逢魔が時の神隠し

ほの

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妖鬼山

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「またこの話か。」

朝食を食べながら、朝のニュースを見る。どの番組をつけても、最近はこの話題ばかりだ。

"原因不明、逢魔が時おうまがときに起こる神隠し"

「神隠しって、冗談でしょ。まだ妖怪とか信じてる人がいるんだ。」

ここ最近、子供が、夕方に何者かに攫われる事件が起きている。事件当初は、子供好きの誘拐犯の仕業だと思われていた。でも、おかしな点がある。攫われて3日、ながくても1週間程度で子供が無傷で帰ってくること。そして帰ってきた子供達は、口を揃えて「何も覚えていない」ということ。

「まあ妖怪の仕業って言いたくなる気持ちは分かるけど、催眠術に長けた犯人の仕業とかなんじゃないの?妖怪妖怪って騒がれて、犯人いい気になってたりして。」

早く犯人が捕まればいいのに、と思いながら、テレビの電源を切る。と同時にスマホが震え出した。

「もしもし。」

「よっ、唯!朝のニュース見たか???」

「おはよう隼人。朝から元気だね。見たよ。神隠しとか言われてるやつでしょ。」

「そう、それ!やばくね、今日で5人目だぞ!」

朝からこのテンションでいれる友人を尊敬する。河野隼人。小学生の時からの付き合いで、大学まで同じ。完全に腐れ縁だ。

「何喜んでるの、不謹慎ふきんしんだよ。早く犯人捕まればいいね。」

「お前、まじであれ人間の仕業だと思ってんの???なんの痕跡もなく子供が攫われて、いつも同じ場所に帰ってくる。絶対人間の仕業じゃねえだろ。」

「じゃあ誰の仕業って言うの。妖怪の仕業?そう考えるのが犯人の思う壷だよ。」

「唯はいつもそう言うよな。でもさ、攫われた子供が帰ってくるまで、妖鬼山ようきざんのふもとに警察が張り込んだこともあったけど、犯人の姿見たやつはゼロ。張り込んでた警官は口揃えて、子供が1人で妖鬼山降りて帰ってきたって言うんだぜ。しかも帰ってくる奴らは全員もれなく無傷。おかしいだろ。いくら里山つったって山は山だ。危険だ。子供が1人で行って無傷で帰ってくるなんて有り得ない。」

妖鬼山。この事件が起こるまで、注目すらされてなかった、ただの里山。名前が名前なので近づこうとする人は少ないが、僕は昔行ったことがある。小学生の時、自由研究のために竹が必要だった。当時は妖鬼山を所有する人が、好意で自由採取可能区間を作ってくれていたが、7年前に所有者が死に、妖鬼山全体が立ち入り禁止区域になったはずだ。昔のことすぎて覚えていない。

「確かにそうだね。じゃあ妖怪の仕業だとして僕らに何ができるの。何も出来ないでしょ。騒ぐだけ無駄。」

これは本当に思ってる事だ。この事件を話題に世間が騒いでいる。騒いでる人々の八割は本当に心配してる人だろう。子供達の身を案じている人。気味の悪いこの事件に恐怖している人。しかし残りの人々は、ただワクワクとこの状況を楽しんでいるようにしか思えない。基本的にこの事件に関わるのは、子供のみだから。一部の大人は自分は関係ないと、やれ妖怪だの、やれ神隠しだのと言って楽しんでいる。隼人も含めて。

「んーー、攫われんのって子供だろ。なあ、唯。妖鬼山行ってみねえ?俺ら住んでんのすぐ近くだしさ、気になって仕方ないんだよ。」

「、、、本気で言ってるの?アホなの?無理だよ。やめて。」

つい答える声が低くなってしまう。心の底からアホだと思った。隼人のこういところが昔から大嫌いだ。でも、こういう所に救われてきたこともある。変に好奇心旺盛な所は、隼人の限りなく短所寄りの長所でもあると思う。

「いや、わりい。さすがに今のは俺が悪い。ごめん。行かないから、もう言わないから、そんな怒らんでくれ。すまん唯。」

「別に僕に謝らなくてもいいよ。怒ってるというか心配してるだけ。行かないでね。」

「うん、行かない。」

「そうして。」

「なあ今日暇?」

「、、、。」

「いや違う!妖鬼山とかそんなん関係なく、昼飯食いに行こ!前言ってたラーメン屋!変なこといった謝罪も含めて俺が奢る!」

「それならいいけど。」

集合場所や集合時間を決めて、隼人との電話は終わった。いつの間にか電話を始めて1時間がたっていた。時間の流れは早いなと年寄りくさいことを思いながら、1週間後に提出しなければいけない課題に手をつけた。 
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