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僕が誰かを嫌いな理由(わけ)
014. 高校受験と入学準備
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高校進学はお祖父様の家から通える隣の県の公立高校を望んでいた。
私立に行くよりじゅご雨量が安い公立高校であれば清心も文句を言わないだろうし、麗夏とも進学する高校が別々になってくれるだろうと安易に考えていた。
僕自身は私立高校の受験をするつもりがなかった。
それなのに清心の勝手で僕の受験する高校を変えられていた。
しかも私立高校に…。
ただこの高校は私立と言っても一般的な“滑り止め”と言えるようなレベルの学校ではない。
はっきり言ってしまえば、麗夏の成績では合格できても授業についていけるかどうかというレベルだった。
そんな麗夏が何故その高校を選んだのか?
それは後から知ったことなんだけど、その高校は『私立桜翔学園高等部』で禿河の家からは近い距離にあり通学には楽な場所だった。それと制服のデザインがかわいい……という理由だった。
中学の時は麗夏は勉強嫌いで家に居るとには勉強している姿なんて見たことなかったから僕はその理由に納得した。
清心は清心で授業料の高い高校に通わせているって見栄をご近所に見せたいだけなんだろうな…と思った。
結局僕は自分の希望した高校には進学することは叶わなかった。
仕方なく麗夏と同じ高校『私立桜翔学園高等部』に入学することになった。
合格したのは良かったけれどその後は僕にとってストレスにしかならなかった。
高校に納めなければならい入学金やら教科書とか学校で使用する学用品の購入に制服の採寸もあるのにそれら全てを清心と父さんは僕の分を拒否してきた。
「なんであんたの分まで私たちが払ってやらなきゃならないのよ。麗夏の分だけで大変なのに…。高校のことはあんた自分で何とかしなさいよ」
清心から突然に言われた。
――そもそも僕の高校の授業料なんて支払う気は全くないくせに…――
僕は心の中で清心に毒づいた。
「ア、ハイ、ソウデスカ」
清心の言葉に僕は呆れつつ感情のないまま答えた。
ふと清心の顔を見ると口の端が緩み、口角が上がっているのが僕にはわかった。
仕方がないので僕は瑠維さんに連絡した。
いつもはお祖父様に近況報告するくらいだったので瑠維さんも驚くだろうと思った。
「あー、それね。あの女のことだからそんなこと言ってくることだと予想していたよ。そのことは亜月君は心配しなくても大丈夫。それよりも…亜月君の新しい制服姿が見たいなぁー。高校の入学式はいつ?」
「えっと…四月十日…ですけど…瑠維さんだって仕事忙しいんじゃないですか?無理しなくていいですよ」
瑠維さんはお祖父様の会社に勤めていてお祖父様の家に居候しているってだけの知り合いという関係だけで僕なんかのために時間を割いてくれるのはちょっと不思議だった。
「亜月君が冷たい…クスン」
大の大人が泣き真似してくるとは…。
僕はわざとらしく大きく溜息を吐いた。
「あー、もう。わかりました。瑠維さん入学式はお願いします。どうせあの人たちは僕のことは無視だろうし」
「やったぁー、それじゃぁ亜月君は卒業式終わったら入学式まで瀧野瀬の家でお泊り決定だね」
「はぁ、わかりました。瑠維さんの言う通りにします」
僕は半分呆れて仕方なく瑠維さんに従うことにした。
確かに瑠維さんに言った通りだけど、存在まで否定されている気分なんだよね。
それなのに何故僕はあの家であの家族と生活してなきゃらなないんだろう?
再婚で連れ子だとしても大体の人は仲良く生活しようと努力しているだろう。
僕だけが最初からいない存在として扱われるのは少ないケースじゃないかと思う。
こんな感じで何故か考えたりもしたけれど僕には解からない。
やっと最近になってあの人たちに家族愛みたいなものや嫌わないで欲しいとかそういう欲求は捨て去った。
だからこれから先は何も期待しない。
入学準備は瑠維さんの言った通り滞りなく進んだ。
卒業式には瑠維さんだけでなくお祖父様も来ていた。
麗夏は父さんと清心に出席してもらって嬉しそうにしていた。
僕と視線が合うとニヤリと笑って父さんと清心の腕を掴んでいた。
まるで僕を隙間にさえ入れたくないと言うような雰囲気だった。
麗夏のニヤついた顔を見ていた瑠維さんは何故か対抗意識があったように見えた。
「それじゃぁ亜月君は高校の入学式まで預かりますねー」
目が笑っていない瑠維さんが父さんに告げた。
「何勝手なこと言ってんだ?!佐伯、お前にコイツのことは関係ねぇだろ?!連れて行くのは許さんぞ!」
勝手なことを喚いている父さんの耳元で瑠維さんが呟いた。
「亜月君の高校入学準備にかかる費用は全て自分でどうにかしろとあんたの女は言ったんだ。その準備を亜月君にさせないつもりですか?それとも貴方が準備も費用も俺たちに返してくれるんですか?返しもしないで準備もさせないなんておかしな話だろ?」
いつもと違った低い声で瑠維さんのイメージとは似合わないドスの効いたものだった。
「それでは…亜月君は僕が責任もって高校の入学準備しますから」
口調が戻った瑠維さんはニコリと笑って会釈した。
いつも通りの瑠維さんだった。
「じゃぁ行きましょう。お祖父様も小田切さんも待っているよ」
「は、はい」
瑠維さんの顔は笑顔になっていたけれど、僕は正直さっきの瑠維さんが恐かったのでうまく返事ができなかった。
「今日は亜月君の卒業祝いでお祖母様も家で料理作って待っているよ。楽しみだね」
歩き出した僕と瑠維さんの後ろで麗夏と父さんが何か喚いていたけれど知らない。
高校生活がこれから始まるけど今は暫くの間お祖父様の家で父さんのことも清心のこともそして麗夏のことも考えないで過ごせる毎日を楽しもうと思う。
私立に行くよりじゅご雨量が安い公立高校であれば清心も文句を言わないだろうし、麗夏とも進学する高校が別々になってくれるだろうと安易に考えていた。
僕自身は私立高校の受験をするつもりがなかった。
それなのに清心の勝手で僕の受験する高校を変えられていた。
しかも私立高校に…。
ただこの高校は私立と言っても一般的な“滑り止め”と言えるようなレベルの学校ではない。
はっきり言ってしまえば、麗夏の成績では合格できても授業についていけるかどうかというレベルだった。
そんな麗夏が何故その高校を選んだのか?
