疲れ様でございました」
真守の言葉で水萌里も頭を深く下げた。
「さあ、二人とも帰ろう。母さん、雑煮ってやつを食わせてくれ」
「その前に年越ししちまった蕎麦を食べないとな」
もう真っ黒な短髪になった洋太の髪をくしゃくしゃと撫でた。
「ええ。つゆはもうできているわ」
水萌里は洋太の背にそっと手を触れさせた。
三人の後ろにキラキラと光が注がれる。
『海の大神様。今年もよろしく』
洋太は後部座席から振り向いてその光に挨拶をした。
朝になり三人は歩いて飯岡浜へ行く。洋太は念のため毛糸帽子を目深に被りパーカーのフードもすっぽり被った。
「はぁ! 寒いなぁ!」
真守は手を擦りはぁと息をかける。飯岡灯台では洋太が神力でカバーしてくれていた。
「そう? こんなに暖かいお正月なんて初めてよ。旭市って本当に暖かいわね。真守さんだって手袋してないでしょう?」
「確かに。靴下も一枚だな」
いいおか潮騒ホテル前の駐車場は暗いうちから満杯になると聞いていた通り、浜にはすでに数百人の参拝者が集っていた。
「九十九里浜の全体がこのような状態らしいわ」
「それほど絶景なんだろう」
昨日の雨天候の残りか、水平線と雲が重なり合っている。雲が上下に切り離れたところがちょうど日の出で上段の雲が金色に色づいき、洋太がフードを顔に寄せると、下段の雲から日の出が現れた。
「きたぁ!」「出たわぁ!」
あちらこちらから声が漏れる。下段の雲の高さは飯岡刑部岬灯台のある下総台地と同じ高さで、灯台と日の出が並んでいて、日の出の真横に伸びる光が灯台を照らす。
「まさに神々しい……。洋太。大丈夫か?」
「なんとかな。神力をゼロにしてきてよかったよ。海の大神様が最もお輝きになるんだ。ご尊顔にお目にかからなきゃ」
飯岡灯台から戻った三人は『松澤熊野神社神幸祭』の時のように媒体である神棚の前で祈ってから来たのだ。二人が洋太の手をとると先程までの寒さは全く無くなったので、洋太の神力が高まっているのを感じた。
「さあ。もう戻りましょう」
初日の出を三割ほど見た三人は家路についた。
「今年も楽しみだな」
洋太の口元を見た二人はにっこり笑って頷いた。
「そうだ! 元日だけ朝からやっているラーメン屋があるんだ。そこへ行かないか」
「まじで!? いいねぇ!」
「うーん。ならお雑煮は夜ね」
水萌里は二人の間に入り二人に腕を絡ませ歩いた。
車に乗り込み真守の運転で向かったのは新川沿いにあるラーメン屋だ。国道から入ると陸橋を渡ったすぐそこに位置する。まだ朝の八時だというのに駐車場は一杯ですでに外に待ちがいる。
「ラーメンだから回転早いし、従業員も充実してるから大して待たないよ」
二人が並ぶのを嫌がる前に牽制した真守だが、洋太は目をキラキラさせて鼻をムズムズと動かしていていらぬ心配だったようだ。
「美味そうなニオイだなぁ」
鶏スープの香りが漂う。
「お店の名前はなんと読むの?」
『濃厚鶏らーめん106』は黄色の暖簾に『106』と書かれている。
「『トム』だよ」
「まあ! なるほど! 面白いわね」
真守の言うように三人の順番はすぐに回ってきたが、メニューが思いの外多く、洋太は食券機の前でチラチラと水萌里を見た。
「はあ……。まさか朝からラーメン二杯のつもり? まあ、いいわ。でも、丼も充実しているみたいよ」
「何っ!?」
洋太は食券機脇のメニュー写真を見て再び悩みだした。
「洋太。また連れてきてやるから、今日のところは俺にまかせておけ。混んでるのにそこで悩むな」
「わかった。俺、ラーメン二杯と丼一杯な。何でもいいぞ、また来るから」
洋太はそういうと席へ行ってしまった。真守が苦笑いで自分の分と洋太の分の食券を買う。すると水萌里が固まっていた。
「定番の方がいい?」
「……いや、何でもいいけど」
「ならこれっ!」
二人が席につくと従業員がすぐに食券を取りに来て、改めて周りを見た。
「つけ麺もいいわよねぇ」
「……わかってる。また来ような」
真守は二人が初見は気に入ってくれたようでホっとした。
ラーメンが届き洋太が水萌里のラーメンに驚いたそれは、麺が見えないほどの具がのっているが汁も見えないものだった。
