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77 古来の
旭市中央郵便局の向かい側にある緑の広場が広がる公園は、金網で仕切られた中に本物のSLがその黒々としたツヤツヤボディーを余すことなくさらけ出しどっしりと構えている。時代を超越した迫力をヒシヒシと感じる。
真守はSLの横に備え付けられたベンチに慣れた様子で座ると少年のような目でそれを見つめた。
数ヶ月前にはその金網の中に入っていく作業着の老年紳士二人がいた。二人は真守の目の前でSLをキレイにしていく。
『だよなぁ。屋根があるとはいえ外に展示されているのにキレイだなと思ったんだ。こうやって定期的にメンテナンスしているんだな』
JRを定年退職した紳士二人が真剣な眼差しでメンテナンスをしていたのを見ていた真守は、それが終えるまでそこにいた。紳士二人は真守にペコリと頭を下げ、真守も慌てて立ち上がり頭を下げた。
『見張ってたわけじゃないけど。こういう仕事ってやっても認められることがマレだよな。それを黙々とやるってすごいな』
真守はこうして時々見に来ると紳士たちの姿を思い出し、改めてその黒い物体のたたずまいに感動するのだった。
「よし、行くか」
真守は帰宅しようと立ち上がり、いつものようにSLの正面を進み『西宮神社』へお参りにいく。
西宮神社は恵比寿様をまつる神社だ。鯛を抱えた恵比寿様は大漁祈願、商売繁盛、学業成就の神だ。飯岡漁港あり、人口に対しての飲食店の数が多く、小さな市なのに高校が二つある旭市を見守ってくれている。
「あれ? いつもと様子が違うぞ」
境内に入り左手側には『えびすさま』と『だいこくさま』の像があるのだが、その像の前に竹の筒が数十本立てられていた。その竹には無数の穴が空いているし、規則的とはいえない並べ方であるのに、統一感を感じさせる。
「アートか…………」
ふと気がついた真守は目を見開いた。それは像と竹のコラボレーションアートだったのだ。『芝山竹炭サークルかぐや姫』があさげー(あさひの芸術祭実行委員会)の依頼により制作したものである。かぐや姫は竹林の保護を目的として活動をする団体で、その際に出た伐採竹を竹炭にして販売している。さらに竹灯籠制作もやっているという団体だ。
古来には重宝されたはずの竹林は悲しくも害となりつつある。竹林放置問題をご存知だろうか。「森を放置するのと何が違うのか?」と問題視されにくいものだが、竹の特長で問題が起きてしまう。
例えば、竹は根が浅いところを這うため地すべりが起きやすくなる。また、野生鳥獣の過大発生にもつながる。さらに、倒木が腐りにくく、一度放置すると再開が困難だ。竹は成長が早いため、利用しやすい樹木のエリアに侵食するとそれらの樹木が育ちにくくなる。
昔、竹の便利さを利用するため増やした人工竹林であるが、製品技術が向上した今、需要がない。その上で、竹の需要性を考えながら竹林保全をする団体が増えてきている中で、『かぐや姫』もその一つだ。
竹灯籠がアートだと気がついた真守は離れたり近寄ったり回り込んだりしてそのアートを楽しむ。そして、また気がついた。
「これって電気が点くんじゃないか? すごい! これは夜に二人を連れてこよう!」
ウキウキ気分で拝殿へ進むと隣にある社務所の変化に気がついた。
「あれあれあれ? おお! ここにもアートが!」
三枚の絵が飾られ、それを引き立たせるように観葉植物やハニワなどの焼き物が並んでいる。真ん中の赤い絵は神々しさを放っていた。
両脇の緑色を主体とした絵に真守は納得と頷いた。
「これ、とがらしごぼうか」
西宮神社のとがらしごぼうは、1月中旬に執り行われる「春の大祭」こと「西宮神社例大祭」に向けて作られ、神前に供えかつ氏子や崇敬者に分けられている。
味噌、唐辛子、ゴボウ、煎り大豆など、数種の味付け材料を入れて混ぜ合わせて作られる。寒い時期に作られるそれは、血行をよくして体を温めたり、整腸の働き助けたりする効果があるという。
この『とがらしいごぼう』の由来は西宮神社の考えの一つである『とがらずに人と接すれば成就するという御法』の言葉からできた、つまりはシャレだというのだから面白い。
そのとがらしごぼうをモチーフにした楽しい絵を制作したのは、画家寿留女と旭市民である。寿留女は古来より伝承されている事柄や神などへの造詣が深い画家だ。
あさげーの街ぶら企画の一つの「スペシャルアーティストとの共同制作」として制作されたものだ。
寿留女担当のまでぃはその企画を聞いておじいちゃんおばあちゃんたちと作ることを考えた時、扉のないデイケアルーム『わだち』に依頼することを思いつく。
「まあ! それはうちでもやってみたいことですね」
早速赴いてみると所長は快く引き受けてくれた。
その数日後、までぃは寿留女を伴ってわだちへ挨拶に訪れた。
「え? え? えーーー!!!」
寿留女が指さしたガラス壁の向こうのキッチンには老年の女性が目をクリクリと大きく見開いて驚いていた。
までぃが首を傾げて寿留女を見る。
「私のおばちゃん! お母さんの姉妹!」
「えーー! 偶然? だよね? わだちと話したの私だもんね?」
「うん。おばちゃんがここで働いているなんて知らなかった」
それから叔母と寿留女は再会を喜んだ。
日を改めて行った共同制作は大成功で、寿留女が描いた2枚あるとがらしごぼうの絵の一枚は『デイケアルームわだち』で制作されたのだった。