それは後から知ったことなんだけど、その高校は『私立桜翔学園高等部』で禿河の家からは近い距離にあり通学には楽な場所だった。それと制服のデザインがかわいい……という理由だった。
中学の時は麗夏は勉強嫌いで家に居るとには勉強している姿なんて見たことなかったから僕はその理由に納得した。
清心は清心で授業料の高い高校に通わせているって見栄をご近所に見せたいだけなんだろうな…と思った。
結局僕は自分の希望した高校には進学することは叶わなかった。
仕方なく麗夏と同じ高校『私立桜翔学園高等部』に入学することになった。
合格したのは良かったけれどその後は僕にとってストレスにしかならなかった。
高校に納めなければならい入学金やら教科書とか学校で使用する学用品の購入に制服の採寸もあるのにそれら全てを清心と父さんは僕の分を拒否してきた。
「なんであんたの分まで私たちが払ってやらなきゃならないのよ。麗夏の分だけで大変なのに…。高校のことはあんた自分で何とかしなさいよ」
清心から突然に言われた。
――そもそも僕の高校の授業料なんて支払う気は全くないくせに…――
僕は心の中で清心に毒づいた。
「ア、ハイ、ソウデスカ」
清心の言葉に僕は呆れつつ感情のないまま答えた。
ふと清心の顔を見ると口の端が緩み、口角が上がっているのが僕にはわかった。
仕方がないので僕は瑠維さんに連絡した。
いつもはお祖父様に近況報告するくらいだったので瑠維さんも驚くだろうと思った。
「あー、それね。あの女のことだからそんなこと言ってくることだと予想していたよ。そのことは亜月君は心配しなくても大丈夫。それよりも…亜月君の新しい制服姿が見たいなぁー。高校の入学式はいつ?」
「えっと…四月十日…ですけど…瑠維さんだって仕事忙しいんじゃないですか?無理しなくていいですよ」
瑠維さんはお祖父様の会社に勤めていてお祖父様の家に居候しているってだけの知り合いという関係だけで僕なんかのために時間を割いてくれるのはちょっと不思議だった。
「亜月君が冷たい…クスン」
大の大人が泣き真似してくるとは…。
僕はわざとらしく大きく溜息を吐いた。
「あー、もう。わかりました。瑠維さん入学式はお願いします。どうせあの人たちは僕のことは無視だろうし」
「やったぁー、それじゃぁ亜月君は卒業式終わったら入学式まで瀧野瀬の家でお泊り決定だね」
「はぁ、わかりました。瑠維さんの言う通りにします」
僕は半分呆れて仕方なく瑠維さんに従うことにした。
確かに瑠維さんに言った通りだけど、存在まで否定されている気分なんだよね。
それなのに何故僕はあの家であの家族と生活してなきゃらなないんだろう?
再婚で連れ子だとしても大体の人は仲良く生活しようと努力しているだろう。
僕だけが最初からいない存在として扱われるのは少ないケースじゃないかと思う。
こんな感じで何故か考えたりもしたけれど僕には解からない。
やっと最近になってあの人たちに家族愛みたいなものや嫌わないで欲しいとかそういう欲求は捨て去った。
だからこれから先は何も期待しない。
入学準備は瑠維さんの言った通り滞りなく進んだ。
卒業式には瑠維さんだけでなくお祖父様も来ていた。
麗夏は父さんと清心に出席してもらって嬉しそうにしていた。
僕と視線が合うとニヤリと笑って父さんと清心の腕を掴んでいた。
まるで僕を隙間にさえ入れたくないと言うような雰囲気だった。
麗夏のニヤついた顔を見ていた瑠維さんは何故か対抗意識があったように見えた。
「それじゃぁ亜月君は高校の入学式まで預かりますねー」
目が笑っていない瑠維さんが父さんに告げた。
「何勝手なこと言ってんだ?!佐伯、お前にコイツのことは関係ねぇだろ?!連れて行くのは許さんぞ!」
勝手なことを喚いている父さんの耳元で瑠維さんが呟いた。
「亜月君の高校入学準備にかかる費用は全て自分でどうにかしろとあんたの女は言ったんだ。その準備を亜月君にさせないつもりですか?それとも貴方が準備も費用も俺たちに返してくれるんですか?返しもしないで準備もさせないなんておかしな話だろ?」
いつもと違った低い声で瑠維さんのイメージとは似合わないドスの効いたものだった。
「それでは…亜月君は僕が責任もって高校の入学準備しますから」
口調が戻った瑠維さんはニコリと笑って会釈した。
いつも通りの瑠維さんだった。
「じゃぁ行きましょう。お祖父様も小田切さんも待っているよ」
「は、はい」
瑠維さんの顔は笑顔になっていたけれど、僕は正直さっきの瑠維さんが恐かったのでうまく返事ができなかった。
「今日は亜月君の卒業祝いでお祖母様も家で料理作って待っているよ。楽しみだね」
歩き出した僕と瑠維さんの後ろで麗夏と父さんが何か喚いていたけれど知らない。
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