あさひ市で暮らそう〜小さな神様はみんなの望みを知りたくて人間になってみた〜

宇水涼麻

文字の大きさ
58 / 80

58 マルシェクエストHP編

 魔王真守のHPHPはらぺこポイントは現在100ポイントでかなり空腹だが、講釈が好きな真守は腹が満たされるだけではHPが減ることはない。味に満足することも必要である。

 洋太は『もみきち』のすぐ前にあるキッチンカーに喜色満面に振り向いた。

「おやじ! あれ食おう!」

 ピンクのかわいい車は洋太のよく知るクレープ屋『ニコカフェ』である。洋太は時折ふらふらと新川方面に自転車を走らせて疲れたときにはニコカフェのクレープを食べていた。

「えー。俺はあっちが気になるんだけどな」

 真守が指差す方にはクリーム色のキチンカーに真っ赤な文字で『17』とあり、大きなタープにはおいしそうなホットドッグがデカデカと描かれている。『17ワンセブン』は地元のパン屋『フランス屋』の五穀パンを使いこだわりのソーセージを挟んだ極旨のキッチンカーである。

「お! あれは初めてみた! なら、ニコカフェはアイスクレープを持ち帰りしよう」

「………………いやに詳しいな」

「みどりとは友達だ。みどりっていうのはニコカフェのクレープ焼いている子な」

「へえ……」

 自分より余程よほど詳しい洋太に真守は複雑な気持ちになった。

『俺、もっと外に出た方がいいな』

★洋太コマンド魔法プレッシャー 真守MPまんぞくポイント10ポイント回復 残り20ポイント 

 『ワンセブン』は母娘らしい女性二人が調理しており、すでにお昼を過ぎていたためほとんど並ばずに買うことができた。水萌里の待つ席へと持っていく。

「立ち食いかと思っていたら野外テーブルが用意されているんだな」

「最近はそういうサービスがあるマルシェが多いわ。小さな子どもがいると荷物持ちながら子供に食べさせるって無理だもの」

★もみきちマルシェコマンド攻撃気の利くサービス 真守MP10ポイントダメージ 残り10ポイント

「これうまあ!!」

 洋太は座るやいなやホットドッグを食べている。真守も食べてみるとソーセージがパッチと弾けて肉汁が口に広がった。無心で食べている真守を見て水萌里はほっと表情を緩めた。

★ワンセブンコマンド攻撃美味いホットドッグ 真守HP50ポイントダメージ 残り50ポイント

「どうぞ」

 水萌里が真守の前に置いたのはあたたかな湯気を放つコーヒーである。

「香り高っ!! こんな本格的なものまで飲めるのかい?」

★コーヒーキッチンカー『ダンカフェ』コマンド攻撃香る焙煎コーヒー 真守HP20ポイントダメージ 残り30ポイント

「買ってきたぞぉ」

 洋太が買ってきた串団子はほんのり温かくみたらしタレが垂れないように気をつけて食べた。その美味しさに目を見開いた。

★『メリーカフェ』コマンド攻撃秘伝タレのみたらし団子 真守HP30ポイントダメージ 残り0ポイント
★真守はもみきちマルシェ出店のキッチンカーに腹も味も満たされた。まだ三店舗しか回ってないのに。

「水萌里。半分食べてくれ。洋太、そっちはなんだ?」

「これは家用の今川焼だ。団子と同じ店で買ってきた。それにこれな!」

 洋太が自慢気に見せたのは『まめふく』のおにぎりである。

「サバジンジャーだぞ。ここが『鎌数神社』だから「神社おにぎり」ブフッ!」

 洋太は自分が口に出したギャグで大笑いを始めるのだから、まめふくの作戦は大成功といえよう。

「神社でジンジャー…………ぶふふふふ」

★まめふくコマンド攻撃ダジャレ 真守MP10ポイントダメージ MP0ポイント

 腹を抱えて笑った真守は息を整えて美味しいコーヒーを口にした。一息ついてふと空を見上げる。

「外で食べるって気持ちいいなあ。こんなに楽しめるとは思わなかったよ」

「何言ってるの?」「これからだろう!」

 水萌里と洋太のツッコミは同時だった。
 それから鎌数伊勢大神宮の歴史立て看板を見たり、お守りやくじ引き売り場に行ったり、他の出店を見てまわったりした。

「洋太。数珠の効果は大丈夫そうだな」

「ばっちり!」

 洋太が腕を上げると手首には洋太の髪色に似ている真っ青な瑠璃ラピスラズリの数珠が見えた。真守と水萌里はほっと息を吐いた。これは洋太に外からの力が入り過ぎないようにするための数珠で、洋太の防具だ。

「そろそろ帰りましょうか」

「オッケー!」

 洋太が走り出しピンクの車ニコカフェに顔を突っ込んだ。

「みどり! チョコバナナとキャラメル! それとアイスクレープ三個な」

「まだ買うのか?」

 洋太の背中に呆れ声を漏らす。

「明日の分よ。アイスクレープなら冷凍庫に入れておけるし。三個ってことは真守さんにも食べてほしいんじゃないかしら」

★洋太コマンド攻撃お土産 真守MP20ポイントダメージ MPー20ポイント

 真守は嬉しくて顔がにやけた。

 車へ向かう道すがら、もみきちの前でもみきち従業員このみが笑顔で手を振っていた。

★もみきち従業員このみコマンド攻撃笑顔のお見送り 真守MP10ポイントダメージ MPー30ポイント

 真守は気分よく帰途へついた。

★ザッザッザッ ダンジョン鎌数神社から逃走

 魔王真守はもみきちマルシェダンジョンで討伐され、もみきちマルシェの平和は守られた。これももみきちマルシェ開催に尽力した勇者たちの愛とパワーのおかげだ。魔王真守はいつの日か復活する。そのときにはまた勇者諸君の力を見せてくれ。
 

 ところかわって田中家。もみきちマルシェ翌日の夕方、冷凍庫にそれはなかった。

「これがラストだ」

 真守が冷凍庫を開けたまま振り返ると棒状になっているアイスクレープを美味しそうに食べながら飄々ひょうひょうと言う洋太がいた。その姿にがっかりする真守だった。

『俺の分じゃないのかよぉぉぉ。俺の満足心返せぇ!』

 そのMP返ってきてもMP0だからね。

 ☆☆☆
 ご協力
 もみきち飯岡店様
 鎌数伊勢大神宮様
 もみきちマルシェ出店者様
 
感想 4

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 他サイトにも投稿しております。 ※本作品をAIの学習教材として使用することを禁じます。 ※無断著作物利用禁止

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!

ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。 ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。 そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。 問題は一つ。 兄様との関係が、どうしようもなく悪い。 僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。 このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない! 追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。 それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!! それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります! 5/9から小説になろうでも掲載中