☆☆☆
ご協力
西宮神社様
竹灯籠かぐや姫様
画家寿留女様
デイケアルームわだち様
真守はSLの横に備え付けられたベンチに慣れた様子で座ると少年のような目でそれを見つめた。
数ヶ月前にはその金網の中に入っていく作業着の老年紳士二人がいた。二人は真守の目の前でSLをキレイにしていく。
『だよなぁ。屋根があるとはいえ外に展示されているのにキレイだなと思ったんだ。こうやって定期的にメンテナンスしているんだな』
JRを定年退職した紳士二人が真剣な眼差しでメンテナンスをしていたのを見ていた真守は、それが終えるまでそこにいた。紳士二人は真守にペコリと頭を下げ、真守も慌てて立ち上がり頭を下げた。
『見張ってたわけじゃないけど。こういう仕事ってやっても認められることがマレだよな。それを黙々とやるってすごいな』
真守はこうして時々見に来ると紳士たちの姿を思い出し、改めてその黒い物体のたたずまいに感動するのだった。
「よし、行くか」
真守は帰宅しようと立ち上がり、いつものようにSLの正面を進み『西宮神社』へお参りにいく。
西宮神社は恵比寿様をまつる神社だ。鯛を抱えた恵比寿様は大漁祈願、商売繁盛、学業成就の神だ。飯岡漁港あり、人口に対しての飲食店の数が多く、小さな市なのに高校が二つある旭市を見守ってくれている。
「あれ? いつもと様子が違うぞ」
境内に入り左手側には『えびすさま』と『だいこくさま』の像があるのだが、その像の前に竹の筒が数十本立てられていた。その竹には無数の穴が空いているし、規則的とはいえない並べ方であるのに、統一感を感じさせる。
「アートか…………」
ふと気がついた真守は目を見開いた。それは像と竹のコラボレーションアートだったのだ。『芝山竹炭サークルかぐや姫』があさげー(あさひの芸術祭実行委員会)の依頼により制作したものである。かぐや姫は竹林の保護を目的として活動をする団体で、その際に出た伐採竹を竹炭にして販売している。さらに竹灯籠制作もやっているという団体だ。
古来には重宝されたはずの竹林は悲しくも害となりつつある。竹林放置問題をご存知だろうか。「森を放置するのと何が違うのか?」と問題視されにくいものだが、竹の特長で問題が起きてしまう。
例えば、竹は根が浅いところを這うため地すべりが起きやすくなる。また、野生鳥獣の過大発生にもつながる。さらに、倒木が腐りにくく、一度放置すると再開が困難だ。竹は成長が早いため、利用しやすい樹木のエリアに侵食するとそれらの樹木が育ちにくくなる。
昔、竹の便利さを利用するため増やした人工竹林であるが、製品技術が向上した今、需要がない。その上で、竹の需要性を考えながら竹林保全をする団体が増えてきている中で、『かぐや姫』もその一つだ。
竹灯籠がアートだと気がついた真守は離れたり近寄ったり回り込んだりしてそのアートを楽しむ。そして、また気がついた。
「これって電気が点くんじゃないか? すごい! これは夜に二人を連れてこよう!」
ウキウキ気分で拝殿へ進むと隣にある社務所の変化に気がついた。
「あれあれあれ? おお! ここにもアートが!」
三枚の絵が飾られ、それを引き立たせるように観葉植物やハニワなどの焼き物が並んでいる。真ん中の赤い絵は神々しさを放っていた。
両脇の緑色を主体とした絵に真守は納得と頷いた。
「これ、とがらしごぼうか」
西宮神社のとがらしごぼうは、1月中旬に執り行われる「春の大祭」こと「西宮神社例大祭」に向けて作られ、神前に供えかつ氏子や崇敬者に分けられている。
味噌、唐辛子、ゴボウ、煎り大豆など、数種の味付け材料を入れて混ぜ合わせて作られる。寒い時期に作られるそれは、血行をよくして体を温めたり、整腸の働き助けたりする効果があるという。
この『とがらしいごぼう』の由来は西宮神社の考えの一つである『とがらずに人と接すれば成就するという御法』の言葉からできた、つまりはシャレだというのだから面白い。
そのとがらしごぼうをモチーフにした楽しい絵を制作したのは、画家寿留女と旭市民である。寿留女は古来より伝承されている事柄や神などへの造詣が深い画家だ。
あさげーの街ぶら企画の一つの「スペシャルアーティストとの共同制作」として制作されたものだ。
寿留女担当のまでぃはその企画を聞いておじいちゃんおばあちゃんたちと作ることを考えた時、扉のないデイケアルーム『わだち』に依頼することを思いつく。
「まあ! それはうちでもやってみたいことですね」
早速赴いてみると所長は快く引き受けてくれた。
その数日後、までぃは寿留女を伴ってわだちへ挨拶に訪れた。
「え? え? えーーー!!!」
寿留女が指さしたガラス壁の向こうのキッチンには老年の女性が目をクリクリと大きく見開いて驚いていた。
までぃが首を傾げて寿留女を見る。
「私のおばちゃん! お母さんの姉妹!」
「えーー! 偶然? だよね? わだちと話したの私だもんね?」
「うん。おばちゃんがここで働いているなんて知らなかった」
それから叔母と寿留女は再会を喜んだ。
日を改めて行った共同制作は大成功で、寿留女が描いた2枚あるとがらしごぼうの絵の一枚は『デイケアルームわだち』で制作されたのだった。
☆☆☆
ご協力
西宮神社様
竹灯籠かぐや姫様
画家寿留女様
デイケアルームわだち様
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