「母さんのそれはラーメンなのか?」
「そうよ。『まぜそば』っていうの。ほら」
水萌里は少し具を動かして麺を見せる。
「洋太のは洋太が好きな魚介ラーメンだろう」
「いい匂いだ。魚粉多めで注文してよかった!」
魚粉の香りが大好きな洋太は「多め」で注文したが、多めにせずともマイルドなのに深みのある味わいのラーメンである。
「こっちも美味いぞ。『ハマグリ潮らーめん』はしょっぱさが丸い。この細麺が合っている」
「『ハマグリ潮らーめん』は今日限定なんだよ。水萌里も食べる?」
真守は自分の器を水萌里に寄せた。一口食べた水萌里は目は瞬かせる。
「美味しい! はまぐりが沢山入っているのね。これははまぐり出汁なのかしら?」
洋太はものすごい勢いでど丼も軽く平らげた。
「つけ麺食べてないし丼も違うものあるし」
「わかったって! また来ような」
真守は二人の背を押して店を後にした。
ああ……私の文章力では、ラーメンの説明って難しい……。とにかく美味しいのは間違いないので、是非食べてね。
今日も明日も、休まず営業しております。
『ハマグリ潮らーめん』は正月二週間限り。食券『限定2』をご購入ください。
☆☆☆
ご協力
濃厚鶏らーめん106――トム――様
洋旭神絵・具緒ぐっちょ様
年内に百話達成予定!今年もよろしくお願いします。
☆☆☆
深夜十一時過ぎ、もうすぐ年が明ける。
初日の出が有名な飯岡灯台であるが、神社ではないためこの時間に来る者はいない。
そこに青い車が一台やってきた。降り立った三人は和装である。黒い直衣姿の真守と巫女姿の水萌里、白い直衣姿の洋太の髪は黒ではなく紺色だ。
年に一度、この数時間だけ洋太の力が解放される。
飯岡灯台に一歩一歩近づくほどに洋太の髪は青くなっていった。
灯台に背を向け海に向かい立ち、しばらくすると洋太の髪が伸び、靡きはじめる。そして一メートルほど浮かび上がった。
遠くで除夜の鐘の音がする。真守と水萌里は海に頭を垂れていた。
洋太は天に向かい両手をあげる。
「八百万の神が一人『洋旭神』が願う。この地に豊漁、五穀豊穣、安泰、安寧をもたらしたまえ」
洋旭神の周りに水色の渦が現れ、洋旭神が一度腕を下ろしグッと胸の前に抱えて、今度は勢いよく腕を天に向けた。水色の渦が弾け、光となり旭の街の隅々に降り注いだ。ただしこの光は神力を持つ者にしか見ることはできない。
ゆっくりと降り立った洋太の髪は紺色になっていた。洋旭神とは洋太の真名である。
洋太は灯台の神様で、その灯台から見える範囲、つまりは旭市を見守る。家の神棚を媒体にして神力の調整をしている。
「お疲れ様でございました」
真守の言葉で水萌里も頭を深く下げた。
「さあ、二人とも帰ろう。母さん、雑煮ってやつを食わせてくれ」
「その前に年越ししちまった蕎麦を食べないとな」
もう真っ黒な短髪になった洋太の髪をくしゃくしゃと撫でた。
「ええ。つゆはもうできているわ」
水萌里は洋太の背にそっと手を触れさせた。
三人の後ろにキラキラと光が注がれる。
『海の大神様。今年もよろしく』
洋太は後部座席から振り向いてその光に挨拶をした。
朝になり三人は歩いて飯岡浜へ行く。洋太は念のため毛糸帽子を目深に被りパーカーのフードもすっぽり被った。
「はぁ! 寒いなぁ!」
真守は手を擦りはぁと息をかける。飯岡灯台では洋太が神力でカバーしてくれていた。
「そう? こんなに暖かいお正月なんて初めてよ。旭市って本当に暖かいわね。真守さんだって手袋してないでしょう?」
「確かに。靴下も一枚だな」
いいおか潮騒ホテル前の駐車場は暗いうちから満杯になると聞いていた通り、浜にはすでに数百人の参拝者が集っていた。
「九十九里浜の全体がこのような状態らしいわ」
「それほど絶景なんだろう」
昨日の雨天候の残りか、水平線と雲が重なり合っている。雲が上下に切り離れたところがちょうど日の出で上段の雲が金色に色づいき、洋太がフードを顔に寄せると、下段の雲から日の出が現れた。
「きたぁ!」「出たわぁ!」
あちらこちらから声が漏れる。下段の雲の高さは飯岡刑部岬灯台のある下総台地と同じ高さで、灯台と日の出が並んでいて、日の出の真横に伸びる光が灯台を照らす。
