逢魔が時の神隠し

ほの

文字の大きさ
1 / 16
妖鬼山

しおりを挟む
「またこの話か。」

朝食を食べながら、朝のニュースを見る。どの番組をつけても、最近はこの話題ばかりだ。

"原因不明、逢魔が時おうまがときに起こる神隠し"

「神隠しって、冗談でしょ。まだ妖怪とか信じてる人がいるんだ。」

ここ最近、子供が、夕方に何者かに攫われる事件が起きている。事件当初は、子供好きの誘拐犯の仕業だと思われていた。でも、おかしな点がある。攫われて3日、ながくても1週間程度で子供が無傷で帰ってくること。そして帰ってきた子供達は、口を揃えて「何も覚えていない」ということ。

「まあ妖怪の仕業って言いたくなる気持ちは分かるけど、催眠術に長けた犯人の仕業とかなんじゃないの?妖怪妖怪って騒がれて、犯人いい気になってたりして。」

早く犯人が捕まればいいのに、と思いながら、テレビの電源を切る。と同時にスマホが震え出した。

「もしもし。」

「よっ、唯!朝のニュース見たか???」

「おはよう隼人。朝から元気だね。見たよ。神隠しとか言われてるやつでしょ。」

「そう、それ!やばくね、今日で5人目だぞ!」

朝からこのテンションでいれる友人を尊敬する。河野隼人。小学生の時からの付き合いで、大学まで同じ。完全に腐れ縁だ。

「何喜んでるの、不謹慎ふきんしんだよ。早く犯人捕まればいいね。」

「お前、まじであれ人間の仕業だと思ってんの???なんの痕跡もなく子供が攫われて、いつも同じ場所に帰ってくる。絶対人間の仕業じゃねえだろ。」

「じゃあ誰の仕業って言うの。妖怪の仕業?そう考えるのが犯人の思う壷だよ。」

「唯はいつもそう言うよな。でもさ、攫われた子供が帰ってくるまで、妖鬼山ようきざんのふもとに警察が張り込んだこともあったけど、犯人の姿見たやつはゼロ。張り込んでた警官は口揃えて、子供が1人で妖鬼山降りて帰ってきたって言うんだぜ。しかも帰ってくる奴らは全員もれなく無傷。おかしいだろ。いくら里山つったって山は山だ。危険だ。子供が1人で行って無傷で帰ってくるなんて有り得ない。」

妖鬼山。この事件が起こるまで、注目すらされてなかった、ただの里山。名前が名前なので近づこうとする人は少ないが、僕は昔行ったことがある。小学生の時、自由研究のために竹が必要だった。当時は妖鬼山を所有する人が、好意で自由採取可能区間を作ってくれていたが、7年前に所有者が死に、妖鬼山全体が立ち入り禁止区域になったはずだ。昔のことすぎて覚えていない。

「確かにそうだね。じゃあ妖怪の仕業だとして僕らに何ができるの。何も出来ないでしょ。騒ぐだけ無駄。」

これは本当に思ってる事だ。この事件を話題に世間が騒いでいる。騒いでる人々の八割は本当に心配してる人だろう。子供達の身を案じている人。気味の悪いこの事件に恐怖している人。しかし残りの人々は、ただワクワクとこの状況を楽しんでいるようにしか思えない。基本的にこの事件に関わるのは、子供のみだから。一部の大人は自分は関係ないと、やれ妖怪だの、やれ神隠しだのと言って楽しんでいる。隼人も含めて。

「んーー、攫われんのって子供だろ。なあ、唯。妖鬼山行ってみねえ?俺ら住んでんのすぐ近くだしさ、気になって仕方ないんだよ。」

「、、、本気で言ってるの?アホなの?無理だよ。やめて。」

つい答える声が低くなってしまう。心の底からアホだと思った。隼人のこういところが昔から大嫌いだ。でも、こういう所に救われてきたこともある。変に好奇心旺盛な所は、隼人の限りなく短所寄りの長所でもあると思う。

「いや、わりい。さすがに今のは俺が悪い。ごめん。行かないから、もう言わないから、そんな怒らんでくれ。すまん唯。」

「別に僕に謝らなくてもいいよ。怒ってるというか心配してるだけ。行かないでね。」

「うん、行かない。」

「そうして。」

「なあ今日暇?」

「、、、。」

「いや違う!妖鬼山とかそんなん関係なく、昼飯食いに行こ!前言ってたラーメン屋!変なこといった謝罪も含めて俺が奢る!」

「それならいいけど。」

集合場所や集合時間を決めて、隼人との電話は終わった。いつの間にか電話を始めて1時間がたっていた。時間の流れは早いなと年寄りくさいことを思いながら、1週間後に提出しなければいけない課題に手をつけた。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ

BL
鍛えられた肉体、高潔な魂―― それは選ばれし“供物”の条件。 山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。 見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。 誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。 心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

執着

紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

処理中です...