「まさに神々しい……。洋太。大丈夫か?」
「なんとかな。神力をゼロにしてきてよかったよ。海の大神様が最もお輝きになるんだ。ご尊顔にお目にかからなきゃ」
飯岡灯台から戻った三人は『松澤熊野神社神幸祭』の時のように媒体である神棚の前で祈ってから来たのだ。二人が洋太の手をとると先程までの寒さは全く無くなったので、洋太の神力が高まっているのを感じた。
「さあ。もう戻りましょう」
初日の出を三割ほど見た三人は家路についた。
「今年も楽しみだな」
洋太の口元を見た二人はにっこり笑って頷いた。
「そうだ! 元日だけ朝からやっているラーメン屋があるんだ。そこへ行かないか」
「まじで!? いいねぇ!」
「うーん。ならお雑煮は夜ね」
水萌里は二人の間に入り二人に腕を絡ませ歩いた。
車に乗り込み真守の運転で向かったのは新川沿いにあるラーメン屋だ。国道から入ると陸橋を渡ったすぐそこに位置する。まだ朝の八時だというのに駐車場は一杯ですでに外に待ちがいる。
「ラーメンだから回転早いし、従業員も充実してるから大して待たないよ」
二人が並ぶのを嫌がる前に牽制した真守だが、洋太は目をキラキラさせて鼻をムズムズと動かしていていらぬ心配だったようだ。
「美味そうなニオイだなぁ」
鶏スープの香りが漂う。
「お店の名前はなんと読むの?」
『濃厚鶏らーめん106』は黄色の暖簾に『106』と書かれている。
「『トム』だよ」
「まあ! なるほど! 面白いわね」
真守の言うように三人の順番はすぐに回ってきたが、メニューが思いの外多く、洋太は食券機の前でチラチラと水萌里を見た。
「はあ……。まさか朝からラーメン二杯のつもり? まあ、いいわ。でも、丼も充実しているみたいよ」
「何っ!?」
洋太は食券機脇のメニュー写真を見て再び悩みだした。
「洋太。また連れてきてやるから、今日のところは俺にまかせておけ。混んでるのにそこで悩むな」
「わかった。俺、ラーメン二杯と丼一杯な。何でもいいぞ、また来るから」
洋太はそういうと席へ行ってしまった。真守が苦笑いで自分の分と洋太の分の食券を買う。すると水萌里が固まっていた。
「定番の方がいい?」
「……いや、何でもいいけど」
「ならこれっ!」
二人が席につくと従業員がすぐに食券を取りに来て、改めて周りを見た。
「つけ麺もいいわよねぇ」
「……わかってる。また来ような」
真守は二人が初見は気に入ってくれたようでホっとした。
ラーメンが届き洋太が水萌里のラーメンに驚いたそれは、麺が見えないほどの具がのっているが汁も見えないものだった。
「母さんのそれはラーメンなのか?」
「そうよ。『まぜそば』っていうの。ほら」
水萌里は少し具を動かして麺を見せる。
「洋太のは洋太が好きな魚介ラーメンだろう」
「いい匂いだ。魚粉多めで注文してよかった!」
魚粉の香りが大好きな洋太は「多め」で注文したが、多めにせずともマイルドなのに深みのある味わいのラーメンである。
「こっちも美味いぞ。『ハマグリ潮らーめん』はしょっぱさが丸い。この細麺が合っている」
「『ハマグリ潮らーめん』は今日限定なんだよ。水萌里も食べる?」
真守は自分の器を水萌里に寄せた。一口食べた水萌里は目は瞬かせる。
「美味しい! はまぐりが沢山入っているのね。これははまぐり出汁なのかしら?」
洋太はものすごい勢いでど丼も軽く平らげた。
「つけ麺食べてないし丼も違うものあるし」
「わかったって! また来ような」
真守は二人の背を押して店を後にした。
ああ……私の文章力では、ラーメンの説明って難しい……。とにかく美味しいのは間違いないので、是非食べてね。
今日も明日も、休まず営業しております。
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それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!!
それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります!
5/9から小説になろうでも掲載中
